週末までには

売り物の茶色の革靴を今日も磨く
反射した皮には古ぼけた老人が1人
これが私なのだろうか。シワは増え肌は黒ずみ
すでに髪は白く衰えた。

カランコロン

静かにその鐘が出会いを告げた
「いらっしゃいませ、お客様」
顔を上げたその先には黒色のコートを羽織った
青年と緩くシワの入ったシャツを着た中年が1人。
中年は入った瞬間に笑みが溢れていた

「まるで変わってないな、ここの店も」

瞬時に私の脳の一部に電撃が入った
脳裏には青色のTシャツを青年が脳裏に居た 
だが、それを受け止めたくなかったのか
私からは一言だけ溢れてしまった。
「高橋様…でしょうか」

古い脳の中に三十数年前の記憶が蘇る

カランコロンカランコロンカランコロン

その鐘の音しかもはや思い出せない程
古ぼけてしまったのだろうか

「今日はどうしましょうか」
今日も笑みを忘れず
丁重に親切にそして尊敬を
「昔お世話になりましたね。店長
今日はこいつの靴なんだ」
あぁ思い出したそういえばこのくらいの季節
だったか。
「お、お願いします」
青年にはまだ何も知らぬような幼稚だが
どこか大人びている雰囲気が漂っていた
「ここの靴は一生物の相棒だからな、
それじゃあ店長こいつ預けて良いかな」

「ええ、いいですよ」
私は笑っているだろうか、
悲しき事かあの日の青年が青年を導いている
長年の年の功労がこれとは

オーダーメイドでの靴だった
一生物の皮と
深く傷ついた技術
それでも繊細に、それでも的確に
それでこそ丁重に

「本日はありがとうございました」
「店長またよろしくね」

寸法を図り終わる頃にはもう完璧に忘れた。
受け止めたくなかったのだろうか
もう、いいか。

今週末完成品を届けにいく予定だ。
私は青年の青年を見届ける必要がありそうだ

週末までには

週末までには

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-01-31

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