愛してる

これは決して結ばれない恋をした二人の話。愛し合う想いは世界で一番深くて強いのに、虚しくもそれは叶わない。それでも愛し合うことをやめず諦めなかった、切なくも甘い、そんなお話。

愛してる

"病める時も健やかなる時も貴方を愛すことを誓います"
正しさなんかありもしない世界で僕らは誓った。指輪の代わりにリボンを君の薬指に巻いた。神父も、参列者も神様もいない二人きりの世界で、僕らは口付けをし、誓い合った。
君が言った「愛してる」。
僕が言った「愛してる」。
飴細工みたいに甘くて綺麗な僕らの愛は永遠を誓うにはあまりにも脆すぎた。
それでも、僕らはそれが何より愛おしかった。僕らはきっと世界で一番お互いを大切に想い愛しあっていた。それでも、僕みたいな人間は君とはあまりにも不釣り合いで周りが二人の愛を否定した。
世界にはどんなに努力したってどうにもできないことがある。身なりを整えて、地位も名誉も獲得して、性格を変えても何の意味もなさない。鳥籠の中で世界を見てきた真っ白な君と鳥籠の外で世界を知ってきた薄汚れた僕じゃ釣り合わない、結ばれない、そうわかっていた。それでも、どうしても惹かれてしまったんだ。どうしても君に毎日こっそり会いにいくのをやめられなかった。君が他の誰かのもとに行ってしまうのがたまらなく怖くて、悲しくて苦しくて。僕を見てもらえるように必死に愛を告げ続けた。
僕があまりにもしつこいから君は呆れながらも優しく微笑みこっちを見てくれた。それがたまらなく嬉しくて思わず嘴がにやけてしまう。そんな秘密の日々で生まれた僕らの愛。
綺麗で真っ白な君に、薄汚れた僕が近づいて、触れて、汚れることを君の周りは嫌がった。
でも、君は僕に触れてくれた。真っ白な自分を汚してまで。「他の誰よりもあなたに触れていたい」なんて、眩しい言葉を口にして。心底僕はもっと君を好きになって、その優しさに胸が痛んだ。大好きで、愛してやまない君がくれた言葉だから。だから、僕も口にする「綺麗な君を汚したくない、それなのに君に触れるとたまらなくなる」
僕らは周りの目も忘れて強く抱き合った。『愛してる』その思いで心臓を高鳴らせながら。
君が言う「ここから連れ出して」
僕が言う「僕から離れないで」
僕らは手を繋ぎ満月の夜に走り出した。夜の闇から月の光が僕らを守り導いてくれた。逃げ出したところで朝が来てしまえば何の意味もない。僕ら二人ともわかっていた。朝の光が僕らを引き離すって。たくさん走って走って、たどり着いた海が見える丘の上で君は瞳を揺らしながら僕にいう。
「私を連れて行って、誰も私達を引き裂かない世界に」
僕は息を呑み黙った。
「、、、」
僕は自分を憎んだ。自分の無力さをうらんだ。君にこんなこと言わせてしまった自分に腹が立った。でも、それ以上に胸が痛んだ。僕が君にしつこく愛を告げ、会いに行かなければ君には違う幸せな未来があったかな。僕が君を愛さなければ君は他の誰かと幸せになれたかな。
僕が言う。
「君を愛してごめん。君を幸せにしてあげられなくてごめん」
世界が滲んで君の顔がぼやけて見えた。
情けない僕を見て君は手を引きながら優しく微笑み、僕の涙を拭った。
君が言う。
「私は幸せよ。謝らないで、貴方じゃなきゃ嫌なの」
僕は君を強く抱きしめた。強く強く、離さないように離れないように。そして、僕が言う。
「病める時も健やかなる時も貴方を愛すことを誓います」
君が微笑み幸せそうに涙を流しながら言う。
「病める時も健やかなる時も貴方を愛すことを誓います」
僕は君の髪を結ぶリボンをとって薬指には巻きつけた。それを見て君が笑う。幸せそうに。
そして愛の証に口付けをした。
今までで一番世界が輝いて見えた。
月が沈んで日が登り始める。僕らは朝から逃げるように抱きしめあったままこの世界から逃げ出した。二人一緒に誰にも引き裂かれず結ばれる世界に向かって逃げ出した。体に力が入らなくなっても君を抱きしめるのをやめなかった。僕の腕の中で瞳を閉じ、身を委ねる君。切なく胸が痛んだ。甘く胸が満たされた。
「愛してる」
そう囁いて僕は目を閉じた。
次君に会える日を夢に見て。

愛してる

二人が行き着いた結末は周りから見たら愚かかもしれない。それでも、二人にとっては一番幸せ結末だった。最後まで愛し合う二人でいられたのだから。

愛してる

ロマンチックで、切なくも甘いお話です。 いろんな解釈でお話を深掘りし、貴方の想像でお話を完成させてみてください。

  • 小説
  • 掌編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-01-05

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