重ならぬ愛
なぜ愛してくれないの、という悲嘆には、なぜ私の望む愛し方で愛してくれないの、という傲慢が隠されている。愛し方を選ばなければ、あなたはとうに愛されているということにあなたは気づいていない。自分の望む愛し方でしか愛を感知できないというこの致命的欠陥……。愛されていないのではなく、愛し方の種類を知らないという自身の瑕疵にいつ気がつくのか?おそらく永遠に気づくことはないだろう。与えることを考えず、ただ愛を渇望するだけの人間はそこまで頭が回らないから……。その点で、愛することで満たされる人間は幸福だ。愛されたいという受動的態度には辟易とする。そういう人間は自分がまず与えるということに思い至っていない。愛さない人間は愛されない。そんな単純なことにいつ気がつくのか?おそらく永遠に気づくことはないだろう。そういう人間はいつも自分のことは棚に上げるからだ……。愛されたいと思わなくなるまで愛すること、これこそが愛を手玉に取る攻略法だ。愛する人間になれ。愛されることは考えるな。
重ならぬ愛