真空の比喩 58

『風船は
 遠くを知っている』

風船は
不自由に自由に
浮かんでいる
少年は
風船を離さない

持っていても
空へ連れていってはくれない
のに
手を離せば風船だけが
遠くへいく
ことを分かっている

  「いつか少年は
   手を離すのかな」

どうだろうね
それは少年が決めることだろう


いつか
風船が
とんでいった
とき
少年は
どこにもいなかった

真空の比喩 58

真空の比喩 58

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-12-09

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted