虫酸が走るLOVESONG(ラブソーエヌジー)
アートは、存在希薄の一般人による、金儲けの手段の名称と化す(現代解釈)
その1 錯乱の日常
ラブソングを、歌う人々…本気で信じる恐ろしさ、聴いて感動する脳無し達…
(ナレーション)
ザワザワザワ…
雑踏の様な不確かな音、声?脳内のアルコール濃度の上昇が、記憶を混乱させる。
僕は、海藤ひびき…一応メジャーアイドルの端くれだ。今日は確か、ライブの打ち上げで飲み会を開いていたはず…が、曖昧な記憶を辿ると、メンバーの誰かがコンパニオンの女性を呼んでいたな…
「やめて…お兄ちゃん、助けて…」
霞んだ目の、視界が徐々にはっきりしてゆくと…そうだ、何故かその充てがわれた中に、妹の詩織が混ざってたんだ…
(昨日の記憶)
夕べの食卓だった…
「ねえねえ、お兄ちゃん…詩織ね、割のいいバイト見つけたんだ…」
「へぇ〜…どんな?」
「お酒の場所にちょっと行くだけで、いっぱいお金貰えるんだって。」
「それ、ヤバくね。やめたほうが…」
「もう、前金貰ったし…スマホ代に使っちゃったから。」
「何かあったら、すぐお兄ちゃんに連絡するんだぞ…」
「分かったよぉ…ぶ〜」
ふくれっ面のカワイイ…顔が朧気に、苦痛に歪む幻想…いや、現実?
(リアルワールド)
パンパンパンパンッ!
「いやぁ…お兄ちゃん、助けて…痛い、痛いっ!」
メンバーの中で、一番のブサメンが…僕の妹の後ろから、丸出しの下半身で激しく動いている…血と、それとは別の生臭い匂いが立ち込める空間で、何が行われているのかは…いつも、他人の娘達に自分達がしている乱交を思い返し、察しがつく。
(詩織…バイトって、コレか…)
「ひびき、お前もしろよ…」
仲間のひとりが、僕のズボンとパンツを降ろす…失いつつある理性が、自分の本質である突起物の膨張を助長する…
グボッ!グボッ!
「ぐ…おぇ…んん…」
妹の頭が目の下で、前後する…彼女の意志か、男達による強制か…その粘液質なヌメリに、生命の原点が増殖する。
(イメージ:蛙の幼体にも似たそれが、その生存区域に溢れ返る)
「し…詩織…うぁ…」
波が、背中から押し寄せ…その水圧が、小さな口に注がれる時、脳内は白色となった。
「ご愁傷さまです…」
まだ残る二日酔いの頭に…知人、親戚から何度も同じセリフを聞かされ、吐きそうになる。
妹の葬儀には、あの時のメンバー誰ひとり出席していない…きっと、自殺の原因は自分達のせいでは無いと、言い聞かせたいのだろう…でも、僕は罪を認める。
(とは言え…真実を明るみにし、刑に服す気は無い。とんだ臆病モノさ…)
声優の仕事は楽ちんだ…それに事務所に頼めば、好きな作品に出演するのも容易い。適当な演技でも、実容姿補完で…誰もが称賛する。メディアのゴリ押しもあって、一気に人気が加速ってか。それに、大した男のいない業界内じゃ…僕みたいな、アイドルはやりたい放題さ。
「キューティーストリームショック!」
「いいよ、空ちゃん…もっと、キラプリスの声で喘いで…」
僕の下で後ろ向きになって、臀部をゆっくり回転させる彼女は、アイドル声優の水無月空だ。簡単に引っ掛けた彼女をもて遊ぶ時、人気アニメのヒロイン声を出してもらう…ちょっとした背徳感にゾクゾクする。
「ひびき君…もう…」
潤んだ目で振り返り、こちらを見つめてくる。
「違うよ…キラプリス行きますっ、だろ。」
本編での、フィニッシュの決め台詞を要求してみた…
「ハイ…キラプリス、行き…うっ…」
ガクガクガク…
彼女の痙攣に同調し、後の責任を負う気も無い液体を、直に放出する…
目的は果たした、もうこの女と会うことも無いだろう。
(スマホの登録を、削除っと…)
そういえば昔…まだ売れて無かった頃、初期のキラプリスの着ぐるみショーのバイトしてた事あったっけ…主人公の女の子の中には、ベテランのオッサンが入ってたな…僕は、敵役だったけど。
笑っちゃうのが、ファンの大きいお友達が、嬉しそうに握手とか、サインとかしてもらってるのを見た時だ…あんな汗だくの汚いオヤジに、ぷぷぷ…
でも、日々被り物の出来は良くなって、男が入っていても分からなく作られてる。しかも、最近じゃ大人のオタクを排除するため、ショー撮影禁止だってさ。そのキモオタが、金を落としてくれてるオカゲで商売成り立ってるクセに…
まあ、その中身の本物の声優を毒牙にかけてるイケメンは、完全に勝ち組だけどね…
(さて次は、どのアイドルと声優をイクかな…)
その2 地を這う幽霊船
先端に巨大なドリル…地底を進む謎の帆船(意味の無い構造)イマジンキラー号。
その中心部艦橋で、髑髏の巨人が舵を取っていた…
謎の美女エリレナ・カフマンが、後方の自動扉からやって来る。
「イダ・キチガー様、侵略の準備が整いました…」
「・・・・」
「ハイ、そのココロは…どちらも、イカが付き物です…」
主人の無言の承諾を、命令と履き違えたエリレナは、その場に錨を降ろす…
船の側部から、蛇の様な長い管を持つ、尖った先端が蕾の形をしている、地上への通路を発射する。
大地にヒビが入り…やがて一部が砕け、前段の蕾が現れ花開く。
その場所は、大都会の交差点で…信号の位置が不規則に並ぶ、横断歩道の真ん中であった。行き交う人々は、その異変に誰ひとり気付いていない…
「フッ…バカ共め、認識阻害が効いてるな。」
開いた出口から登場した、ビキニ姿の半裸女は…黒い影の手下達を数百引き連れ、走り過ぎる車に当たる事も無く、平然と歩いている。
「波動が違うのだ、コイツらとは。そもそも住んでいる次元がな…」
影の手下の、幹部が彼女の真横につく…
「副総統様…」
「エリレナでいい…」
「エリレナ様、とりあえず生かす価値があるかどうか…サンプルを取りましょう。」
「うむ…では、あの女…いや、男…」
「性別上は、女でございます。」
信号を渡るおかっぱ頭の女に、奇妙な銃型の機械を向け、探査する手下。
ピッ…
指先から、少量の光弾を発し…女を転倒させるエリレナ。
「痛っ…」
転んだ先にいた、40代くらいの男が近づいてくる。
「お嬢さん、大丈夫ですか?」
不審がられない様…適度な距離をおいて、心配する男。
「ハイ…大丈夫です。スイマセン転倒した時、財布を落としてしまって…タクシー代貸して頂けないでしょうか?」
いきなり不穏な事を言う女に、躊躇なく笑顔で応じる彼。
「いいですよ。これで、足りますか…」
一万円を手渡され、受け取るやいなや立ち上がり…
「ありがとうございます…必ずお返ししますんで。」
と、連絡先も伝えずに立ち去る彼女。
「ピーピー!思考分析…」
手下が、女に向けた機械のデータ送信で、その思考を受信するエリレナ。
(キッも…あのオヤジ。フェミジジイとか言うヤツじゃん…イヤらしい目で見やがって。相手すんかって〜の…どっかで読んだマンガそのものって感じ。)
「なるほど。この世界の女は、商品化されて…その上にあぐらかいて、調子こいてるのか。」
「顔と年齢…それに、金銭の有無で価値判断する生き物です。この世界の現実の女、全て…」
手下が、的確なデータを示す。
「ま、電脳世界に無限の美少女が、溢れるこの世界だ…あんな連中、ほっといてもじきに滅ぶ。」
彼女は、殺す価値すら認め無い…
「逆に、男達はどうでしょう?」
手下が、エリレナに質問する…
「もっと単純だ…奴等の行動基盤は、雌の穴に生殖器を突っ込む事だけ…そこに至る過程で、芸能や発明があるのさ…文明は、偶然の産物って事。」
周囲を物色する侵略者達…
「ま、アレでいいか…」
エリレナは指先から、細い光を放射し…ひとりのピンク髪の男を、袋状に広げたビームの中に捕らえる。
「さて…解剖を始めるぞ。」
男を全裸で拘束ベッドに固定し、物騒なドリルやナイフを手に取り、構えるエリレナ。
ギシギシギシ…グジュグジュ…
指を一本ずつ切り落とし、フラスコの中に落とす。
「あ…ぐ、ぐぎ…う、やめろっ!」
意識を取り戻した彼は、無駄な抵抗を続ける。
「この汚い物体に…一番、業(ごう)を感じるな…」
彼女は、臍の下の膨らんだ部分に目を向ける。
ブチッ!ギリギリ…
「ぐがーっ!」
男の股間が、血に染まる…
「コレに関する記憶…そして未来を、再生して。」
超現実的背景に存在する、奇妙な生態機械装置に、そのアルトバイエルン状のブツを放り込み、部下に命じる。
「ハイ…副総統様…」
影で構成された男に光が当たり、ガイコツの実体を現す。そして、そいつが命令に従いレバーを降ろした…映写機が始動。
ガチッ!ジー、ジー…
ソファーに座り、目の前のスクリーンに意識を集中させるエリレナの顔に、笑みは無い。
しょの3 記憶の叡智
(水無月空の日常)
(今日は、新番組[抱きしめて♡キラプリス]のアフレコなの…何よりも楽しみなのは、憧れの超人気アイドルの海藤ひびき君と会える事…ハァ、ドキドキッ!)
「オハヨ〜空ちゃん」
「あ…ひびきさん、お早うございます。」
彼とは、オーディションの時初めて会って、審査してくれたんだ。そこで、高得点付けてもらって…主役の座を、射止める事が出来たの。
(回想)
「あの…ひびきさん…ここは?」
「あぁ、マネジャーに用意してもらったんだよね…この部屋。いい景色だろ」
「ここ、ホテルですよね…何を?」
「分かってるだろ…君を主役に抜擢したんだから…ね。」
「そう言う事ですか…でも、嬉しい…大ファンだったから。私を、恋人にしてくれますか?」
「それ以上だよ…」
ガバッ!
キレイにクリーニングされた、お布団の匂い…彼の胸から、香水の甘い香り。力強い手…あらゆるトコロが、開かれてゆく。
鉄分の多い液体が、シトシト…何型だったっけ?
(リアルタイム)
(そう言えば、ひびきさん…途中別の仕事で抜けて、別撮りになっちゃったけど…メールしても、返事ないな。大切なお話あったのに…)
そう、彼に伝えるべきかどうか迷ったけれど、毎月のヤツが来なくて…責任っていうか、妻になる権利を得た事を主張しようと思った…
(ガンバレ!キラプリス…)
(海藤詩織のルーティン)
目覚ましは、毎日七時半にセットしている…停止ボタンを押してからも、3回は鳴るタイプ。
「お早うございます…」
チーン!
朝一番に、仏壇のお父さんお母さんにご挨拶。
(花瓶のお花、造花でゴメンね…)
「お兄ちゃん、起きて起きて…」
今日もお寝坊の兄は、大人気アイドル。でも、家では…
「う〜ん、詩織ぃ…あと、5分」
バサッ!
「ダメよ、お兄ちゃん…お仕事でしよっ」
お布団を剥がされて、床に転がる兄は赤ちゃんみたいでカワイイ…
「行ってらっしゃい!お兄ちゃん…」
寝癖の残る兄を見送り、お掃除タイム…
(あ、洗濯もしなきゃ…お兄ちゃんのお洋服にアイロンも。)
ピンッ!
無機質な電子音…掃除機片手に、スマホを操作。
「やった…バイト受かったわ。」
友達の紹介で、高収入アルバイトにエントリーしていて…その合格通知だった。
(これで、両親のお花…生花にしてあげれるわ…フフ)
その状況を、画面越しに見るエリレナの顔は、少しほころんでいた…
虫酸が走るLOVESONG(ラブソーエヌジー)
妹が仕掛けた、壮大なドッキリに気づかず、死を認識する…バカな兄貴だね、キューティストリームショックだよ!