詩
糸
あなたと私は結ばれている
つないでいる糸は悪意なのか嫉妬なのか
わからないけれどつながっている
あいにくほどけそうにありません
あなたの方でなんとかしてください
こんな糸でも切れるときっと寂しい
人と人をつなぐ糸はつたなくてか細い
苦しみをのせて糸が絡まっていく
糸はまわり世界をめぐる
DM
思いとどまってくれるだろうか
それともよけいなお世話だろうか
私はよけいに苦しめているだけだろうか
それでも声をかけずにはいられない
結局は自分が送りたいだけ
自分が一方的に言葉を届けたいだけ
多分それでいいのだろう
結局他人の苦しみはわからない
自分が苦しめたと思うのも傲慢なのだ
自分で勝手に背負い込んで
自分で勝手に陶酔している
真実なんて
詩は嘘っぽい
詩の世界には入れない
私は真実から疎外された
比喩の蕩尽の果てに
形骸化した骸が真実なのだ
真実なんて・・
時を重ねるにつれて
事実が折檻した時代がやってきた
事実と有効性に浸食されていく
哲学と科学は分断され
芸術と技術は分断され
真実と事実は分断される
外側の世界が遠ざかっていく
感覚と外界の関係が困難になっていく
最後の自然
生来背負わされたものがあるのだろうか
海を眺めていても何も答えてくれません
水平線の彼方に何か見えるか
生まれつき荷重があるらしい
内側に抱えた世界は遠大すぎる
あまりに内側の問題が複雑なので
見通しがきかず難解なので
外の世界を内に取り込もうとする
そうして文化も文明も豊饒になっていった
生の自然がなくなっていく
もう海くらいしかないのかもしれない
再び素直に
自分に素直になりたい
それだけだった
それができなかった
他人の評価を気にしながら自己を摩耗していた
自己をのぞくと空洞がある
誰にも心を許してこなかったことがわかる
自己の核はずっとあるのに知らないふりをする
それでもあっちの方にはいきたくないのだ
否定を拠点として立つこと
素直になるために生きている
透き通った自己を手に入れたい
それでもあっちの方は違うと思うのだ
また散歩
散歩するとどこにでも雑草があるのがわかります
今まで気にもとめなかった場所に花が咲いたりしています
葉は朽ちて裸になった枝を木はさらしています
そういうものを眺めているだけでも
あなたが生きている証拠です
結局他人の痛みはわからない
人の痛みを知ろうとすることは傲慢なのかもしれない
想像と未来
人間の内的世界が変わっていく
そういう未来はほとんど描かれない
内的世界が固定されていて外側が変わる未来ばかりだ
未来も結局は想像力の賜物だから
未来も過去も内的世界におさまるものだから
内的世界が変わる未来を描こうとしたら
未来そのものが瓦解してしまう
わけがわからなくなってしまう
枯渇
乾いた状態で無理に絞り出す
なんでもいいから言葉にしようとする
もう何もないのに
比喩は枯れ果てた
だから外の世界も知らない
感覚はほとんど無用になった
ずっと内側に引きこもる
二十世紀初頭からずっとそうだ
現代芸術展みたいな都市社会
みんな虫になれてよかったね
虫で無私なんてだじゃれみたいだ
枯渇2
誰にも相手にされなかった
たまに相手にされたら嘲笑だった
相手にしてほしいという思いはあるけれど
独りでいたいという思いも強くあった
都合が良くて自分勝手
だから人が離れていく
観念の力がこもった勢いのある詩
そういうものは自分には書けない
干からびた心が言葉をならべているだけ
袈裟まで憎い
すべてが無駄とか
なにも価値がないとか
空虚だとか虚無だとか
絶望がどうのとか
人生は苦に満ちているとか
死ねば終わりとか
変わらないものはないとか
全部貴族の戯言じゃないか
土地に縛られて一生働き続けた人々
後世に残す言葉を持たなかった人々
こみあげる虚無と焦燥にフタをして
なんとか希望を見出そうとした人々
詩