カーネーション
もうすぐ六月になるか ならないか
なったのか なりそうなのか
五月のうすっぺらい
膜めいた暑さの夜に
カーネーションの一輪
ふちから枯れる
褪せるのではなく
燃えるように
枯れる
おいしそうな六歳児は
「にせもののカーネーションがよかった」
と言う
いま枯れているはなが
ほんものなのか
どうかなんて
にせものならば
のちまでのこるかどうかなんて
ぼくにはわからないけれど
六歳児は
ただ にせものと
にせもののえいえんとを
足し算のように信じている
ぼくは削りたての鉛筆を
汗ばんだ手で握りしめ
カーネーションの枯れたふち
を紙面へ
写しはじめた
絵のはなが
時間の化石を飛ぶ
つばさになるように
カーネーション