真空の比喩 31

窓の向こうに
勝手に歩いていった彼を
眺めながら
まだ十分に残っているコーヒーを
飲みながら
彼をおもう

距離がある
窓辺の私と
歩いてゆく彼との間に
果てしない距離が

彼には血が
流れていない
顔が
ない
時が
流れていない

彼は存在しない
存在するのは私だけだった

真空の比喩 31

真空の比喩 31

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-12-09

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted