俺の妹は悪役令嬢[そのせいで、勇者パーティーを追放された転生戦士は、呪術スキルで無双する]
21世紀がまだ未来で、明るい希望を持っていた頃…タバコとバイクはもう、存在しなくなると思っていた…
「お前には、このパーティーを抜けてもらうわ…」
女勇者オスメルは、魔術師プリズナーに通告する。
「どうして…一緒に魔王を討伐した仲じゃないか…」
「そうだな…でもね、お前の妹が何をしたか知ってるか?」
それ以上は、自分で話たくないという様にうつ向く、金髪の美しい勇者を補佐する様に前に出てきた、大きな刀を持つ剣士ジュウシローが後の説明を始めた…
「貴様の妹は、我らが魔王殲滅の旅に出ている間…悪政の限りを尽くし、民を迫害し…富を独り占めしたんだよ。」
無言で冷たい目で睨む、残りのメンバーの僧侶と治癒師…
「てな訳で…(剣士)貴様は、このパーティーを追放だぁ〜!(剣士と女勇者、声を合わせ)」
「うんうん…」
「そ、そんな…」
言いつつ勇者と剣士は、彼を指さす。嫌な笑顔で頷く、あとのふたり…そして、焦る主人公。
「じゃあな…」
ピッ…ブォ〜ン!ロロロロロロ〜!
不快なエンジン音を響かせ…バイクに乗った四人は、彼ひとり置いて砂漠を疾走し去ってゆく…最後に一言残した剣士の捨てた、タバコの吸い殻だけが地面に残り、臭い煙を吹き上げている。
それから何日かかっただろうか…プリズナーは砂漠を歩ききり、王国まで辿り着いた…
バタッ…
町外れで倒れる彼は、朦朧とした意識の中で、懐かしい声を聞いていた…
「お兄さま、お兄さま、しっかり…」
目を覚ましたのは、懐かしい王宮で…妹のアルカナが、隣国の王に見初められて、王女となっているのは、彼の知るところである。
(僕は、妹にここまでの顛末を全て話した。そして彼女もまた、不幸な運命に苛まれているのだった…)
「実は…お兄さま、私も王に婚約破棄されましてよ。」
「え…じゃ、この城は?」
「あぁ、大丈夫ですの…その王を成敗(殺害)して、この国を頂きましたの。」
(やっぱり、勇者パーティーの言ってた事は事実だったか…やるな妹よ)
「でも、優秀な呪術師であらせられるお兄さまが、どうしてあんな屑達と…」
「僕が前にいた世界…」
「あ、お兄さまは、転生戦士でしたわね…」
「うん…そこではここと同じで、汚染が進んでたんだ。でも、アッチはもう手遅れだけど…この異世界ならまだ取り返しがつくかなって思い…旅をしながら、調べてたんだ。」
「その元凶って何ですの?」
「タバコとバイクだよ…何故だか、この世界線にも存在してるようだケド…やっぱ、あの勇者パーティーもそれに汚染されていた。でも、僕の今の力じゃ足りないんだ…助けてくれるか?」
「もちろんですわ、お兄さま。とりあえず、お食事を召し上がって…」
テーブルの上には、豪華な肉料理がてんこ盛りだった。
あ〜む、モグモグ…ムシャムシャ…
芸のない擬音と共に食すふたり。
「カナ…美味いねコレ、何の肉?」
「ウフフ…お兄さま達が退治した、大魔王の肉ですの…」
「ゲッ…ゴックン、まあいいか。」
彼の身体が黒い瘴気に満ち溢れ、エネルギーがみなぎる。
「これで、魔力の増強が完了しましてよ。」
「マジか…本当だ、千里眼で奴等(勇者パーティー)が、見えるぞ。呑気に酒場でくつろいでやがる…」
「ヤッちゃいなよ、お兄さま」
魔術師が、空間に手をかざすと…その先に集中した黒炎が、勇者達の居場所に達する。
剣士の咥えた、タバコが燃え上がり…本人と僧侶、治癒師を黒焦げにした。
「ぐ、ぐわ〜!」
「な、何よコレ…」
慌てて外に出て、停めていてバイクに跨り、ひとり脱出する女勇者。
ブォゥ〜!ドッカ〜ンッ!
エンジンから漏れていた、ガソリンが引火し…大爆発を起こす。
ドサッ…
勇者の、半分になった頭部が地面に落っこちた。
「ザマァみさらせ…」
「ま、お兄さまったら…お下品ですわ、フフフフ。」
イメージ映像を受信したふたりは、満面の笑みを浮かべる…
「ところで妹よ…どうしてバイク乗りは、よく事故に遭ったり、死んだりすると思う?」
「それは、危ない乗り物だからでしょ…」
「それだけじゃないんだ…乗らない人間にとって、あの騒音と排気ガスは只々不快でしかない。」
「確かに、正月とか土日祝にブンブン走り回ってる奴等には殺意を覚えますわ。」
「そうなんだ…そんな人々の呪いが積み重なって、バイク乗りの脚を奪ったり、命を落とさせたりしてるのさ…」
「ま、自業自得ですわね。」
「タバコも同じ…吸わない者に被害を与えている事に、当事者は気づいていない…だから、癌になったりの健康被害が呪いとして、返ってきてるんだ。」
「いい気味ですわ…何の防御も出来て無い、喫煙所の前を通るたび、吐き気をもよおしますの。彼等は、皮膚と体内に染み付いた毒素を撒き散らし…日々私達と、世界を汚染している。」
「問題なのは、存在悪である奴等が、何の罪も無い人々に対し無意識か、わざと加害しているのにも関わらず、市民権を得ている事だ…さっき言った、いい意味の呪いが全てに生き渡ってるわけじゃない。バイク乗りと喫煙者の大半は、まだのうのうと生き続けている…」
「もしやお兄さま、能力を使って…」
「ビンゴ…」
そう言って、プリズナーが、空間に円を描くと…複雑な魔法構造を持つ陣形に変化し、紫の炎を上げる。
ボゥワッ!
「魔王大系、因果の法…世界改変!」
彼の言霊に反応し、天空から光の剣が降り注ぎ…全ての世界線のバイクと喫煙に関する生命達を、終焉に向かわせた。
血と火炎…醜さが灰と化し、無と言う名の美へと変遷する。
「これで、少しはマシな世界になるかもな…」
「お兄さま素敵…抱いて。」
第一部完
俺の妹は悪役令嬢[そのせいで、勇者パーティーを追放された転生戦士は、呪術スキルで無双する]
野球中継は、見たい人だけのチャンネルでやるべきだ…観たくない(聴きたくない)者に無理矢理与えるのは、ただの拷問だよ…