スタジオ

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スタジオで奏者を雇って、自分の作曲した音楽を演奏してもらう喜び。
日曜日の晴れた朝にオケのメンバーを呼んで、私の指揮で演奏してもらい音出しのチェックをする。
私が両腕を振ると、不思議な誰も聞いた事が無い調べがふわっと現れ魅惑の色彩が描かれていく。
あー音楽が立ち上がる神妙で静謐な楽想が現れ出る世界の深遠。
人間が創り出した究極の知性が注意深く語り掛ける親密な深遠。
私の手振りが表情豊かに溢れる本能でまろやかに演出する。
それにオケが柔軟性を持って応え彩り豊かにしていく。
感情が乗って爽快に流れて響きが晴れ渡る。
ここぞと強調したい箇所でぐぐっと力をこめて両腕を強く降ろすと、ばばーと物凄い咆哮が咲きほこる。
そして優しく小さく語り掛けると、表情を弱め音量が小さく切なく切れるくらいにしぼんでいく絶妙な美しさ。
人生の美しさがここに全て究まれり清らかな想いに心打たれる。
心がほどけて解放されるのを感じ、前方の明るく晴れ渡った未来を見つめる。
オケも心が共鳴しあい波長を優しくたゆたわせ静かに安らいでいく。
音楽を皆で共有し新しい世界が生まれる全く新鮮なときめき。
喜びに溢れ笑顔で皆が見つめ合う。
指揮者は良い演奏だと褒めた。
そしてここをこうして欲しいとか奏者に修正箇所を述べていく。
奏者はメモをして次の演奏に生かそうと書き留める。
素直に私の音楽観を受け止めてくれる。
コンサートマスターに妻のような親近感を抱いていく。
心が親密にわかり合う美しい時空で、指揮者はまた両腕を振りタクトで音楽をスタートする。
色とりどりの豊かな楽想がこすれ合いまろやかなコクを演出する。
より良くなった音響が立ち現れ肉声が充実し、メロディーが凛として主張し低音が重心を太く支える。
どんどんと新しい秘めた響きが飛び出し、作曲家も予想しない神妙で美しいモチーフが現れ感動する。
改良に改良を重ね、原石が磨き抜かれたダイヤモンドへと変わっていく。
輝き解き放つ音触の美しく清らかな奏者の才気溢れる溌剌な運指。
立ち上がる知性の究極の色彩に全てが快調になっていく。
全ての達成感の喜びが感無量でこみ上げる。
そしてオケは勢いをつけてクライマックスへと向けて凄絶な喜びを迎えて天上へと嬉しげに魂が飛び放っていく。
みんな笑顔で生まれたての赤ちゃんのような表情になっていく。
こんな感動にむせ返り、新作の出来に満足するのです。
さあ。世界よ待っていなさい。

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  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-11-29

Copyrighted
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