詩終 101 (旅路)


きっとほんとは
さいしょからそのへんにあるのに
ずっとあっちまでいって
ああ違かったと引き返して
こっちに戻るときに
そのへんにあったものを
やっと見出す
さいしょからあったものに
長い時間をかけて

色んな形をした
こんな繰り返し
やってるうちにオトナになってしまう
でもまあ、
どんなに目立ってそこにあっても
見えなかったのかもしれないね
人の目でものを見ることはできない

目と見えるものの間に
無数の層が増える、増えてゆく
多重露光
純粋な目には
それは見えなかった
見える日には
見えないものが見えなかった

近道が
どこにもなかった
遠回りのように見える歩みも
それは紛れもない
ただ道だった

時を経て
経て、終わりの時
古びたこの足が
たとえはじまりの地を
踏んでいたとしても
意味はあるだろう
見てきた旅路
ただひとつの目
わたしの理由

目を閉じるその時まで

詩終 101 (旅路)

詩終 101 (旅路)

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-12-16

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