zokuダチ エスカレート編・28

逆襲のクズ男・後編

その後……、馬鹿トリオはあっという間に退散し、
マンションは取りあえず一旦は落ち着きを取り戻した。
……かの様に見えたが水面下では……。
 
 
「……失敗しただと?」
 
「のねー!でも、ぼくらは奴らをちゃんと困らせて偉いのねー!」
 
「なのねー!」
 
「ねー!」
 
「はあ、やっぱり出来損ないは出来損ないだな、
お前らなんかに任せるんじゃなかったよ、事前に
前金で払った金は返して貰うからな……」
 
「いやなのねー!」
 
「……何だと!?」
 
「この金はぼくらが貰った金ねー!もう返さないのねー!」
 
「のねー!」
 
「のねー!」
 
カネネーノネー馬鹿兄弟はその場をぴょんぴょん
跳ねて回る。心なしか、大事を小馬鹿にしている
様でもあった。
 
「くそっ!ふざけるなよ!ボクを馬鹿にすると
どうなるか分かってるんだろうな!」
 
「分かんないのねー!ただ、オメーには金をたんまり
貰って世話になったからこれをプレゼントするのねー!!」
 
カシラが光線銃の様な物を取り出し、大事に
向けて発射する。……喰らった大事はそのまま
ばったりと地面に倒れた。
 
「お、お前ら!……ボクに一体なにを……、うう……」
 
「キャー!この糞ボン、倒れちゃったのねー!アニキー!」
 
「どうするのねー!?」
 
「心配ないのね、この銃はこいつのやる気スイッチの
ツボを押す銃なのねー!」
 
「アニキー、さっぱり分からんのねー!」
 
「ねー!」
 
「見てれば分るのねー、てめえの欲しいモンぐらい、
てめえで奪って来い、つう事ねー!さあ、ぼくらは
この大金で、たんまり年末遊びまくるのねー!
巨乳姉ちゃんとぱーいのぱいのぱいぱいぱいなのね!」
 
「アニキがそう言うならいいのねー!ぼくらは知らんのねー!」
 
「なのねー!」
 
馬鹿兄弟は倒れている大事をほっぽっておいて自分達は
何処かに行ってしまう。そして。
 
 
「そうだったんだ、また随分大変だったんだね……」
 
「大変って、アル、そんな他人事みたいに……」
 
ジャミルの部屋で寛ぐいつものメンバー、ダウドは
アルベルトの態度に少々困惑気味だった。
 
「けど、昨夜シフがおめえの部屋に行ってもいねえって
心配してたけどよ……」
 
……あれだけ騒いでいたにも関わらず、他の1階の
住人は恐らく皆爆睡状態で2階、3階の階の住人も
余計皆気づかず状態だったらしい。
 
「うん、図書館行ってたんだよ、昨夜は24時間
貸切の日だったんで、泊りがけでつい……」
 
「……あっそ」
 
深夜に図書館通いする天然坊。唯でさえ本が嫌いな
ジャミルは呆れる。
 
「何だか私、もう嫌になってきちゃった、皆にも
あんなに迷惑掛けちゃったし……、私の所為で……」
 
「……わわわ!アイシャっ、そんな落ち込まないでよおお!
アイシャが悪いんじゃないんだからっ!!」
 
「ぐす……」
 
「ええいっ!くそっ!!」
 
「ジャ、ジャミルまで、どうしたのさ、落ち着きなよお!」
 
「あれだけ危険物を近づけさせんなって言ったのにっ!
許せねえ!俺はもう一回糞親父の処に抗議に行ってくる……!!」
 
「ジャミル、……ナンダカンダ家に行くんだね?僕も行くよ、
ストーカーは許せないよ、アイシャがこんなに脅えてるのに、
断固抗議すべきだよ!」
 
「当たり前だっ!……畜生……、ふざけやがって……」
 
大事もだが正確に言うと、危険物はどちらかといえば、
カネネーノネー3兄弟の方である。
 
「まあこうなるよね、じゃあオイラも行くよ……」
 
「わ、私も行く……」
 
「……アイシャ……」
 
「駄目だっ!お前は此処で待ってろ!」
 
ジャミルがそう言うが、アイシャはおずおずと
ジャミルの顔を見る。
 
「皆と一緒にいた方がいいの、お願い……」
 
どっちみち、気持ちが不安定になっているアイシャを
残しておくのもジャミルは嫌だった。ので、しっかり
目を離さず3人で護衛をし、アイシャも連れて行く事に
したのであった。
 
4人は元異世界の街を抜け、土手付近まで差し掛かる。
ナンダカンダ家まで通うのに何回も通った道、無我夢中で
ゲスを集団で下の河原に叩き落とした場所……。
 
「……お前達、何処へ行くんだい?……もう屋敷には
近づくなとボクのおじさんに言われただろう……?」
 
「大事……」
 
派手なピンク色のスーツにバラの花、立ち塞がる
馬鹿大事の登場であった。
 
「良く言うぜ!てめえこそもうマンションには
近づくなって言ってあるのによ!ふざけんじゃねえぞ!」
 
「ふん、ふざけてなどないよ、ボクは彼女が欲しい、
それだけだよ、あのボロ小屋には近づきたくないが、
彼女には近づくんだよ、それが悪いかい……?」
 
「……うわ!言ってる事無茶苦茶だよおー!」
 
「これが奴なんだよ、もうクソ馬鹿で手に負えねえんだよ……」
 
アイシャが後ずさりし、ジャミル達はアイシャを後ろ手に隠す。
大事はそんなアイシャの様子を覗いながらちらりと流し目を送った。
 
「そんな時代遅れの屁臭いイモ欽トリオみたいな奴らよりも
ボクと一緒にいた方が絶対楽しいよ、アイシャさん……、
さあおいで……」
 
「なっ!?……イ……、イモ欽だとお!?」
 
「大事さん、いい加減にしてっ!!私はあんたなんかと一緒に
いる気はありませんたらっ!!」
 
「アイシャ、前に出ちゃ駄目だ!」
 
アルベルトが慌ててアイシャを後ろに又押しこくろうとした。
見ていた大事は……。
 
「それで庇っているつもりかい?彼女をさ、フフフ、悪いけど、
今日は今までのボクじゃない、彼女を奪うため為なら、ボクは
何だってするのさ!」
 
「こいつ……、まーた歯を折られてえ様だな……、今度は
前歯がいいか!?」
 
「ジャミル、ちょっと待って!」
 
「……んだよ、アル!お前まさか止めんじゃねえだろうな!?」
 
大事に制裁を加えようとしたジャミルの手をアルベルトが
一旦止めた……。
 
「目つきがおかしいよ、普通の目の色じゃない……」
 
「あ……?本当だ、まさか、こいつも何かの魔術に
掛かってんじゃねえだろうな、おい……」
 
アルベルトに言われ、大事の顔をよく見ると、確かに
表情が虚ろで目の色も死んだ魚の様な腐った目つきを
している……。
 
「き、気をつけた方がいいよお!」
 
「まあ、おかしいのは確かだな、元からだけどな……」
 
「ふふ、ボクはね、自分自身の絶対的な力に目覚めたのさ、
欲しい物は力づくで奪い取り、邪魔な物は排除するっ!!」
 
「う、うわーー!?」
 
「……きゃあああーーーっ!!」
 
大事が着ていたスーツと下着をいきなり脱ぎ出し、
……全裸になる……。そして持っていたバラの花を
アイシャの方に向けるといつも通りくるっと回転した。
 
「ボクはもう覚悟を決めたんだ、アイシャさん!ボクは
愛の為なら恥も何もかも捨てられる!だから君もボクの
元に飛び込んでおいでっ!……さあっ!!激しく起動っ!!」
 
「……いやああーーっ!!」
 
「見るな、アイシャっ!えーい、これじゃ屋敷なんか
行けねえや!中止だ!やっぱり他の仲間にも応援を頼んで
作戦を練ろう、アル、ダウド、お前ら先にアイシャを連れて
帰っててくれ!……俺はこいつを一発殴ってから戻るからよ!!」
 
「わ、分った!……まさかこれ程までとは……、さあアイシャ、
直ぐに帰ろう!」
 
「ンモー!折角来たのにー!な、なんなのさ、これ……」
 
「ひっく、ひっく……」
 
……危険スイッチのツボを押され、暴走変態凶器と化した大事を
ジャミルは止められるのか、果たして……。

「さあ、掛かっておいでよ……」
 
大事は全裸のままジャミルに向かってじりじり迫って来る。
いつもと全く違う雰囲気と感じ、その狂気じみた目に
ジャミルも戸惑いつつあったが目を見据えて大事を
強く睨み返した。
 
「喰らえーっ!綺麗なバラには棘がある攻撃っ!!
ほほほ!ほーほほほ!」
 
大事は持っていたバラでぐさぐさとジャミルの身体を
何回も突き刺す。……単純攻撃だが、流石のジャミルも
これにはダメージを受けている様であり殴るどころか
反撃も出来ず……。
 
「ぐさぐさっ!ぐーさぐさっ!」
 
「……ジャミルっ!!」
 
「アルっ!俺は平気だっ、……は、早くアイシャを
連れて逃げろっ!こんなモン、う……」
 
ジャミルが刺された箇所を抑えて呻き出した……。
 
「何が平気なのかなー?このバラ、しびれ毒のある
バラなんだけど!」
 
「……いやーっ!!ジャミルーーっ!!」
 
「アイシャっ!駄目だっ、落ち着いてっ!!」
 
ジャミルの元に戻りたがるアイシャをアルベルトと
ダウドが必死に抑える。
 
「そうだよ、アイシャ、アンタが抵抗しなけりゃ最初から
こんな事にはならなかったんだよ、全てアンタが悪いのサ、
あーあ、かわいちょかわいちょ!!」
 
「……わ、私の所為……?」
 
「何言ってんだよお!この変態っ!!」
 
ダウドも珍しく切れる。大事はうっとおしそうに
ダウドの方を見た。
 
「うるさいなあ、……よーし、次はお前らの番だ!……ん?」
 
「……てめえ、ふざけてんじゃねえぞ、いい加減に
しろっつんだよ、この野郎……」
 
ジャミルは何とか立ち上がると、胸を抑えながら震える手で
大事の肩を強く掴んだ。
 
「ほーほほほほ!しつこいバカ猿だねえーっ!大回転攻撃!!」
 
大事はくるくる回転しながらジャミルをおっ飛ばし、
ジャミルは再び地面に倒れた。ジャミルを片付けた
大事は次はアルベルトとダウドの前に……。
 
「お前達もっ、邪魔だよっ!ボクの愛のシチュエーションを
邪魔するんじゃないっ!!……愛のバラ乱舞滅多刺しっ!!」
 
「アルっ!ダウドっ!」
 
「う……、早すぎだ……、よ、アイシャ……、逃げるんだ……」
 
「おしり刺されたよおお~……」
 
アルベルトもダウドもバラにやられ、等々アイシャだけに
なってしまう。大事は笑いながら全裸のままアイシャに
近寄って行くが、それでもアイシャは決して逃げようとせず、
アルベルトとダウドを必死に介護しようとする。
 
「来ないでっ!馬鹿馬鹿馬鹿っ!!……ごめんなさい、アル、
ダウド、……私の為に、ごめんなさい、……ジャミル……」
 
「……何言ってるんだよ、……どうしてアイシャが悪者に
ならなきゃいけないんだよ、全然関係ないよ、悪いのは……」
 
「アル……」
 
「おんやあ~、随分な言い方じゃないですか、このカプセル薬、
何だか分かります?」
 
「何よ……」
 
「血清ですよ、血清!欲しくないですか?これがあれば
こいつらの毒はすぐに消せますが?」
 
「分かってるわ、あなたの処に行けば、それを渡してくれるのね?」
 
「ご名答、さすがですね!」
 
「アイシャ!駄目だっ!……行くなっ!!」
 
アルベルトが必死でアイシャを止めようとするが、アイシャは
アルベルトに微笑むと頷いて大事の方に歩み寄って行った。
 
「やーっと、お付き合いしてくれる気になりましたか?
あなたもしぶとかったですねー!」
 
「その前にやる事があるでしょ、ジャミル達にちゃんと
血清を使って!」
 
「はい、でもね、……やる事はボクの方が先なんですよおおーーっ!!」
 
「え……?……きゃあああーーっ!!」
 
「アイシャっ!!……うっ、身体がっ、くそっ!
!……ジャミルっ、は、早く……、……このままじゃ
間に合わない……!!」
 
大事はアイシャを押し倒すと性欲反応むき出しで
馬乗りになり、アイシャの身体を強く抑え付けた。
 
「……ハアハア、……下さい、あなたのバージン、……頂きます、
ハアハア、じゅるる……」
 
(……もう駄目……、ジャミル……)
 
アイシャの目から涙が一滴零れる。……次の瞬間、
大事は宙を舞い、そのまま土手から転がり落ちた……。
どうにかジャミルが根性で立ち上がり、大事を
ブン殴ったのであった。
 
「ま、間に合った……」
 
「……ジャミルーーっ!!」
 
アイシャは安心したのかジャミルに飛びついて大泣きする……。
 
「ジャミル、それを……、血清だよ、あいつが落としていった……」
 
アルベルトが指差した地面を見ると、ジャミルに殴られた
際に大事が手放した血清がすぐ側に転がっていた。
ジャミルは急いで血清を使うと自分達の毒をすぐに消毒した。
 
「はあー、……もうどうなる事かと思ったよお……」
 
「ダウドお前、刺された個所も間抜けだな、ケツかよ……」
 
「うるさいなあ!こっちは大変だったんだからねっ!!」
 
「ごめんなさい、ごめんなさい……、私、私……」
 
「だから、アイシャの所為じゃないったらっ!,もう~、
泣かないでよおー!」
 
「そうだよ、アイシャ、ジャミル、もうすぐに此処を離れよう、
冗談じゃないよ、本当にどうかしてるよ……」
 
「うううー……」
 
しかし、土手から何かが這い上がって来る。相変わらず
全裸の大事であった。もうなりふり構わず、ホラー映画の
怪人その物である……。
 
「殺してやる、……ボクに恥をかかせたお前ら皆殺にしてやる……」
 
 
……大事ーー!!
 
……坊ちゃまーー、皆さーーん!!
 
 
遠くから聞き覚えのある声がした……。
 
 
「おっさん……?庭師のじいさんに、それにケイか……?」
 
「お、おじさん……?」
 
此方に向かって走って来るのはナンダカンダ家の皆さんに
間違いはなかった。
 
「はあ、漸く見つけました、ぼ、坊ちゃまが、一週間も
お屋敷にお姿を見せず……、旦那様もわしも心配して
おりましたぞ……、本当にご無事で良かった……」
 
「フン!そんな事どうでもいいんだよ!ボクは間も無く
棺桶寸前の死にぞこないの老い耄れウンコ爺に心配される
筋合いはないよ!!」
 
「あ、あっ、あっ……」
 
大事は心配する庭師を跳ね除け、……全裸のまま領主の処へと走る。
突き飛ばされ転びそうになった庭師を慌ててジャミルが支えた。
 
「爺さん、大丈夫か!?」
 
「はい、……坊ちゃまがご無事だったのですから本当に
良かったですわい……」
 
「大事っ!……てめえ、どこまで腐ってんだよっ!爺さんが
どれだけ心配したか分ってんのかっ!?これだけ酷え態度
取られてもそれでもテメエの事、こんなに心配してんじゃねえか!!」
 
「いいんです、ジャミルさん……」
 
「良くねえってのっ!!」
 
アルベルトとダウドも相当の呆れた目で大事を見ている。
もうクズ過ぎで、2人もこれ以上言葉の掛け様がない様である。
 
「あーん、おじさーん!そいつらが又ボクをいじめたんだあーーっ!
……ボクの邪魔をするんだよーーっ!おじさあーん、……奴らに
仕返ししてえーーっ!!」
 
「……大事……」
 
「おじさあ~ん……」
 
領主はジャミル達と全裸の大事を交互に見比べ、大事に
近寄って行く。そして……。
 
「あ、あっ……?……おっさん……」
 
「……おじ……さん……?」
 
「旦那様……?」
 
領主は無言で大事の右頬を拳で思い切り殴り飛ばしたのであった。
殴られた大事は何が何だか分からずきょとんして腫れた頬を抑えた。
腐っていた目玉も殴られた瞬間に元に戻った様であった。
 
「情けない……、帰ったらすぐに服を着なさい、あれ程もう、
こいつらとは係るなと言っておいた筈なのに……、来なさい、
帰るぞ……」
 
「は、はい……、おじさん……」
 
「!ちょ、ちょっと待ってよお!それだけなの!?
幾ら何でも酷いよお!アイシャがどれだけそいつに
酷い事されたか、お、おじさんは分かってんの!?」
 
これまた珍しくダウドが強い口調で屋敷へと帰ろうとする
領主達を咎める。ジャミル達も黙って領主を睨む。それだけ
皆の怒りは頂点に達していたのであった。
 
「近い内に大事は又、遠くの街で暮らさせる、それで
いいんだろう?君達も本当にもう二度と、私達に
構わないでくれたまえ、……大事もいいな?」
 
「……おじさん……、はい……」
 
……何の謝罪もせず、領主と甥はそのまま退散し、
屋敷に帰って行く。流石のジャミルも疲れてしまい、
もうこれ以上何も言う気が起きなかった。それよりも、
一刻も早くマンションに帰ってアイシャの心のケアを
してやりたかったのである。その場には庭師とさっきから
無言のケイだけが取り残された……。

「本当に申し訳ございません、皆さん……、ですが、本当は
旦那様も皆さんに心から申し訳なく思っており、謝罪の
気持ちでいっぱいなのです、儂が旦那様に代わって
お詫び致しますです、……本当に、本当に……、嫌、本当は
こんな事では許されない事は承知なのですが儂にも一体
どうお詫びしたらよいのか……」
 
「い、いや……、爺さんは何も悪くねえんだから、
……アイシャも無事だったんだし、俺らは本当に
平気だから……」
 
その場にしゃがみ込んで手を付き土下座をし始めた
庭師をジャミルが慌てて止めた……。
 
「ですが……、儂は……」
 
「それよりも、早く屋敷に戻った方がいい、じゃねえと、
又あの大事がなんか爺さんに嫌がらせするかもだからな、
大丈夫だよ、俺らは本当に平気だ……」
 
「申し訳ありません、……皆さま……、儂は皆さんが
大好きです、本当ですよ……、もうお会い出来なくても、
何時までも、これからも、みんなみんな、儂の可愛い
大事な孫ですよ……」
 
「爺さん……、ありがとな……」
 
ジャミル達と庭師は硬く握手を交わし、庭師は屋敷へと
戻って行った……。
 
「……ジャミル、皆……」
 
「ケイ……」
 
そして、さっきから終始無言であったケイも口を開いた。
大切なな話がある様子だった。
 
「あたしもさ、これで皆とさよならだよ、春から等々全寮制の
学校に入る事にしたんだ……」
 
「……ケイ、マジでか?お前、本当にそれでいいのかよ……」
 
「ケイちゃん……」
 
「い、嫌なら嫌だってはっきり言った方がいいよお!」
 
「そうだよ、はっきり君の意志を尊重すべきだよ!」
 
「ううん、あたしが考えて決めた事だよ、自分の将来の
為にさ、だからいいんだ、エロ糞親父……、おっさんが
どうのこうのじゃなくてね」
 
ケイはジャミル達の方を見て悪戯っぽく微笑む。
その顔は本当にもう心から迷いの無い笑顔だった。
 
「そうか、なら、俺ももう何も言わねえよ、お前が
決めた事ならな、……元気で頑張れよ……」
 
「うん、凄く遠くだし、一旦入ったら数年は出て来れないから……、
もう本当に会えなくなるけど……、それでも皆と会えた事、あたし、
忘れないよ……、ずっとね……」
 
「……ケイちゃん、私、お手紙書くわ、絶対……」
 
「アイシャも有難う、チビに宜しくね!へへ!
……ヘタレもアルベルトも元気で……」
 
「ケイちゃん、君もね……、身体には気を付けて……」
 
「オイラヘタレじゃないですよお~、……ダウドだよお~、もう……」
 
「あはは!本当にヘタレは構うと面白いや!あははっ!」
 
「ぐす、……何だよお~……」
 
こうして、ジャミル達はケイとも別れを告げ、完全に
ナンダカンダ家とはもうこれで交流を切ったのであった……。
 
それから、数日後……。
 
 
「はい、これ……」
 
「ん?何だい?イモかい?」
 
「……何でお芋なのっ!!もうっ、いいからっ、早く箱開けてっ!!」
 
「ぴきゅ~?」
 
クリスマスイブの日、ジャミルとアイシャはチビを挟んで、
マンションの屋上のベンチに座っていた。アイシャももう
すっかり元気を取り戻していた。
 
「……ケーキ……?」
 
「きゅっぴー!」
 
「うん、手作りなの、って言っても、カステラに
生クリームと苺乗せただけだけど……」
 
「そうか、なら安心して食えるなあ!」
 
「……ジャミルのバカっ!!」
 
「冗談だよ、んなに怒るなよ、オメーは菓子作りは案外
上手いからな、たまにだけど……」
 
「もうっ!……でもね、このケーキはチビちゃんのお誕生の
お祝いも兼ねてるのよ、最近、チビちゃんお仕事で忙しくて
全然会えなかったから、だから大分遅くなっちゃって
クリスマスと重なっちゃったけどね、チビちゃん、お誕生日
おめでとう!」
 
「きゅぴ?これ、チビのお誕生日のケーキなの?クリスマスと一緒?」
 
「そうよー!11月はチビちゃんのお誕生日月だったもの、
でも、色々あって、中々お祝いしてあげられなかったし……」
 
「そうか、もうそんなに立つか……、まあ俺らは都合上、
歳食わねえけどな、良かったな、チビ!」
 
「きゅっぴー!チビ、うれしいよお!ありがとう、ジャミルー、
アイシャー!!2人とも大好きー!きゅぴー!」

「♪へへっ!」

「♪うふふっ!」
 
チビは幸せそうにジャミルとアイシャにスリスリする。
しっかりと、大好きな二人の手を握り締めて。
 
 
「はー!ジャミルもアイシャもいた!もうーっ!クリスマス
パーティはじま……、もごもご……」
 
「はーちゃんっ!……駄目だよっ!!しっ!」
 
「もう少し、二人っきりにさせておいてあげましょ、何てったって、
今日は皆が幸せになれる日、クリスマスイブなんだから……」
 
「モフー!」
 
「はー、しょうがないなあ、でも、すっごく幸せそうだね!
二人とも!ふふっ!」
 
クリスマスイブの日、今日はマンション内の住人強制全員
参加で夜からパーティルームにて無礼講のクリスマスパーティ
開催である。時間近くになっても現れないジャミルとアイシャを
心配して魔法ガールズ達が探しに来たのであった。幸せそうな
二人の姿を見届けると、魔法ガールズ達は安心してその場を離れる。
 
 
「……ねえ、ジャミル、今年も色々あったけど、来年も皆が幸せで
楽しく暮らせる一年になるといいね……」
 
「そうだな……」
 
「きゅっぴ!」
 
 
……ぷうう~……
 
 
「……」
 
「わ、悪い、俺、どうしてもこういうの苦手でよ……、
あは、あは、あはは……」
 
「……ジャミルのバカーーっ!!」
 
 
そして、幸せな雰囲気とは裏腹に……。
 
「はあ、何がクリスマスだよ、どうせボクはずっと一人だよ、
誰もボクの気持ちなんか分かってくれやしない……、例え
おじさんだってね、そうさ……、おじさんは本当はボクの事が
邪魔なんだ、だから……」
 
……又屋敷を出され、一人で遠くの街へと向かう大事は、
途中で車を止め、真っ暗な車内で一人、孤独地獄に
陥っていた……。
 
「皆……、滅びてしまえ、何もかも……」
 
 
……くすっ、そうなったらあなたは満足するのかしら……?
 
 
「……だ、誰だっ!?」
 
大事以外、誰もいない筈の車の中に静かな声が響き渡った……。
 
 
……ねえ、外に出て、私、あなたとお話がしたいわ……
 
 
「ふざけやがって!……誰なんだっ!?」
 
大事は慌てて車から外に出る。其処で待っていたのは……。
 
「うふふ、初めまして、私は……」
 
「お前は……?だから、だ、誰なんだよっ!?」
 
「そうねえ、私はあなたのおじさんと、昔とても仲が良かったの、
……でもね、ある日を境にお付き合いを止められてしまったのよ……」
 
「お、おじさんの知り合い……?だと……?」
 
「私なら、あなたの苦しみも痛みも分かってあげられるわ、
保障する、最近、眠りから漸く目覚めたのよ、やるべき事の
お仕事の為にね……」
 
「あ、あああ……」
 
……突如現れた怪しい女は大事に近寄るとほっぺたを掴み、
ゆっくりと口づけをする。
 
「どう?気持ちよくなれたかしら……?」
 
「……不思議な気分だよ、どうしてなんだろう、何もかも
もう許せない気分だったけど、アンタだけは違う……、本当に
見ていると何だか不思議な気分だ……」
 
「うふふ、なら、私と組みましょう、……ねえ、大事さん、
あなたも奴らに復讐したいんでしょう……?」
 
「……奴ら……、とは……?」
 
「決まっているでしょう、うふふ、あなたもよーく知っている連中、
そう、勿論私もね……」
 
「……アンタ、本当におじさんの知り合いなんだな?……名前は……?」
 
 
「……そうね、私の名前は……」

zokuダチ エスカレート編・28

zokuダチ エスカレート編・28

SFC版ロマサガ1 トモダチコレクション キャプテン まほプリ ロマサガ3 FF9 わんぷり FF8 コードネームはセーラーV クレしん メタルギアソリッド クロスオーバー バカ どんどん増える変な住人 カオスな世界 ドラクエ オリキャラ 陰からマモル 幻想水滸伝ティアクライス 幻想水滸伝1 テイルズオブハーツ

  • 小説
  • 短編
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-12-21

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

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