神椿市建設中。2
第一話 次元をかける傭兵
俺の名前は紅蓮彰人(ぐれんあきと)。
テセラクターを殲滅し、金を稼いで生活している傭兵だ。
今日は久々に依頼主から任務の命令が来た。
依頼主の名前は森先化歩(もりさきかふ)。
彼女とは長い付き合いだ。
おかげで食い扶持が無くなることはない。
化歩「来たか。戦友。今日は貴様に特別任務を与える。」
彰人「なんだ?今度はテセラクターの肉料理を持って来いなんて言うんじゃないだろうな?」
化歩「アホ抜かせ。貴様は神椿市、という都市を知っているか?」
彰人「知らないな。」
俺はガキの頃に親をテセラクターに喰われている。
それ以来テセラクターを殺す事しか興味がない。
化歩「テセラクターの発生源、と言ってしまったら不謹慎だろうが…。その神椿市には魔女の娘が存在しない世界線なんだ。」
彰人「分かりやすく説明しろ。」
化歩「そもそもテセラクターという存在は人間を食い殺す化け物じゃない。人間の負の感情から生まれる存在だった。色んな世界線のテセラクターが人間の肉を求めるに連れ、次元を超える能力を身に着けてしまった。ここからさっき説明した通り、魔女の娘が存在しなかった世界線の神椿市に大量のテセラクターが彷徨っていることが確認された。もしかしたらテセラクターを生みだす“核“があるかもしれない。それを調査して欲しい。」
彰人「嫌だね。命がいくつあっても足りない。」
化歩「軍はこの世界に発生するテセラクターの対策に追われている。もう貴様しか頼む奴がいないんだ。」
彰人「一人じゃ無理だ。」
化歩「テセラクターを専門とする傭兵はもう…貴様しか生き残ってないんだよ…。」
はぁ…。
彰人「どちらにせよ俺が動かなければ…俺がいる世界も喰い殺される事になるのか。にしても神椿市?やテセラクターの情報…なぜ早く伝えてくれなかった?」
化歩「伝えたかったから今日呼んだんだ。」
彰人「はぁ…。ため息しかでねえよ。クソが。分かった。やる。やるよ。」
化歩「ありがとう。出発は3日後だ。準備を怠るな。死ぬぞ。」
3日後。
彰人「次元転送装置の調子は?途中で止まって上半身だけ転送。下半身が引きちぎれるなんて事件二度と起こすなよ。俺の親友がその事件で一人くたばってるんだ。」
化歩「安心しろ。私が失敗することなんてない。」
転送装置の機械音が部屋中に響き渡り、空気中が痺れるような感覚。
いつまでたっても慣れないな。
化歩「転送する!」
彰人「…。ダイブ…!」
目をあけると俺はテセラクターに囲まれていた。
化歩の野郎…ドジ踏んだな…。
後ろから飛んでくる魚型のテセラクターを真っ二つに切り裂く。
彰人「テセラクターの数…186…いや、203体か。」
こんな数。
朝飯前のトレーニングにもならねえよ。
第二話 神椿観測者。異世界に転生す。
ボクの名前は帯野華月(おびのはつき)!
これでもれっきとした神椿スタジオのスタッフなんだ!
今日はKAMITSUBAKIFES!座席に座ってない!スタッフとして立ってる!
いや〜努力って報われるんだなぁ…。
イジメられて引きこもりしてたけど…。
神椿に出会えてよかった。
15歳で神椿のスタッフとして入って。
花譜(かふ)ちゃん達と顔合わせしてガチガチに緊張して…。
皆に可愛がられた結果…。
男の娘になってしまったけど…。
スキルを磨いて早3年!
18歳なったボクにもやっとライブでの仕事が出来るようになった!
頑張るぞ〜!
ライブ開始時間。
にしても生配信用のカメラ操作も任されるなんてね〜。
グヘヘ。
可愛いいとカッコいいがつまってるライブですな…。
ニヤニヤしていた束の間だった。
グラッ…っとドーム全体が揺れ始めた。
突然の大きな地震と停電により、観測者の皆が悲鳴をあげる。
花譜ちゃんが映っていたモニターも消えてしまった。
華月「皆様!落ち着いて!揺れがおさまったら外に出ましょう!」
大きな声で叫ぶが、皆の悲鳴でかき消される。
蚊のような声にしか聞こえてないんだ。
そこで聞こえてきたのは春猿火(はるさるひ)ちゃんの声だった。
あ!拡声器持ってるんだ!
春猿火「皆〜大丈夫だから!落ち着いて!避難しようね〜!」
た、助かった…あっちは大丈夫そうだね。
なんとか全員をドームに出した。
つ、疲れた…。
にしてもボクのスタッフとしてのデビュー戦が…。
華月「さ、叫び過ぎて喉が…」
ヰ世界情緒「飴舐める?」と飴玉をくれたのはヰ世界情緒(いせかいじょうちょ)ちゃんだった。
華月「ありがと〜情緒ちゃん!」
情緒「あはは!声がHIKAKINさんみたいになってる!」
華月「HIKAKINさん!?」
ガサゴソと物音が聞こえる。
お菓子の箱を大量に積んで持ってくる理芽(りめ)ちゃん。
理芽「お菓子!無事です!」
一同笑いが起こる。
これだよ!これ!
このやんわり温かくて優しい空間。
皆がいればどんなことだって乗り越えられる!
にしても…。
華月「先輩…遅いな…。ボク!見に行ってきます!」
いってらっしゃーい!と全員に声を掛けられ暗いドームを突き進む。
外にいると先輩が立っていた。
華月「先輩!…先輩…?」
あれ?
なんか…変…。
返事もしないし。
目は普通に開いてるけど。
華月「…あれ?…人間っ…て…人間…て…こんな平ぺったかった…っ…け…?」
バタッと人が倒れる音とは違う。
ベチャ…っとした鈍い音。
先輩の背中の肉が…ない。
削がれて…る?
周りを見渡すと死体まみれだったことに気づく。
華月「あ。」
空を見上げると、そこには見たことがある光景が広がっていた。
テセラクター…だよね…え?
なんで?
この世界にいるはずないじゃん。
膝が震えて動かない。
華月「も、戻らないと…皆の元に…戻らないと…!」
ガチャ!
と大きい音がドームに響き渡った。
皆が危ない。
ボクは最後の力を振り絞って舞台裏まで走り抜ける。
ドームの上には大きな穴。
人型のテセラクターが入り込んでいた。
やだ。
やっと分かったんだ。
死ぬのは怖くない。
痛いのも怖くない。
一番怖いのは。
一人で死ぬことだ。
目の前に人影が見えた。
幸祜(ここ)ちゃんだ!
華月「幸祜ちゃん!」
幸祜「こっちはダメ!走って!」
華月「み、皆は…?」
幸祜 「いいから!走れ!」
やんわりとした性格の人から聞いたことない怒鳴り声。
気づいたらテセラクターに囲まれていた。
ボクが。
守らないと。
華月「幸祜ちゃんボクの後ろに!」
後ろを振り向く。
幸祜ちゃんは笑っていた。
心臓部分に穴が空いていた。
華月「…は?」
幸祜「危ない!」
幸祜ちゃんに突き飛ばされる。
上から魚型のテセラクターが口を開けて降りてきた。
全てがスローモーションに見える。
幸祜ちゃんは最後笑顔のまま。
ボクに人差し指と中指をクロスさせて立てた。
バンッ…。
鈍い音が鳴り響く。
幸祜ちゃんの首だけが転がっていった。
華月「あ…あ…。」
声が出ない。
終わりだ。
希望なんてものはもうない。
花譜「貴方が希望になればいいんだよ!」
華月「え?」
テセラクターが外へと吹き飛ばされる。
眼の前に皆立っていた。
先輩も、花譜ちゃんも、理芽ちゃんも、春猿火ちゃんも情緒ちゃんも、幸祜ちゃんも。
皆。
皆立っていた。
半透明だ。
幽霊なのかな。
綺麗だ。
「サイゴノヒトリニナリマシタ。テンソウヲカイシシマス。」
どこからか声が聞こえる。
目の前では皆が行ってらっしゃいとまた手を振っている。
華月「…え…?」
ボクは光り輝く結晶に包まれる
意識が遠退いて行く。
「テンソウ。カイシ。」
そこでボクの意識は無くなった。
次回予告
私の名前は森先来夢(もりさきらいむ)。
先祖が魔女で私にも魔女の血が流れてんだ。
それ即ち。
魔法が使える。
それとは別に共創者と言って、魔女と盟約を結び、魔法が使える者もいる。
それが問題なのだ。
とある魔女のせいで魔法を悪用する共創者が現れた。
私はずっとその魔女を探している。
にしてもねみーな。
コーヒーでも買おうか…。
来夢「なっ!?」
人が上から落ちてきた!
おいおい…魔法の使い方失敗したのか?
ん?
なんか首にかけてるな。
来夢「んぅ〜え〜っと…なんて読むんだこの英語…『か み つ ば き 』スタジオか。んで…スタッフの…帯野華月ちゃん。」
どこのスタジオなんだ?
来夢「息はあるようだな。とりあえず…救急車呼ぶか。」
神椿市建設中。2