『綺麗な傷なら大丈夫』

子供の癇癪だなんて酷い!
愛してるって言ったら怒る癖に!


『綺麗な傷なら大丈夫』


そっと首筋に当てた剃刀は
静かに優しく傷を付けた
醜く引き攣れた痕など許さないと
無言で語る貴方の指は迷いがない

赤い線となったそれに触れ
満足かと聞く貴方はまた悲しい目
アタシは深く頷いて掠れた声で
ありがとうって繰り返すだけ

こうやって何度傷つけ合ってきただろう
等しく同じだけの痛みを請け負うなんて
貴方は本当に冷酷で優しい人ね
後始末をする横顔にいつも見惚れてた

怒鳴られても冷たくされても
芯の部分で大切にされていたから
少しの疑いもなく愛せたの
きっと貴方は何度も疑っただろうけど

マーブルチョコをひとつひとつ
口に放り込むのをあんなにも
静かに穏やかに見てくるんだもの
横顔くらいアタシにも見つめさせてよ

自分の傷痕を醜いと思ってるんでしょ
大輪の花みたいに鮮やかで綺麗なのに
何度も舌で辿ってアタシが綺麗にしたの
だからもう全部が大丈夫よ

滴る血を舌でなぞって綺麗にして
アタシを大丈夫にして
どうしてもお揃いにはしてくれない
その酷さでアタシを支配して



「支配してと言いながら、君は今日も小さな独裁者」

『綺麗な傷なら大丈夫』

『綺麗な傷なら大丈夫』

  • 自由詩
  • 掌編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-02-09

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