笑術廻戦~もしも竈門炭治郎が五条悟だったら~

オスカー氏(https://www.pixiv.net/users/29448170/artworks)のもし強くなれる理由を知りすぎたら(https://www.pixiv.net/user/29448170/series/81948)、靡黎莊(ミレイソウ)氏(https://www.pixiv.net/users/3632692)の鬼滅の拳(https://www.pixiv.net/artworks/84189158)、グリーンボーイ氏(https://www.pixiv.net/users/15031176)の炭治郎の奇妙な冒険(https://www.pixiv.net/user/15031176/series/64915)などの『竈門炭治郎別キャラ化シリーズ』に参戦しようかと思います。
ただし、私はイラストが壊滅的かつ致命的に下手なので、同人小説と言う形をとらせていただきます。

pixiv版→https://www.pixiv.net/novel/series/14864689

ハーメルン版→https://syosetu.org/novel/392230/

予告編

コラボ

それは別物同士が融合して新たな次元を生み出す事である。

そしてそれは、出逢う筈がない者達同士に奇跡的な出会いを齎す場でもある。

故に人々は問う、

「どっちの最強キャラの方が強いのか?」

五条悟
「大丈夫!僕、最強だから」

呪術界最優秀術式、爆誕!

完成した直後に呪詛師の大半に敗北を認めさせた、常勝無傷の最優秀術式。

単独での国家転覆が可能であり、クラスター弾での絨毯爆撃と肩を並べるとされる特級の中でも更に別格な術式、

無下限呪術!

軽薄。馬鹿。個人主義。

だが、言うまでもなく、最強!

無下限呪術の許可無く使用者に触れる事叶わぬ鉄壁の防御力。

あらゆる呪術をいとも簡単に見抜いてしまう魔王の神眼、

六眼!

特級ですら強制的に沈黙を貫かせる、

領域展開・無量空処!

無下限呪術は一体、何を持ちえないのだ?

五条悟
「少し乱暴しようか」

故に平成の世の暮らす人々はこう考える。

『もう全部あいつ一人でいいんじゃないかな』と言うタグは無下限呪術の為にあるのではないかと。

だが……

明治の世の本当の姿を知る者達にとって……

その考えに対して懐疑的かつ猜疑的であった……

鬼舞辻無惨
「頭を垂れて蹲え。平伏せよ」

食人族全盛明治の世。

平安時代生まれ平安時代育ちでありながら、明治の世に生きる人々を次々と食人族に変える、紛うことなき悪の始祖!

あらゆる剣豪が総力を挙げて挑むも、ただ1人としてトドメを刺す事叶う者はいなかった……

鬼舞辻無惨!

残酷!

残虐!

非道!

正に圧倒的邪悪!

その肉体は時の流れや寄る年波ですら滅ぼす事叶わず、己の願望を叶えるべく多くの者を食らい尽くす暴虐の王。

力以外の序列を知らず、人々を次々と食人族に変えるその血と牙は世の理さえ拒むと言うのか?

鬼舞辻無惨
「私には何の天罰も下っていない。何百何千という人間を殺しても私は許されている。この千年、神も仏も見た事が無い」

彼にとっては、己の生死のみが生きる指針。

もはや意志を持つ災い。

人類生存の道は、|鬼舞辻無惨(かれ)の機嫌に託された……

例え……平成の世でどれだけ優れた術式が完成しようとも、この事実が覆る事は無いだろう……

勝つのは、

堕天か天才か?

鬼神か神童か?

強さ故の孤独……

原作内で好き勝手やって来た最強キャラが、最も入手に苦労した者、

それは自分と対等な存在!

さあ、

お前は一体、どこまで俺を楽しませくれる!?

最強

最強

遂に激突!

竈門炭治郎別キャラ化シリーズ最新作。

『もしも竈門炭治郎が五条悟だったら』

2026年1月8日公開予定……

第1笑:特級が看た惨劇

1人の男性がつまらなそうに街中を歩いていた。
彼の名は『乙骨憂太』。
11歳の時に遭遇した交通事故の後遺症が原因で東京都立呪術高等専門学校への転校を余儀なくされ、そこで掛け替えのない友と出逢い、呪術と呼ばれる超人的な技を学び、憂太は劇的に強くなった。
6年前に力の源と言える『ある者』を失ったが、それから僅か3ヶ月で本来の力を取り戻した呪術の天才。
呪術師は本来、4から1の階級で区別されるのだが、本来なら呪術師のトップでなければならない筈の1級より更に上に登り詰めた異能の超人。
既存の階級制度の枠を飛び越えた例外等級である特級呪術師に君臨した憂太は、かつての恩師である五条悟に次ぐ現代の異能として注目を集めた事もあったが……

それも今は昔……

どう言う訳か危険呪霊(人体から排出された人の想いが具現し意思をもった異形の存在)の発生率が激減し、今はもっぱら呪詛師(呪術を悪用する犯罪者)の取り締まりが主な任務となってきており、物足りな過ぎてかえって特級である憂太の方が呪術界上層部から危険視される体たらくであった。
「ま……コソ泥や湿気た巾着切りを殺すのにクラスター爆弾を使う馬鹿はいないわな」
つまり、特級呪術師や特級呪霊の本気はクラスター爆弾での絨毯爆撃に匹敵する厄災なのである。
お陰で、五条家当主代理に内定しているとはいえ、特級呪術師に君臨している憂太は、呪術界の手に余り過ぎているお荷物なのである。

そんな核兵器並みに危険視されている憂太の横を素通りしようとしている影があった。
だが、至極真っ当で正論な理由で憂太に猫つまみされた。
「待ちなさいお嬢さん。信号、赤だよ?」
その人物は赤みがかった髪がボサボサのボーイッシュな少女で、額に火傷らしき傷痕が有った。
歳は、小学校6年生か中学1年生と言ったところか?
だが、少女は焦っていたのか、憂太の手を振り払おうとしていた。
「ごめんなさい!急いでるんです!」
「急ぐって言われても……」
目の前は車通りが多い道路。下手な横断は自殺行為だ。見過ごす訳にはいかない。
それに、憂太にとって今手を放す事は、11歳の時に遭遇した交通事故の二の舞になる。
「いくら急いだって……死んだら意味無いよ」
だが、
「早く家に戻らないと!嫌な予感がするの!」
少女の必死の涙目を視た途端、憂太は何故か6年前に言った自らの台詞を思い出した。
『僕が、皆の友達でいる為に!僕が!僕を!生きてていいって思える様に!|夏油傑(オマエ)は、殺さなきゃいけないんだ!』

憂太は溜息を吐きながら少女に言った。
「……乗ってくか?」
対する少女はキョトンとした。
「え?」
少女が意味解んないって表情をしているが、憂太は気にせず勝手に話を進める。
「リカ」
『なぁに』
「力を貸して」
憂太の指輪から、最凶の呪霊が現れた。
「何だこいつ!?」
「ん?リカちゃんが見えるの?」
「リカちゃん!?」
少女が驚くのも無理は無い。
鋭い爪を持つ、鬼の如き体。
無数の牙を持ち、目の無い深海魚の様な顔に、長い髪が触手めいて生えていて、それだけが辛うじて少女の面影を残す。
これが、憂太を特級に戻した憂太の切り札、『リカ』である。
「大丈夫。リカは優しいんだ」
と言われましても、その形では恐れない方が無理がある。
だが、少女は意を決してリカの背中に乗った。
すると、リカは一足飛びで横断歩道を渡った。
「うわぁ!?」
「しっかり掴まってて。振り落とされない様に」
そして、リカは少女に言われるまま、街中を突き進んだ。
だが……

「この程度の血の注入で死ぬとは……太陽を克服する鬼など、そうそう作れたものではないな」
竈門ベーカリーを襲った惨劇を観て、少女は愕然としながら正座する形となった。
しかも、惨劇の実行犯はまだ目の前にいる。
「忌々しい耳飾りと太刀筋だ。血の量からして、|竈門炭十郎(オマエ)は死ぬだろうな」
(父さん……母さん……花子……竹雄……茂……禰󠄀豆子……六太……)
一方の憂太は、竈門ベーカリーを血の池地獄に変えた犯人に関するある推測が有った。
「……まさか……お前が『鬼舞辻無惨』か?」
対する犯人は憂太の推測に苛立ちを覚えた。
「鬼舞辻だと?何故その名を知っている?貴様、鬼狩りの残党か?」
憂太は余裕に魅せたい笑みの額に、冷や汗を滲ませる。
「特級呪術師1人殺スノニ、ソレ以外ノ呪術師ガ、何十人必要ダト思ッテル!」
「知るか。この私に出遭ってしまった不幸を呪え。それだけだろ」
(とんでも無い事を言いやがる!)
その時、家族を皆殺しにされた怒りをぶつける様に、少女が犯人に体当たりをした。
「私の家族を返せ……返せ!」
だが、少女は|怪我の功名(・・・・・)的な理由で犯人に触れる事が出来ず、寧ろ、犯人が|不本意(・・・)な理由で少女から遠ざかった。
「何だ!?今の体当たりは!?」
犯人は慌てるが憂太はそれだけで、少女がリカの姿を見る事が出来る理由を今、目にした。
『無下限呪術』。
憂太のかつての恩師である五条悟が生前に使用していた特級術式。それは文字通り、無限と言う概念を現実にする術。五条悟を最強たらしめる規格外の術式である。
(……2年ぶりだな、無下限呪術を間近で観るのは?五条先生が羂索を殺害した時以来か……)

「うわあぁーーーーー!」
その後も犯人を殴ろうと飛び掛かる少女だが、無意識に発動させてしまった無下限呪術のせいで少女は犯人に触る事が出来ない。
物理攻撃は常に、少女との間には無限の距離を置かれて無意味となる。反則じみた鉄壁の防御。
「くそ!何が起こっている!?」
だが、憂太にとってはあまり嬉しい状況ではなかった。
「不味い!このままでは、あの娘が脳死する!」
無下限呪術は規格外な破壊力・防御力を持つからこそ、そのコントロールには原子レベルに干渉する、緻密な呪力操作が必要となる。時空間を支配する程の演算、まともに扱えば脳が焼き切れる負担は免れない。
幸い、少女は犯人がいる前方にしか無限を発生させていなかったので、憂太は簡単に少女の背後に回り込めた。
「今日はこのくらいにしてやろうか?お嬢さん」
少女の首を殴って少女を気絶させる憂太。
「危ない危ない。無下限呪術を習得出来る可能性が有る将来有望を―――」
「逃がすと思うか?」
やっと無限の呪縛から解放された犯人が憂太達に近付く。
「貴様らの様な危険人物を、この私が野放しにすると、本気で思っているのか?」
だが、憂太が犯人斬りかかろうとした時、別の何かが犯人に飛び掛かった。
「うがあぁーーーーー!」
「何!?」
それは、犯人に殺された筈の女性だった。
「何だと!?」
犯人にとっては予想外の事であったが、何時までも殴られ続ける趣味は無く、直ぐに死んだ筈の少女を振り払った。
だが、
「どう言う事だ……貴様は本当に鬼なのか?」
死んだ筈の少女は、身を挺して憂太達を庇った。
犯人にとっては想定外であり、絶対に有り得ない現象だった。
「この私がどけと言っているのだ。なのに何故?」
その理由を、憂太は既に経験していた。
「失礼だな、純愛だよ」
「純愛?何を―――」
リサは遂に痺れを切らして剛腕を振り下ろしてしまった。
『ゔゔゔゔるさい!』
並みの術師や呪霊であれば、リカの剛腕になぶられ続ければどんどん原型を失って逝く。
だが、今回は憂太に本気の舌打ちをさせると言う、リカにとっては不本意な結果となった。
「流石は不老不死を最終目標とする臆病者……リカちゃんですら、取り逃がすとはね……」
だが、憂太にとってはある意味好都合だった。
「そんな事より……あの2人は死なせない!特に五条先生と同じ|高み《ところ》に往ける可能性が有るこの娘は!」

記録―――2023年7月23日、東京。
鬼舞辻無惨による執拗な襲撃により、店長を含む竈門ベーカリー関係者|七名(・・)死亡。

憂太は、無意識に無下限呪術を発動させた少女と竈門ベーカリー関係者唯一の生き残りを保護したその足で、呪術界上層部に謁見した。
「無下限呪術の復活だと?」
6枚の障子が六角形に取り囲む、奇妙な造りの部屋。
その中央に憂太の姿があった。
「今更、無下限呪術が必要か?」
「しかし、本人が了承しました」
「だが、羂索どころか夏油傑すらいない。それどころか2級以上の案件が激減したこの状況で、今更いたずらに特級を増やす気か?」
障子から返って来る物言いはどこか、安全を確保しながら自分達の導きたい結果を周囲に押し付ける、消極的で狡い響きがあった。
「ふざけないで頂きたい。鬼舞辻無惨があのまま暴走していたら、町1つ消えていたかもしれないんですよ」
憂太の脳裏に浮かぶのは、無意識に無下限呪術を発動させた少女の鬼の様な怒りの表情……だけではない。
本当に気にすべきは、例の少女がかつて共に過ごし、大切にし、愛した、ただの家族であった頃の竈門ベーカリー。
その調子が気に障ったのか、別の障子の向こうから荒らげた声が聞こえた。
「師匠が師匠なら、弟子も弟子じゃわい!悪い所が似おった!」
「だとしても、やはり鬼舞辻無惨は危険です。逆に、何人食い殺されるか判りません。現に最近は鬼殺隊に関する情報を聴きません。そろそろ僕達にお鉢を回すべき……だとは思いません?」
障子の向こうに居る連中は、保守的な思考の持ち主ばかりだ。
そういう手合いに反論する為には、出来るだけ具体的な根拠を示してやる事がだと、憂太は知っていた。その効果は十分あった様で、障子の向こうからは、しばし思案する様な空気が伝わり……やがて1人が、促す様な台詞を漏らした。
「では、やはり……」
「はい……竈門炭治郎は、五条家で預かります」
だが、全会一致とまではいかなかったのか、憂太の背中に声がかかる。
「ただ強ければ必ず特級に成れる訳ではない事を忘れるな」
「そうなれば、僕が炭治郎側につく事をお忘れなく」
老いてはいても、そこに集まるは呪術界の有力者達。特級の本気がどれだけ危険か解らぬ程暗愚な者はいない。憂太の決意は、それだけで強い警告となる。
黙る上層部達を一瞥して、憂太は部屋を出て行く。

だが……
「ふうぅーーーーー。疲れたぁー」
かつての恩師である五条悟が今まで何と戦ってきたのかを間近で見た憂太は疲れ果てた。
「あれじゃあ、五条先生が嫌がるのも無理ないよ」
だが、今の憂太は弱音を吐いてる場合じゃなかった。
「2年前の羂索暗殺任務で五条先生が亡くなって以来失われていた無下限呪術。それを取り戻すチャンスなんだ。くだらない保守派異見に邪魔はさせない!」

原作との相違点


●竈門炭治郎

・2009年7月14日生まれ。
・竈門家長女。
・実家はパン屋。
・2023年7月23日に乙骨憂太に保護され、憂太の許で約1年8か月ほど修行して無下限呪術と六眼の基礎を叩きこまれた。

●竈門禰󠄀豆子

・2010年12月28日生まれ。
・竈門家次女。
・実家はパン屋。
・2023年7月23日に乙骨憂太に保護され、憂太の暗示(人間は皆家族であり、家族を守り、家族を傷つける鬼を許すな)と反転術式によって人食欲を喪失。

●乙骨憂太

・虎杖悠仁や両面宿儺とは無関係。
・『リカ』と『無条件の術式模倣』の時間制限が無くなった。
・2023年7月23日に炭治郎と禰󠄀豆子を保護し、炭治郎に約1年8か月間の無下限呪術と六眼を習得する為の修行を施す。
・また、炭治郎の訓練期間の間、長期の睡眠に入っていた禰󠄀豆子に人間を守るよう暗示をかける。
・『鬼滅の刃』における『鱗滝左近次』と『冨岡義勇』の役割を果たす。
・公式記録では、2017年12月24日に夏油傑を殺害した事になっているが……

●五条悟

・虎杖悠仁や両面宿儺とは無関係。
・2021年1月20日に相討ちと言う形で羂索を殺害するも、その時の怪我が原因で2021年7月22日に死亡した。

●羂索

・2021年1月20日に相討ちと言う形で五条悟に殺害された。

●鬼舞辻無惨

・令和7年まで生存。
・個人投資家として成功し、悠々自適の生活を送っている。
・気まぐれで(一応あの耳飾りの行方を追ったうえでの行動)竈門ベーカリーを壊滅させたが、その事がきっかけで禰󠄀豆子が鬼と対立する鬼となり、炭治郎が無下限呪術と六眼を習得するきっかけになってしまった。

●竈門炭十郎

・2023年7月23日に死亡。
・竈門ベーカリーの店長。
・無惨相手にヒノカミ神楽で応戦するも日輪刀を持たぬ故戦死。

第2笑:藤襲山7泊キャンプ

2025年3月5日。
竈門炭治郎と乙骨憂太の姿は、藤襲山の中にあった。
「乙骨さん、本当にこの山で7泊するだけで鬼殺隊に入隊出来る時代が在ったんですか?」
「『窓(術師ではないが呪いを視認でき、多業種に潜む協力者)』が回収した資料を視る限りではそう言う事になってるらしいよ」
とは言われても、一見すると藤の花が咲き誇る長閑な山にしか見えない。
何も知らない者から観れば、この様な長閑な山と鬼と呼ばれる危険生物との接点が解らない。
言い出しっぺの憂太も半信半疑だが、1つだけ確信を持って言える事があった。
「ただし、藤の花に守られた2合目より上に泊まる事。それが条件だ」
「ここより上……乙骨さんが以前言っていた『鬼は藤の花が嫌い』と関係があるって事ですね?」
「そう。原因は不明だけど鬼は藤の花に含まれている香りや毒素に弱い。だからなのか鬼殺隊に協力的な家は藤の花の絵を玄関先に飾っていたらしんだ」
炭治郎は1つだけ矛盾点を感じた。
「でも、その藤の花に護られた山に、鬼はどうやって登るんですか?」
その質問に対する答えは……憂太も知らない。
「ゴメン。それは解らない。僕が知っている事は『藤襲山に7泊するだけで鬼殺隊に入隊出来る』。それだけなんだよ」
その答えに炭治郎は納得出来なかったが、とは言え憂太から科せられた試練には変わりないので、とりあえず藤の花に守られた2合目より上に往く事にした。
「では、行ってきます」
「ま、トライ&エラーだよ。もしこの7泊キャンプが鍛錬にならないと言うのであれば、その時は『やらない後悔よりも、やって後悔』をしてから話そうか」

だが、藤の花に護られたエリアを出た途端、藤襲山7泊キャンプと言う試練への猜疑心を後悔する事になった。
(藤の花が無くなったら、急に鬼の匂いが濃くなった!)
そして……1泊目の夜にしてもう藤襲山7泊キャンプの洗礼を|()ける羽目になる炭治郎であった。
「久方振りの人肉だ!」
「俺の獲物だぞ!」
「黙れ!」
早速2人の鬼が口喧嘩をしながら炭治郎の許にやって来た。
この様子を見て、炭治郎は確信した。
(そうか!鬼にとってこの山は監獄だったんだ!この山に棲み付いてしまった鬼は、2合目より下にある藤の花のせいで行動範囲が制限され、許容範囲内でしか人を食う事が出来ないんだ!)
そしてそれは、炭治郎の鬼への哀れみへと姿を変える。
(乙骨さんの話だと、鬼か死ぬ方法は4つしかなく、老衰や寄る年波ですら鬼を殺す事は出来ない。だとすると、この山に暮らす鬼は永遠とも言える空腹と戦わなきゃいけないと言う事か!?)

炭治郎が目の前の鬼達の生き地獄に対してあれこれ考えている間も、2人の鬼は先鋒を奪い合う為の口喧嘩を繰り返しながら炭治郎の隙を窺っていた。
(怯むな!乙骨さんの教えを思い出せ!)

『僕達が使用する呪術を要約すると、『体内に溜め込んだストレスを消費しながら発動させる超能力』と言ったところかな』
『ストレス?』
『そう。人間は体内で『想い』を生成し、余った『想い』は体内から抜け出て『呪い』となる。だが、僕達呪術師はその『想い』を体内で『呪い』に変えて呪術にする』
『その呪術を使えは、日の出になるまで鬼の猛攻に耐えられる!?』
『そう。先ずは僅かな『想い』から『呪い』を捻出する方法を学びなさい。どっちにしろ、武器が無ければ鬼とは戦えない』

(恐怖に屈するな!想いを呪力に変えるんだ!)
呪力を捻出しながら炭治郎が臨戦態勢をとる。一方の2人の鬼もまた、何時までも口喧嘩を続けても意味が無いと悟ったのか、先手必勝とばかりに炭治郎に飛び掛かった。
(そして……呪力を『無限』に変えろ!)

『『無下限呪術』?』
『そう。君にはその素養がある。君が初めて無惨と戦った時、君は無意識に無下限呪術を使っていた』
『それを使えば、勝てるんですか?無惨に』
『勝てる!けど、険しい道だよ』
『険しい……道……』
『無下限呪術を使いこなすには、先ずは|六眼(りくがん)を習得する必要がある。|六眼(りくがん)が無ければ無下限呪術は武器どころ……使用者の脳を破壊する欠点……弱点となる』

(|六眼(りくがん)よ……起動しろ!)
あらゆる術式を視認し、呪力を高解像度で観測出来る|六眼(りくがん)は、あらゆる呪いを丸裸にする。
「食ってやるぜぇーーーーー!久方振りの人肉をおぉーーーーー!」
「どけえぇーーーーー!俺が食うんだあぁーーーーー!」
(私の『想い』よ!力を貸せ!)
あと少しで爪が炭治郎に触れると言う時に、2人の鬼は突然止まってしまった。
「何だ!?何故当たらねぇ!?」
「触れない!何で!?」
無下限呪術使用者を害する者は無限に阻まれ、近付く程低速化し接触出来ない。特に呪術に関する知識が全く無い無知な力任せ如きでは触れる事すら叶わない。
そうとは知らずに2人の鬼は必死に口を開閉させるが、文字通りの『当たらなければどうということはない!』である。
(乙骨さんの言う通りだった!無下限呪術さえ使いこなす事が出来れば、私は鬼と戦える!)

とは言え、今の炭治郎は|六眼(りくがん)と無下限呪術の基礎を会得しただけに過ぎず、まだ無限を武器に転用する方法を身に着けていなかった。
だから、炭治郎が今出来るのは、目の前の呪いや想いをサーモグラフィーの様に解析する事と無限を盾として利用するのみ。まだまだ武器とは呼べない。
だから、今の炭治郎は無下限呪術以外の方法で鬼を攻撃しなければならない。
「とりあえず……これで!」
突然頭突きされた鬼が思いっきり吹き飛んだ。
(頭が……硬い!)
炭治郎の持ち前の石頭でする頭突きは、人間であれば脳震盪を起こさせる程の威力である。しかも、現出させた無限で守られている為、その威力は更に倍増される。
(人間の癖に何でここまで頭が硬いんだ!?なんだ!分からん!分からねば!)
2人の鬼はなんとしても目の前にいる炭治郎を食べようともがくが、食い殺した人間の数が1桁の雑魚鬼とまだまだ基礎レベルとは言え|六眼(りくがん)と無下限呪術を使える様になってきた炭治郎の実力差は歴然としており、返り血を浴びせる事すら困難と言う体たらくであった。
一方の炭治郎はその隙にリュックから一振りの刀を取り出した。

『もし万が一呪力を使い果たした時の為に、何かの体術を使えるようにした方が良い』
『体術って?』
『なんでも良い。幸い、竈門家にはその為の道標は既に出来ている』
『この本は?』
『君にとって最厄日であるあの日、失礼して竈門ベーカリーから盗んで来た物だ。『ヒノカミ神楽』の事が詳しく書かれている』
『ヒノカミ神楽!?お父さんが毎年大晦日に徹夜で踊り続けていたアレの事!?』
『それなんだけど、日下部先生の見立てでは、これは神楽でも能楽でもダンスでもない……強力な剣術なんだって』
『剣術!?私のお父さんはそれを家内安全を祈願する為の神楽として利用していたと言うの!?』
『……全ての物に理由はある。君のお父さんが何故これ程の剣術を神楽として利用していたのか?そして、この剣術を後世に残そうと本にしたその理由。そこには君のお父さんの想い……思惑があったんだと僕は思う。それに』
『それに?』
『その父さんがお亡くなりになった今、他の誰かが踊り手を務めなきゃいけない。炭治郎ちゃん、君の出番だよ』

それからと言うもの、憂太の元担任である『日下部篤也』と憂太の元同級生である『禪院真希』にヒノカミ神楽の基礎を叩き込まれる毎日であった。
お陰で、炭治郎の剣の腕は実戦で通用する程に上達した。

一方の2人の鬼は久しぶりの人肉が目の前にあるせいか、目の前の圧倒的な力を前にしても引くに引けなくなってしまった。
「余計な真似をするな!大人しく俺に食われろ!」
「俺が何十年人間を食っていないか!貴様に解るか!?」
「知るか。見境無く何でも食うアーバンベアの様な事を言うな」
(それに、私にはやらなきゃいけない使命がある!)

『|六眼(りくがん)と無下限呪術の基礎を習得したら、後は簡単な任務を幾つかこなして貰い場数を増やし、最終的には鬼舞辻󠄀無惨を超える力を手に入れて、君の妹を人間に戻す方法を引き摺り出す』
『出来るんですか!?禰󠄀豆子を人間に戻す方法!』
『僕には解らない。だから探すしかない。だから鬼化の鍵を握る鬼舞辻󠄀無惨に勝つ必要がある』
『きぶつじ……むざん……』
『僕達が鬼舞辻󠄀無惨を倒して鬼化の謎を全て解く。後は、晴れて自由の身だよ。君も、君の妹もね。だから……強くなってよ。僕や無惨に置いて行かれないくらい』

(だから、今は負けてる場合じゃないんだ!)
炭治郎は、未だ懲りずに炭治郎に襲い掛かる2人の鬼の眼前で上段の構えをとる。
(日下部さんとの鍛錬を思い出せ!父さんの動きをトレースするんだ!)
「ヒノカミ神楽!円舞!」
炭治郎が円を描く様に刀を振り下ろした!
それだけで、鬼が真っ二つになった。
ヒノカミ神楽の威力を前にして、斬られていない方の鬼はおろか、実行した炭治郎すら驚きを隠せなかった。
「えーーーーー!?」
「凄い……禪院さんの言う通りだ……」
真希から「その名字を使うな」と厳命されているが、尊敬や恩義の念のせいか真希の事をどうしても『禪院さん』と呼んでしまう炭治郎。
だが……
「ふざけるな!」
両断された方の鬼が両手で自分の頭を押さえると、真っ二つになった筈の身体が合体して斬られる前の姿に戻った。
「やはり駄目か……日輪刀じゃないと……」
「いい加減、さっさと食われやがれぇーーーーー!」
突き付けられた現実に歯噛みする炭治郎だが、2人の鬼がこれ以上炭治郎を襲う事は無かった。
「うっ!?」
(何だ?この腐った様な臭いは!?)
森の中から出て来たのは、全身に幾つもの腕を纏った大玉の様な高身長の鬼だった。
「くそ!あいつがもうきやがった!」
「今の俺じゃあいつには勝てねぇ!ちきしょう!」
2人の鬼が逃げた理由を理解してしまった炭治郎が緊張する中、大玉鬼が炭治郎に質問した。
「そこの娘、今は、しょうわ何年だ?」

原作との相違点

●呪術

・『KEY THE METAL IDOL』の『巳真家に代々伝わる超能力とその原理』を追加させていただきました。

●日下部篤也

・虎杖悠仁や両面宿儺とは無関係。
・とある諸事情(呪術廻戦第269話参照)のせいで、冥冥にシン・陰流の当主を推し付けられた。
・乙骨憂太の指示で竈門炭治郎にヒノカミ神楽の基礎を叩き込んだ。

●禪院真希

・虎杖悠仁や両面宿儺とは無関係。
・大型二輪免許取得済み。
・とある諸事情(呪術廻戦第149話参照)のせいで禪院家大破の実行犯として捕縛されるも、憂太が五条家当主代理の権限を使って罪状を抹消した。
・乙骨憂太の指示で竈門炭治郎にヒノカミ神楽の基礎を叩き込んだ。

●藤襲山

・かつては鬼殺隊の私有地だったが、現在は空き家状態。
・鬼殺隊最終選別の内容も呪術界にはやや曖昧かつ不完全にしか伝わっていない。

●ヒノカミ神楽

・竈門ベーカリーが鬼舞辻無惨に襲撃された日に憂太が盗んだ書物等に詳細が書かれていた。
・日下部篤也や禪院真希が憂太から渡された書物を参考に再現し、これを基に炭治郎がヒノカミ神楽を習得した。

第3笑:鬼化の功罪

全身に幾つもの腕を纏った大玉の様な長身鬼と対峙した竈門炭治郎は、鬼からの質問に困惑した。
「……昭和?」
「年号は既にしょうわに変わったんだろ?」
「何故それを……何故ここで昭和100年ネタを……」
「しょうわ100年!?」
大玉鬼は嫌な予感がしながらもしつこく質問した。
「嫌な予感がするがもう1度だけ訊く。今は、しょうわ何年だ?」
「正確に言えば、令和7年です」
「やっぱりいぃーーーーー!」
その途端、大玉鬼は絶叫した。
「アァアアア年号がァ!年号がまた変わっているぅーーーーー!これで何度目だ!?俺は気付いたら既に年号が変わってるを何度繰り返せばいいんだあぁーーーーー!」
「……君……何時からこの山に棲み付いている?」
大玉鬼は急に静かに炭治郎を睨んだ。
(何だ!?怒りの匂いが更に濃くなった筈なのに……こいつ、物凄く冷静だ!)
「何時から……慶応だよ……」
「けいおう?」
慶応とは、日本の元号の1つである。江戸時代最後の元号であり、1865年から1868年までの期間を指す。
つまり、この大玉鬼は最低でも157年もこの山に棲んでいる事になる。
スマホで慶応を調べた炭治郎も、その長さに呆れた。
「それだけ永い監獄の中で、空腹と戦ってきたのか?」
「空腹?」
大玉鬼の言い分におかしな部分を感じた炭治郎の背中が冷たくなる。
「何故首を傾げる!さっきの鬼は何十年も人間を食っていないと言っていたぞ!」
「それは、そいつが鬼狩りになりたがるガキ共に負けたからだろ?でも、俺はずっと生き残ってる。藤の花の牢獄で。50人は喰ったなぁ。ガキ共を」
「50人!?」

『炭治郎ちゃん、基本的に鬼の強さは人を食った数だ。食う程力が増し、肉体を変化させ、『血鬼術』と呼ばれる呪術に酷似した何かを使う者も出てくる』

「この山に暮らす鬼の中では……別格と言う訳ね?」
(って!臆してる場合じゃない!こいつを倒さなきゃ!こいつに食われた人々の為にも!そして……人間を食べる以外の選択肢を奪われ、永年殺人の罪を強制的に背負わされたこいつの為にも!)
「来い!今の内に私を殺さないと、何時か私が鬼舞辻󠄀無惨を祓い殺すぞ!」
炭治郎の決意の叫びに対し、大玉鬼は挑発で答えた。
「そんなにこの俺に喰われたいのか?なら……遠慮無く」
「断る。君が無惨に背負わされた殺人罪を、ここで終わらせる。そして、何年かかろうと必ず、無惨が撒き散らした殺人強制と言う呪いを、完全に祓う!」

大玉鬼は無数の手を伸ばした。
「ん?打撃?」
が、無下限呪術の基礎を習得した炭治郎にとっては無いと同じである。
「何!?」
(触れられん!?寸前で停まる)
それに、
「ヒノカミ神楽!烈日紅鏡!」
∞を描く様に左右対称の鋭い斬撃が、大玉鬼の無数の手に襲い掛かる。
「ぐわあぁーーーーー!?何だ!?その刀は!?」
……一見すると炭治郎が優勢に見えるが、今の炭治郎には大玉鬼を殺せない理由があった。
現在、呪術師が知る鬼が死ぬ条件は、
①日光に晒される
②頚を日輪刀で斬られる
③藤の花の毒を受ける
④鬼舞辻󠄀無惨に殺される
の4つ。
だが、呪術師が実行出来るのは『日光に晒す』のみ。
そもそも、呪術師は日輪刀を持っていないので、何度頸を斬り落としたとて、何も意味が無い。
鬼は藤の花に含まれている匂いや毒素を嫌うが、下手に毒を乱用すると毒の成分が見切られて分解されると言う弱点があり、最悪の場合は無惨を通じた鬼の情報共有能力で鬼に毒を克服されかねない、諸刃の剣と言える。
無惨は鬼の始祖であるが故に、自身が作った鬼の細胞を破壊する事ができ、不死の存在である鬼を問答無用で殺す事ができる唯一の存在である……が、それだって無惨の機嫌次第なので過度に期待する事は出来ない。
つまり、呪術師は『呪術を使って日の出まで粘る』以外に鬼に勝つ方法は無いのである。
その事は、憂太から呪術を学ぶ際に最初に(謝罪付きで)教えられた事だ。
でも、だからと言って、無惨に殺人を強要され続ける生活を余儀なくされている鬼達を、これ以上見て見ぬふりは……出来ない!
炭治郎がそんな事を考えている間に、大玉鬼は炭治郎の足下から複数の手を伸ばすが、対する炭治郎は無下限呪術をトランポリン代わりにして大ジャンプをした。
(たっ、高い!仕留め損なった!)
だが、並の人間であればこの時点で動きが大きく制限されてしまう。
(でもな、空中ではこの攻撃を……躱せない!)
が、それは『並み以下の人間』の場合の話であり、無下限呪術にとってその程度の不利は……無いと同じである。
(はじかれた!)
その間にも炭治郎が大玉鬼に急接近する。
(大丈夫だ。俺の頸は硬い。コイツは斬れない!)
が、それも『並み以下の人間』の場合の話であり、ヒノカミ神楽にとってその程度の不利は……無いと同じである。
「ヒノカミ神楽!碧羅の天!」
炭治郎は日輪の輪郭の様な円形を太刀筋を描いて大玉鬼の頸を斬った。
「嘘ぉーーーーー!?」
ただ惜しいのは、炭治郎の剣が日輪刀ではないと言う事だ……

大玉鬼は心底悔しがった。
(くそっ!くそっ、くそォオ!)
だが……炭治郎の剣は日輪刀ではない。
つまり、炭治郎に大玉鬼は殺せない。
(幸い俺の体は無事!再生出来ればまだ好機はある!早く!早く再生しろ!)
でも、大玉鬼は弱音の念も抱き始めた。
(くそっ……目を閉じるのは怖い……)
対する炭治郎の心を支配するのは、無惨に殺人を強要され続けている鬼への……憐れみ。
「悲しい匂いだ……」
すると、炭治郎は大玉鬼に手を握り始めた。
(!?)
予想外の展開に混乱する大玉鬼だったが、炭治郎の握り方が物凄く優し過ぎたので、大玉鬼の混乱は更に助長された。
「神様……どうか……この人が今度産まれて来る時は、鬼になんてなりませんように……」
その時、大玉鬼は思い出す……
鬼化前は、夜に独りになる事を怖がり、兄に手を繋いでいてほしいと願う無垢な少年であった事が死の間際の走馬灯にて判明……
鬼になり、兄を喰い殺してしまった事を初めは嘆いていたが、それも鬼化が進むにつれ……
「……あれ?兄ちゃんって、誰だっけ?」
と、兄の姿に加え、最後には存在さえも忘れてしまった……
皮肉にも、鬼化後は手をつなぐ相手のいない孤独を埋めようとしているかの様に大量の手を生やし、人を殺める事になってしまった……
そうこうしている内に朝となり、日の出となり、大玉鬼は灰となり、消滅した……
それが炭治郎に鬼を増やす唯一の方法を思い出させる……
鬼の始祖……鬼舞辻無惨の存在を……

『この程度の血の注入で死ぬとは……太陽を克服する鬼など、そうそう作れたものではないな』

そして竈門炭治郎は、生まれて初めて、心から望んで人を呪った!
「……殺してやる……殺してやるぞ……鬼舞辻無惨!私は|鬼舞辻無惨(おまえ)を逃がさない!どこへ行こうと!地獄の果てまで追いかけて!必ず、|鬼舞辻無惨(おまえ)の頸に刃を振るう!絶対に|鬼舞辻無惨(おまえ)を!許さない!」
後悔噬臍!悲傷憔悴!怒髪衝冠!意趣遺恨!切歯扼腕!千恨万悔!艱難辛苦!狂瀾怒濤!
感情の名前1つでは、とても表せない漆黒の衝動!
魂が放つ、最も深く邪悪な情動!
数えきれない負の想いが、濁り混ざって、黒くなる!
この世界はそれを、『呪い』と呼ぶのだ!
「ブッ殺してやる」

その後、炭治郎は無事に成し遂げた。藤襲山7泊キャンプを。
しかし、炭治郎に喜びは無い。
(甘かったなぁ。藤襲山で8人の鬼に会ったけど、どの鬼も、まともに会話出来る状態じゃなかった。鬼が人間に戻る方法、ちゃんと訊けなかった)
最も欲しい情報を得られぬまま、結局、炭治郎が藤襲山で得た物は、ちゃんと鬼と戦えると言う自信だけだった。
(禰󠄀豆子……ごめん……お前を人間に戻せないままで……)
その時、炭治郎の前を走る少女の姿に、炭治郎は驚かされた。
「あーーーーー!禰󠄀豆子!お前……起きたのかぁ!」
そう。
竈門禰󠄀豆子は鬼舞辻無惨による竈門ベーカリー襲撃事件以降、ずーっと熟睡したまま起きなかったのだ。
それが今、禰󠄀豆子は遂に目を覚ましたのだ。
そして、お互いの無事を確認するかの様に姉妹は抱きしめ合い、炭治郎は禰󠄀豆子を抱きしめながら号泣した。
「お前、何で急に寝るんだよぉ!?ずっと起きないでさぁ!死んだかと思っただろうがぁ!」
憂太はその光景を優しく見守っていた。
「おかえり。頑張ったね」

一方、炭治郎が藤襲山を去っていた頃、鬼舞辻無惨はタワーマンションの中にあるパソコンの前で座っていた。
「SNSとやらも……大した事ないな?……青い彼岸花には、一向に辿り着けん」
そこへ、法衣姿の男性が近付いて来た。
「そんな事より、藤襲山で大変な事が―――」
対して、無惨は心底どうでもいいとばかりに、藤襲山に巣くう鬼達を酷評した。
「今更、あのような牢獄に強制連行される役立たずに何の用がある?」
男性が言おうとしていた藤襲山に関する報告に対する無惨の反応は、たったそれだけだった。
「そうかい?後悔すると思うよ」
「そうは思わぬ。あの様な役立たず如きに苦戦する様な雑魚など、鬼狩りになったところで先が無い。取るに足らぬわ」
無惨はそれだけ言うと、藤襲山に興味が無いと言わんばかりに話題を強引に変えた。
「後それから、青い彼岸花はどこだよ?」
だが、男性はその問いには答えず、
「私はそうは思わない。藤襲山の件は、私の方で調査させてもらうよ」
「必要無い!不要だ。そんな事より、青い彼岸花を探し出せ。そして、見つけ出し次第、黒死牟と共にそこへ向かえ」
男性が去ったのを確認すると、無惨は退屈そうに溜息を吐いた。
(何故その程度の下奴に此処まで興味を示す?何故奴は青い彼岸花を欲しがらない?)
が、無惨の藤襲山の事を過度に気にする男性への疑心は直ぐに薄れ、無惨は再びパソコンで青い彼岸花をググった……

原作との相違点

●手鬼

・令和7年まで生存。
・平成や令和の存在を知らない。
・死因は太陽光の浴び過ぎ。

第3.5笑:むじゅさんぽ集①

●もしも(明治時代の)竈門炭治郎が五条悟だったら

竈門炭治郎
「残念だよ鬼舞辻無惨……やはりこうなったか!」

鬼舞辻無惨
「失礼ですが、どちら様でしょうか?それに、きぶつじむざんとは何ですか?」

竈門炭治郎
「おとぼけが上手いな。でも、俺がやる事は変わらない」

鬼舞辻無惨
「申し訳ないが、急いでおりますので、この辺で失礼いたします」

竈門炭治郎
「そうつれない事を言うなよ。こっちはこの日にお前が俺の家族を皆殺しにする未来を知ってから、俺は五条家と接触して幼少期から呪術師となり、|六眼(りくがん)と無下限呪術を習得し、最年少で特級呪術師となり、反転術式を習得する事で常に新鮮な脳味噌をお届け状態となった」

鬼舞辻無惨
「あのぉー、何を言っているのか解らないのですが?」

竈門炭治郎
「それだけじゃない。五条家の伝手で産屋敷家と接触して幼少期から鬼殺隊に入り、日の呼吸を極め、最年少で日柱となった」

鬼舞辻無惨
「あのぉー、何を言っているのか、日の呼吸ぅー!?それにその耳飾りは!?」

竈門炭治郎
「やっと思い出してくれたか?俺はこの日の為に必死に修行したんだ。逃がしはしないよ鬼舞辻」

鬼舞辻無惨
「申し訳ないが、急いでおりますので―――」

竈門炭治郎
「自爆しながら逃げようたってそうはいかない。術式順転『蒼』を使ってお前の破片1800個全て全回収してやる」

鬼舞辻無惨
「キッショ!そこまで知っているのか!?縁壱の遺志を受け継ぎ過ぎだろ?」

竈門炭治郎
「とは言え、ただ修行三昧の穀潰しでは申し訳ないので、鼓屋敷と那田蜘蛛山と無限列車に居る鬼を全て祓い、堕姫と妓夫太郎と猗窩座の記憶を元に戻して成仏させた」

鬼舞辻無惨
「鬼狩り共の仕事奪い過ぎだろ!もうお前1人で良くないか?」

竈門炭治郎
「それと、16歳16歳と五月蠅い変態と半天狗とか言う自己中心的老害がいたから、ついでに斬っておいたよ」

鬼舞辻無惨
「上弦が半壊したのお前のせいやないけ!」

竈門炭治郎
「しかも、|六眼(りくがん)と透き通る世界を同時使用する事で、隙の糸が見放題になった」

鬼舞辻無惨
「どこへ行く気だお前は?縁壱を超える気か?」

竈門炭治郎
「と言う訳で、お前に残された選択肢は2つだ」

鬼舞辻無惨
「たった2つかよ」

竈門炭治郎
「1つは、このまま引き返して、珠世が開発中の鬼を人間に戻す薬の完成を静かに待つか」

鬼舞辻無惨
「キッショ!何で珠世の事を知ってんだよ!?どんだけ用意周到なんだお前は!?」

竈門炭治郎
「もう1つは、俺と俺の家族を皆殺しにして禰󠄀豆子を鬼にするかだ」

鬼舞辻無惨
「この私が、お前の様な縁壱超えの化け物を殺すと言うのか?」

竈門炭治郎
「そうだ」

鬼舞辻無惨
「……」

竈門炭治郎
「……」

鬼舞辻無惨
「……黒死牟ぅー!童磨ぁー!鳴女ぇー!助けてえぇーーーーー!」

玉壺
「え?……わたくしはーーーーー!?」

●鬼滅の刃の声優事情①

五条悟
「正直驚いたよ。鬼舞辻無惨に匹敵する寿命を持った術師が、天元以外にもいただなんて」

羂索
「体を返ちて……」

五条悟
「何か、言い残す事は有るか?」

羂索
「『無限城編第一章 猗窩座再来』のキャストが可笑しくないか?」

五条悟
「可笑しいか?」

羂索
「可笑しいだろ。慶蔵の声を担当したのが中村悠一って、『劇場版 呪術廻戦 0』で五条悟役を務めた男だぞ。勿体無いとは思わんか?」

五条悟
「あ、それは大丈夫。『わんだふるぷりきゅあ!』ではウサギ(ロップイヤー)だったから」

羂索
「そうなのぉー!?」

五条悟
「名は確か……大福……とか言ってたな?」

羂索
「本当なのか!?」

五条悟
「それに、子安武人なんか藤襲山の手鬼だったぞ」

羂索
「藤襲山って、鬼滅の刃の序盤の終わり頃の話じゃないか!『ダイの大冒険』で大魔王バーン役を務めた男だぞ!そんな大物を序盤の終わり頃に居る中ボス戦で早々と使うか!?」

五条悟
「どうやら使ったらしいよぉー」

羂索
「声優の取捨選択が可笑しいだろ!?」

五条悟
「その点、櫻井孝宏は優遇されているよねぇー。傑と冨岡義勇だし」

羂索
「そして私―――」

五条悟
「それは|違う《ちっ、がう》!」

●こんな運命を辿る筈だった鬼

竈門炭治郎
「よく考えたんだけど」

手鬼
「何だ?」

竈門炭治郎
「ここで私に倒されて良かったんじゃないの?」

手鬼
「何を馬鹿な事を言っている?」

竈門炭治郎
「いや、だって」

手鬼
『そこの童。今は、令和何年だ?』

鬼殺隊志願者①
『宇宙世紀0079ですけど』

手鬼
『そこの童。今は、宇宙世紀何年だ?』

鬼殺隊志願者②
『C.E.71ですけど』

手鬼
『そこの童。今は、C.E.何年だ?』

鬼殺隊志願者③
『A.S.122ですけど』

手鬼
『そこの童。今は、A.S.何年だ?』

鬼殺隊志願者④
『未来世紀60年ですけど』

手鬼
「やめろおぉーーーーー!言うなあぁーーーーー!鱗滝!鱗滝ぃー!」

竈門炭治郎
「鬼か|鬼舞辻󠄀無惨(あいつ)は」

手鬼
「違あぁーう!悪いのは鱗滝の方だあぁーーーーー!」

第4笑:炭治郎ちゃんの初任務

2025年4月。
竈門炭治郎は私立善根高等学校の校門前に立っていた。
「ここかぁー。乙骨さんが言っていた学校って」

炭治郎は憂太の指示を聴いて自分の耳を疑った。
『入学ぅー!?私が今からですか?』
炭治郎はてっきり鬼狩りに強制同行させられるとばかり思っていたので、学校に行けるとはこれっぽっちも思わなかった。
だが、憂太は炭治郎の力不足を指摘するかの様に宥めた。
『そう自分をせかさないの。言ったでしょ?僕達は禰󠄀豆子ちゃんの為にも鬼舞辻無惨に負ける訳にはいかないって』
『それはそうですけど』
『だからこそ、幾つかの任務をこなして場数と経験値を稼ぐ。幸い、『ナイト・エージェンシー』が高校生向けだけど呪詛師を掻き集めるのに適した任務をちょうど抱えていたんだ』
『ないとえーじぇんしー?』
2023年7月まで平穏な暮らしを送っていた炭治郎にとっては聞きなれない言葉だった。
『ナイト・エージェンシーはホワイトスパイ派遣機関の事で、不正の証拠を捜索したり覆面警備員などの仕事をしている団体だよ』
『つまり、今から往く学校の不正を暴けと?』
「ううん。炭治郎ちゃんにやって欲しいのは覆面警備員の方だよ』
そう言いながら、憂太は炭治郎に1枚の写真を渡した。
『秋場雪賀。秋場財閥と呼ばれる小国に匹敵する影響力を持つ大企業の次期総支配人に内定した……筈だったんだけどね』
流石の炭治郎も憂太の「筈だった」に不穏な空気を感じた。
『権力争い!?呪術を使ってこの人を排除しようとしている人がいるって事!?』
『そのまさかだよ。今回の任務に関わると思われる呪詛師達の狙いは、雪賀の右腕に装着されている腕輪。この腕輪こそ秋場財閥次期総支配人の証だよ』
炭治郎は任務の重大さにチョット引いた。
『そんなやばい腕輪が悪人の手に渡ったら……』
『間違いなく、日本財界は大混乱だろうね』
(そんな重大な任務を素人にやらすな!)
『と言う訳で、任務はその少年の護衛と修正だ。日本財界の命運が懸かっているから心して懸かれ』

炭治郎は後悔の溜息を吐いた。
「我ながら……とんでもない事を安請け合いしちゃったなぁー」
が、何時までも悲観している訳にはいかないので、両頬を叩いて気合を入れる。
「だが、こんな所で挫けてる暇は無い!私が挫ける事は絶対に無い!」
その時、炭治郎が背負ってる箱から何かを引っ掻く音がした。
「禰󠄀豆子、箱の中はキツくないか?」
すると、引っ掻く音は治まった。
「そうか……乙骨さんには、本当に色々お世話になったな」
因みに、その箱は太陽光と外敵から身を護る為、62口径5インチ単装砲1000発の衝撃にも耐えうる様設計された、言わば1人用シェルターである。

が、炭治郎が校舎の中に入ろうとした時、1人の男に呼び止められた。
「ちょっと待て」
「何でしょうか?」
「その耳は何だ?」
男は炭治郎の耳が気に入らなかったらしい。けど、炭治郎は身に覚えが無いので首を傾げるばかりである。
「耳?私の耳がどうかしました?」
「とぼけるな!では何故、ピアスを装着しながら登校した?」
どうやら、男の本当の狙いは父の形見である耳飾りであった。
生活指導の冨岡先生は、親の形見だろうが何だろうが、校則違反のピアスは許さない。
だが、まだ基礎レベルとは言え無下限呪術とヒノカミ神楽を習得した炭治郎を捕らえるのは困難だった。
「すみませーん!父の形見なんですー!」
炭治郎は謝罪しつつ攻撃を躱す。当たった日は保健室行きである。
でも、例え当たらなくても、捕まれば形見没収は免れない。
と言う訳で、炭治郎は慌てて校舎に逃げ込んだ。
対する冨岡は炭治郎を追おうとするが、その背後に嫌な予感がしたので、追撃を一旦中断する。
「後、そこの猪!」
「あ?この俺様になんか―――」
冨岡は、反抗的な態度をとった生徒の左頬を狙って竹刀をフルスイングした。
「もっと真面目に制服を着こなせー!」
「ぐえぇー!」
確かに、素足で一年中半袖でシャツの前は常に全開。学校には弁当しか持ってこないでは、生活指導の冨岡が怒るのも無理は無い。
「以後気を付ける様に」
が、そのせいで冨岡は炭治郎を取り逃がしてしまったのであった。

そんな冨岡と炭治郎のやり取りを視ていた女子生徒が、悔しそうに舌打ちしながら炭治郎の後を追う様に校舎に駆け込んだ。
「くっそ!あの馬鹿真面目先公め!初日でいきなり炭治郎を見落とすとは……」
慌てた女子生徒は、炭治郎を捜索しながらスマホで電話を掛けた。
「はさ……小夏先生!申し訳ありません!」
スマホ越しに女子生徒の報告を聞いた小夏は、別段慌てる様子も無く、寧ろ焦る女子生徒を宥めた。
「落ち着きなさい。炭治郎の狙いは既に割れている」
「つまり、秋場雪賀を探し出せば良いんですね!?」
「それについては……|非術師(さる)の|報酬(めいれい)に屈した|呪詛師(アホ)の残穢を追いなさい。私もそちらに向かう」
「解りました!」
てきぱきと炭治郎を追う女子生徒への指示を終えた小夏がスマホの通話を切り、足早にある者の許へと急ぐ。
「よほど術式によるステルス移動に自信が御有りの様だけど、これだけ残穢を撒き散らしたら意味無いでしょ?」
雪賀を狙う呪詛師の愚かさに、小夏は歯噛みしながら悔しそうに舌打ちをした。
「くっ!あの時……私達が勝ってさえれば!」

一方、当の雪賀はナイトが派遣したエージェントと思われる男子生徒との同行に難色を示した。
「何であいつが僕の半径100mから離れられないって事になるんだよぉー!」
「これも雪賀さんの安全の為です。我慢してください」
スーツ姿の長身な女性の説得にも納得出来ず、雪賀はナイトの判断に不満を口にする。
「そんなの、椿がいれば大丈夫じゃん!」
この様子では、物陰に隠れてコッソリは難しそうだと判断したエージェントは、作戦を変更して雪賀の前に出る事にした。
「そこまでコソコソしている態度が気に入らないと言うのであれば……ナイト・エージェンシー所属の我妻善逸と言います。以後、御見知り―――」
だが、それがかえって雪賀の機嫌を悪くした。
「くーーーーー。僕はねぇー!椿の強さとえちえちボディーを舐めるなと……」
(フォローになっていない)
だが、雪賀のナイトの決断と憂太の余計なお世話への非難は、雪賀の足下から生えた悪意に満ちた両手と、それに事前に気付いた善逸のタックルによって阻まれた。
「いきなり抱きつくな!僕は男だぞ!」
「その容姿で男を騙られても、真実を知らない人は納得しません!それに……」
善逸と椿は、雪賀の足下から何の前触れも無く生えた両腕を注視しようとするが、なす術無く見失い……
(!?)
「床に沈んだ?」
再び雪賀の足下から悪意に満ちた両手が生えた。
「またか!?」
善逸の咄嗟の判断のお陰で雪賀はまた謎の手に触れられずに済んだが、
「これが……乙骨が言っていた呪詛師の力か!?」
(相手の姿が見えない!?どこを攻撃したら良い!?)
2人にとって未知過ぎる現象であり、根本的な対処法が解らぬまま、もぐら叩きの様に生えては沈む謎の手から雪賀を遠ざけるのが関の山となってしまい、
(不味い!このままでは……ジリ貧だ!)
(せめて……攻撃さえ出来れば!)
だと言うのに、雪賀はある意味呑気過ぎる文句を言った。
「何で|善逸(おまえ)ばっかなんだよぉー!?どうせなら、椿に抱きつかれたかったよ!」
「生憎、俺は耳と足が良いんで!」
が、善逸と椿の善戦虚しく、床から生えた手が遂に雪賀の足を掴んでしまった。
「しまった!」
「雪賀さん!」
しかし、ここで漸くあの少女が……炭治郎が間に合ってくれた。
「させるか!」
炭治郎が咄嗟に無限を発生させる事で雪賀が床に沈むのを防いだ。しかも、無限の勢いに屈した謎の手が雪賀の足を放してしまう。
「申し訳ありません!遅くなりました!」
「大丈夫!ギリギリセーフだよ!」
「貴女が来てくれなかったら、雪賀さんが大変な事になりました!」

ご都合主義的に現れてしまった炭治郎による攻撃にイラっとした呪詛師は、遂に口を開いてしまった。
「何だ貴様らは?次から次へと」
「床が喋った!」
「いい加減にしろ!気色悪いもの使いやがって。いい加減出て来い!」
雪賀と善逸が床に沈んだ状態のまま喋った呪詛師に驚く中、椿と炭治郎は軽く状況を確認した。
「呪術って、こんな芸当も出来るのか!?」
「乙骨さんの話だと、それは生得術式次第との事だそうで」
「つまり、敵は床の中に隠れるのが得意と?」
炭治郎は呪詛師が撒き散らした残穢の匂いを確認しつつ、
「どうやらその様です」
呪詛師は床に沈んだ状態のまま雪賀の足を掴もうとしたが、炭治郎の|六眼(りくがん)と嗅覚がそれを捕らえた。
「そこの金髪さん、今、こいつに『出て来い』と言いましたよね?」
その質問に、椿が代わりに答えた。
「お恥ずかしながら、未だに敵の姿が見えず、どこを攻撃すれば良いのかが……」
合点が入った炭治郎が自信を持って宣言する。
「なら、こいつを生得術式の沼から引き摺り出す!」
そこで、炭治郎は無下限呪術の出力をアップさせて『出られない』と言う勘違いを助長する。
「ぐっ!?このままではこの沼から出られなくなる!俺が作った沼なのに!」
炭治郎との我慢比べに早々と屈した呪詛師が、大慌てで炭治郎達の眼前に全身を晒してしまった。
「貴様も術師か?同業者か!?」
その言葉に、炭治郎が不快感を露わにする。
「同業者?人を襲う事しか能が無い|呪詛師(おに)には言われたくない。それだけの|呪術(ちから)を持っていながら、罪無き人々にその暴を振るうのか?何が楽しい?何が面白い?命を何だと思っている?」
対する呪詛師が舌打ちをする。
「チッ!高専の手下かよ……随分頭の悪そうな事をする―――」
「糞真面目な社畜は馬鹿のする事とでも言う心算か?正に『悪銭身に付かず』だな」
「何でそうなる!」
「楽して稼いだ金に希少価値は無い。だから簡単にパーッと|散財(つか)って直ぐ|破産()くす。それに、こーんな犯罪で得た金なんて、逮捕されたらあっけなく没収されちゃうよ」
「賢く稼ぎ続ければ良いだけの話だろ!いい加減、|秋場雪賀(そのおんな)を渡せ。そうすれば、12億を山分けしてやらんでもないぞ」
「嫌なこった。秋場雪賀は男だし」
「嘘つけ!その形のどこが男だ!」
「それに、お前は1度逮捕されて貧乏の辛さを学んだ方が良い。私がお前の逮捕を手伝ってやるから」
「クソガキが!」

原作との相違点

●竈門炭治郎

・2009年7月14日生まれ。
・竈門家長女。
・実家はパン屋。
・2023年7月23日に乙骨憂太に保護され、憂太の許で約1年8か月ほど修行して無下限呪術と六眼の基礎を叩きこまれた。
・更に、日下部篤也と禪院真希にヒノカミ神楽の基礎を叩きこまれた。
・2025年、秋場雪賀の護衛を命じられて私立善根高等学校に入学した。
・『スパイガール!』における『雪乃晴』に相当する人物。

●冨岡義勇

・私立善根高等学校体育教師。
・それ以外は『キメツ学園』とほぼ同一。

●嘴平伊之助

・私立善根高等学校1年生。
・プロレスの時間(『鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚』参照)使用可能。
・それ以外は『キメツ学園』とほぼ同一。

●熱田睡蓮

・本作オリジナルキャラクター。
・女性呪詛師。
・私立善根高等学校1年生。
・竈門炭治郎を観察する為に潜り込んでいる『ある方』のスパイ。
・特技は催眠術。
・頭部は黒木智子(私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!)で首から下は香椎愛莉(ロウきゅーぶ!)。

●小夏カンナ

・私立善根高等学校英語教師。
・竈門炭治郎を観察する為に潜り込んでいる『ある方』のスパイ。
・熱田睡蓮の上司。
・正体は●●●●子。

●秋場雪賀

・本作オリジナルキャラクター。
・私立善根高等学校1年生。
・秋場財閥次期総支配人。
・美少女並みに滅茶苦茶可愛い男子高校生。
・少女趣味を持っているが、ちょっとゲスでスケベ。
・『坊ちゃん、困ります!』における『桜小路透』に相当する人物。

●寒崎椿

・本作オリジナルキャラクター。
・秋場家の護衛をしている一族出身。
・主な任務は秋場雪賀の護衛。
・高身長でグラマーなイケメン女子。
・『坊ちゃん、困ります!』における『七実』に相当する人物。

●我妻善逸

・私立善根高等学校1年生。
・ナイト・エージェンシー(『スパイガール!』参照)所属のエージェント。
・秋場雪賀を護衛する為に送り込まれたスパイ。
・雷の呼吸使用可能。
・聴覚が非常に優れている。
・『スパイガール!』における『奈々木新』に相当する人物。
・それ以外は『キメツ学園』とほぼ同一。

●沼鬼

・鬼舞辻󠄀無惨とは無関係。
・高額報酬欲しさに秋場雪賀をつけ狙う呪詛師。
・それ以外は『キメツ学園』とほぼ同一。

第5笑:この任務の相関図

1人の悪しき呪詛師が、術式を使って寒崎椿と我妻善逸を掻い潜って秋場雪賀を拉致しようとするが、竈門炭治郎が間一髪で乱入した事で拉致は未遂に終わり、悪しき呪詛師が漸く雪賀達の前で全身を晒した。
「秋場雪賀への襲撃を辞め、このまま去るのであれば、私は見逃しても良いと思っているけど、どう?」
「ふざけるな。12億だぞ」
「残りの人生を刑務所暮らしで消費する事になってもか?」
「ふん!さっさと秋場雪賀を拉致して逃げ切れば良いだけの話だろ!」
自分勝手な事を言う呪詛師の邪悪な判断に対して不満そうに舌打ちをする炭治郎。
「馬鹿が……貴様が今からすべきは、家に帰って自分の人生を考え直す事だったのに……」
呪詛師が再び床の中に沈もうとしていたので臨戦態勢を取ろうとする炭治郎だったが、背後からの殺気を臭いで感じたので、|彼ら《・・》に道を譲った。
「雷の呼吸、壱ノ型、霹靂一閃!」
善逸がすれ違いざまに呪詛師の腹を箒で引っ叩いた。
「速、ぐえぇーーーーー!」
その勢いのせいで、呪詛師は床から足を出してしまう。
「しまった!?」
「やはりか!お前の術式は、壁や地面に対し沼地を発生させ沼の中を自在に動き回れる……と言ったところか?」
「何故それを―――」
炭治郎の正答に素直に驚こうとする呪詛師だったが、椿がそんな暇を与えない。
「2度と雪賀さんに触るな」
椿の連打になす術無くタコ殴りにされる呪詛師。
これには流石の善逸もドン引きする。
「……うわぁー……いくら何でも|()り過ぎでしょ?これじゃあ尋問出来ないって」
そして、椿のダメ押しの回し蹴りを食らって吹っ飛ぶ呪詛師。
それを観ていた炭治郎は、逃走を選択出来なかった呪詛師の欲深さに呆れた。
「やはり貴様がするべきは自分の人生を考え直すだったな?と言うか、御強いじゃないですか2人共」
だが、椿は素直に喜べなかった。
「御冗談を。貴女が何者かは知りませんが、貴女がいなければ、雪賀さんは今頃……」
「まあ、そんな硬い事は抜きにして、私は竈門炭治郎。乙骨さんに頼まれてここに来ました」
それを聞いて善逸が軽く驚く。
「君が乙骨憂太が言っていた『呪術側の助っ人』って奴か?」
「はい」
「……呪術高専の中に、君って居たっけ?」
「いいえ。今日が久々の通学です」
善逸は困惑した。
「これを言うのはスパイとして失格だけど……君……何者?」

そうこうしている内に、2人の教師が先程の呪詛師を縄で締め上げていた。
「たく……部外者が学び舎で暴れてんじゃねぇよ!」
雪賀達はどうしても、その内の1人の容姿に目が行ってしまう。
「うわぁー……傷だらけだなぁー。あの人」
「あの方にどのような過去が?」
「彼は、私立善根高等学校数学教師の『不死川実弥』。短気で怒りっぽいが数学をバカにされた時以外は良識的ツッコミ担当。身体の傷については……学園のマドンナ的存在である生物教師の胡蝶カナエに横恋慕した生徒達と揉めた事と、まるでワニみたいな女と揉めた事ぐらいしか掴んでいない」
「つまり、数多の喧嘩の積み重ねがあの傷を生んだと?」
「だと思いたいね。本部もこの男をそこまで危険視していないし」
が、実弥の目立ち易い容姿のせいで椿と善逸は、本当に猜疑の視線を向けるべき|呪詛師(てき)を見誤った。
(ん?あの縛り方は?)
炭治郎は、女性教師の縄の縛り方に不安を感じ、その縄を|六眼(りくがん)で注視した。
(やっぱり!想いを呪力に変換するのを阻害する縛り方だ!)
今回の護衛任務に挑むにあたって、乙骨憂太から移動系術式を有する呪詛師を無力化する方法を幾つか学んできたが、それを秋場雪賀の敵になるかもしれない呪詛師がそれを実行しているとは……
(前々から秋場財閥の一件を知って教師として忍び込んだ!?何と言う用意周到!)
だが、その女性教師から殺気の臭いが一切感じない。
(チャンスを待っているのか?あいつの様な早い者勝ちの短期決戦に走らず、じっくり油断と勝機を待つ心算か!?)
女性教師は炭治郎が|六眼(りくがん)を使って自分を睨んでいるのに気付いたのか、含みを持たせた笑みを炭治郎に向けた。
(なんて慎重かつ大胆な女なんだ!?ああ言うタイプの殺し屋の方が、案外手強いかも!?)
炭治郎は呪詛師の疑いのある女性教師『小夏カンナ』を|呪詛師(てき)と見定めたが、善逸達には伝えなかった。
カンナの潜伏期間を打ち破れる程の信頼と証拠が無いと判断したからだ。

故に、ギリギリで先程の呪詛師と炭治郎達との戦いを観戦出来た熱田睡蓮の悪意に満ちた熱視線を炭治郎は見落としてしまった。
「素晴らしい……これが無下限呪術の力。『あの方』が手放しで称賛したのも頷ける」
どうやら、睡蓮もある目的の為にこの学校に潜入した呪詛師の様だが、カンナ同様直ぐに雪賀を襲う心算は無い様だ。
「さて……問題は……どうやって竈門炭治郎に捕まらずにはさ……小夏さんの許に向かうかだな……」

その後、カンナが『高専』が動き出す前に呼んでおいたパトカーに、炭治郎達に敗れた呪詛師を引き渡した。
「糞!放せ!と言うか、なんだこの縛り方は!?沼が……沼が出ねぇー!?」
「こいつですか?この学校に不法侵入した変態と言うのは?」
警官の態度に不満を感じる実弥。
「そうだが。そんな事より、生徒達に危害が及ぶ前にちゃっちゃとそいつを逮捕して欲しいんだけど」
実弥に文句を言われた警官達の上官の方が頭を下げながら事情を説明する。
「申し訳ありません。この者、窃盗と脱獄の常習犯でして」
「おい!もっとちゃんと監視してくれよ!始まってからじゃ遅い事もあるんだからよ」
実弥が警官達の対応に不満を抱く中、捕まった呪詛師が大慌てしながら地団駄を踏んだ。
「放せぇーーーーー!他の奴に先を越されちまうぅーーーーー!俺の12億が、俺の12億があぁーーーーー!」
「何が12億だ?映画に出て来る暗殺者の心算か?お前の下らん与太話の続きは、署でたっぷり聞く!」
そんな呪詛師にカンナが耳打ちをする。
「ごめんなさいね。平成29年のあの日に私達が負けてしまったせいで」
呪詛師はビックリ仰天して狼狽した。
「平成29年だと!?貴様、あの日はどこで何を―――」
が、呪詛師は直ぐにパトカーに押し込められた。
「待ってくれ!この学校は色々とやばいんだよ……12億だけじゃない……平成29年も居るんだよぉーーーーー!」
「何を言っているんだ!?今は令和7年だ。そんな事より、早く乗れ!」
「そう言う事を言ってんじゃない!平成29年はやばい!本当にやばいんだって!」
容疑者である呪詛師がパトカーに乗ったのを確認した警官達の上官の方は、突然カンナに耳打ちをされた。
その内容に上官は驚いた。
「高専だと?そこの方、アンタはいったい」
とは言え、今は学校に不法侵入した殺人未遂容疑者の護送が優先なので、当たり障りのない形でカンナに釘を刺した。
「後日、事情聴取に来て頂く事が有ります。現場にいた者として」
実弥が気怠そうに答えた。
「はいはい。状況証拠ね。解りましたよ」
そして、パトカーは例の呪詛師を乗せて出発した。
それを見ていた悲鳴嶼行冥は、(カンナの耳打ちを聞き取れなかったせいか)涙ながらにこうつぶやいた。
「金銭と権力に取り憑かれているのだ。彼が早く(悪意から)解き放たれる事を願う」

だが、パトカーは何故か警察所には向かわず、
「そこで一旦停まれ」
「は?何故です警部補?」
「……あいつらに、引き渡す」
呪詛師は上官の言うあいつらの正体が乙骨憂太だと気付いて慌てふためく。
「馬鹿!そこで停まるんじゃない!お前ら如きがあいつに勝てる訳ねぇだろ!」
「そうだ。ここから先は、|呪術師(ばけもの)達の仕事だ」

先程の呪詛師の逮捕を確認したところで、善逸は周囲を警戒しつつ護衛任務を円滑に進める事を目的とした自己紹介を改めて行った。
「俺は我妻善逸。もう気付いてるとは思うが、ナイト・エージェンシー所属のエージェントで、今回の任務は秋場雪賀の護衛だ」
「私は竈門炭治郎。乙骨さんに秋場さんの事を頼まれてこの学校に来ました」
「私の名前は椿。私の一族は、名家・秋場家の護衛をしています」
「僕は秋場雪賀。僕は椿の事が大好きです」
「……ん?」
善逸は首を傾げた。
「雪賀さん、今回の自己紹介は、あくまであんたの護衛を円滑に進める為の簡易的なモノで―――」
だが、雪賀の口は止まらない。
「椿は可愛いし、その目も、高い背も、僕は大好きだよ!」
「雪賀さん……」
「あと、おっぱいクソデカなとこも、エッロい尻も、ほんとスケベな体で最高。むほほ」
「雪賀さん?」
善逸が慌てて制止した。
「はいはいはいはい。一応俺が周囲を警戒しているとはいえ、そう言うバカップルの馬鹿話は人目を気にしながらやってください」
そんな秋場達のやりとりに困惑する炭治郎であった。
「……これは面白い学校生活になりそうだ」

一方、早速雪賀を襲った呪詛師から例の『12億』について問いただそうとする乙骨憂太と夜蛾正道だったが、当の呪詛師はカンナに『平成29年』と言われたショックでまともな返答が出来ない状態だった。
「本当だ!嘘じゃない。あの学校には『平成29年』が居るんだよ!|高専(あんたら)なら、ちょっと調べれば直ぐに解るって!」
「そんな事より、誰に頼まれて、あの学校に行ったの?」
「お前は本当に乙骨憂太かぁ?『平成29年』だぞ!憶えてるだろ!?」
夜蛾が困惑しながら溜息を吐いた。
「……今日も、駄目そうだな?」
「……ええ……相変わらず『あの学校には平成29年が居る』の一点張りですよ」
「……平成29年と言えば……」
憂太が口惜しそうに俯いた。
「僕が呪術高専に転校した日……そして……あの男に……大切な仲間を傷付けられた日だ!」
日下部篤也が面倒くさそうに言った。
「じゃあ何か?あの事件の生き残りが、秋場雪賀を狙っていると言うのか?」
憂太は首をゆっくりと横に振った。
「……多分違うと思います。あの男は……大金如きで満足する程……無欲じゃない」

その頃、睡蓮とカンナが高級タワーマンションで鬼舞辻󠄀無惨に謁見した法衣姿の男にある報告を行っていた。
「炭治郎は既に、無下限呪術を取得した様です」
「ただ、あのアホが弱過ぎたせいか、蒼と赫の有る無しは確認出来ませんでした」
報告を男は満足げに答えた。
「つまり、あの女はすくすくと育ってる訳か?|無惨(あのおとこ)はまだその重大性に気付いていない様だが……」

原作との相違点

●不死川実弥

・私立善根高等学校数学教師。
・胡蝶カナエに横恋慕した生徒達や「算数ができなくても生きていけるから大丈夫です」とぬかしたワニの様な女と揉めた過去が有るらしい。
・だが、ナイト・エージェンシー(『スパイガール!』参照)は彼をあまり危険視していない。
・それ以外は『キメツ学園』とほぼ同一。

●胡蝶カナエ

・私立善根高等学校生物教師。
・それ以外は『キメツ学園』とほぼ同一。

●悲鳴嶼行冥

・私立善根高等学校公民教師。
・それ以外は『キメツ学園』とほぼ同一。

●夜蛾正道

・未だ生存。
・虎杖悠仁や両面宿儺とは無関係。

●平成29年

・乙骨憂太が東京都立呪術高等専門学校に転校した日。そして……
・とある事件のせいで、呪術師や呪詛師にとってはある意味禁忌的な存在となった……

第6笑:炭治郎ちゃんはお人好し?

我妻善逸。
表向きは私立善根高等学校1年生だが、彼の本来の所属はナイト・エージェンシー。つまりスパイである。
今回彼に与えられた任務は、秋場財閥次期総支配人である秋場雪賀の護衛。
なので、毎朝、ナイトが開発した特殊カメラを使って校門を通る生徒達を解析している。
「……今日も健全な登校風景、っと」
ただ、善逸にはちょっとした下心が有った。
「しかし……この学校は美人が多いなぁー!」
私立善根高等学校2年生で(一応)華道部の栗花落カナヲ。
同じく(?)、私立善根高等学校2年生で華道部の神崎アオイ。
私立善根高等学校3年生で薬学研究部とフェンシング部を掛け持ち胡蝶しのぶ―――
善逸の邪念を感じた生活指導担当の冨岡が、善逸の目の前に立っていた。
「うわぁ!?冨岡先生!?」
「お前今、服以外の物を観ようとしていただろ?」
冨岡の指摘に対して慌てて否定する善逸。
「失敬な!俺は秋場雪賀の護衛だぞ!」
そう言いながら善逸は特殊カメラによる登校する生徒達の解析を再開するが、そんな善逸の前を半袖でシャツの前は全開の伊之助が通過しようとした。
(あのバカ……余計な奴の前で余計な事を……しかも弁当しか持ってねぇ……)
当然、
「制服をちゃんと着こなせぇー!」
冨岡の鉄拳制裁が伊之助を襲った。
「ま、そうなるわな」
その後も、善逸は登校する生徒達の解析を続け、遂に肝心の雪賀が護衛である椿を連れて学校にやって来た。
「あ、椿さん、おはようございます」
「我妻さん、毎朝お疲れ様です」
すると、雪賀が騒ぎ出した。
「椿に近付かないでよぉーーーーー!」
「何でだよ!?ただの中間報告だろ」
「椿が他の男に引っ掛かるのは嫌ーーーーー!」
「心配ありません。高校生に手を出さないので」
「僕には手を出してよおぉーーーーー!」
(めんどくさい)
雪賀の厄介な性格に呆れつつ、雪賀が無事に校舎に入った事を確認すると、善逸は再び登校する生徒達の解析を続けた。
が、
「カア!カア!8時25分!8時25分!授業開始5分前ェエー!」
「おい!予鈴が鳴ってるぞ!早く教室に入れぇ!」
鎹鴉の叫び声と不死川の怒号を聴いて善逸が困惑する。
「え!?炭治郎はまだ来てねぇよ!」
そこへ悲鳴嶼がやって来て、
「竈門君ならまだ来ないよ」
「……何で?」

その頃、炭治郎は駅で変質者と揉めていた。
「やめろ!尻を出すな!しまうんだ!」
「出す!」
「出すな!」
電車に対して変態行為をする男。こいつは本当にやばい。
そのせいで遅刻してしまった炭治郎を不憫に思った駅員の三郎さんが一筆書いて渡したのだが、肝心の変質者が、
「今日こそは」
何故か何時の間にかいなくなってしまうのだ。
「本当に気色悪い変質者だ、打ち首にして欲しい」

「このお人好し」
「……ゴメン」
炭治郎の遅刻理由に呆れる善逸と悲鳴嶼。
「誇らしい事ではあるが、やはり遅刻は問題だ」
「ごめんなさい。でも、ほっとけなくて」
「……それをお人好しって言うんだよ……」
職員室での説教から解放された炭治郎と善逸は小声で話し合った。
「頼むよ。他は兎も角、呪術の方はからっきしなんだ」
「あー、あの時の沼男の事?」
「アレは正直、スパイとしては羨ましい限りなんだけどね」
「羨ましい……ね。でも、その力を正しく使わないのであればただの迷惑。排除対象ですよ」
その時の炭治郎の顔はどこか悲しげであった。
他人の感情を読み取る程非常に優れた聴覚を持つ善逸は、そんな炭治郎の悲し気な顔に心底呆れた。
「……本当、お人好しだなお前は」
が、ナイトの厳しい鍛錬を積まされ、スパイのなんたるかを叩き込まれた善逸もまた、『力の正しい使い方』に思うところはあった。
(ナイトから教わった爆弾解除、潜入、変装、戦闘、それを犯罪者の為に使ったらどうなるか……それぐらいは散々聞かされてきたよ)
そんな2人の背中を小夏カンナが複雑な気持ちで|視て《・・》いた。
(撮り鉄界隈ではかなり有名な変態だと聞いていたが、所詮は|非術師(さる)か)
その後は、何事も無く授業は進み、今日の雪賀護衛任務は終了する。
(流石は特級呪術師と恐れられた乙骨推薦の助っ人様だ。居るだけでちょっとした抑止力になっている)
善逸は確かに炭治郎の実力を認めてはいる。だが、それは対人戦に限った事であり、調査・推理の方面はやはり善逸達ナイト・エージェンシーが頑張る必要がある。
(『平成29年』の方の調査は9割9分俺の私怨だが……問題は『12億』の方だ。もし大方の予想通りだったら……頼みましたよ!後藤先輩!)

2日後。
『12億』に関する調査結果が善逸のスマホに届いた。因みに、これもナイトが開発した特殊スマホである。
「どうしたんです?急に我々を呼び出して?」
「その前に、怒らないで聴いてくださいね」
善逸のその言い方に不安を感じる椿。
「それは……どう言う意味ですか?事と次第によっては―――」
善逸に飛び掛かりかけた椿を炭治郎が制止する。
「それを聴いて悲しい気持ちにはなるが、私達は君を怒らない。約束する」
そう。炭治郎は相手の感情を嗅ぎ取る程非常に優れた嗅覚の持ち主。だから、善逸が今から事実を告げようとしている行為に悪意は無いと察したのである。
「話してくれ。秋場雪賀護衛任務に関するとんでもない暗部について……」

炭治郎は、改めて『親ガチャ』の影響力を思い知らされた。
そんな理不尽に完膚なきまで叩きのめされた気分で帰宅していると、乙骨憂太と出会った。
「どうしたんだい?そんな悲しい顔をして」
その途端、炭治郎は泣き崩れた。
「乙骨さぁーーーーーん!(涙)」
「何々!?何!?」
憂太は炭治郎から秋場雪賀護衛任務に関するとんでもない暗部を聞かされる。
「つまり、あの沼男の背後に『サマー』と呼ばれる犯罪組織がいたと言う訳ね?」
「……はい」
善逸曰く、『サマー』は密輸や闇バイトなどの総大将の様な犯罪組織で、ナイト・エージェンシーは『サマー』撲滅を目的とした調査・偵察を何度も繰り返してきたが、ボスの正体もメンバーの数も、本部がどこにあるのかも、全部謎だと言う。
そして、そんなサマーが秋場雪賀から秋場財閥次期総支配人の証である腕輪を奪いにやって来て、例の腕輪に12億と言う懸賞金を賭けたと言うのだ。
「なるほどね。それならあの沼男が危険を顧みずに秋場雪賀を襲うのも辻褄が合うね?」
憂太はある種の納得を得ていたが、その後の炭治郎の説明に怒りが籠る。
「……私が不機嫌なのは、その後ですよ」

善逸は、サマーだけが黒幕だとは思っていなかった。
だからこそ、善逸は椿に秋場雪賀護衛任務に関する覚悟を問うた。
その問いに椿は確かに困惑したが、ある程度予想は出来ていたらしく、迷わず、
『私の仕事は雪賀さんの護衛です。相手が誰であれ、私はそれを全うするだけです』

だが、炭治郎はそんな椿の宣言を全然納得出来なかった。
炭治郎が悲しんでいる理由を知った憂太が溜息を吐いた。
「……だから……君はそんなに怒ってる訳だね?」
炭治郎はしばらくだんまりしていたが、振り絞る様に言った。
「親ガチャって……事実だったんですね……」
憂太は親ガチャと言う言葉を嫌っていたので説教しようとした。
「何を言ってるんだい!親ガチャなんて負け犬の遠吠えにすぎ―――」
だが、炭治郎は大声でそれを否定する。
「私だって最初はそう思ってましたよ!だから、自分の両親が小さなパン屋に過ぎなかった事を恨んだ事なんて1度も無かった!でも……私があんな貧乏で小さなパン屋でぬくぬくしている間……間……」
その途端、炭治郎は再び秋場雪賀を襲うであろう過酷過ぎる宿命を思い出し、再び泣き崩れた。
「雪賀くんが何をしたって言うの!?秋場家に生まれたと言うだけで雪賀くんがあんな目に遭うなんて……非道いよ……非道いよぉー……」
それを見て、憂太は何も言えなくなった。
「炭治郎ちゃんって……本当に優しい子だね……」

善逸は今日も、毎朝の日課であるナイト・エージェンシー製の特殊カメラを使った登校する生徒達の解析を行っていたが、今回は溜息ばかりが出た。
(昨日は判断をミスったなぁー。炭治郎と秋場家は赤の他人だとばかり思っていたが……)
そう思いながらも登校する生徒達の解析を続けていたが、善逸にとっては予想外過ぎる人物が目の前にいた。
「炭治郎!?てっきり今日は来ないとばかり思っていたぞ!」
対する炭治郎は新たな決意を胸に満面の笑みで答えた。
「来るに決まってるだろ。私はこれ以上、雪賀くんを苦しめる心算は無いからね」
そして、善逸の左横を素通りする際、小声でこう宣言した。
「寒崎椿に秋場葛練は殺させない!秋場雪賀護衛任務が呪術高専やナイトの手を煩わせる必要が無い、話し合いだけで簡単に片付く楽な仕事だと証明して魅せる。それが、私の秋場雪賀護衛任務に対する覚悟だ!」
裏の世界を知り尽くした者にとっては、権力争いの本当の恐ろしさを知らない甘ったれた戯言だが、炭治郎のあの覚悟満載の笑顔を魅せられたら、そんな真実は本当にどうでもよくなってしまう。
だからこそ、善逸は笑顔で溜息を吐いた。
「……本当に……お人好しだな?あいつは」
しかも、炭治郎はこれからも秋場財閥を悩ませ続ける権力争いと言う剣呑を吹き飛ばすオチまで発生させてしまった。
「こらー!貴様、またしてもピアスを装着しながら登校したな?」
「ごめんなさい!父親の形見なんですー!」
「あー!あの馬鹿真面目先公!またむやみに竈門炭治郎を走らすなぁー!」
慌てて逃げる炭治郎とそれを追う冨岡とそれを慌てて追う睡蓮を観て、善逸はある種の確信を得た。
「これが……日常と言う名の『光』と言う訳か……ナイト・エージェンシーのエージェントをやってて良かったと思えるよ……」
が、例の特殊カメラが胡蝶しのぶを捉えた途端、冨岡の厳しさが善逸を襲った。
「そこのお前、またしても服以外の物を見ようとしていただろ?」
冨岡の指摘にドキッとしながらも必死で否定する善逸。
「ちょ!?何を言ってるんですか!?俺は秋場雪賀の身の安全をですね―――」

それを校舎から観ていた雪賀が満面の笑みを浮かべた。
「相変わらず楽しいね?この学校は」
「はい」
「葛練兄さんもこっちに来れば良いのにね?」
「……はい―――」
そこへ、炭治郎が慌てて椿に助けを求めた。
「椿さん!助けて!」
そこへ、冨岡が睡蓮に抱きつかれてカンナに窘められながらやって来た。
「本当にやめて!炭治郎を走らせないで!」
「何を言ってんだお前は!?本派と言えば、竈門がピアスを装着しながら―――」
「冨岡先生、とりあえず落ち着きましょう。PTAや教育委員会にとやかく言われてしまう恐れもありますし―――」
それを観て大笑いする雪賀の頬が濡れている本当の理由を知る者は……少ない!

原作との相違点

●栗花落カナヲ

・私立善根高等学校2年生。
・それ以外は『キメツ学園』とほぼ同一。

●神崎アオイ

・私立善根高等学校2年生。
・それ以外は『キメツ学園』とほぼ同一。

●胡蝶しのぶ

・私立善根高等学校3年生。
・それ以外は『キメツ学園』とほぼ同一。

●鎹鴉

・『キメツ学園!』とほぼ同一。

●魘夢民尾

・熱田睡蓮に操られ、竈門炭治郎の目の前で変態行動を行ってしまった。
・熱田睡蓮の見立てだと非術師らしい。
・それ以外は『キメツ学園』とほぼ同一。

●三郎

・『キメツ学園』とほぼ同一。

●後藤

・鬼殺隊とは無関係。
・ナイト・エージェンシー(『スパイガール!』参照)所属のエージェント。
・我妻善逸の先輩。

●サマー

・本作オリジナル組織。
・善逸曰く、密輸や闇バイトなどの凶悪犯罪の総大将の様な犯罪組織。
・『スパイガール!』における『スター』に相当する組織。

●秋場葛練

・本作オリジナルキャラクター。
・秋場雪賀の兄。ただし、雪賀とは秋場財閥次期総支配人の座を奪い合う政敵関係。
・『スパイガール!』における『黒宮ミナト』に相当する人物。

第6.5笑:むじゅさんぽ集②

●覆面警備員

乙骨憂太
「ナイト・エージェンシーはホワイトスパイ派遣機関の事で、不正の証拠を捜索したり覆面警備員などの仕事をしている団体だよ」

竈門炭治郎
「つまり、今から往く学校の不正を暴けと?」

乙骨憂太
「ううん。炭治郎ちゃんにやって欲しいのは覆面警備員の方だよ」

当日

我妻善逸
「何でこうなるんだよ!?しかも|覆面(それ)、100パー『水星の魔女』のパクリだろ!?」

竈門炭治郎
「え?でも、乙骨さんが覆面警備員をやって欲しいって―――」

我妻善逸
「俺らが求めてるのは覆面レスラーの覆面じゃなくて、覆面パトカーの覆面なんですけど」

竈門炭治郎
「そうなの!?」

我妻善逸
「普通そうだろ?と言うか(その格好だと)目立つだろ!?」

秋場雪賀
「悪いけど、君は出来るだけ遠ざかってくれる?」

竈門炭治郎
「……御免なさい」

●鬼滅の刃の声優事情②

ロボ太
「ちょっと待て!……今、物凄い苦労の日々を思い出させる声が聞こえなかったか?」

我妻善逸
「また覆面ネタかよ!?」

ロボ太
「顔出しNGなんで……そんな事より!物凄い苦労の日々を思い出させる声が聞こえなかったか!?」

我妻善逸
「誰の事だよ?私立善根高等学校の生徒は山ほどいるからな。でもまあ、真島の声が松岡禎丞だって言うのは知ってる」

ロボ太
「……知ってんじゃん誰の事か」

我妻善逸
「まあ、あの|嘴平伊之助(イノシシ)の喋り方は、いやでも目立つからなぁー」

ロボ太
「あー、解るぅー」

我妻善逸
「でもまさか、あの声でキリト役を|()ってるのは意外だったなぁー」

ロボ太
「そうなのぉーーーーー!?キリトってアノ!?」

我妻善逸
「ソードアート・オンラインの」

ロボ太
「嘘だろぉー。あの真島の声でかぁー?」

我妻善逸
「後は、花江夏樹が水星の魔女のエラン・ケレスを務めてたんだが、グエル・ジェタークにボコられた時(水星の魔女第17話参照)の強化人士5号は炭治郎から程遠かったなぁー。卑の呼吸とか呼ばれてたし」

ロボ太
「アレは確かに竈門炭治郎ではなかったな」

我妻善逸
「そんな事より」

ロボ太
「ん?」

我妻善逸
「覆面違いネタはもういいんだよ。外せ」

ロボ太
「あーーーーー!顔出しNGぃーーーーー!」

●まじめ?風紀委員

我妻善逸
「アレが今回の護衛対象である『秋場雪賀』か……ん?」

殺し屋
「あの小娘の右腕を斬ってあの腕輪を手に入れれば良いだけか……楽に『12億』が手に入るぜ」

我妻善逸
(言ってるそばからいきなり命狙われてるよ。とは言え、あっけなくナイトのエージェントだとバレるのも芸が無いし、3年間の任務に支障をきたす。どうしたものか……は!?)



我妻善逸(妄想)
『はい、そこでじっとしていてください』

殺し屋(妄想)
『なんだ貴様は?』

我妻善逸(妄想)
『今から服装チェックをします』

殺し屋(妄想)
『は?何を言って―――』

我妻善逸(妄想)
『ひぃー物騒なの持ってるぅぅー!』

殺し屋(妄想)
『何を言ってるんだ君―――』

我妻善逸(妄想)
『あっちいってぇぇーーーーー!』

殺し屋(妄想)
『ぐえぇーーーーー!』



我妻善逸
(いける!これなら、俺がナイトのエージェントだとバレずに撃退出来る!)

殺し屋
「ぐえぇーーーーー!?」

我妻善逸
「て……あれ?」

寒崎椿
「2度と雪賀さんに触るな」

我妻善逸
「……お強い護衛のおまけ付きだったのね?」

●こいつ、普段何やってんだ?

夜蛾正道
「おい。そこの貧乏呪詛師」

沼鬼
「何でしょうか?」

夜蛾正道
「貴様は普段、何をしている?」

沼鬼
「コレクション収集です」

夜蛾正道
「コレクション?何の事だ?」

沼鬼
「これです」

乙骨憂太
「装飾品?しかも女性物ばっかだ」

沼鬼
「あ、因みに、17歳以上の年増老婆からは奪っていません」

夜蛾正道
「変態かこいつは。しかも17歳を老婆扱いって」

沼鬼
「女は16歳が最高で、それ以降は刻一刻と鮮度が落ちて|()くんで」

乙骨憂太
「ロリコンかこいつは!?」

夜蛾正道
「これは……野に放てないな」

沼鬼
「あれ?……俺死んだ?」

●冨岡義勇VS熱田睡蓮

熱田睡蓮
「あの馬鹿真面目先公めぇー。炭治郎を全力疾走させるな!炭治郎が無下限呪術と|六眼(りくがん)をどの段階まで習得したかを(呪術高専には内緒で)観察しなきゃいけない私達の身にもなれ!」

小夏カンナ
「そもそも、私立善根高等学校の校則は、僅かならが昭和の匂いがするのよね」

熱田睡蓮
「いや、だからって、ファッションと言うものを知らんのか!?あの馬鹿真面目先公は!」

小夏カンナ
「とは言え、学業に支障をきたす程度を超えたファッションは、流石にダメでしょ?」

熱田睡蓮
「はさ……小夏先生はどっちの味方なん?」

小夏カンナ
「私は今は私立善根高等学校の教師なんで」

熱田睡蓮
「……こんな糞校則に染まらないでくださいよ」

小夏カンナ
「染まる訳ないでしょ。あの方の最終目標と相反し過ぎだし……ん?」

熱田睡蓮
「どうかし―――」

冨岡義勇
「貴様ぁー!またしてもピアスを装着しながら登校したなぁー!」

竈門炭治郎
「ごめんなさぁーい!父さんの形見なんですぅー!」

熱田睡蓮
「ぐえぇーーーーー!」

小夏カンナ
「……大丈夫?思いっきり踏まれてたけど?」

熱田睡蓮
「あの馬鹿真面目先公めぇー……炭治郎を全力疾走させるなぁー……」

第7笑:不可解な強襲

2023年7月23日の鬼舞辻無惨による竈門ベーカリー襲撃事件(鬼達が警察に報復攻撃しない様、事故として処理された)以来、竈門炭治郎は自主練が毎晩の日課となった。
炭治郎は確かに自分でもまだまだ未熟だと確信していた。実際、乙骨憂太達から教わったのは無下限呪術の基礎とヒノカミ神楽の基礎のみ。だからこそ、憂太は秋場雪賀の護衛を命じたのだ。呪霊が発生しやすい学校の巡回と呪詛師に襲われ易い護衛を兼ねた任務を3年間こなす事で、炭治郎の場数を蓄えようと言う魂胆で。
(まだまだ駄目だな……これじゃあ、父さんみたいに徹夜でヒノカミ神楽を踊り続けるなんて、夢のまた夢だ)
だが、炭治郎が毎晩自主鍛錬を行っているのはそれだけではない。
自分を囮にした罠なのだ。
始祖である無惨を含めた鬼達は、基本的に日光を浴びると死ぬ。だから、鬼達は夜しか活動出来ない。そして、鬼の主食は人間。確かに竈門禰󠄀豆子の様な人間を食べずとも理性を保てる鬼もいるが、大半の鬼は飢餓状態になると人食欲を抑えられずに凶暴化する。それを地道に斃していけば、いずれは無惨に辿り着けるのではないか?と、炭治郎は考えていた。
(ん?この臭いは!?)
そして、遂に炭治郎は自主鍛錬中に鬼を発見した。
(この臭いは鬼だ!2人いる!)
だが、その鬼達は藤襲山で出会った飢餓状態の鬼とは様子が違った。1人は何かを探している様子だし、もう1人はそれを尾行している感じだった。
つまり、その鬼達はある程度定期的に人間を食べている証であり、生きたまま藤襲山に連行される様な鬼や12億欲しさに雪賀を襲った貧乏呪詛師の様な雑魚とは違うと言う証でもあった。
(やはりあの7泊とは違う!もしかしたら、そいつらから無惨の事を訊き出せるかもしれない!)
そして、肝心の2人組の鬼に追いついた炭治郎。しかも、2人共目の前の事に夢中で背後に炭治郎がいる事に気付いていない。
だが……
「何なんじゃこれは!?何でこんな所に病院がある!?何でこんな場所に『逃れ者』がおるんじゃ!?」
「お前達こそ誰だ!?珠世様を如何する心算だ!?」
(いけない!)
2人組の鬼の目の前にいる、身を挺して女性を庇う男性を発見してしまった炭治郎が、鬼達とその男性の間に躍り出てしまった。
「こいつらの足止めは私がする!あんた達はその隙に逃げろ!」
(どの道、この2人から無惨の事を訊き出す心算だったんだ。寧ろ、戦う理由を与えてくれたあの2人には感謝しないとな!)
「こい!私の後ろにいる人達を食わせない!」

敵となる鬼は2人。
1人はおかっぱ頭で古風な口調と童女のような振る舞いをする少女。
もう1人は両掌に瞳孔が矢印の目玉が付いた青年。両目は閉じられている。
対となる要救助者も2人。
『逃れ者』や『珠世様』と呼ばれた女性とそれを庇う青年。
青年の方は兎も角、珠世と言う女性は無惨に命を狙われる理由があるらしい。
それを証明する様に、
「どけ。儂はこれからそこの逃れ者を残酷に殺し、『十二鬼月』となるんじゃ」
(じゅうにきづき?言葉の意味はよく解らないが……この匂いは本当の事を言っている時の匂いだ!)
「殺人で得た、汚い地位を守りたいか?そんな血塗れの汚い椅子を貰って、そんなに嬉しいか!」
珠世を襲おうとしている方の青年がめんどくさそうに言い放つ。
「もう良い。お前はどけ」
だが、
「何!?どかない!?まさか、貴様があの女が言っていた」
青年鬼は既に炭治郎に何かしたが、既に無下限呪術を発動させていたので何も起きなかった。
(これがあの女が言っていた無下限呪術。原子レベルに干渉する緻密な呪力操作で空間を支配する。それを可能にしているのが、あの目か!)
炭治郎は現実化させた無限が何かの接近を阻害している事は解ったが、それが何なのかまでは解らなかった。
「どうやら……あんたの血鬼術は無色透明らしいな。でも、生憎、乙骨さんから防御に適した術式を教わっていてね」
とは言え、今の炭治郎は庇ってる状態なので、無暗に飛び掛かれない。
(強がっては魅たものの……このままではヒノカミ神楽が使えない……)
炭治郎が背後をチラッと視る。
(せめて、あの2人の安全確保が出来れば!)
しかも、珠世が何故か目の前にいると言う混乱から覚めて臨戦態勢を整えた少女鬼が、炭治郎に鞠を投げつけた。
「キャハハ!なんだかよく解らぬが……この場で逃れ者を殺せるのは好都合じゃ」
「この鞠、触れたらどうなるの?」
一見するとからかう様に言っている様に見えるが、炭治郎は内心焦っていた。
(さっきまで混乱しかしなかった鬼が冷静になった!?もう1人の鬼の血鬼術の性質もまるで解っていないのに!)
その時、炭治郎が背負ってる箱から何かを引っ掻く音がした。
(禰󠄀豆子!?お前も戦う気か!?)
炭治郎は迷ったが、無限に阻まれて停止している鞠を視て好機だと感じた青年鬼が、迷っている時間を奪っていく。
「無下限呪術がある限り、あの花札の耳飾りには触れられぬか!?ならば!」
そうすると、鞠が無限を避ける様に軌道を変えた。
(しまった!あいつの血鬼術は移動補助系だったのか!?このままじゃ守り切れない!)
だから、炭治郎は苦渋の決断をした。
「頼む!禰󠄀豆子!」
それを合図に、禰󠄀豆子が飛び出して来て、珠世を襲った鞠を蹴り飛ばした。
「何ぃー!?そこの逃れ者以外に、あの方に刃向かう鬼がいただと!?」

炭治郎は一瞬迷ったが、禰󠄀豆子の判断は早く、気付いたら鞠を投げる鬼の方へと走っていた。
「禰󠄀豆子があっちを担当してくれるのか!?」
禰󠄀豆子が力強く頷く。
「ならばこっちは……透明な移動補助系の鬼を……担当するか?」
その鬼は『矢琶羽』と言い、両掌に存在する眼で不可視の矢印を操り、あらゆる物体の力のベクトルを捻じ曲げたり、今回の様に索敵や探知に利用する。
だが、流石に発生させた矢印に触れていない物を動かす事は出来ない。
「ならば!」
元々は珠世を殺す為に此処に来たのだ。珠世を動かして炭治郎の気を乱そうとする。
しかし、
「そう来ると……思ったよ!」
炭治郎はあえて術式を解き、珠世を突き飛ばして、自分だけ矢琶羽が放った不可視の矢印に巻き込まれた。
「かかったな!このまま転落死させてくれるわ!」
「何をやってんだあの馬鹿女は!?」
でも、炭治郎にとっては都合が良かった。あの技を初めて実戦で使えるのだから。
「なら……お前も道連れだ!」
「は!どうやって?」
「乙骨さんから最近教わった、無下限呪術の応用の1つ!無限を収束させて引力を発生させる。物体を吸い寄せる力。術式順転……『蒼』!」
その途端、矢琶羽が上昇中の炭治郎に吸い寄せられた。
「何!?無下限呪術はこんな事も出来るのか!?」
そして、矢琶羽が上昇中の炭治郎に激突しそうになったので、慌てて炭治郎の太刀筋を操作した。
「でしょうね!」
炭治郎は待ってましたとばかりに円を描く様に腰を回す。それが、垂直方向の強烈な斬撃を生んだ。
「ヒノカミ神楽、碧羅の天!」
頸を斬られて頭部を落としてしまう矢琶羽だが、やはり日輪刀ではないのが惜しまれる。
「させぬ!」
矢琶羽は自らの血鬼術で自分の頭部を呼び戻そうとするが、炭治郎のダメ押しの一撃……否!二撃が矢琶羽の胴体を襲う。
「ヒノカミ神楽、陽華突!円舞!」
でも、日輪刀ではないので矢琶羽はまだ死なない。が……
(儂の頸……何故戻らぬ!?)
気付けば、何者かによって矢琶羽の頭部は何者かによって縄でグルグル巻きにされて木に括り付けられていた。
「くそ!何時の間に!?だが!」
最早、珠世殺害の報酬は鞠を投げる鬼の物になった事。そして、自分が生きて十二鬼月に成れない事を悟った矢琶羽は、最期の悪あがきとして炭治郎の落下速度を激増させた。
「どうやら……本当に儂を道連れにしてくれた様だなあぁーーーーー!」
でも、炭治郎は無限をクッション代わりにする事で地面に激突する際の衝撃を最小限に抑え、軽傷で済んだ。

その間、禰󠄀豆子は朱紗丸と言う鞠を投げる鬼と戦っていた。
と言うか、朱紗丸が投げつけた鞠を禰󠄀豆子が蹴り飛ばし、朱紗丸が鞠をキャッチするの繰り返しだった。
「どうした?何故さっきの様に飛んで来ぬ?遠くから嬲り殺しじゃ!」
その言葉とは裏腹に、朱紗丸はこれでは埒が明かないと判断。故にとっておきを使う事にした。
「遊び続けよう。朝になるまで……命尽きるまで!」
すると、朱紗丸の腕が6本に増え、それに呼応するかの様に鞠も増えた。
対する禰󠄀豆子は困惑しながら後ろを視た。姉の炭治郎が庇っていた珠世を。
そう。憂太が禰󠄀豆子から人食欲を奪う為の暗示が、禰󠄀豆子の足を引っ張ってしまっていたのだ。
(拙い!?あの子、護りに入ってしまった!ならば!)
当の珠世だってただ護られるだけのか弱き存在ではない。
寧ろ、珠世が仕組んだあるカラクリが、後で朱紗丸の首を絞める事になる。
その間も、朱紗丸は次々と鞠を投げつけ、禰󠄀豆子が鞠を蹴り飛ばすが、先に限界を迎えてしまったのは……禰󠄀豆子の方だった。
矢琶羽を無力化して禰󠄀豆子の許に向かおうとした炭治郎が見てしまったのは……吹き飛んだ禰󠄀豆子の右足だった。
「……禰󠄀豆子おぉーーーーー!」
蒼褪めながら慌てて禰󠄀豆子の許へ駆け寄る炭治郎。
「足が……こめんな……禰󠄀豆子……」
一方、勝ちを確信した朱紗丸は高笑いしながら近づく。
「キャハハハハハ!最早、ここまでの様じゃのう?」
「お待ちなさい」
しかし、見かねた珠世が朱紗丸に話しかけた事で事態は一変する。
「何じゃ?先に殺されたいのであれば、直ぐに殺してやっても良いぞ」
「珠世様!?」
「大丈夫です。それより愈史郎、私は|アレ《・・》を使いました。貴方も下がった方が良いでしょう」
さっきまで珠世を庇っていた青年は一瞬戸惑うも、朱紗丸の目を見て何かを確信し、大人しく下がった。
「は!判りました!」
「|手下(たて)を全て捨てたか?お前がわしより強いと言うのか?」
「貴女が弱い?あの男より度胸が有る貴女が?」
珠世の|挑発(・・)に青筋を浮かべる朱紗丸。
「あの男……誰の事じゃ……」
「誰って、あの臆病者の事ですよ。適当に鬼を増やしてそれを盾にして、結局、自分だけ助かれば―――」
「黙れ黙れ! あのお方は小物などではない! 誰よりも強い! 鬼舞辻様は!」
その直後、朱紗丸は顔面蒼白になりながら大慌てで自分の口を塞いだ。
(なんだ!?急に殺気が消えた!?それに……何を焦ってるんだ!?)
「そこの呪術師よ、術式を収めなさい。既に戦いは終わりました」
「終わった?貴女はあの鬼に何をしたんです?」

原作との相違点

●矢琶羽

・令和7年まで生存。
・十二鬼月に昇格するべく独断で珠世を探し当てた。
・小夏カンナから無下限呪術と六眼の詳細を聞かされ、竈門炭治郎が無下限呪術を使える事も知っていた。
・炭治郎のヒノカミ神楽で頭と胴体を斬り離され、カンナに縄で木に打ち付けられて動きを封じられた。

●朱紗丸

・令和7年まで生存。
・矢琶羽の行動が気になって尾行していたら、珠世の隠れ家に迷い込んだ。

●珠世

・令和7年まで生存。

●愈史郎

・原作とほぼ同一。

第8笑:鬼舞辻󠄀改め汚物辻

十二鬼月への昇格を目論む矢琶羽とそれに巻き込まれた朱紗丸の魔の手から珠世を庇った炭治郎だったが、
「そこの呪術師よ、術式を収めなさい。既に戦いは終わりました」
「終わった?貴女はあの鬼に何をしたんです?」
珠世の謎めいた台詞に軽く混乱する炭治郎に対し、朱紗丸は大慌てで首を横に振った。
「違う……わしは何も言っておらぬ!何も喋ってはおらぬ!」
(怯えてる!?さっきまで殺意満載だったのに、何で!?)
その答えは、朱紗丸の急激な変化が|残酷(・・)に示した。
朱紗丸の口と臍から極太で筋骨隆々な腕が生えた。
それを見た炭治郎がされなる攻撃を警戒したが、珠世がそれを優しく制止する。
「いいえ……彼女はもう直ぐ死にます。残念ながら」
その言葉通り、突然生えた腕が朱紗丸を殴り始めたのだ。
「その名を口にしましたね。|呪い《・・》が発動する……可哀想ですが……さようなら」
珠世のこの言葉で、炭治郎は朱紗丸の身に何が起こったのかを正しく理解した。
「あの鬼は……無惨に殺された……そう言う事ですか?」
珠世は悲しげで残念そうに言葉を紡ぐ。
「……ええ。無惨はある事件をきっかけに、鬼に自白を禁じました。つまり、鬼は許可無く無惨の事を喋ってはいけないのです」
炭治郎は複雑な気持ちで拳を握り締めた。
(甘かった!自分を囮にすれば鬼を捕縛出来ると安易に考えてしまっていた自分が!この鬼は……私に殺された様なものだ!)
その間、無惨の自白禁止の呪いにタコ殴りにされていた朱紗丸の口からか細い要求が漏れた。
「鞠……鞠……」
炭治郎は涙を堪えながら近くにあった鞠を朱紗丸に手渡した。
「はい……これで良いんだな?」
「遊ぼ……遊ぼ……」
炭治郎は耐え切れずに滝の様な涙を流した。
「……ええ……何して……遊ぼうか!?」
そして、朝日が矢琶羽と朱紗丸を焼き尽くして消滅させるが、無惨の邪悪な悪意への怒りが強過ぎて、炭治郎の耳に矢琶羽の悲鳴は届かなかった……
「……鬼か……|鬼舞辻無惨(あいつ)は!」
「そこの呪術師……貴女はいったい?」
珠世は炭治郎が何者か判らなくなってきたが、炭治郎の耳飾りを見てハッとする。
(あの耳飾りは!?この子まさか……私に希望を与えてくれたあの男の!?)
そして、珠世は決断する。
「私は珠世と言います。既に気付いていると思いますが、私も鬼です」
「な!?珠世様!?殺されますよ!」
だが、確かに珠世が鬼だと既に気付いていたが、炭治郎はこの2人が敵だとは思えなかった。
「竈門炭治郎と言います。こっちは妹の禰󠄀豆子と言います」

「そうですか。鬼に変えられた妹さんを救う為に」
「ええ……」
炭治郎は迷ったが、珠世がその迷いを優しく否定した。
「私達は大丈夫です。密かに鬼を研究して無惨の呪いを解除していますので」
炭治郎は正直怖かった。朱紗丸の二の舞になるのではないのかと。
だが、禰󠄀豆子の姉としての使命の方が勝ったので、炭治郎は遂にあの質問を吐いた。
「では単刀直入に訊きます……鬼を人間に戻す方法は在りますか!?」
対する珠世が出した答えは、
「無いのであれば、造るしかありません」
「造るって、鬼を人間に戻す方法をですか?」
「そうです」
炭治郎にとっては竈門ベーカリー壊滅事件の時から探し求め続けた光明に、漸く手が届いた気分だった。
その光はマッチの様に小さいかもしれないが、炭治郎にとっては掛け替えの無い至宝だった。
「で!材料は!私は何をしたら良いのですか!」
愈史郎は珠世に飛び掛かりそうな炭治郎を慌てて制止する。
「落ち着けお前!珠世様の御話を最後まで聴け!」
「あ……すいません……」
申し訳なさそうに座る炭治郎を見てクスッと笑う珠世。
「良いのですよ。貴女も、無惨に多くの者を奪われてる身なのですから」
が、珠世は直ぐに真顔になる。
「治療薬を作る為には、沢山の鬼を調べる必要があります。貴女にお願いしたい事は2つ」
そう言うと、珠世は熟睡している禰󠄀豆子の方を見た。
「1つ、妹さんの血を調べさせて欲しい。2年もの間、人を食っていないにも関わらず、まったく凶暴化していない禰󠄀豆子さんの奇跡に、賭けてみたいのです」
炭治郎は一瞬迷ったが、
「解りました。で、もう1つは?」
「2つ……出来る限り鬼舞辻󠄀の血が濃い鬼からも血液を採取して来て欲しいのです。出来ますか?」
そっちの方は、既に覚悟は出来ていた。
「解りました。どの道、鬼舞辻󠄀を!……もとい!汚物辻を倒す心算で呪術を学んできましたから!」
それを聴いた珠世は、堪え切れずに笑ってしまった。
「ブッ!くく!」
「珠世様?」
「御免なさい。今まで(自分を含む)鬼舞辻󠄀無惨を殺したくなる程恨んだ者ならウンザリする程見てきましたが、鬼舞辻󠄀をここまでコケにした者は初めてでした」
対する炭治郎は真顔で答える。
「あんな糞を魅せられたら、誰だってああ言いたくなりますよ」
珠世は炭治郎の真剣な眼差しを視て決心する。
「解りました。貴女に、私達の命運を託しましょう」
「珠世様!?よろしいのですか?こんなお人好しに賭けても」
「私は……彼女達を信じます。事情が有るとは言え鬼となった者と助け合っていて、鬼舞辻󠄀に殺された者への哀悼の意を忘れない貴女なら、鬼殺隊ですら成し遂げられなかった奇跡、起こせるのかもしれません」

後日、老爺姿の鬼が炭治郎に勢い良く吸い寄せられた。
「むおぉーーーーー!?」
「あんたの笛のせいであんたに近付けないのであれば、あんたが私に近付いてくれれば良いだけの話よ!」
「サラッと超やばい事言ってる!」
「ヒノカミ神楽、烈日紅鏡!」
∞を描く様な斬撃が老爺鬼の身体を4分割した。
「おいーーーーー!儂を誰だと思っておるぅーーーーー!」
老爺鬼は頭部から腕を生やして炭治郎に襲い掛かったが、
「ヒノカミ神楽、日暈の龍・頭舞い!」
炭治郎の更なる斬撃が老爺鬼の身体を更に粉々になった。
「何なんだ貴様は!?糞っ!糞っ!儂はこれから十二鬼月に―――」
「あっ、忘れ物した」
「おいーーーーー!」
炭治郎が投げつけた短刀が老爺鬼から血を吸い採った。
「刺したら自動で血を採ってくれるなんて……こんなの作った愈史郎さんは器用だな」
そこへ、1匹の猫がやって来た。
「この子か?」
この猫は茶々丸と言い、珠世の使い魔である。
「こんな雑魚の血で悪いけど、珠世さんの所へこれを届けてくれ」
炭治郎が茶々丸が背負っているバッグに例の短刀を入れると、茶々丸が愈史郎の血鬼術を使って透明になった。
「珠世だと!?そいつを殺せば、儂は十二鬼月、に!?」
老爺鬼が茶々丸に飛び掛かろうとするが、炭治郎の無下限呪術がそれを阻む。
「気を付けてお行き」
「おのれぇーーーーー!何者なんじゃあぁーーーーー!」
そうこうしている内に夜明けとなってしまい、
「ぎゃあぁーーーーー!」
「『許して』なんて甘ったれた事は言わない。でも、感謝はして欲しい。やっと死ねて無惨の呪縛から解放されたんだ」
炭治郎の悲し気な顔の意味を理解出来ない老爺鬼は、恨みの言葉を吐いた。
「糞っ!糞っ!貴様さえいなければ!儂は十二鬼月に!」
それを最期に老爺鬼は消滅した。
(汚物辻……首を洗って待っていろ!鬼に殺された人達の為にも、汚物辻に鬼に変えられた人達の為にも!)
それを観ていたカンナがニヤリと笑った。
(出したわね?『蒼』を)
だた、カンナが完全に満足しているわけではなかった。
(でも、赫はまだ出していない。まだ使いこなしていないのか?それとも、十二鬼月より下の雑魚鬼如きでは赫を引き摺り出せないのか?)
そこで、炭治郎の観察を目論む呪詛師一派は、次の一手を打つべく最終選別用に生け捕られた鬼達が棲む藤襲山へと向かった。

一方、鬼舞辻󠄀無惨は炭治郎の成長と発言に怒りを覚えた。
「あの太刀筋……あの男を思い出させるあの太刀筋……」
そんな事も遭ってか、法衣姿の男は無惨に進言する。
「そろそろ、只の血鬼術だけでは歯が立たなくなってきている。いよいよ、十二鬼月の出番では?」
だが、無惨はそれを否定する。
「何を言っている?十二鬼月は青い彼岸花の捜索で忙しいのだ。お前も早く探し出せ」
「良いのかい?我々が青い彼岸花の正体を知る前に、あの娘が君を」
法衣姿の男は無惨に睨まれた為、渋々口を閉ざす。
「貴様……そんなに無下限呪術が怖いか?恐ろしいか?」
法衣姿の男は溜息を吐きながらその場を後にした。
「解ったよ。青い彼岸花を探しに行けば良いんだろ」
「行くではない……『|往く《・・》』だ!」
法衣姿の男は、無惨の青い彼岸花一辺倒に呆れながら部屋を後にした。

そんな法衣姿の男が当ても無く歩いていると、複数の呪詛師がやって来た。
「藤襲山に囚われている鬼の中に小学生ぐらいの女児が居ましたので、はさ……カンナの指示で稀血10人分と禪院家に殺されたと思われる女流呪術師達を食わせました。因みに、10人の稀血は全員非術師です」
それを聴いた法衣姿の男が溜息を吐いた。
「禪院家は最期まで相変わらずか……稀血の方は気を遣わせて悪かったね」
「いえ」
「で、その件の女児の方は?」
「は。つい先ほど、血鬼術と炎凝呪法に目覚めました」
「そうか……呪術を使う鬼か……流石の無下限呪術でも手古摺るだろうね。それこそ……茈を引っ張り出さなきゃいけない程に……くくくくく……ふははははははははは!」

そんな幼女の鬼は、まだ人間だった頃に親に売られて他の遊女達に虐待されており、その結果、鬼の中では引っ込み思案で内向的と言える性格になってしまった。それ故、鬼殺隊候補生が藤襲山にやって来た時も怯え過ぎて上手く襲えず、ただ何十年も空腹と飢餓に苦しめられてきた。
だが今は、自分を藤襲山から救い出してくれた呪詛師一派に恩返しするべく、顕現させた炎を拳銃に変えて恐怖に打ち勝とうとしていた。
震える手で彼女が銃口を向けるのは、竈門炭治郎の写真の……

原作との相違点

●鬼舞辻無惨

・令和7年まで生存。
・個人投資家として成功し、悠々自適の生活を送っている。
・気まぐれで(一応あの耳飾りの行方を追ったうえでの行動)竈門ベーカリーを壊滅させたが、その事がきっかけで禰󠄀豆子が鬼と対立する鬼となり、炭治郎が無下限呪術と六眼を習得するきっかけになってしまった。
・朱紗丸粛清を機に、炭治郎に『汚物辻』と言う仇名を付けられた。

●笛鬼

・令和7年まで生存。
・煉󠄁獄杏寿郎とは無関係。
・竈門炭治郎と交戦し敗北。
・死因は日光の浴び過ぎ。

●茶々丸

・原作とほぼ同一。

●銃鬼

・本作オリジナルキャラクター。
・最終選別用に生け捕られて藤襲山に囚われた幼女の鬼だったが、竈門炭治郎の観察を目論む呪詛師一派の策略によって稀血を有する非術師10人と禪院真依・禪院扇の脳を食わされ、下弦に匹敵する呪詛師として覚醒した。
・弾道や軌道などの『動き』を操る血鬼術と炎凝呪法を開花させており、銃などの武器に呪力を籠めて打ち出し、高威力のチャージショットを発射する事も可能。
・引っ込み思案で内向的傾向を有するものの、自分を藤襲山から救い出してくれた呪詛師一派に奉公するべく鬼特有の傲慢・凶暴に徹しようとする健気な一面も持っている。

●禪院真依

・とある諸事情(呪術廻戦第149話参照)のせいで死亡認定を受けている。
・脳を竈門炭治郎の観察を目論む呪詛師一派に奪われ、銃鬼に脳を食われた。

●禪院扇

・とある諸事情(呪術廻戦第149話参照)のせいで死亡認定を受けている。
・脳を竈門炭治郎の観察を目論む呪詛師一派に奪われ、銃鬼に脳を食われた。

●炎凝呪法

・本作オリジナル術式。
・炎を顕現させ、火を物体に変える術式。
・『呪術廻戦』における『構築術式』や『焦眉之赳』に相当する術式。

笑術廻戦~もしも竈門炭治郎が五条悟だったら~

笑術廻戦~もしも竈門炭治郎が五条悟だったら~

オスカー氏(https://www.pixiv.net/users/29448170/artworks)のもし強くなれる理由を知りすぎたら(https://www.pixiv.net/user/29448170/series/81948)、靡黎莊(ミレイソウ)氏(https://www.pixiv.net/users/3632692)の鬼滅の拳(https://www.pixiv.net/artworks/84189158)、グリーンボーイ氏(https://www.pixiv.net/users/15031176)の炭治郎の奇妙な冒険(https://www.pixiv.net/user/15031176/series/64915)などの『竈門炭治郎別キャラ化シリーズ』に参戦しようかと思います。

  • 小説
  • 中編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-11-06

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

Derivative work
  1. 予告編
  2. 第1笑:特級が看た惨劇
  3. 第2笑:藤襲山7泊キャンプ
  4. 第3笑:鬼化の功罪
  5. 第3.5笑:むじゅさんぽ集①
  6. 第4笑:炭治郎ちゃんの初任務
  7. 第5笑:この任務の相関図
  8. 第6笑:炭治郎ちゃんはお人好し?
  9. 第6.5笑:むじゅさんぽ集②
  10. 第7笑:不可解な強襲
  11. 第8笑:鬼舞辻󠄀改め汚物辻