抜け時はいつも

 アル中の復習劇です。

弱者と強者

 毎日,胃の不快感と全身を包み込む冷気のような不安感で目が覚める。決まった時間はない。昨晩もしくは日付が変わった今日の時刻からの飲酒量で目覚めの時間は決まる。
 アルコールの切れ時で体がアルコールを欲するときなのだ。腹が減った,のどが渇いた,そんな感じのようにアルコールを体が求めている。案外簡単に依存症という病気になてしまったな,と尚人は他人事のように毎朝思うようになった。アルコール依存症特有の手の震えまだない。
 吐き気を押さえるために,枕元の小瓶に入ったウイスキーを手に取り,一口で口,喉,胃に流し込む。攻撃的な毒水が体中を駆け巡る。アルコールの力を借りて自分を取り戻すと部屋の臭気が鼻を攻撃してきた。危険な臭気は鼻から頭に入り目がその場所を特定する。ワンカップ酒の瓶に自分の小便と吸い殻が入っている。アンモニアとニコチン,最強の組み合わせとその臭いに尚人は知らぬふりをした。どうせ自分のモノだし片付けるのも自分だ。そんなような汚物が部屋の至る所にあり臭気をもって存在価値を示していた。
 

抜け時はいつも

抜け時はいつも

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-02-03

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