これが運命なんだよー寓話集「針鼠じいさん20」

これが運命なんだよー寓話集「針鼠じいさん20」


 お花畑のイモムシは、チューリップの葉っぱの陰からはいだしてきて、いつものように真っ赤な花の中にもぐりこんだ。奥のほうに入ると、くるりと向き返り、小さく縮こまって、外の様子をうかがった。
 ハナムグリが蜜を吸いに赤い花にやってきた。
 ハナムグリは花粉だらけになりながら、花の奥に転がり込んだ。
 乱暴者のイモムシはそりゃっとばかり、ハナムグリの下にもぐりこみ、背中の毛でちくちくさした。
 「いたたたた」
 ハナムグリはあわてて花の外にでると、羽を広げて飛んでいった。
 「弱虫め」
 イモムシはケタケタ笑って、次の獲物がくるのを待った。
 そこにミツバチが飛んできた。イモムシはどんなやつともけんかをする。
 イモムシは花の入口にでてきて、ミツバチの前に立ちはだかった。
 「入るんじゃない」
 ミツバチも負けてはいない。
 「花はお前だけのものじゃない。だれだって蜜を吸うことができるんだ」
 ミツバチはイモムシにお尻を振り上げた。そこには恐ろしい針があるんだ。
 イモムシは針をよけて、ミツバチの胴体に巻きつくと、ぎゅうとしめつけた。
 「くるしいい」
 さすがのミツバチももがいた。それでもなんとかイモムシを振りほどくと、飛んで逃げていった。
 「弱虫」 
 イモムシは笑いながら、花の奥に入っていった。
 しばらくすると、白いチョウチョが花に止まった。チョウチョは口の長い管を花の奥に差し込んだ。それっとばかり花の奥にいたイモムシはチョウチョの口をかみきってしまった。口のなくなったチョウチョはもう蜜を吸うことができなくなった。だから、死んでしまったのさ。
 こんどは黄色のチョウチョがやってきた。イモムシは花の外にでると、チョウチョに自分のからだをこすりつけた。チョウチョの羽から鱗粉がはがれて飛び散ってしまった。鱗粉がないと飛べなくなる。黄色いチョウチョは花から落ちて死んでしまった。
 イモムシは鱗粉をからだにまぶし、黄色くなって遊んだ。
 こうやって、イモムシは花にくる虫たちをいじめていた。
 ある日、一匹のシジミチョウがやってきた。イモムシはシジミチョウの口をちょん切り、鱗粉をはがしてしまい、しまいにむしゃむしゃと食べてしまった。
 お腹いっぱいのイモムシは花からでると、葉の陰で昼寝をはじめた。
 日が暮れて朝になるとイモムシはサナギになっていた。でもそんなこと気がつかないで寝ていた。
 また日が暮れて朝になった。いく日も寝ていたイモムシはやっと目を覚ました。
 「よくねたなあ、おや」
 あくびをしながら、自分が何かの中に入っているのに気がついた。さなぎになっていたんだ。
 イモムシは思い切ってからだを膨らませた。蛹の背中が破れて、からだがそとにでてきた。
 「お日様の光だ、いいなあ」
 自分のからだを見ると、口には長い管がはえ、背中には黒い鱗粉のついた羽がついていた。イモムシは驚いた。
 「おれがチョウチョになってしまった」
 イモムシはか弱いチョウチョになっちまったことをなげいた。
 羽をうごかした。するとよたよたと空の上にまいあがった。
 空も気持ちがいいな、とおもいながら、チョウになったイモムシはお花畑の上を飛び回った。
 しばらく空を飛んでいるとお腹がすいてきた。
 いい香りがしてきた。
 下を見ると赤い花が大きく開いていた。その中に蜜がたっぷりあるんだ。
 チョウになったイモムシは花の上に降りた。
 蜜を吸おうと長い口を花の奥に差し込もうとした。そのとき、はっと、からだをふるわせた。
 俺みたなイモムシが中にいるかもしれない。いたら口をちょんぎられちまう。
 チョウになったイモムシは赤い花はやめて黄色い花に移った。でも震えて口の先がうまく花に差し込めなかった。中にイモムシがいないか覗いたが、背中の羽がじゃましてできなかった。
 チョウになったばかりのイモムシはお腹がすきすぎて、めまいを起こし、土の上に落ちてしまった。
 たくさんのアリがチョウによってきた。アリはみんなして、チョウチョを引っ張っていった。
 一匹のアリが言った。
 「イモムシはチョウチョになる運命なんだよ」
 まわりのアリたちもうなずいた。
 イモムシはせっかくきれいなチョウチョになったのに、アリに食べられてしまった。

これが運命なんだよー寓話集「針鼠じいさん20」

寓話集「針鼠じいさん、2015、209p 一粒書房)所収
絵:著者

これが運命なんだよー寓話集「針鼠じいさん20」

花に蜜を吸いに来ていた虫たちにいじわるをしていたイモムシ、おとなになったときにどうなったか。

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • ホラー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-01-20

CC BY-NC-ND
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