『祈りが届く場所にいない』

マンダリンガーネットが
照らしてくれるから大丈夫


『祈りが届く場所にいない』


光に背を向けたつもりはなくて
生まれた場所がたまたまここだっただけ
華やかなライトの裏で今日も女が泣く
割れたガラスは元に戻らないと知りながら

安物のワインと広いだけのベッド
それだけを持ち物に生きていれば
涙も演出のようなものと
割り切ってしまえればいいのに

金色の巻き毛を指で弄びながら
あの人が愛してるって言ったのと
薔薇色に輝くあの子の頬にも
いつか雨は降ってしまうから

初めから諦めていれば楽なのに
どこかで希望を捨てられないのは
愛とか夢とか語る誰かの歌の所為
傷つきやすい胸にまた棘が食い込む

柔い心臓が軋んでも恋と愛を売り
手に入らないものに焦がれ続ける
上手い言葉に乗せられて
身を切るのは弱い女ばかり

フェイクファーだけ身に纏い
アタシは夜を渡り歩く
ひとつの場所に固執はしない
涙を真珠に変える錬金術を知ってるの

秘密を打ち明けるみたいに
誰にでも見せる微笑に値札を付けて
価値のない物でも買い手が居るなら
アタシは何でも売ってみせる



「愛より祈りより、涙を繋げたネックレスが欲しい」

『祈りが届く場所にいない』

『祈りが届く場所にいない』

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-12-13

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted