幽霊塔のみなしごたち

「あなたを救いにきましたー。」
1940年。ヨーロッパは地中海に面したとある国。
人類生物学者のカルマの前にやって来た、謎の女。
「私はあなた方の全てを知っています。」
カルマに立ちはだかる、過去の因縁、そして国家の秘密―。
これは、死への最期の逃避行の物語。

第一話

「水の底には、都があるんだよ。」
びゅうびゅうと冷たい風が吹きつけ、倒れそうになる僕を振り向きもせずに母は言った。
でも僕は思った。
誰に向かって言ってるの?
「そこでは毎日パーティが開かれていて、辛いこととか痛いこととかが一切ないんだよ。」
母の僕の手首を握る力がもっと強くなった。僕はびくりと体を震わせる。
ふと夜空を見上げた。今日は満月だった。
そういえば、本で読んだことがある。満月になると一部の人は気が狂ってしまうらしい。
でも今日の母はやけに冷静だ。まるで何かを悟ったように。
なんだ。あの話は嘘だったんだ。
「カルマ君」
「何?」
母がくるりと僕のほうへ振り向いた。やっと僕に話しかけてくれたように思えた。
「あのね…今までごめんね。」
なんで?なんで謝るの?
「産んじゃってごめんね」
明るすぎる月光の逆光で顔はよく見えなかったけど、泣いていた。
どうして気づかなかったんだろう。いつもなら、遠くにいてても気づくのに。
初めての外出に浮かれていた。
ごめんなさいって言うべきなのはこっちだ。
僕が勝手に思考を巡らせているうちに、母ははっとした顔をして、いつものように思いつめた顔をして、
「ごめんね、やっぱり私、最低の母親だね、、、」
もう謝らないで。初めての外出なのに、なんでそんなことを言うの。
ふと気づくと、僕たちは陸の隅っこに立っていた。なんていったっけ。
思い出した。
崖だ。
母はどこから持ってきたのか、古いロープで僕の右手首と自分の左手首をきつく、きつく結んだ。
「もし、来世があるのなら、」
「どうか、この子を幸せにしてください。神様。」
母はひどく、悲しそうな、でも嬉しそうな顔をした。

幽霊塔のみなしごたち

はじめての連載作。
拙い文章ですが、どうぞ読んでってください。

幽霊塔のみなしごたち

#親子愛 #ちょいホラー #魔性の女 #グロめの描写あり。

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • サスペンス
  • 時代・歴史
  • 青年向け
更新日
登録日
2025-12-23

CC BY-NC-ND
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