ときめく恋はカフェオレの香り チャプター3
鈴原結奈は、28歳の恋愛初心者の女性であった。
会社では中年のおじちゃん達と仕事をしたり、飲み会でワイワイやったりしてたが、1対1の超ド級の恋愛は、まだまだ経験が無かったのだ。
初めての彼氏・・・
コンビニ店員の笹原蒼空(そら)くんは、ナイトバーで知り合ったイケメンの男性だった。初めてのキスの後、2週間後に蒼空(そら)くんのアパートを訪ねる結菜・・。
一緒にゲームをした後、急に蒼空くんは結菜の顔を見てこう言ったのだ。
「腹がへったな、結菜ちゃん、何か作ってよ・・」
実家暮らしで、まともな料理をしたことが少ない結菜だったのだ。(あ。。まずい、まずい)いつも、ママの作ってくれるドリアや唐揚げなど、ただ脇で調理するのを見ていただけだし、妹の円香はイタリアンサラダとか作ってくれたっけ。
「あっ、待っててね、いつも家では煮物なんだけどね!」
テキトーに返事をして台所に立ったものの、何をしていいか分からない・・・。
結局、冷蔵庫にあった卵2個で卵焼きを焼いてみたものの、焦げ焦げになる。これでは、料理とは言えない。
ーー「えっ??これ、なに・・・?ホットケーキかな?」
優しい蒼空くんは責めるようなことはしなかったが、いつもの笑顔は無く、結菜から顔をそむけて「はっ」と溜息をついているみたいだ。
「あ、やっちゃった。」と感じる結菜だった。
「女性なら、家族に作ったことないのかよ、妹とか居るんだろ?信じられないな」
あまり、キツイことを言わない蒼空くんなのに、、じっと睨まれてしまったのだ。
ーーまずい、まずい。、料理は、しっかり者の妹と優しい母親に任せていたのだ・・ばれてしまった、ハハハ・・。
何も言わない蒼空くん。。。だが、台所の脇には、なぜかピンクの女性モノのエプロンがかけてあった。
前の彼女が使ったエプロンだろうか。蒼空君は台所に行く振りをして、そのピンクのエプロンを懐かしそうに見たり、手に取ったりしているのだ・・・!
きっと、前の彼女は料理上手で、蒼空君の好みのものを作れたんだろうなあ、、と自分の不器用さを後悔する結菜だった。(悲しいなっ)
ーーー その次の日 ーー
証券会社で、自分のデスクでパソコンに集中する結奈であったが、ポンポンと肩をたたく気配がした。
「結菜ちゃん、、はい、これキャラメル食べてみて。疲れたでしょ・・?」
40代で先輩の、漆原美香さん(うるしばらみか)だった。
結奈は、40代あたりの人は説教してきたり、彼氏の自慢とかしてくるので、あまり接触しなかったが、この美香さんだけは好感が持てた。
美香さんはお局でもなく、独身で気楽に遊んだり仕事をしたり、若い人から見ると
「自由な40代・・」って感じの女性である。たまに、会社のカフェで雑談したり、ゆるーい付き合いをしてくれるので助かる。
ーーー 会社のカフェで ーー
美香さんは、白桃紅茶とドーナツをオーダーして、疲れたように下を向いているのだ。。
「美香さん、どうしたんですか・・?何か悩みでもあるの・・?」
年上でも、美香さんは守ってあげたいタイプで、結菜もちょっと気にかかる。
「ええ、違うの・。」
美香さんはひとくち白桃紅茶を飲んでから、そっとカップをソーサーの上に置いた。
なんでも、美香さんの話によると、飼っている猫が朝から調子が悪く気になっているとのこと・・。それに、その猫ちゃんはいつもは一緒にベッドで寝るのに、寄ってこないと、、落ち込んでいるのだ・・。
「猫ちゃんが、、、更年期かしら?」
「ええっ?猫にも更年期って、あるんですか?」と結菜。
「いえいえ、でもなんか表情が更年期って感じなのよね。私もそういうことあるし。」と、ドーナツをほおばっていて、可愛らしい。
まあ、40代の女性らしい考察であるのだがーー。
そこで、結菜は、男性は料理好きの女性のほうが好きなのかということを聞いていた。美香さんは独身だが40代なら経験豊富だし、意見をしてほしかったのだ。恥ずかしいけど、蒼空くんに料理を作って失敗したことなど、全部を打ち明けたのだ。
「そうね、人によってじゃない?」
「そうそう、今日は仕事の後、男友達の滑川くんと居酒屋に行くのよ。一緒にどうかなあ?たまには、恋愛のことを年上の男性とも話してみたら?」
ーーー 夜の、7時半であった、居酒屋にて
な、なんと・・
美香さんの男友達っていう、40代の滑川さんは頭が剥げていて、いかにもくたびれてるっていう風貌の人だった。
「こ、こんばんは!、突然、お邪魔しちゃって、、よろしくお願いします!」
結菜はにこっと微笑んで、滑川さんに挨拶してみる。滑川さんは中年らしく、寛容でニコニコしながら若い女の子と飲めるなんて・・と喜んでくれたのだ。3人で、それぞれの仕事の話やくだらないことーー(居酒屋の焼き鳥の値段が、値上がりしたとか、美香さんの猫の容態とかである。)
いろいろ話した後に、ようやく、美香さんが話題をふってくれたのだ。
「ええ、ええと、滑川さんの元彼女は料理とか得意だったよね・・?」
「うんうん、、3年前に付き合ってた人はレシピとか見なくても、晩御飯くらいは作ってくれてた覚えがあるな。」
結菜は、蒼空君の顔を思い出しながら話を聞いていたのだ。
蒼空くんは、なにが食べたかったのかな。。あんな焦げ焦げの卵焼で
可哀そうだったな、、、
思わず、悲しさがこみあげてくる結菜なのだった。
「なになに?? 結菜ちゃんは、何が作れるの・・」
滑川さんから聞かれて、美香さんが事情を説明し始めた。結菜が、彼氏に料理を作れなかったことや、、、、前の彼女のエプロンを、蒼空くんがじっと見ていたことなど・・・。
黙って聞いていた40代の滑川さんであったが、タバコを1本、吸った後に結菜の顔を見てこう言ったのだ。
ーーー「うん、それは、もう男のシグナルだよ。」
可哀そうだけど、結菜ちゃんは振られているんじゃない?」
な、な、なんですって・・!! もう蒼空くんに振られているってことなの?こんな、今日に会ったばかりのハゲ親父に言われたくないけど・・。不満を顔に出さないようにするので、精いっぱいだった。
「は、はあ、そうですね。私、料理できないから。。振られるのかなあ?」
枝豆をつまんでいた美香さんは、いつもおっとりして頼りないけど、年上の女性らしく、「だいじょうぶよ、またデートできるに決まってるわ」と結菜の肩を抱いて、なぐさめてくれたのだ。
そこに・・・。そこに・・・
スマホに、蒼空くんからのメールが入る。
ーーー「ごめんね、コンビニの仕事が忙しくて、
しばらく、会えないから・・。」
ときめく恋はカフェオレの香り チャプター3