『綺麗な傷なら大丈夫』
子供の癇癪だなんて酷い!
愛してるって言ったら怒る癖に!
『綺麗な傷なら大丈夫』
そっと首筋に当てた剃刀は
静かに優しく傷を付けた
醜く引き攣れた痕など許さないと
無言で語る貴方の指は迷いがない
赤い線となったそれに触れ
満足かと聞く貴方はまた悲しい目
アタシは深く頷いて掠れた声で
ありがとうって繰り返すだけ
こうやって何度傷つけ合ってきただろう
等しく同じだけの痛みを請け負うなんて
貴方は本当に冷酷で優しい人ね
後始末をする横顔にいつも見惚れてた
怒鳴られても冷たくされても
芯の部分で大切にされていたから
少しの疑いもなく愛せたの
きっと貴方は何度も疑っただろうけど
マーブルチョコをひとつひとつ
口に放り込むのをあんなにも
静かに穏やかに見てくるんだもの
横顔くらいアタシにも見つめさせてよ
自分の傷痕を醜いと思ってるんでしょ
大輪の花みたいに鮮やかで綺麗なのに
何度も舌で辿ってアタシが綺麗にしたの
だからもう全部が大丈夫よ
滴る血を舌でなぞって綺麗にして
アタシを大丈夫にして
どうしてもお揃いにはしてくれない
その酷さでアタシを支配して
「支配してと言いながら、君は今日も小さな独裁者」
『綺麗な傷なら大丈夫』