《からめるにがし》ー小連作短歌ー
あさ凹み戻らぬ羽毛まくら踏む天使の対価挟まるベッド
青い菜の茎に止まり長い指 糸引く蚕がくねらす電話
ままごとに乾く大人が煮るへちま ふふむ風船ガムは脹るる
からからに甘し働き湛ふ蜜 器の縁で毛繕うハチ
あばら骨浮いて泡立つ石鹸が溶かす汗疹を惜しまず払い
育つ頃 駆ける勢い土踏まず注いだ雨で苗字は萎えず
ミンミンと喚く残暑をまたぐ虹 かへる金蚉濡るる背の翅
ハズレなく当たりもせずに交換こ 弛まぬ涙袋を畳み
ちょうちょうとをさなき口吻夢に出づ 別る為にも触れたき背中
見慣れない夕陽を噛んで万華鏡 ほじくる匙にカラメルにがし
《からめるにがし》ー小連作短歌ー