希釈そして漂泊

自己を希釈せよ
自己というものが瞞しに思えるまで
自意識に付随する全てを手放せ
そんなものはあてにしないことだ……
そして誰でもなくなるがいい
無名者として転生するがいい
一切の執着を断ち
一切の感傷を嘲るべきだ
美化される兆しを阻むことだ
何でも美化しようとする態度ほど
美しくないものはない、それは屈辱
美を主軸として生きようとしていない者への冒涜
俺は美しくなくていい
美しい記憶というものは信じない、それは
穢れた自意識に侵されているから
俺はルーツも持たない 俺は漂泊する
そして分裂に分裂を重ね 小さく死に続ける
やがて来たる取り返しのつかない破滅に備えて

希釈そして漂泊

希釈そして漂泊

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-11-09

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