この物語は、フィクションです…実在の人物・団体とは、一切関係ありません
盲目の承諾とは、最先端企業のアホと契約を結ぶ事…
第一話 パンダは殺人熊
暗黒政府に支配された、西方国シンキの中枢には、異生命エルジュが生息し、日々異形の妖奇を操り、人類を脅かしていた…
奴等に対抗出来るのは、ただ一人…エリートチャージと呼ばれる正義の妖奇、ゲルドI(アイ)だけである…
「オバアちゃん…逃げて!」
山奥の農村…藁葺きの一軒屋に全速で、駆け込んで来たのは…その家の孫娘だ。
「どうしたんだい?加奈子…」
「ぱ…熊猫が、そこまで…」
「あぁ…それなら、ここに…」
暖炉の前に座る、割烹着の老婆の背中は盛り上がり…背骨を引き裂き、その体内から巨大な、白黒の殺人熊を這い出させた…
ガギガギガギガギ…グロロロロ…
奇妙な音を発し、娘に迫る…
「いやぁ〜!」
尻餅をつき、その場で失禁する制服の少女…
「ライド…この辺か?」
「そうね…感じるわ、ヒカ…」
ふたりは、姉ヒカと弟ライド…姉は男装の女性で、弟は女装の男だ…
「血の匂い、クンクン…興奮するぜ…」
不謹慎な事を言う、半ズボンのヒカは、前段の民家に時間差で侵入する…
ズルッ!
「あ、汚っちゃな…この靴、買ったばかりなのにぃ…」
ドス黒い血が、ヒールの裏に付いた事にイライラする、ゴスロリ姿のライド…
畳の上に散乱する臓器と、玄関先に転がる…首無し少女の遺体。
「な…ライド…これ着て」
「え〜…ま、姉さんが好きそうなのは…もう、しゃ〜ないわね…」
屍体の服を脱がし、制服に着替えるライドは、ブラもちゃんと付けていた…
「お布団、勝手にひいたぜ…おいで〜」
血の跡を避けて、せんべい布団を広げ…その中から手招きするヒカ。
「姉さん…今日はワタシが、上だよ…」
床に入り…姉の上に被さる、少女の服を着た弟…
「合身っ!」
ふたりが声を合わすと…周囲は光に包まれ、霧が立ち込める…
「エリート・チャージ……ゲルドI(アイ)推参…」
長身の筋肉質な、タイツか裸体か判別出来ない…爬虫類と人間が合わさった様な姿の、一角の戦士がそこに…
ガガガガ…ギギギ…グルグル…ゲゲゲ…
グッチャグッチャッ!バキバキッ!ズルズル…
逃げ惑う村人を…容赦無く次々と抹殺し、喰らい尽くす熊猫…
「た…助けてくれ〜」
道路ブチのコンビニに、駆け込もうとする男…扉をロックして、中に入れようとしないバイト店員…
「人の本質見たり…」
ピー!バリバリバリ…
そう言いながら、両目から光線を出すゲルドI…
「あ、技名言うの忘れた…ゲルドデストロビーム!」
遅れて、光線名を発し…その威力で、熊猫の胴体に風穴を空けるが…そのままビームは、助けを求める男と、コンビニ店員にも命中し…生命を奪う。
血を吐いて、うつ伏せに倒れる熊猫と黒焦げになる、男と店員…
「おいおい、またヤッチまった…テヘヘ」
頭をポリポリ掻きながら分離し、元の姉弟に戻ってゆく…
(弟のモノローグ:ワタシ達の使命は、この世界の平和を守る事…そう、世界であって、人間じゃあ無いわ…フフフ)
第二話 ニューヨークの差別主義者
前日の熊猫騒動が、終わったのも束の間…薄汚れた街の高架下で、ニュースを閲覧する弟のライド…
「ヒカ姉…昨日の騒動、出てるわよ」
横にした、スマホ画面を向ける…
「ふん、メディアの揉み消しだな…いつもの」
そう…報道されていたのは、野生の熊が、人を襲っただけの事件として、取り上げられていて…殺人熊猫と妖奇の死闘は、無視されていた…
「まぁ…被害者も皆んな、死んじまったしな〜」
「アレッて…クライシスアクターじゃ無かったの?」
状況を、事実として捉える姉と、猜疑心の強い弟…
タッタカ…タカタカ、タッタッ!
携帯の着信音がする、嫌々応じるライド…
「ハ〜イ…今どきぃ、通話パワハラで〜す…」
「依頼だ…バカ姉弟…」
ドスの効いた男の声がして、しばらく会話を続けた…
「ヘイヘイ、りよ〜解…は…」
切ると同時に、ため息をつく…
「ヒカ…ニューヨークって名前の工場に、また出たんだって…」
「ああぁ…前、逃がした…あの」
「そう、妖怪顎無よ」
工場で、汗水垂らして働く労働者達…
「キモ〜!お前ら終わってんねん…そのダサい髪型、鏡見てみ」
アゴの無いバケモノが、高い天井に浮かびながら、罵詈雑言を吐く…
自分の見た目を棚上げする、醜い生物を無視し…真面目に作業する人々。
「コラッ!何無視しとんねん、ワシラお笑いやっとるヤツが、一番エライんじゃ…一日で、お前らの一年分以上稼いどんねん…ザマァみさらせ!」
「うるせえぞ…」
カシーン…
誰かが思い余って、空缶を放り投げるが、届かない…
「何さらしとんねんっ、一般人風情が…」
ガガガガ〜!
口から炎を吐き出し、あたり一面を火の海にする顎無…地面に流れる廃液に引火し、所々で小さな爆発が起こる…声にもならない叫びが溢れ、地獄絵図と化す…
「あ〜ぁ…間に合わなかったか…」
「酷い匂いね、姉さん…」
ふたりの足下に…黒焦げの屍体が転がる。
バリバリ…
「それ…」
「あ、悪い…」
それと気づかず、踏み潰してしまう姉のヒカ…
「面倒いで、さっさとすんべ…」
バサバサ…
散乱している道具関係に、被さっていた毛布を…消炎の匂いが残る、地面に引くヒカ。
「するぞ…」
「ヒカ姉…見られてると、恥ずかしいよ…」
人前で、おっ始め様とする…変態姉弟を俯瞰で見つめる妖怪…
「お前ら何やっとんねん…」
「ヒカ姉…ダメ…」
「入ってんのは、こっちだけどね…アッ来た来た…」
ふたりの行為はやがて、光に包まれる…
ブジュンシュンシュンシュン!
「ケッ…つまんね〜敵」
煙の中から現れた…ゲルドIは、登場のセリフを言う程の相手では無いと、思った…
「ゲルドスライサー!」
巨人が、両手を振ると…光状の剣が飛来する。
「何やねんそれ…いっこも、効かへんわ…」
顎無は、不敵に天井を這い回る…
「人を見下したお笑いか…面白いと思うバカもいるかもだが、楽しくはないな…」
ゲルドが、そう言い終わる前に…
「グ、ゲゲゲ…ゲジャビュ〜!」
謎の悲鳴をあげ…時差で跳んできた剣に、バラバラに切り刻まれる妖怪…
「あ…もしもし、任務完了っす…は、何だって…」
元に戻ったヒカは、依頼者に報告するが…
「姉さん…どうしたの?」
「殺しちゃダメだったってさ…」
「どうして?」
「早朝番組の、レギュラー出演予定があるかららしいよ…」
「ゲー!」
そう…彼女達の任務は、世界の平和を守る事…狂ったバカ芸人を待ち望む大衆の夢を、壊してはいけなかった…らしい。
ナンノコッチャ…
平日朝放送のバラエティ[アイソレ]、TV画面で…顎無の相棒ギョロ目が、司会者に報告する…
「相方の、顎無ですが…体調不良の為、本日は休ませていただきます…」
と…
第三話 エスパーはキノコがお好き
「ヒカ姉…次の依頼は、アイドルグループに化けてる妖奇だってさ…」
「へぇ〜全員やんの?」
「うん…その予定だったんだけど、首謀者が仮病で休んでるらしいの…」
「ほな、自宅に押しかけよ〜ぜ…」
「後ね、そいつを影で操る悪徳TV局も一網打尽にしよっか…」
「ライドがしたいなら、いいよ…」
「じゃ、しよっ…」
姉弟は抱き合い、秘部を重ねる…
歌合戦を欠場した…女性アイドルは、今日も大好物のキノコを食べている…彼女は、超能力使いの忍者妖奇でもあった…
午後8時15分、合体変身した超人ゲルドIは…仮病で隠れている、妖奇の部屋にスッと現れる…
「悪いのは、お前だけじゃない…反国家的メディアもだ…」
「明日は、年明けライブがあるんだ…失せろ!」
シュンシュンッ!
手裏剣を、無限ループで投げつけてくる…
ゲルドは一切避けず、その刃先をカラダで受け止める…
「見ろ、血だ…」
忍者に傷口を見せつけ…全身から血液を、噴き出させる巨人…
「バ…バケモノめ…」
「どっこいしょ…」
グリグリグリ…ブチッ!
両手で、女の首を引きちぎる…
「ふん…血も出ないか…」
放送局に移動した、ゲルドI…
「通行証を…」
その不気味な見た目に動じす、職務を果たそうとするガードマンに、冷静に対処する…
「取材許可は、出てるはずだが…」
堂々と人気の無い通路を抜け、ガソリンを撒き散らす…
「まるで、出る杭を打たされた…犯罪者の気分だぜ…」
グガーッ!
口から火炎放射を発し、その象徴的な建物を火の海に…灰に…
「ハイ…受信料っと…」
入口に1円玉を置いて、立ち去るゲルドIの姿は…徐々にヒカとライド姉弟に戻ってゆく…
「ハ〜イ、もしもし…」
依頼者からの電話を、硝煙を後ろにして対応するライド…
「あっ、ハイハイ…えっ、TV局までは、せんでええって…大丈夫よ、サービス期間中だから…」
「ナイス、我が弟…」
第四話 千歳飴とラムネ
(レギュラー姉弟ではなく、別キャラのモノローグにより、今回はお送りします…)
俺の名前は、松鶴家ちる。自慢じゃないが、頭脳明晰・スポーツ万能…学園トップの成績で、インターハイも余裕の運動能力を持った美青年さ。でも、そんな名声には全く興味無い…周りには言い寄って来る女子が数多あれど、僕の心が満たされる事は…そう、何かが…致命的に欠落してるんだ。
「ちる…何、難しい顔してんの?」
僕の顔を覗き込む、この美少女は、早乙女ライドって言う女の子で…親友の早乙女ヒカの双子の妹だ。
「別に…雲を見てただけさ…」
「へぇ〜」
人の悩みを知る由もない、この無垢で儚い香りを漂わせる娘に…教室窓からの日差しが重なって、影を作り…羽根の様な雲が、その背中と一致する時、天使の忘れ物って言う言葉が頭を過った…
僕は、この一瞬に…何を感じているのだろうか?恋愛への期待…いや、そんな有り体の言葉では言い表せない、日常から切り離された刹那…
「また、エッチな事でも考えてんでしょ…ま、このナイスバディのライドちゃんなら、仕方ないッスよね…ゴックン」
ラムネ瓶を、直に口に当て飲みながら…大衆紙のグラビアにでも、出てきそうな…セクシーポーズをキメる彼女からは…性的な因子の手前で、まだその方向性の定まらぬ、可能性の危うさしか感じない…
「コラ、ボクの妹に…変な真似させんなよ…」
コツン…
千歳飴を咥えてている兄のヒカに、肘で頭を小突かれ…妄想的思索から解放される…でも、それは同時に目の前で繰り広げられている茶番が、リアリティを求めて…肉体を引き寄せている行為ともとれる。
「俺達、そんなんじゃね〜し…」
「え〜!ひっどぉ〜い…ワタシ、ちるの事…愛しているのに〜!」
わざとらしく嘲る、彼女の本心はドコにあるのか…俺が手繰り寄せようとしても、簡単にスルリとすり抜けて…決してこの手に触れる事は無い。
(回想)
そう、俺がある日見た真実…
その日俺は、教師からの依頼で保健室の清掃を任されていた…
「ダメよ、姉さん…ここじゃ」
「ライド…ガマン出来ないんだよ」
「でも、シタら…ワタシ達」
「分かってる…でも、ん…」
ヌチュヌチュ…グジュグジュ…パンッパンッ…
不適切なサウンドに耳を奪われる…白い仕切りに重なる、ふたつのシルエットを覗く勇気は無かったが、脳裏の想像は全てを完結させていた。
シュンシュンシュン…
特撮ドラマのSE…俺は、映像世界にいたのか?ひとつの巨大な影の放つ…得体の知れないオーラにビビり、その場を立ち去ってしまった…
(実時間)
「で…アンタ、見たのよね…」
「ら…ライド…君達は?」
詰め寄る彼女に、恐れの感情が炸裂する…
「ワタシが、弟で…」
「ボクが、姉ってコト…」
「で…あの巨人のシルエットは?」
「あぁ…ゲルドI(アイ)の事…」
しれっと意味不明の事を言う彼女に、戸惑いを隠せないが…性別の話は、納得がいった。前々から、ヒカとぶつかった時の柔らかさ…ライドの股間の膨らみなど、思い当たる節はある…
「ゴメンね…知られちゃったから…」
彼女…いや、彼の言い様からすると…俺の危険性を、示唆しているのだろう。でも、まさかこんな事になるなんて…
得体の知れないバケモノに、引き裂かれた肉体は…血液の海に浮かぶ四肢をそれぞれ、元あった場所とは異なる位置で確認する事で…終局を迎えたんだなと、気付かされた…いつか、俺が人にアドバイスした様に、この気持ちを伝える術は…熱くてダサいパンクロックかもな…
「パンクってのは…かつてあった破壊兵器の名称よ…」
「攻撃的破滅意識を喪失した現代人が…簡単にダサいとか、熱いとか…笑わせる…」
その日…ゲルドIは、妖奇ラムネ味の千歳飴を退治した…
第五話 異世界転生、最強無双
今日もダラダラワンクール…未完の小説アニメ化し、完結せずに次の作品…どれもこれも似たり寄ったり、ドングリの背比べという特徴を持った、[異世界転生]という名の妖奇に…暗殺命令が、ヒカとライド姉弟にくだる。
「姉さん…いい加減面倒くさいんで、依頼者のエルジュ星人殺さない?」
「いや…暗黒政府を滅ぼすために、利用させてもらうさ…その後でもいいだろ、ライド君」
「ハ〜イ…んじゃ、チャッチャと異世界転生を退治しよ。」
妖奇異世界転生は、元さえないサラリーマン…生まれ変わってからは、常にスキル画面を表示させ…無限マークに満たされる、世界線の支配者…
防御力最大エルフと、ロリ魔術師、最強ツンデレ剣士の美女パーティーを引き連れ…異世界転生は、今日もダンジョンで無双する。
「この魔王相手に、その兵力で勝てるとでも思ってるいるのか…」
恐るべき魔王と無数の精鋭部隊を前に、一歩も退かない勇者一行…
「おもんないな〜、君ら…」
既に変身し、現れたゲルドIは、両者の真ん中に対峙する…
「新手か…皆んな、警戒して…」
異界転(略)は、愛人達に声をかける…
「キサマ、何者だ…粉みじんにしてくれるわ…」
魔王は、先に巨人を始末しようと、巨大な爪を振り上げる…
「ダンジョン破壊ビーム…ビビビビビビ〜!」
額から、光弾を発射し…魔王と数億いる魔王軍を、一気に灰と化すゲルドI。
「スゴイ力だ…ま、俺様の次にだけどね…」
カッコつける異界転と、うっとり見つめる女達…
「お前達の本質は、海外の受注業者に作業を簡略化する為の、同一世界観と…日々大量生産される、思想無き素人小説の発行部数伸ばしの、手駒に過ぎないんだよ…」
「いや…それを言っちゃあ…」
事実をメタするゲルドに、焦る異界転…
「粗製発行し過ぎて、今さら辞めにくいのは分かるが…このままだと、業界が滅びるぞミサイルッ!」
長い名称の攻撃を、両耳から発すると…まずは、ザコ美女軍団を骨にする…
「皆んな〜!……どうしてこんな酷い事を…」
怒りと悲しみに、震える異界転…
「確かに、見方を変えれば…コッチが悪かもな。でも俺には、世界を救う使命がある…そう、単なる歪みの調整さ…」
グイッ…グキグキ…バキバキッ!
異界転の首を掴み持ち上げ、全身を捻って…一本の線にする。その姿は真上から見ると、鉛筆の様である…
カキカキ…
それを使って、空間に文字を書くゲルドI…
[バカを騙して金儲け]
ゲルドI曰く…この後、パワハラ揉み消しアイドル女優とか、詐欺万博とか、ワクチン人類殲滅計画とかを、追々裁く予定だそうです…
とりあえずは、一旦 THE・END
この物語は、フィクションです…実在の人物・団体とは、一切関係ありません
ロックンロールは、死なないだって?そんなモン、とっくの昔にくたばっちまってるよ…