ハイリ ハイリホ(33)(34)

一―十七 パパ・二―十七 僕

一―十七 パパ

 ありがとう、竜介。いつも的確な質問をしてくれて。だが、理由は、こちらが知りたい。収縮ホルモンは、収縮の名の癖に、ホルモンの放出をやめようとしない。俺の背は、見る見るのうちに(残念ながら、自分では、自分の姿は見えない。唯一の証言者は、竜介のみだ)、竜介の肩まで、お腹まで、そして、膝までの高さに縮んでしまった。
 これ以上、小さくなると、俺の命が危なくなる。竜介に踏まれてしまうか、はてまた、ゴキブリと格闘するか、働きアリの餌食になってしまうかだ。先程追い出したネズミに、仕返しとして、襲撃を受けたらどうなることか。巨大な扇風機になるような肺はない。立ち向かうことは不可能だ。つまり、死あるのみか。そうなれば、収縮ホルモンも放出をあきらめるだろう、なんだか、さっき成長ホルモンについて考えたことと同じだ。俺は、俺自身のからだに弄ばれている。

二―十七 僕

 パパの手を握り締める。手のひらは柔らかい。でも、パパの本当の手は、ごつごつし、関節が節くれだち、僕より一回りも大きく分厚い。長い間生きてきた証拠のように血管が浮き出て、僕や家族を守るために、日光にさらしすぎて真っ黒になっている。この手と共に僕は歩んできたんだ。これからは、僕が導くよ。
「パパ、パパ、今、どこにいるの」

ハイリ ハイリホ(33)(34)

ハイリ ハイリホ(33)(34)

パパと僕の言葉を交わさない会話の物語。一―十六 パパ・二―十六 僕

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-02-02

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