誕生日のごちそうー寓話集「針鼠じいさん7」
牧場の小屋の屋根裏でネズミたちが集まっている
今日は僕の満1ヶ月の誕生日、おじいさん、おばあさん、それにたくさんのともだち、おっと、もちろん十二匹のお兄さんやお姉さんもみんなで僕を祝いに来てくれた。
屋根裏のたくさん積み重ねてあるリンゴ箱の陰でこれからお祝いの会だ。
お父さんが言った。
「ちかごろ、おまえはとっても怖い目にあったそうじゃないか。どうだい、お母さんのとっておきの料理ができるまで、その話をみんなに聞かせてくれないかい」
皆は尾っぽを床に打ち鳴らした。
「それでは、ネコの首に鈴をつけたおじいさんにまけないほど勇かんで、知恵をもった末っ子ネズミに話をしてもらおう」
ということで、僕はみんなの前であの日の出来事を話すことになった。
僕は始めた。
「それは、二日ほど前のことだった。僕はとっても早く目を覚ました。まだ、夕日が山に落ちない頃だ」
ネズミは夜起きて、朝寝床に入るんだ。
「僕はお腹がすいてたんだ。そこでいつものジャガイモ倉庫に食事をしに行ったんだ。ところが、たいへんなことに、その倉庫の中には一かけらのジャガイモもなくなってしまっていたんだ。後で聞いたところによると、人間がジャガイモを全部トラックにつんで、運んでいってしまったんだそうだ」
「しかたがないので、僕はまだ一度も行ったことのない、森のはずれのお百生さんの家まで、ジャガイモをさがしに行ったんだ。
森のはずれまで、なんと三時間も歩かなければならなかったよ。僕は朝ごはんを食べていなかったので、そこにたどりついた時は、もうくたくたさ。それでも、お百生さんの家の中にはいった時には元気がでてきた。なにしろ、この近くでは見られない大きくて甘そうなジャガイモが山と積んであったんだ。
僕はもう食べたくて食べたくて、まわりのことなんて忘れてしまって、ジャガイモの山の中に首をつっこんだ。その時だった、後からとてもこわい声が鳴り響いた。
『ニャーゴ』
その声の主はとても大きな年よりネコだったよ、首に鈴をつけていた、もしかすると、おじいさんがつけた鈴かもしれない。
でもさびてしまっていて、チリンチリンとならなかったんだよ。
ネコはね、僕をみつけると、舌なめずりをしてにらんだよ。
僕はこわくて、がたがたからだがふるえたけど、じっとこらえて逃げ道を探したんだ。
見回してもどこにも出口はみつからないし、もうだめかと思った。
ネコの目はらんらんと光っていて、とがった歯のついた大きな口はすぐそばまで来ていたんだ。ネコをあんなに近くで見たのは始めてだったよ。
ネコの息がふっと顔にかかって、もう食べられちゃう、と思った時、僕の頭の中でひらめいたんだ。
そしてね、僕は、一番おいしそうなジャガイモを足でけとばしてね、ネコをじっくりと見た。そうして、こう言ってやったんだ。
『ネズミだってネコを食べたいことだってあるんだ』
ってね、おまけにもう一度そのジャガイモをけっとばしたんだ、そのジャガイモが運よく、ネコの尾っぽにぶつかったんだ。そうしたら、ネコのやつ身震いして、とんで逃げちまったよ」
僕が話し終えると、皆はわれんばかりの拍手をしてくれた。
そこへ、お母さんの特製の料理がでてきた。
料理の上には布がかぶさっている。僕もまだ食べたことのないものだという話だ。
「さー、布をおとりなさい」
とお母さんが言った。皆が拍手をした。
僕は料理にかぶさっていたおおいをとった。それを見て僕は思わず、
「わー」
と大きな声を上げてしまった。
大きな皿の上には、こんがりと焼けた、おいしそうなネコがのっていた。
まず僕がトラネコの耳にかじりついた。僕には最初にかじる権利があるんだよ、なにせ、僕の誕生日だもの。
誕生日のごちそうー寓話集「針鼠じいさん7」
寓話集「針鼠爺さん、2015、209p 一粒書房)所収
絵:著者