メシを喰うドラゴン電光石火
生と死の狭間で少女達は、何を選択するのだろうか?
イカれてるのは、たぶん…原作者の脳と、制作会社の無能さの事だろう。
第一夜 処女の慟哭
(サイド:エリカ)
私が目覚めたのは、とある廃病院…
カチッカチッカチッ…
時計の音?
ポタッ…ポタッ…
滴る水か…
そうだ、さっきまで…参加型の脱出ゲーム[ドイル・ザ・エスケープ]を楽しんでたんだけど…
これは…
足下に転がる屍体、私の親友…ケイト
「嫌ああぁ…」
涙が、焼け焦げた彼女の顔面に落ち…
ジュウ〜…
無機質なサウンドが、壁に響く…
「エリカ…私達、ずっと一緒だよね。」
過去の記憶、彼女のカワイイ声
(もう、二度と聞けない…)
「ねえ…ボ〜としてんじゃありませんわ、このノロマさん。」
縦ロールの悪役令嬢風の女が、私にけしかける…
「もう何人も、死んでますのよ…いちいち感傷にひたってたら、保ちませんことよ。」
彼女の名前は、マリサ…同じくこのゲームの参加者だ…つまり、かいつまんで説明すると、こう…テーマパークのアトラクションだと思って、気楽に参加した私達は…本当の殺人イベントの当事者になったってワケ…
「もう、行きますわよ…」
フキフキ…
口は悪いが、涙を拭いてくれる彼女は優しい。でも、ここではそれが災う…
「何してんだ、お前ら。ひょっとして、そんな関係?マジ引くわ…」
ショートカットのボーイッシュな女の子、マキコ…彼女も、同じく。
ちなみに私達皆、その場に合わせるかの様な…ナース服を着せられている。
パチャ…パチャ…
踵に染みてくる雨水が、鬱陶しい…
瓦礫の廃墟化したソコは…消毒液の匂いと、かすかな血の香り…
「なぁ…目的も無しに歩きまわってもしようがなくね?」
イライラしてるマキコ。
「は…こんなベチョベチョの場所に、座りたくありませんわ…」
マリサは呆れた感じで、両手を広げる。
「私、怖いの…もしふたりがケイトみたいになったら…」
怯える私の肩を、マリサは抱いてくれた…
「ワタクシは、死にませんわ…」
「ありが…」
「貴方より、後にはね…」
「エリカ、逃げろ!」
マキコの声が虚しく響く…
(もうちょっと、早く言ってよ…)
私の心臓に突き刺ったナイフは、白いドレスの胸元を…赤く染める。
「グハッ…」
ドサッ…
水たまりに、うつ伏せに落ち込み…出血多量になる前に、窒息する…
「さて…後、ひとりですわね…オホホホホホ!」
第二夜 恫喝の嵌満
(サイド:マリサ)
ワタクシ王女マリサが、この狂ったゲームに参加したのは…王家復興の為。金銭の使い込みがバレて、隣国の王に処刑され転生し…この異世界のデスゲームに強制参加させられた。
(ハァ…ワタクシの美貌で、何とかならないかしら)
「で、ルール説明お願いするわ…」
黒髪ダークエルフのパッとしない女、ケイト…彼女は、この状況を熟知している様だ。
「単純ね…ここから、生きて脱出する事。生き残ったひとりだけが…望みを叶えられる、いわゆるテンプレゲームよ。」
「へえ〜ひとりね…」
「変な気は起こさないでね。私、願いが無いから…アンタに譲るわよ。その代わり、脱出に協力して…」
「そう言う事でしたら、よろしくてよ。」
そうしてふたりで、この異様な廃高等学校(ワタクシ達の世界線には、無い概念ですけど)を散策し始めたの…取ってつけた様な、セーラー服を着せられてね。
ザックザック…
地面に溜まった異物が、進行を阻害する…
ボゥワッ!
炎が所々で立ち上がる、よく見ると…足下に嫌な匂いの粉。
(まさか火薬…そんな訳ありませんわ。ここの程度の炎ごときに、負けてたまるもんですか…)
「ちょっと後ろ向いてて…」
「え、ええ…何ですの?」
「いいから…」
言われるままに、反対を向いていると…
ジョボジョボジョボ…シャ〜…
「え…」
思わず振り向いてしまった…
「見ちゃダメ…あ…」
しゃがみ込み、放尿で火を消す彼女に…
(な、何でこんなにドキドキするの…落ち着きなさい…ワタクシ…)
「もういいわよ…フッ…」
スルスル…
何事も無かったかの様に、下着をあげるケイト…
「そうそう…私の顔が、どうしてこんなに黒いか知ってる?」
意味ありげなセリフを言いながら、背を向ける彼女はいったい?
(こんな顔だったかい、っとか言ってのっぺらぼうの姿でも…見せる気かしら?)
「私のエリカを…」
「あぁ…あのお人好しのおバカさんね。それが何か?前回のゲームで、ワタクシが粛清しましてよ…」
(そうでしたわ…あの時、黒焦げで先に死んでいたのが…コイツ。)
「そうよ…私がエリカ。」
私のでは無く、私がって言うケイトの顔は、ズル剥けて…あの金髪の美しい少女
エリカのモノになっていた。
(仮面?いえ…確かにあの時、刺したはず。)
「アンタがヤッたのは、マキコよ。私のフリをしていたの…」
「じゃあ…最後にワタクシが倒したマキコは誰?」
(回想)
水の溜まった地面に倒れるマキコ…
「ワタクシの勝ちですわ…さぁ、ココから出して…」
上部に取り付けられていたスピーカーから、声がする。
【ゲームクリアおめでとう…第一関門突破だ。次のステージへどうぞ…】
ガチャン…グイイ〜ン…
扉が開き、病院から学校場面へドリフ回転する…
「何…ですの…」
黒子が現れ、マリサの頭にダークエルフのケイトの死骸を加工し、作り直した…精巧な仮面を被せる。
「うっ…生臭い、吐き気がしますわ…」
異臭の中、彼女がその中の自分が、アイデンティティを失い…殺したはずのエリカへと変わってゆく事を自覚しないまま、変容する。
第悲惨話 放送事故
「こんな理由の分からない作品…辞めさせて頂きます。」
深夜アニメ作品〈メシを喰うドラゴン電光石火〉のアフレコ中の声優、優希エリカは、台本を置いて…スタジオを飛び出す。
ベチョ…ベチョ…
足下に、緑色のローションの様な粘液…踵が汚れる彼女。
「な、何よコレ?全く、なんですの…」
(どうして…ワタクシ、こんな喋り方…あの、いけ好かないマリサの…確か、エリカ役だったはずなのに?)
【最終ステージは、アニメ制作現場です…張り切ってどうぞ!】
聞き覚えのあるナレーションが響く…
彼女が慌てて、アフレコスタジオに戻ると…金髪のエリカとエルフのケイト、ショートカットのマキコの三人が、全裸で絡み合う映像がスクリーンに映し出されていた…
「ワタクシ…アダルト作品、NGでしてよ…」
ガガガガガガ…
目の前の世界に亀裂が入り、胸元がモザイク割れを起こす…
「そうだ…夢を思い出しましたわ…」
楽屋のテーブルにつき…弁当を広げるマリサ、何故かバニーガール姿である。
そこの扉には、〈メシを喰うシスターズ〉の名の書いてある張り紙が…
「このお弁当…冷たいですわね。」
隣の席に座る赤色のドラゴンは、箸を割るのに苦労している。
「お貸しなさい…」
パチッ!
親切に、箸を割って渡してやるマリサ。
「では、お礼に…ボウワッ!」
炎を吐き、弁当を温め様とする…
「やぁ!」
バスッ!ズシュッ!
突如…取り出した剣で、そのドラゴンを真っ二つにする彼女は、その残骸から魔宝石を拾う…
「そうそう…この電光石で、火をつけるのよ。」
カチッ!ボウ〜!
赤と青のふたつの石をぶつけ、白い炎を発生させ…弁当を温めるマリサ。
「いただきます…」
行儀よく手を合わせ、ムシャムシャと飯を食う…
ローアングルで、その様子を映し出すカメラの映像は…確実に喰い込む、彼女のピンク色の下着を捉えていた…
「エッチ…」
カメラに向かい、恥ずかしがる彼女は…視線の先にいる者だけを愛していた…
「そう…ワタクシの望みは、あなただけよ…」
メシを喰うドラゴン電光石火
必要だったのは、文字と読み手の間隙を埋める事…望んだ死は、確実に与えられた。本文の終了と共に…