境界の終り

自分 そんなものはない
それは持とうとした先から 立ち消えてゆく幻
それは入ろうとした先から 崩れ落ちてゆく城
私に安寧の地などありはしない ましてや
安寧の言葉など みな瞞しにすぎない
あらゆる境界を撤廃すること そこにしか
語り 聞き入れる価値のあるものはない
他人は自分 いや 他人こそ自分なのだ
そう言い聞かせるがいい 全世界が自分だと
そしてすべてを自分事として受け止めるがいい
そして際限なく苦しむのだ あらゆる責苦を
その身に引き受けるのだ 他人なき自分?
そんなものはない それは世迷言にすぎない
他人の海を泳ぐことでしか 自分というものに
出逢うことはない いくら孤立を装おうと
おまえが他人の目の中にいることは変わらない
思索するとは 自他境界を失うこと
すべてを自分事として考えること

境界の終り

境界の終り

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-12-26

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