緩やかな死

生活の匂いがきつい詩は読めない
おれは生活を嫌悪しているから
他人について思い煩うばかりの詩も読めない
おれは他人と解り合おうなどとは思わないから
登場人物が一人だけの小説を探しているのに
今のところ見つかった覚えがない なぜ
皆そんなに 他人に関心が持てるのだろう
人間の悲劇は 他人と解り合いたいという
思い上がりから始まるというのに
人と会わないと優しくなれない
そう教えてくれた人がかつていた
それを呪いのように心に刻んで
祈りのように人と会い続けていた
そもそも自分より他人を優先することが
破滅的自傷であることに思い至らなかった
生活も 自分も 他人も 祈りも 優しさも
みんなどうでもいい おれは緩やかに死ぬ

緩やかな死

緩やかな死

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-12-26

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