笑術廻戦~もしも竈門炭治郎が五条悟だったら~
オスカー氏(https://www.pixiv.net/users/29448170/artworks)のもし強くなれる理由を知りすぎたら(https://www.pixiv.net/user/29448170/series/81948)、靡黎莊(ミレイソウ)氏(https://www.pixiv.net/users/3632692)の鬼滅の拳(https://www.pixiv.net/artworks/84189158)、グリーンボーイ氏(https://www.pixiv.net/users/15031176)の炭治郎の奇妙な冒険(https://www.pixiv.net/user/15031176/series/64915)などの『竈門炭治郎別キャラ化シリーズ』に参戦しようかと思います。
ただし、私はイラストが壊滅的かつ致命的に下手なので、同人小説と言う形をとらせていただきます。
予告編
コラボ
それは別物同士が融合して新たな次元を生み出す事である。
そしてそれは、出逢う筈がない者達同士に奇跡的な出会いを齎す場でもある。
故に人々は問う、
「どっちの最強キャラの方が強いのか?」
五条悟
「大丈夫!僕、最強だから」
呪術界最優秀術式、爆誕!
完成した直後に呪詛師の大半に敗北を認めさせた、常勝無傷の最優秀術式。
単独での国家転覆が可能であり、クラスター弾での絨毯爆撃と肩を並べるとされる特級の中でも更に別格な術式、
無下限呪術!
軽薄。馬鹿。個人主義。
だが、言うまでもなく、最強!
無下限呪術の許可無く使用者に触れる事叶わぬ鉄壁の防御力。
あらゆる呪術をいとも簡単に見抜いてしまう魔王の神眼、
六眼!
特級ですら強制的に沈黙を貫かせる、
領域展開・無量空処!
無下限呪術は一体、何を持ちえないのだ?
五条悟
「少し乱暴しようか」
故に平成の世の暮らす人々はこう考える。
『もう全部あいつ一人でいいんじゃないかな』と言うタグは無下限呪術の為にあるのではないかと。
だが……
明治の世の本当の姿を知る者達にとって……
その考えに対して懐疑的かつ猜疑的であった……
鬼舞辻無惨
「頭を垂れて蹲え。平伏せよ」
食人族全盛明治の世。
平安時代生まれ平安時代育ちでありながら、明治の世に生きる人々を次々と食人族に変える、紛うことなき悪の始祖!
あらゆる剣豪が総力を挙げて挑むも、ただ1人としてトドメを刺す事叶う者はいなかった……
鬼舞辻無惨!
残酷!
残虐!
非道!
正に圧倒的邪悪!
その肉体は時の流れや寄る年波ですら滅ぼす事叶わず、己の願望を叶えるべく多くの者を食らい尽くす暴虐の王。
力以外の序列を知らず、人々を次々と食人族に変えるその血と牙は世の理さえ拒むと言うのか?
鬼舞辻無惨
「私には何の天罰も下っていない。何百何千という人間を殺しても私は許されている。この千年、神も仏も見た事が無い」
彼にとっては、己の生死のみが生きる指針。
もはや意志を持つ災い。
人類生存の道は、|鬼舞辻無惨の機嫌に託された……
例え……平成の世でどれだけ優れた術式が完成しようとも、この事実が覆る事は無いだろう……
勝つのは、
堕天か天才か?
鬼神か神童か?
強さ故の孤独……
原作内で好き勝手やって来た最強キャラが、最も入手に苦労した者、
それは自分と対等な存在!
さあ、
お前は一体、どこまで俺を楽しませくれる!?
最強
対
最強
遂に激突!
竈門炭治郎別キャラ化シリーズ最新作。
『もしも竈門炭治郎が五条悟だったら』
2026年1月8日公開予定……
第1笑:特級が看た惨劇
1人の男性がつまらなそうに街中を歩いていた。
彼の名は『乙骨憂太』。
11歳の時に遭遇した交通事故の後遺症が原因で東京都立呪術高等専門学校への転校を余儀なくされ、そこで掛け替えのない友と出逢い、呪術と呼ばれる超人的な技を学び、憂太は劇的に強くなった。
6年前に力の源と言える『ある者』を失ったが、それから僅か3ヶ月で本来の力を取り戻した呪術の天才。
呪術師は本来、4から1の階級で区別されるのだが、本来なら呪術師のトップでなければならない筈の1級より更に上に登り詰めた異能の超人。
既存の階級制度の枠を飛び越えた例外等級である特級呪術師に君臨した憂太は、かつての恩師である五条悟に次ぐ現代の異能として注目を集めた事もあったが……
それも今は昔……
どう言う訳か危険呪霊(人体から排出された人の想いが具現し意思をもった異形の存在)の発生率が激減し、今はもっぱら呪詛師(呪術を悪用する犯罪者)の取り締まりが主な任務となってきており、物足りな過ぎてかえって特級である憂太の方が呪術界上層部から危険視される体たらくであった。
「ま……コソ泥や湿気た巾着切りを殺すのにクラスター爆弾を使う馬鹿はいないわな」
つまり、特級呪術師や特級呪霊の本気はクラスター爆弾での絨毯爆撃に匹敵する厄災なのである。
お陰で、五条家当主代理に内定しているとはいえ、特級呪術師に君臨している憂太は、呪術界の手に余り過ぎているお荷物なのである。
そんな核兵器並みに危険視されている憂太の横を素通りしようとしている影があった。
だが、至極真っ当で正論な理由で憂太に猫つまみされた。
「待ちなさいお嬢さん。信号、赤だよ?」
その人物は赤みがかった髪がボサボサのボーイッシュな少女で、額に火傷らしき傷痕が有った。
歳は、小学校6年生か中学1年生と言ったところか?
だが、少女は焦っていたのか、憂太の手を振り払おうとしていた。
「ごめんなさい!急いでるんです!」
「急ぐって言われても……」
目の前は車通りが多い道路。下手な横断は自殺行為だ。見過ごす訳にはいかない。
それに、憂太にとって今手を放す事は、11歳の時に遭遇した交通事故の二の舞になる。
「いくら急いだって……死んだら意味無いよ」
だが、
「早く家に戻らないと!嫌な予感がするの!」
少女の必死の涙目を視た途端、憂太は何故か6年前に言った自らの台詞を思い出した。
『僕が、皆の友達でいる為に!僕が!僕を!生きてていいって思える様に!|夏油傑は、殺さなきゃいけないんだ!』
憂太は溜息を吐きながら少女に言った。
「……乗ってくか?」
対する少女はキョトンとした。
「え?」
少女が意味解んないって表情をしているが、憂太は気にせず勝手に話を進める。
「リカ」
『なぁに』
「力を貸して」
憂太の指輪から、最凶の呪霊が現れた。
「何だこいつ!?」
「ん?リカちゃんが見えるの?」
「リカちゃん!?」
少女が驚くのも無理は無い。
鋭い爪を持つ、鬼の如き体。
無数の牙を持ち、目の無い深海魚の様な顔に、長い髪が触手めいて生えていて、それだけが辛うじて少女の面影を残す。
これが、憂太を特級に戻した憂太の切り札、『リカ』である。
「大丈夫。リカは優しいんだ」
と言われましても、その形では恐れない方が無理がある。
だが、少女は意を決してリカの背中に乗った。
すると、リカは一足飛びで横断歩道を渡った。
「うわぁ!?」
「しっかり掴まってて。振り落とされない様に」
そして、リカは少女に言われるまま、街中を突き進んだ。
だが……
「この程度の血の注入で死ぬとは……太陽を克服する鬼など、そうそう作れたものではないな」
竈門ベーカリーを襲った惨劇を観て、少女は愕然としながら正座する形となった。
しかも、惨劇の実行犯はまだ目の前にいる。
「忌々しい耳飾りと太刀筋だ。血の量からして、|竈門炭十郎は死ぬだろうな」
(父さん……母さん……花子……竹雄……茂……禰󠄀豆子……六太……)
一方の憂太は、竈門ベーカリーを血の池地獄に変えた犯人に関するある推測が有った。
「……まさか……お前が『鬼舞辻無惨』か?」
対する犯人は憂太の推測に苛立ちを覚えた。
「鬼舞辻だと?何故その名を知っている?貴様、鬼狩りの残党か?」
憂太は余裕に魅せたい笑みの額に、冷や汗を滲ませる。
「特級呪術師1人殺スノニ、ソレ以外ノ呪術師ガ、何十人必要ダト思ッテル!」
「知るか。この私に出遭ってしまった不幸を呪え。それだけだろ」
(とんでも無い事を言いやがる!)
その時、家族を皆殺しにされた怒りをぶつける様に、少女が犯人に体当たりをした。
「私の家族を返せ……返せ!」
だが、少女は|怪我の功名的な理由で犯人に触れる事が出来ず、寧ろ、犯人が|不本意な理由で少女から遠ざかった。
「何だ!?今の体当たりは!?」
犯人は慌てるが憂太はそれだけで、少女がリカの姿を見る事が出来る理由を今、目にした。
『無下限呪術』。
憂太のかつての恩師である五条悟が生前に使用していた特級術式。それは文字通り、無限と言う概念を現実にする術。五条悟を最強たらしめる規格外の術式である。
(……2年ぶりだな、無下限呪術を間近で観るのは?五条先生が羂索を殺害した時以来か……)
「うわあぁーーーーー!」
その後も犯人を殴ろうと飛び掛かる少女だが、無意識に発動させてしまった無下限呪術のせいで少女は犯人に触る事が出来ない。
物理攻撃は常に、少女との間には無限の距離を置かれて無意味となる。反則じみた鉄壁の防御。
「くそ!何が起こっている!?」
だが、憂太にとってはあまり嬉しい状況ではなかった。
「不味い!このままでは、あの娘が脳死する!」
無下限呪術は規格外な破壊力・防御力を持つからこそ、そのコントロールには原子レベルに干渉する、緻密な呪力操作が必要となる。時空間を支配する程の演算、まともに扱えば脳が焼き切れる負担は免れない。
幸い、少女は犯人がいる前方にしか無限を発生させていなかったので、憂太は簡単に少女の背後に回り込めた。
「今日はこのくらいにしてやろうか?お嬢さん」
少女の首を殴って少女を気絶させる憂太。
「危ない危ない。無下限呪術を習得出来る可能性が有る将来有望を―――」
「逃がすと思うか?」
やっと無限の呪縛から解放された犯人が憂太達に近付く。
「貴様らの様な危険人物を、この私が野放しにすると、本気で思っているのか?」
だが、憂太が犯人斬りかかろうとした時、別の何かが犯人に飛び掛かった。
「うがあぁーーーーー!」
「何!?」
それは、犯人に殺された筈の女性だった。
「何だと!?」
犯人にとっては予想外の事であったが、何時までも殴られ続ける趣味は無く、直ぐに死んだ筈の少女を振り払った。
だが、
「どう言う事だ……貴様は本当に鬼なのか?」
死んだ筈の少女は、身を挺して憂太達を庇った。
犯人にとっては想定外であり、絶対に有り得ない現象だった。
「この私がどけと言っているのだ。なのに何故?」
その理由を、憂太は既に経験していた。
「失礼だな、純愛だよ」
「純愛?何を―――」
リサは遂に痺れを切らして剛腕を振り下ろしてしまった。
『ゔゔゔゔるさい!』
並みの術師や呪霊であれば、リカの剛腕になぶられ続ければどんどん原型を失って逝く。
だが、今回は憂太に本気の舌打ちをさせると言う、リカにとっては不本意な結果となった。
「流石は不老不死を最終目標とする臆病者……リカちゃんですら、取り逃がすとはね……」
だが、憂太にとってはある意味好都合だった。
「そんな事より……あの2人は死なせない!特に五条先生と同じ|高み《ところ》に往ける可能性が有るこの娘は!」
記録―――2023年7月23日、東京。
鬼舞辻無惨による執拗な襲撃により、店長を含む竈門ベーカリー関係者|七名死亡。
憂太は、無意識に無下限呪術を発動させた少女と竈門ベーカリー関係者唯一の生き残りを保護したその足で、呪術界上層部に謁見した。
「無下限呪術の復活だと?」
6枚の障子が六角形に取り囲む、奇妙な造りの部屋。
その中央に憂太の姿があった。
「今更、無下限呪術が必要か?」
「しかし、本人が了承しました」
「だが、羂索どころか夏油傑すらいない。それどころか2級以上の案件が激減したこの状況で、今更いたずらに特級を増やす気か?」
障子から返って来る物言いはどこか、安全を確保しながら自分達の導きたい結果を周囲に押し付ける、消極的で狡い響きがあった。
「ふざけないで頂きたい。鬼舞辻無惨があのまま暴走していたら、町1つ消えていたかもしれないんですよ」
憂太の脳裏に浮かぶのは、無意識に無下限呪術を発動させた少女の鬼の様な怒りの表情……だけではない。
本当に気にすべきは、例の少女がかつて共に過ごし、大切にし、愛した、ただの家族であった頃の竈門ベーカリー。
その調子が気に障ったのか、別の障子の向こうから荒らげた声が聞こえた。
「師匠が師匠なら、弟子も弟子じゃわい!悪い所が似おった!」
「だとしても、やはり鬼舞辻無惨は危険です。逆に、何人食い殺されるか判りません。現に最近は鬼殺隊に関する情報を聴きません。そろそろ僕達にお鉢を回すべき……だとは思いません?」
障子の向こうに居る連中は、保守的な思考の持ち主ばかりだ。
そういう手合いに反論する為には、出来るだけ具体的な根拠を示してやる事がだと、憂太は知っていた。その効果は十分あった様で、障子の向こうからは、しばし思案する様な空気が伝わり……やがて1人が、促す様な台詞を漏らした。
「では、やはり……」
「はい……竈門炭治郎は、五条家で預かります」
だが、全会一致とまではいかなかったのか、憂太の背中に声がかかる。
「ただ強ければ必ず特級に成れる訳ではない事を忘れるな」
「そうなれば、僕が炭治郎側につく事をお忘れなく」
老いてはいても、そこに集まるは呪術界の有力者達。特級の本気がどれだけ危険か解らぬ程暗愚な者はいない。憂太の決意は、それだけで強い警告となる。
黙る上層部達を一瞥して、憂太は部屋を出て行く。
だが……
「ふうぅーーーーー。疲れたぁー」
かつての恩師である五条悟が今まで何と戦ってきたのかを間近で見た憂太は疲れ果てた。
「あれじゃあ、五条先生が嫌がるのも無理ないよ」
だが、今の憂太は弱音を吐いてる場合じゃなかった。
「2年前の羂索暗殺任務で五条先生が亡くなって以来失われていた無下限呪術。それを取り戻すチャンスなんだ。くだらない保守派異見に邪魔はさせない!」
原作との相違点
●竈門炭治郎
・2009年7月14日生まれ。
・竈門家長女。
・実家はパン屋。
・2023年7月23日に乙骨憂太に保護され、憂太の許で約1年8か月ほど修行して無下限呪術と六眼の基礎を叩きこまれた。
●竈門禰󠄀豆子
・2010年12月28日生まれ。
・竈門家次女。
・実家はパン屋。
・2023年7月23日に乙骨憂太に保護され、憂太の暗示(人間は皆家族であり、家族を守り、家族を傷つける鬼を許すな)と反転術式によって人食欲を喪失。
●乙骨憂太
・虎杖悠仁や両面宿儺とは無関係。
・『リカ』と『無条件の術式模倣』の時間制限が無くなった。
・2023年7月23日に炭治郎と禰󠄀豆子を保護し、炭治郎に約1年8か月間の無下限呪術と六眼を習得する為の修行を施す。
・また、炭治郎の訓練期間の間、長期の睡眠に入っていた禰󠄀豆子に人間を守るよう暗示をかける。
・『鬼滅の刃』における『鱗滝左近次』と『冨岡義勇』の役割を果たす。
・公式記録では、2017年12月24日に夏油傑を殺害した事になっているが……
●五条悟
・虎杖悠仁や両面宿儺とは無関係。
・2021年1月20日に相討ちと言う形で羂索を殺害するも、その時の怪我が原因で2021年7月22日に死亡した。
●羂索
・2021年1月20日に相討ちと言う形で五条悟に殺害された。
●鬼舞辻無惨
・令和7年まで生存。
・個人投資家として成功し、悠々自適の生活を送っている。
・気まぐれで(一応あの耳飾りの行方を追ったうえでの行動)竈門ベーカリーを壊滅させたが、その事がきっかけで禰󠄀豆子が鬼と対立する鬼となり、炭治郎が無下限呪術と六眼を習得するきっかけになってしまった。
●竈門炭十郎
・2023年7月23日に死亡。
・竈門ベーカリーの店長。
・無惨相手にヒノカミ神楽で応戦するも日輪刀を持たぬ故戦死。
第2笑:藤襲山7泊キャンプ
2025年3月5日。
竈門炭治郎と乙骨憂太の姿は、藤襲山の中にあった。
「乙骨さん、本当にこの山で7泊するだけで鬼殺隊に入隊出来る時代が在ったんですか?」
「『窓(術師ではないが呪いを視認でき、多業種に潜む協力者)』が回収した資料を視る限りではそう言う事になってるらしいよ」
とは言われても、一見すると藤の花が咲き誇る長閑な山にしか見えない。
何も知らない者から観れば、この様な長閑な山と鬼と呼ばれる危険生物との接点が解らない。
言い出しっぺの憂太も半信半疑だが、1つだけ確信を持って言える事があった。
「ただし、藤の花に守られた2合目より上に泊まる事。それが条件だ」
「ここより上……乙骨さんが以前言っていた『鬼は藤の花が嫌い』と関係があるって事ですね?」
「そう。原因は不明だけど鬼は藤の花に含まれている香りや毒素に弱い。だからなのか鬼殺隊に協力的な家は藤の花の絵を玄関先に飾っていたらしんだ」
炭治郎は1つだけ矛盾点を感じた。
「でも、その藤の花に護られた山に、鬼はどうやって登るんですか?」
その質問に対する答えは……憂太も知らない。
「ゴメン。それは解らない。僕が知っている事は『藤襲山に7泊するだけで鬼殺隊に入隊出来る』。それだけなんだよ」
その答えに炭治郎は納得出来なかったが、とは言え憂太から科せられた試練には変わりないので、とりあえず藤の花に守られた2合目より上に往く事にした。
「では、行ってきます」
「ま、トライ&エラーだよ。もしこの7泊キャンプが鍛錬にならないと言うのであれば、その時は『やらない後悔よりも、やって後悔』をしてから話そうか」
だが、藤の花に護られたエリアを出た途端、藤襲山7泊キャンプと言う試練への猜疑心を後悔する事になった。
(藤の花が無くなったら、急に鬼の匂いが濃くなった!)
そして……1泊目の夜にしてもう藤襲山7泊キャンプの洗礼を|遭ける羽目になる炭治郎であった。
「久方振りの人肉だ!」
「俺の獲物だぞ!」
「黙れ!」
早速2人の鬼が口喧嘩をしながら炭治郎の許にやって来た。
この様子を見て、炭治郎は確信した。
(そうか!鬼にとってこの山は監獄だったんだ!この山に棲み付いてしまった鬼は、2合目より下にある藤の花のせいで行動範囲が制限され、許容範囲内でしか人を食う事が出来ないんだ!)
そしてそれは、炭治郎の鬼への哀れみへと姿を変える。
(乙骨さんの話だと、鬼か死ぬ方法は4つしかなく、老衰や寄る年波ですら鬼を殺す事は出来ない。だとすると、この山に暮らす鬼は永遠とも言える空腹と戦わなきゃいけないと言う事か!?)
炭治郎が目の前の鬼達の生き地獄に対してあれこれ考えている間も、2人の鬼は先鋒を奪い合う為の口喧嘩を繰り返しながら炭治郎の隙を窺っていた。
(怯むな!乙骨さんの教えを思い出せ!)
『僕達が使用する呪術を要約すると、『体内に溜め込んだストレスを消費しながら発動させる超能力』と言ったところかな』
『ストレス?』
『そう。人間は体内で『想い』を生成し、余った『想い』は体内から抜け出て『呪い』となる。だが、僕達呪術師はその『想い』を体内で『呪い』に変えて呪術にする』
『その呪術を使えは、日の出になるまで鬼の猛攻に耐えられる!?』
『そう。先ずは僅かな『想い』から『呪い』を捻出する方法を学びなさい。どっちにしろ、武器が無ければ鬼とは戦えない』
(恐怖に屈するな!想いを呪力に変えるんだ!)
呪力を捻出しながら炭治郎が臨戦態勢をとる。一方の2人の鬼もまた、何時までも口喧嘩を続けても意味が無いと悟ったのか、先手必勝とばかりに炭治郎に飛び掛かった。
(そして……呪力を『無限』に変えろ!)
『『無下限呪術』?』
『そう。君にはその素養がある。君が初めて無惨と戦った時、君は無意識に無下限呪術を使っていた』
『それを使えば、勝てるんですか?無惨に』
『勝てる!けど、険しい道だよ』
『険しい……道……』
『無下限呪術を使いこなすには、先ずは|六眼を習得する必要がある。|六眼が無ければ無下限呪術は武器どころ……使用者の脳を破壊する欠点……弱点となる』
(|六眼よ……起動しろ!)
あらゆる術式を視認し、呪力を高解像度で観測出来る|六眼は、あらゆる呪いを丸裸にする。
「食ってやるぜぇーーーーー!久方振りの人肉をおぉーーーーー!」
「どけえぇーーーーー!俺が食うんだあぁーーーーー!」
(私の『想い』よ!力を貸せ!)
あと少しで爪が炭治郎に触れると言う時に、2人の鬼は突然止まってしまった。
「何だ!?何故当たらねぇ!?」
「触れない!何で!?」
無下限呪術使用者を害する者は無限に阻まれ、近付く程低速化し接触出来ない。特に呪術に関する知識が全く無い無知な力任せ如きでは触れる事すら叶わない。
そうとは知らずに2人の鬼は必死に口を開閉させるが、文字通りの『当たらなければどうということはない!』である。
(乙骨さんの言う通りだった!無下限呪術さえ使いこなす事が出来れば、私は鬼と戦える!)
とは言え、今の炭治郎は|六眼と無下限呪術の基礎を会得しただけに過ぎず、まだ無限を武器に転用する方法を身に着けていなかった。
だから、炭治郎が今出来るのは、目の前の呪いや想いをサーモグラフィーの様に解析する事と無限を盾として利用するのみ。まだまだ武器とは呼べない。
だから、今の炭治郎は無下限呪術以外の方法で鬼を攻撃しなければならない。
「とりあえず……これで!」
突然頭突きされた鬼が思いっきり吹き飛んだ。
(頭が……硬い!)
炭治郎の持ち前の石頭でする頭突きは、人間であれば脳震盪を起こさせる程の威力である。しかも、現出させた無限で守られている為、その威力は更に倍増される。
(人間の癖に何でここまで頭が硬いんだ!?なんだ!分からん!分からねば!)
2人の鬼はなんとしても目の前にいる炭治郎を食べようともがくが、食い殺した人間の数が1桁の雑魚鬼とまだまだ基礎レベルとは言え|六眼と無下限呪術を使える様になってきた炭治郎の実力差は歴然としており、返り血を浴びせる事すら困難と言う体たらくであった。
一方の炭治郎はその隙にリュックから一振りの刀を取り出した。
『もし万が一呪力を使い果たした時の為に、何かの体術を使えるようにした方が良い』
『体術って?』
『なんでも良い。幸い、竈門家にはその為の道標は既に出来ている』
『この本は?』
『君にとって最厄日であるあの日、失礼して竈門ベーカリーから盗んで来た物だ。『ヒノカミ神楽』の事が詳しく書かれている』
『ヒノカミ神楽!?お父さんが毎年大晦日に徹夜で踊り続けていたアレの事!?』
『それなんだけど、日下部先生の見立てでは、これは神楽でも能楽でもダンスでもない……強力な剣術なんだって』
『剣術!?私のお父さんはそれを家内安全を祈願する為の神楽として利用していたと言うの!?』
『……全ての物に理由はある。君のお父さんが何故これ程の剣術を神楽として利用していたのか?そして、この剣術を後世に残そうと本にしたその理由。そこには君のお父さんの想い……思惑があったんだと僕は思う。それに』
『それに?』
『その父さんがお亡くなりになった今、他の誰かが踊り手を務めなきゃいけない。炭治郎ちゃん、君の出番だよ』
それからと言うもの、憂太の元担任である『日下部篤也』と憂太の元同級生である『禪院真希』にヒノカミ神楽の基礎を叩き込まれる毎日であった。
お陰で、炭治郎の剣の腕は実戦で通用する程に上達した。
一方の2人の鬼は久しぶりの人肉が目の前にあるせいか、目の前の圧倒的な力を前にしても引くに引けなくなってしまった。
「余計な真似をするな!大人しく俺に食われろ!」
「俺が何十年人間を食っていないか!貴様に解るか!?」
「知るか。見境無く何でも食うアーバンベアの様な事を言うな」
(それに、私にはやらなきゃいけない使命がある!)
『|六眼と無下限呪術の基礎を習得したら、後は簡単な任務を幾つかこなして貰い場数を増やし、最終的には鬼舞辻󠄀無惨を超える力を手に入れて、君の妹を人間に戻す方法を引き摺り出す』
『出来るんですか!?禰󠄀豆子を人間に戻す方法!』
『僕には解らない。だから探すしかない。だから鬼化の鍵を握る鬼舞辻󠄀無惨に勝つ必要がある』
『きぶつじ……むざん……』
『僕達が鬼舞辻󠄀無惨を倒して鬼化の謎を全て解く。後は、晴れて自由の身だよ。君も、君の妹もね。だから……強くなってよ。僕や無惨に置いて行かれないくらい』
(だから、今は負けてる場合じゃないんだ!)
炭治郎は、未だ懲りずに炭治郎に襲い掛かる2人の鬼の眼前で上段の構えをとる。
(日下部さんとの鍛錬を思い出せ!父さんの動きをトレースするんだ!)
「ヒノカミ神楽!円舞!」
炭治郎が円を描く様に刀を振り下ろした!
それだけで、鬼が真っ二つになった。
ヒノカミ神楽の威力を前にして、斬られていない方の鬼はおろか、実行した炭治郎すら驚きを隠せなかった。
「えーーーーー!?」
「凄い……禪院さんの言う通りだ……」
真希から「その名字を使うな」と厳命されているが、尊敬や恩義の念のせいか真希の事をどうしても『禪院さん』と呼んでしまう炭治郎。
だが……
「ふざけるな!」
両断された方の鬼が両手で自分の頭を押さえると、真っ二つになった筈の身体が合体して斬られる前の姿に戻った。
「やはり駄目か……日輪刀じゃないと……」
「いい加減、さっさと食われやがれぇーーーーー!」
突き付けられた現実に歯噛みする炭治郎だが、2人の鬼がこれ以上炭治郎を襲う事は無かった。
「うっ!?」
(何だ?この腐った様な臭いは!?)
森の中から出て来たのは、全身に幾つもの腕を纏った大玉の様な高身長の鬼だった。
「くそ!あいつがもうきやがった!」
「今の俺じゃあいつには勝てねぇ!ちきしょう!」
2人の鬼が逃げた理由を理解してしまった炭治郎が緊張する中、大玉鬼が炭治郎に質問した。
「そこの娘、今は、しょうわ何年だ?」
原作との相違点
●呪術
・『KEY THE METAL IDOL』の『巳真家に代々伝わる超能力とその原理』を追加させていただきました。
●日下部篤也
・虎杖悠仁や両面宿儺とは無関係。
・とある諸事情(呪術廻戦第269話参照)のせいで、冥冥にシン・陰流の当主を推し付けられた。
・乙骨憂太の指示で竈門炭治郎にヒノカミ神楽の基礎を叩き込んだ。
●禪院真希
・虎杖悠仁や両面宿儺とは無関係。
・大型二輪免許取得済み。
・とある諸事情(呪術廻戦第149話参照)のせいで禪院家大破の実行犯として捕縛されるも、憂太が五条家当主代理の権限を使って罪状を抹消した。
・乙骨憂太の指示で竈門炭治郎にヒノカミ神楽の基礎を叩き込んだ。
●藤襲山
・かつては鬼殺隊の私有地だったが、現在は空き家状態。
・鬼殺隊最終選別の内容も呪術界にはやや曖昧かつ不完全にしか伝わっていない。
●ヒノカミ神楽
・竈門ベーカリーが鬼舞辻無惨に襲撃された日に憂太が盗んだ書物等に詳細が書かれていた。
・日下部篤也や禪院真希が憂太から渡された書物を参考に再現し、これを基に炭治郎がヒノカミ神楽を習得した。
第3笑:鬼化の功罪
全身に幾つもの腕を纏った大玉の様な長身鬼と対峙した竈門炭治郎は、鬼からの質問に困惑した。
「……昭和?」
「年号は既にしょうわに変わったんだろ?」
「何故それを……何故ここで昭和100年ネタを……」
「しょうわ100年!?」
大玉鬼は嫌な予感がしながらもしつこく質問した。
「嫌な予感がするがもう1度だけ訊く。今は、しょうわ何年だ?」
「正確に言えば、令和7年です」
「やっぱりいぃーーーーー!」
その途端、大玉鬼は絶叫した。
「アァアアア年号がァ!年号がまた変わっているぅーーーーー!これで何度目だ!?俺は気付いたら既に年号が変わってるを何度繰り返せばいいんだあぁーーーーー!」
「……君……何時からこの山に棲み付いている?」
大玉鬼は急に静かに炭治郎を睨んだ。
(何だ!?怒りの匂いが更に濃くなった筈なのに……こいつ、物凄く冷静だ!)
「何時から……慶応だよ……」
「けいおう?」
慶応とは、日本の元号の1つである。江戸時代最後の元号であり、1865年から1868年までの期間を指す。
つまり、この大玉鬼は最低でも157年もこの山に棲んでいる事になる。
スマホで慶応を調べた炭治郎も、その長さに呆れた。
「それだけ永い監獄の中で、空腹と戦ってきたのか?」
「空腹?」
大玉鬼の言い分におかしな部分を感じた炭治郎の背中が冷たくなる。
「何故首を傾げる!さっきの鬼は何十年も人間を食っていないと言っていたぞ!」
「それは、そいつが鬼狩りになりたがるガキ共に負けたからだろ?でも、俺はずっと生き残ってる。藤の花の牢獄で。50人は喰ったなぁ。ガキ共を」
「50人!?」
『炭治郎ちゃん、基本的に鬼の強さは人を食った数だ。食う程力が増し、肉体を変化させ、『血鬼術』と呼ばれる呪術に酷似した何かを使う者も出てくる』
「この山に暮らす鬼の中では……別格と言う訳ね?」
(って!臆してる場合じゃない!こいつを倒さなきゃ!こいつに食われた人々の為にも!そして……人間を食べる以外の選択肢を奪われ、永年殺人の罪を強制的に背負わされたこいつの為にも!)
「来い!今の内に私を殺さないと、何時か私が鬼舞辻󠄀無惨を祓い殺すぞ!」
炭治郎の決意の叫びに対し、大玉鬼は挑発で答えた。
「そんなにこの俺に喰われたいのか?なら……遠慮無く」
「断る。君が無惨に背負わされた殺人罪を、ここで終わらせる。そして、何年かかろうと必ず、無惨が撒き散らした殺人強制と言う呪いを、完全に祓う!」
大玉鬼は無数の手を伸ばした。
「ん?打撃?」
が、無下限呪術の基礎を習得した炭治郎にとっては無いと同じである。
「何!?」
(触れられん!?寸前で停まる)
それに、
「ヒノカミ神楽!烈日紅鏡!」
∞を描く様に左右対称の鋭い斬撃が、大玉鬼の無数の手に襲い掛かる。
「ぐわあぁーーーーー!?何だ!?その刀は!?」
……一見すると炭治郎が優勢に見えるが、今の炭治郎には大玉鬼を殺せない理由があった。
現在、呪術師が知る鬼が死ぬ条件は、
①日光に晒される
②頚を日輪刀で斬られる
③藤の花の毒を受ける
④鬼舞辻󠄀無惨に殺される
の4つ。
だが、呪術師が実行出来るのは『日光に晒す』のみ。
そもそも、呪術師は日輪刀を持っていないので、何度頸を斬り落としたとて、何も意味が無い。
鬼は藤の花に含まれている匂いや毒素を嫌うが、下手に毒を乱用すると毒の成分が見切られて分解されると言う弱点があり、最悪の場合は無惨を通じた鬼の情報共有能力で鬼に毒を克服されかねない、諸刃の剣と言える。
無惨は鬼の始祖であるが故に、自身が作った鬼の細胞を破壊する事ができ、不死の存在である鬼を問答無用で殺す事ができる唯一の存在である……が、それだって無惨の機嫌次第なので過度に期待する事は出来ない。
つまり、呪術師は『呪術を使って日の出まで粘る』以外に鬼に勝つ方法は無いのである。
その事は、憂太から呪術を学ぶ際に最初に(謝罪付きで)教えられた事だ。
でも、だからと言って、無惨に殺人を強要され続ける生活を余儀なくされている鬼達を、これ以上見て見ぬふりは……出来ない!
炭治郎がそんな事を考えている間に、大玉鬼は炭治郎の足下から複数の手を伸ばすが、対する炭治郎は無下限呪術をトランポリン代わりにして大ジャンプをした。
(たっ、高い!仕留め損なった!)
だが、並の人間であればこの時点で動きが大きく制限されてしまう。
(でもな、空中ではこの攻撃を……躱せない!)
が、それは『並み以下の人間』の場合の話であり、無下限呪術にとってその程度の不利は……無いと同じである。
(はじかれた!)
その間にも炭治郎が大玉鬼に急接近する。
(大丈夫だ。俺の頸は硬い。コイツは斬れない!)
が、それも『並み以下の人間』の場合の話であり、ヒノカミ神楽にとってその程度の不利は……無いと同じである。
「ヒノカミ神楽!碧羅の天!」
炭治郎は日輪の輪郭の様な円形を太刀筋を描いて大玉鬼の頸を斬った。
「嘘ぉーーーーー!?」
ただ惜しいのは、炭治郎の剣が日輪刀ではないと言う事だ……
大玉鬼は心底悔しがった。
(くそっ!くそっ、くそォオ!)
だが……炭治郎の剣は日輪刀ではない。
つまり、炭治郎に大玉鬼は殺せない。
(幸い俺の体は無事!再生出来ればまだ好機はある!早く!早く再生しろ!)
でも、大玉鬼は弱音の念も抱き始めた。
(くそっ……目を閉じるのは怖い……)
対する炭治郎の心を支配するのは、無惨に殺人を強要され続けている鬼への……憐れみ。
「悲しい匂いだ……」
すると、炭治郎は大玉鬼に手を握り始めた。
(!?)
予想外の展開に混乱する大玉鬼だったが、炭治郎の握り方が物凄く優し過ぎたので、大玉鬼の混乱は更に助長された。
「神様……どうか……この人が今度産まれて来る時は、鬼になんてなりませんように……」
その時、大玉鬼は思い出す……
鬼化前は、夜に独りになる事を怖がり、兄に手を繋いでいてほしいと願う無垢な少年であった事が死の間際の走馬灯にて判明……
鬼になり、兄を喰い殺してしまった事を初めは嘆いていたが、それも鬼化が進むにつれ……
「……あれ?兄ちゃんって、誰だっけ?」
と、兄の姿に加え、最後には存在さえも忘れてしまった……
皮肉にも、鬼化後は手をつなぐ相手のいない孤独を埋めようとしているかの様に大量の手を生やし、人を殺める事になってしまった……
そうこうしている内に朝となり、日の出となり、大玉鬼は灰となり、消滅した……
それが炭治郎に鬼を増やす唯一の方法を思い出させる……
鬼の始祖……鬼舞辻無惨の存在を……
『この程度の血の注入で死ぬとは……太陽を克服する鬼など、そうそう作れたものではないな』
そして竈門炭治郎は、生まれて初めて、心から望んで人を呪った!
「……殺してやる……殺してやるぞ……鬼舞辻無惨!私は|鬼舞辻無惨を逃がさない!どこへ行こうと!地獄の果てまで追いかけて!必ず、|鬼舞辻無惨の頸に刃を振るう!絶対に|鬼舞辻無惨を!許さない!」
後悔噬臍!悲傷憔悴!怒髪衝冠!意趣遺恨!切歯扼腕!千恨万悔!艱難辛苦!狂瀾怒濤!
感情の名前1つでは、とても表せない漆黒の衝動!
魂が放つ、最も深く邪悪な情動!
数えきれない負の想いが、濁り混ざって、黒くなる!
この世界はそれを、『呪い』と呼ぶのだ!
「ブッ殺してやる」
その後、炭治郎は無事に成し遂げた。藤襲山7泊キャンプを。
しかし、炭治郎に喜びは無い。
(甘かったなぁ。藤襲山で8人の鬼に会ったけど、どの鬼も、まともに会話出来る状態じゃなかった。鬼が人間に戻る方法、ちゃんと訊けなかった)
最も欲しい情報を得られぬまま、結局、炭治郎が藤襲山で得た物は、ちゃんと鬼と戦えると言う自信だけだった。
(禰󠄀豆子……ごめん……お前を人間に戻せないままで……)
その時、炭治郎の前を走る少女の姿に、炭治郎は驚かされた。
「あーーーーー!禰󠄀豆子!お前……起きたのかぁ!」
そう。
竈門禰󠄀豆子は鬼舞辻無惨による竈門ベーカリー襲撃事件以降、ずーっと熟睡したまま起きなかったのだ。
それが今、禰󠄀豆子は遂に目を覚ましたのだ。
そして、お互いの無事を確認するかの様に姉妹は抱きしめ合い、炭治郎は禰󠄀豆子を抱きしめながら号泣した。
「お前、何で急に寝るんだよぉ!?ずっと起きないでさぁ!死んだかと思っただろうがぁ!」
憂太はその光景を優しく見守っていた。
「おかえり。頑張ったね」
一方、炭治郎が藤襲山を去っていた頃、鬼舞辻無惨はタワーマンションの中にあるパソコンの前で座っていた。
「SNSとやらも……大した事ないな?……青い彼岸花には、一向に辿り着けん」
そこへ、法衣姿の男性が近付いて来た。
「そんな事より、藤襲山で大変な事が―――」
対して、無惨は心底どうでもいいとばかりに、藤襲山に巣くう鬼達を酷評した。
「今更、あのような牢獄に強制連行される役立たずに何の用がある?」
男性が言おうとしていた藤襲山に関する報告に対する無惨の反応は、たったそれだけだった。
「そうかい?後悔すると思うよ」
「そうは思わぬ。あの様な役立たず如きに苦戦する様な雑魚など、鬼狩りになったところで先が無い。取るに足らぬわ」
無惨はそれだけ言うと、藤襲山に興味が無いと言わんばかりに話題を強引に変えた。
「後それから、青い彼岸花はどこだよ?」
だが、男性はその問いには答えず、
「私はそうは思わない。藤襲山の件は、私の方で調査させてもらうよ」
「必要無い!不要だ。そんな事より、青い彼岸花を探し出せ。そして、見つけ出し次第、黒死牟と共にそこへ向かえ」
男性が去ったのを確認すると、無惨は退屈そうに溜息を吐いた。
(何故その程度の下奴に此処まで興味を示す?何故奴は青い彼岸花を欲しがらない?)
が、無惨の藤襲山の事を過度に気にする男性への疑心は直ぐに薄れ、無惨は再びパソコンで青い彼岸花をググった……
原作との相違点
●手鬼
・令和7年まで生存。
・平成や令和の存在を知らない。
・死因は太陽光の浴び過ぎ。
第3.5笑:むじゅさんぽ集①
●もしも(明治時代の)竈門炭治郎が五条悟だったら
竈門炭治郎
「残念だよ鬼舞辻無惨……やはりこうなったか!」
鬼舞辻無惨
「失礼ですが、どちら様でしょうか?それに、きぶつじむざんとは何ですか?」
竈門炭治郎
「おとぼけが上手いな。でも、俺がやる事は変わらない」
鬼舞辻無惨
「申し訳ないが、急いでおりますので、この辺で失礼いたします」
竈門炭治郎
「そうつれない事を言うなよ。こっちはこの日にお前が俺の家族を皆殺しにする未来を知ってから、俺は五条家と接触して幼少期から呪術師となり、|六眼と無下限呪術を習得し、最年少で特級呪術師となり、反転術式を習得する事で常に新鮮な脳味噌をお届け状態となった」
鬼舞辻無惨
「あのぉー、何を言っているのか解らないのですが?」
竈門炭治郎
「それだけじゃない。五条家の伝手で産屋敷家と接触して幼少期から鬼殺隊に入り、日の呼吸を極め、最年少で日柱となった」
鬼舞辻無惨
「あのぉー、何を言っているのか、日の呼吸ぅー!?それにその耳飾りは!?」
竈門炭治郎
「やっと思い出してくれたか?俺はこの日の為に必死に修行したんだ。逃がしはしないよ鬼舞辻」
鬼舞辻無惨
「申し訳ないが、急いでおりますので―――」
竈門炭治郎
「自爆しながら逃げようたってそうはいかない。術式順転『蒼』を使ってお前の破片1800個全て全回収してやる」
鬼舞辻無惨
「キッショ!そこまで知っているのか!?縁壱の遺志を受け継ぎ過ぎだろ?」
竈門炭治郎
「とは言え、ただ修行三昧の穀潰しでは申し訳ないので、鼓屋敷と那田蜘蛛山と無限列車に居る鬼を全て祓い、堕姫と妓夫太郎と猗窩座の記憶を元に戻して成仏させた」
鬼舞辻無惨
「鬼狩り共の仕事奪い過ぎだろ!もうお前1人で良くないか?」
竈門炭治郎
「それと、16歳16歳と五月蠅い変態と半天狗とか言う自己中心的老害がいたから、ついでに斬っておいたよ」
鬼舞辻無惨
「上弦が半壊したのお前のせいやないけ!」
竈門炭治郎
「しかも、|六眼と透き通る世界を同時使用する事で、隙の糸が見放題になった」
鬼舞辻無惨
「どこへ行く気だお前は?縁壱を超える気か?」
竈門炭治郎
「と言う訳で、お前に残された選択肢は2つだ」
鬼舞辻無惨
「たった2つかよ」
竈門炭治郎
「1つは、このまま引き返して、珠世が開発中の鬼を人間に戻す薬の完成を静かに待つか」
鬼舞辻無惨
「キッショ!何で珠世の事を知ってんだよ!?どんだけ用意周到なんだお前は!?」
竈門炭治郎
「もう1つは、俺と俺の家族を皆殺しにして禰󠄀豆子を鬼にするかだ」
鬼舞辻無惨
「この私が、お前の様な縁壱超えの化け物を殺すと言うのか?」
竈門炭治郎
「そうだ」
鬼舞辻無惨
「……」
竈門炭治郎
「……」
鬼舞辻無惨
「……黒死牟ぅー!童磨ぁー!鳴女ぇー!助けてえぇーーーーー!」
玉壺
「え?……わたくしはーーーーー!?」
●鬼滅の刃の声優事情①
五条悟
「正直驚いたよ。鬼舞辻無惨に匹敵する寿命を持った術師が、天元以外にもいただなんて」
羂索
「体を返ちて……」
五条悟
「何か、言い残す事は有るか?」
羂索
「『無限城編第一章 猗窩座再来』のキャストが可笑しくないか?」
五条悟
「可笑しいか?」
羂索
「可笑しいだろ。慶蔵の声を担当したのが中村悠一って、『劇場版 呪術廻戦 0』で五条悟役を務めた男だぞ。勿体無いとは思わんか?」
五条悟
「あ、それは大丈夫。『わんだふるぷりきゅあ!』ではウサギ(ロップイヤー)だったから」
羂索
「そうなのぉー!?」
五条悟
「名は確か……大福……とか言ってたな?」
羂索
「本当なのか!?」
五条悟
「それに、子安武人なんか藤襲山の手鬼だったぞ」
羂索
「藤襲山って、鬼滅の刃の序盤の終わり頃の話じゃないか!『ダイの大冒険』で大魔王バーン役を務めた男だぞ!そんな大物を序盤の終わり頃に居る中ボス戦で早々と使うか!?」
五条悟
「どうやら使ったらしいよぉー」
羂索
「声優の取捨選択が可笑しいだろ!?」
五条悟
「その点、櫻井孝宏は優遇されているよねぇー。傑と冨岡義勇だし」
羂索
「そして私―――」
五条悟
「それは|違う《ちっ、がう》!」
●こんな運命を辿る筈だった鬼
竈門炭治郎
「よく考えたんだけど」
手鬼
「何だ?」
竈門炭治郎
「ここで私に倒されて良かったんじゃないの?」
手鬼
「何を馬鹿な事を言っている?」
竈門炭治郎
「いや、だって」
手鬼
『そこの童。今は、令和何年だ?』
鬼殺隊志願者①
『宇宙世紀0079ですけど』
手鬼
『そこの童。今は、宇宙世紀何年だ?』
鬼殺隊志願者②
『C.E.71ですけど』
手鬼
『そこの童。今は、C.E.何年だ?』
鬼殺隊志願者③
『A.S.122ですけど』
手鬼
『そこの童。今は、A.S.何年だ?』
鬼殺隊志願者④
『未来世紀60年ですけど』
手鬼
「やめろおぉーーーーー!言うなあぁーーーーー!鱗滝!鱗滝ぃー!」
竈門炭治郎
「鬼か|鬼舞辻󠄀無惨は」
手鬼
「違あぁーう!悪いのは鱗滝の方だあぁーーーーー!」
第4笑:炭治郎ちゃんの初任務
2025年4月。
竈門炭治郎は私立善根高等学校の校門前に立っていた。
「ここかぁー。乙骨さんが言っていた学校って」
炭治郎は憂太の指示を聴いて自分の耳を疑った。
『入学ぅー!?私が今からですか?』
炭治郎はてっきり鬼狩りに強制同行させられるとばかり思っていたので、学校に行けるとはこれっぽっちも思わなかった。
だが、憂太は炭治郎の力不足を指摘するかの様に宥めた。
『そう自分をせかさないの。言ったでしょ?僕達は禰󠄀豆子ちゃんの為にも鬼舞辻無惨に負ける訳にはいかないって』
『それはそうですけど』
『だからこそ、幾つかの任務をこなして場数と経験値を稼ぐ。幸い、『ナイト・エージェンシー』が高校生向けだけど呪詛師を掻き集めるのに適した任務をちょうど抱えていたんだ』
『ないとえーじぇんしー?』
2023年7月まで平穏な暮らしを送っていた炭治郎にとっては聞きなれない言葉だった。
『ナイト・エージェンシーはホワイトスパイ派遣機関の事で、不正の証拠を捜索したり覆面警備員などの仕事をしている団体だよ』
『つまり、今から往く学校の不正を暴けと?』
「ううん。炭治郎ちゃんにやって欲しいのは覆面警備員の方だよ』
そう言いながら、憂太は炭治郎に1枚の写真を渡した。
『秋場雪賀。秋場財閥と呼ばれる小国に匹敵する影響力を持つ大企業の次期総支配人に内定した……筈だったんだけどね』
流石の炭治郎も憂太の「筈だった」に不穏な空気を感じた。
『権力争い!?呪術を使ってこの人を排除しようとしている人がいるって事!?』
『そのまさかだよ。今回の任務に関わると思われる呪詛師達の狙いは、雪賀の右腕に装着されている腕輪。この腕輪こそ秋場財閥次期総支配人の証だよ』
炭治郎は任務の重大さにチョット引いた。
『そんなやばい腕輪が悪人の手に渡ったら……』
『間違いなく、日本財界は大混乱だろうね』
(そんな重大な任務を素人にやらすな!)
『と言う訳で、任務はその少年の護衛と修正だ。日本財界の命運が懸かっているから心して懸かれ』
炭治郎は後悔の溜息を吐いた。
「我ながら……とんでもない事を安請け合いしちゃったなぁー」
が、何時までも悲観している訳にはいかないので、両頬を叩いて気合を入れる。
「だが、こんな所で挫けてる暇は無い!私が挫ける事は絶対に無い!」
その時、炭治郎が背負ってる箱から何かを引っ掻く音がした。
「禰󠄀豆子、箱の中はキツくないか?」
すると、引っ掻く音は治まった。
「そうか……乙骨さんには、本当に色々お世話になったな」
因みに、その箱は太陽光と外敵から身を護る為、62口径5インチ単装砲1000発の衝撃にも耐えうる様設計された、言わば1人用シェルターである。
が、炭治郎が校舎の中に入ろうとした時、1人の男に呼び止められた。
「ちょっと待て」
「何でしょうか?」
「その耳は何だ?」
男は炭治郎の耳が気に入らなかったらしい。けど、炭治郎は身に覚えが無いので首を傾げるばかりである。
「耳?私の耳がどうかしました?」
「とぼけるな!では何故、ピアスを装着しながら登校した?」
どうやら、男の本当の狙いは父の形見である耳飾りであった。
生活指導の冨岡先生は、親の形見だろうが何だろうが、校則違反のピアスは許さない。
だが、まだ基礎レベルとは言え無下限呪術とヒノカミ神楽を習得した炭治郎を捕らえるのは困難だった。
「すみませーん!父の形見なんですー!」
炭治郎は謝罪しつつ攻撃を躱す。当たった日は保健室行きである。
でも、例え当たらなくても、捕まれば形見没収は免れない。
と言う訳で、炭治郎は慌てて校舎に逃げ込んだ。
対する冨岡は炭治郎を追おうとするが、その背後に嫌な予感がしたので、追撃を一旦中断する。
「後、そこの猪!」
「あ?この俺様になんか―――」
冨岡は、反抗的な態度をとった生徒の左頬を狙って竹刀をフルスイングした。
「もっと真面目に制服を着こなせー!」
「ぐえぇー!」
確かに、素足で一年中半袖でシャツの前は常に全開。学校には弁当しか持ってこないでは、生活指導の冨岡が怒るのも無理は無い。
「以後気を付ける様に」
が、そのせいで冨岡は炭治郎を取り逃がしてしまったのであった。
そんな冨岡と炭治郎のやり取りを視ていた女子生徒が、悔しそうに舌打ちしながら炭治郎の後を追う様に校舎に駆け込んだ。
「くっそ!あの馬鹿真面目先公め!初日でいきなり炭治郎を見落とすとは……」
慌てた女子生徒は、炭治郎を捜索しながらスマホで電話を掛けた。
「はさ……小夏先生!申し訳ありません!」
スマホ越しに女子生徒の報告を聞いた小夏は、別段慌てる様子も無く、寧ろ焦る女子生徒を宥めた。
「落ち着きなさい。炭治郎の狙いは既に割れている」
「つまり、秋場雪賀を探し出せば良いんですね!?」
「それについては……|非術師の|報酬に屈した|呪詛師の残穢を追いなさい。私もそちらに向かう」
「解りました!」
てきぱきと炭治郎を追う女子生徒への指示を終えた小夏がスマホの通話を切り、足早にある者の許へと急ぐ。
「よほど術式によるステルス移動に自信が御有りの様だけど、これだけ残穢を撒き散らしたら意味無いでしょ?」
雪賀を狙う呪詛師の愚かさに、小夏は歯噛みしながら悔しそうに舌打ちをした。
「くっ!あの時……私達が勝ってさえれば!」
一方、当の雪賀はナイトが派遣したエージェントと思われる男子生徒との同行に難色を示した。
「何であいつが僕の半径100mから離れられないって事になるんだよぉー!」
「これも雪賀さんの安全の為です。我慢してください」
スーツ姿の長身な女性の説得にも納得出来ず、雪賀はナイトの判断に不満を口にする。
「そんなの、椿がいれば大丈夫じゃん!」
この様子では、物陰に隠れてコッソリは難しそうだと判断したエージェントは、作戦を変更して雪賀の前に出る事にした。
「そこまでコソコソしている態度が気に入らないと言うのであれば……ナイト・エージェンシー所属の我妻善逸と言います。以後、御見知り―――」
だが、それがかえって雪賀の機嫌を悪くした。
「くーーーーー。僕はねぇー!椿の強さとえちえちボディーを舐めるなと……」
(フォローになっていない)
だが、雪賀のナイトの決断と憂太の余計なお世話への非難は、雪賀の足下から生えた悪意に満ちた両手と、それに事前に気付いた善逸のタックルによって阻まれた。
「いきなり抱きつくな!僕は男だぞ!」
「その容姿で男を騙られても、真実を知らない人は納得しません!それに……」
善逸と椿は、雪賀の足下から何の前触れも無く生えた両腕を注視しようとするが、なす術無く見失い……
(!?)
「床に沈んだ?」
再び雪賀の足下から悪意に満ちた両手が生えた。
「またか!?」
善逸の咄嗟の判断のお陰で雪賀はまた謎の手に触れられずに済んだが、
「これが……乙骨が言っていた呪詛師の力か!?」
(相手の姿が見えない!?どこを攻撃したら良い!?)
2人にとって未知過ぎる現象であり、根本的な対処法が解らぬまま、もぐら叩きの様に生えては沈む謎の手から雪賀を遠ざけるのが関の山となってしまい、
(不味い!このままでは……ジリ貧だ!)
(せめて……攻撃さえ出来れば!)
だと言うのに、雪賀はある意味呑気過ぎる文句を言った。
「何で|善逸ばっかなんだよぉー!?どうせなら、椿に抱きつかれたかったよ!」
「生憎、俺は耳と足が良いんで!」
が、善逸と椿の善戦虚しく、床から生えた手が遂に雪賀の足を掴んでしまった。
「しまった!」
「雪賀さん!」
しかし、ここで漸くあの少女が……炭治郎が間に合ってくれた。
「させるか!」
炭治郎が咄嗟に無限を発生させる事で雪賀が床に沈むのを防いだ。しかも、無限の勢いに屈した謎の手が雪賀の足を放してしまう。
「申し訳ありません!遅くなりました!」
「大丈夫!ギリギリセーフだよ!」
「貴女が来てくれなかったら、雪賀さんが大変な事になりました!」
ご都合主義的に現れてしまった炭治郎による攻撃にイラっとした呪詛師は、遂に口を開いてしまった。
「何だ貴様らは?次から次へと」
「床が喋った!」
「いい加減にしろ!気色悪いもの使いやがって。いい加減出て来い!」
雪賀と善逸が床に沈んだ状態のまま喋った呪詛師に驚く中、椿と炭治郎は軽く状況を確認した。
「呪術って、こんな芸当も出来るのか!?」
「乙骨さんの話だと、それは生得術式次第との事だそうで」
「つまり、敵は床の中に隠れるのが得意と?」
炭治郎は呪詛師が撒き散らした残穢の匂いを確認しつつ、
「どうやらその様です」
呪詛師は床に沈んだ状態のまま雪賀の足を掴もうとしたが、炭治郎の|六眼と嗅覚がそれを捕らえた。
「そこの金髪さん、今、こいつに『出て来い』と言いましたよね?」
その質問に、椿が代わりに答えた。
「お恥ずかしながら、未だに敵の姿が見えず、どこを攻撃すれば良いのかが……」
合点が入った炭治郎が自信を持って宣言する。
「なら、こいつを生得術式の沼から引き摺り出す!」
そこで、炭治郎は無下限呪術の出力をアップさせて『出られない』と言う勘違いを助長する。
「ぐっ!?このままではこの沼から出られなくなる!俺が作った沼なのに!」
炭治郎との我慢比べに早々と屈した呪詛師が、大慌てで炭治郎達の眼前に全身を晒してしまった。
「貴様も術師か?同業者か!?」
その言葉に、炭治郎が不快感を露わにする。
「同業者?人を襲う事しか能が無い|呪詛師には言われたくない。それだけの|呪術を持っていながら、罪無き人々にその暴を振るうのか?何が楽しい?何が面白い?命を何だと思っている?」
対する呪詛師が舌打ちをする。
「チッ!高専の手下かよ……随分頭の悪そうな事をする―――」
「糞真面目な社畜は馬鹿のする事とでも言う心算か?正に『悪銭身に付かず』だな」
「何でそうなる!」
「楽して稼いだ金に希少価値は無い。だから簡単にパーッと|散財って直ぐ|破産くす。それに、こーんな犯罪で得た金なんて、逮捕されたらあっけなく没収されちゃうよ」
「賢く稼ぎ続ければ良いだけの話だろ!いい加減、|秋場雪賀を渡せ。そうすれば、12億を山分けしてやらんでもないぞ」
「嫌なこった。秋場雪賀は男だし」
「嘘つけ!その形のどこが男だ!」
「それに、お前は1度逮捕されて貧乏の辛さを学んだ方が良い。私がお前の逮捕を手伝ってやるから」
「クソガキが!」
原作との相違点
●竈門炭治郎
・2009年7月14日生まれ。
・竈門家長女。
・実家はパン屋。
・2023年7月23日に乙骨憂太に保護され、憂太の許で約1年8か月ほど修行して無下限呪術と六眼の基礎を叩きこまれた。
・更に、日下部篤也と禪院真希にヒノカミ神楽の基礎を叩きこまれた。
・2025年、秋場雪賀の護衛を命じられて私立善根高等学校に入学した。
・『スパイガール!』における『雪乃晴』に相当する人物。
●冨岡義勇
・私立善根高等学校体育教師。
・それ以外は『キメツ学園』とほぼ同一。
●嘴平伊之助
・私立善根高等学校1年生。
・プロレスの時間(『鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚』参照)使用可能。
・それ以外は『キメツ学園』とほぼ同一。
●熱田睡蓮
・本作オリジナルキャラクター。
・女性呪詛師。
・私立善根高等学校1年生。
・竈門炭治郎を観察する為に潜り込んでいる『ある方』のスパイ。
・特技は催眠術。
・頭部は黒木智子(私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!)で首から下は香椎愛莉(ロウきゅーぶ!)。
●小夏カンナ
・私立善根高等学校英語教師。
・竈門炭治郎を観察する為に潜り込んでいる『ある方』のスパイ。
・熱田睡蓮の上司。
・正体は●●●●子。
●秋場雪賀
・本作オリジナルキャラクター。
・私立善根高等学校1年生。
・秋場財閥次期総支配人。
・美少女並みに滅茶苦茶可愛い男子高校生。
・少女趣味を持っているが、ちょっとゲスでスケベ。
・『坊ちゃん、困ります!』における『桜小路透』に相当する人物。
●寒崎椿
・本作オリジナルキャラクター。
・秋場家の護衛をしている一族出身。
・主な任務は秋場雪賀の護衛。
・高身長でグラマーなイケメン女子。
・『坊ちゃん、困ります!』における『七実』に相当する人物。
●我妻善逸
・私立善根高等学校1年生。
・ナイト・エージェンシー(『スパイガール!』参照)所属のエージェント。
・秋場雪賀を護衛する為に送り込まれたスパイ。
・雷の呼吸使用可能。
・聴覚が非常に優れている。
・『スパイガール!』における『奈々木新』に相当する人物。
・それ以外は『キメツ学園』とほぼ同一。
●沼鬼
・鬼舞辻󠄀無惨とは無関係。
・高額報酬欲しさに秋場雪賀をつけ狙う呪詛師。
・それ以外は『キメツ学園』とほぼ同一。
第5笑:この任務の相関図
1人の悪しき呪詛師が、術式を使って寒崎椿と我妻善逸を掻い潜って秋場雪賀を拉致しようとするが、竈門炭治郎が間一髪で乱入した事で拉致は未遂に終わり、悪しき呪詛師が漸く雪賀達の前で全身を晒した。
「秋場雪賀への襲撃を辞め、このまま去るのであれば、私は見逃しても良いと思っているけど、どう?」
「ふざけるな。12億だぞ」
「残りの人生を刑務所暮らしで消費する事になってもか?」
「ふん!さっさと秋場雪賀を拉致して逃げ切れば良いだけの話だろ!」
自分勝手な事を言う呪詛師の邪悪な判断に対して不満そうに舌打ちをする炭治郎。
「馬鹿が……貴様が今からすべきは、家に帰って自分の人生を考え直す事だったのに……」
呪詛師が再び床の中に沈もうとしていたので臨戦態勢を取ろうとする炭治郎だったが、背後からの殺気を臭いで感じたので、|彼ら《・・》に道を譲った。
「雷の呼吸、壱ノ型、霹靂一閃!」
善逸がすれ違いざまに呪詛師の腹を箒で引っ叩いた。
「速、ぐえぇーーーーー!」
その勢いのせいで、呪詛師は床から足を出してしまう。
「しまった!?」
「やはりか!お前の術式は、壁や地面に対し沼地を発生させ沼の中を自在に動き回れる……と言ったところか?」
「何故それを―――」
炭治郎の正答に素直に驚こうとする呪詛師だったが、椿がそんな暇を与えない。
「2度と雪賀さんに触るな」
椿の連打になす術無くタコ殴りにされる呪詛師。
これには流石の善逸もドン引きする。
「……うわぁー……いくら何でも|殺り過ぎでしょ?これじゃあ尋問出来ないって」
そして、椿のダメ押しの回し蹴りを食らって吹っ飛ぶ呪詛師。
それを観ていた炭治郎は、逃走を選択出来なかった呪詛師の欲深さに呆れた。
「やはり貴様がするべきは自分の人生を考え直すだったな?と言うか、御強いじゃないですか2人共」
だが、椿は素直に喜べなかった。
「御冗談を。貴女が何者かは知りませんが、貴女がいなければ、雪賀さんは今頃……」
「まあ、そんな硬い事は抜きにして、私は竈門炭治郎。乙骨さんに頼まれてここに来ました」
それを聞いて善逸が軽く驚く。
「君が乙骨憂太が言っていた『呪術側の助っ人』って奴か?」
「はい」
「……呪術高専の中に、君って居たっけ?」
「いいえ。今日が久々の通学です」
善逸は困惑した。
「これを言うのはスパイとして失格だけど……君……何者?」
そうこうしている内に、2人の教師が先程の呪詛師を縄で締め上げていた。
「たく……部外者が学び舎で暴れてんじゃねぇよ!」
雪賀達はどうしても、その内の1人の容姿に目が行ってしまう。
「うわぁー……傷だらけだなぁー。あの人」
「あの方にどのような過去が?」
「彼は、私立善根高等学校数学教師の『不死川実弥』。短気で怒りっぽいが数学をバカにされた時以外は良識的ツッコミ担当。身体の傷については……学園のマドンナ的存在である生物教師の胡蝶カナエに横恋慕した生徒達と揉めた事と、まるでワニみたいな女と揉めた事ぐらいしか掴んでいない」
「つまり、数多の喧嘩の積み重ねがあの傷を生んだと?」
「だと思いたいね。本部もこの男をそこまで危険視していないし」
が、実弥の目立ち易い容姿のせいで椿と善逸は、本当に猜疑の視線を向けるべき|呪詛師を見誤った。
(ん?あの縛り方は?)
炭治郎は、女性教師の縄の縛り方に不安を感じ、その縄を|六眼で注視した。
(やっぱり!想いを呪力に変換するのを阻害する縛り方だ!)
今回の護衛任務に挑むにあたって、乙骨憂太から移動系術式を有する呪詛師を無力化する方法を幾つか学んできたが、それを秋場雪賀の敵になるかもしれない呪詛師がそれを実行しているとは……
(前々から秋場財閥の一件を知って教師として忍び込んだ!?何と言う用意周到!)
だが、その女性教師から殺気の臭いが一切感じない。
(チャンスを待っているのか?あいつの様な早い者勝ちの短期決戦に走らず、じっくり油断と勝機を待つ心算か!?)
女性教師は炭治郎が|六眼を使って自分を睨んでいるのに気付いたのか、含みを持たせた笑みを炭治郎に向けた。
(なんて慎重かつ大胆な女なんだ!?ああ言うタイプの殺し屋の方が、案外手強いかも!?)
炭治郎は呪詛師の疑いのある女性教師『小夏カンナ』を|呪詛師と見定めたが、善逸達には伝えなかった。
カンナの潜伏期間を打ち破れる程の信頼と証拠が無いと判断したからだ。
故に、ギリギリで先程の呪詛師と炭治郎達との戦いを観戦出来た熱田睡蓮の悪意に満ちた熱視線を炭治郎は見落としてしまった。
「素晴らしい……これが無下限呪術の力。『あの方』が手放しで称賛したのも頷ける」
どうやら、睡蓮もある目的の為にこの学校に潜入した呪詛師の様だが、カンナ同様直ぐに雪賀を襲う心算は無い様だ。
「さて……問題は……どうやって竈門炭治郎に捕まらずにはさ……小夏さんの許に向かうかだな……」
その後、カンナが『高専』が動き出す前に呼んでおいたパトカーに、炭治郎達に敗れた呪詛師を引き渡した。
「糞!放せ!と言うか、なんだこの縛り方は!?沼が……沼が出ねぇー!?」
「こいつですか?この学校に不法侵入した変態と言うのは?」
警官の態度に不満を感じる実弥。
「そうだが。そんな事より、生徒達に危害が及ぶ前にちゃっちゃとそいつを逮捕して欲しいんだけど」
実弥に文句を言われた警官達の上官の方が頭を下げながら事情を説明する。
「申し訳ありません。この者、窃盗と脱獄の常習犯でして」
「おい!もっとちゃんと監視してくれよ!始まってからじゃ遅い事もあるんだからよ」
実弥が警官達の対応に不満を抱く中、捕まった呪詛師が大慌てしながら地団駄を踏んだ。
「放せぇーーーーー!他の奴に先を越されちまうぅーーーーー!俺の12億が、俺の12億があぁーーーーー!」
「何が12億だ?映画に出て来る暗殺者の心算か?お前の下らん与太話の続きは、署でたっぷり聞く!」
そんな呪詛師にカンナが耳打ちをする。
「ごめんなさいね。平成29年のあの日に私達が負けてしまったせいで」
呪詛師はビックリ仰天して狼狽した。
「平成29年だと!?貴様、あの日はどこで何を―――」
が、呪詛師は直ぐにパトカーに押し込められた。
「待ってくれ!この学校は色々とやばいんだよ……12億だけじゃない……平成29年も居るんだよぉーーーーー!」
「何を言っているんだ!?今は令和7年だ。そんな事より、早く乗れ!」
「そう言う事を言ってんじゃない!平成29年はやばい!本当にやばいんだって!」
容疑者である呪詛師がパトカーに乗ったのを確認した警官達の上官の方は、突然カンナに耳打ちをされた。
その内容に上官は驚いた。
「高専だと?そこの方、アンタはいったい」
とは言え、今は学校に不法侵入した殺人未遂容疑者の護送が優先なので、当たり障りのない形でカンナに釘を刺した。
「後日、事情聴取に来て頂く事が有ります。現場にいた者として」
実弥が気怠そうに答えた。
「はいはい。状況証拠ね。解りましたよ」
そして、パトカーは例の呪詛師を乗せて出発した。
それを見ていた悲鳴嶼行冥は、(カンナの耳打ちを聞き取れなかったせいか)涙ながらにこうつぶやいた。
「金銭と権力に取り憑かれているのだ。彼が早く(悪意から)解き放たれる事を願う」
だが、パトカーは何故か警察所には向かわず、
「そこで一旦停まれ」
「は?何故です警部補?」
「……あいつらに、引き渡す」
呪詛師は上官の言うあいつらの正体が乙骨憂太だと気付いて慌てふためく。
「馬鹿!そこで停まるんじゃない!お前ら如きがあいつに勝てる訳ねぇだろ!」
「そうだ。ここから先は、|呪術師達の仕事だ」
先程の呪詛師の逮捕を確認したところで、善逸は周囲を警戒しつつ護衛任務を円滑に進める事を目的とした自己紹介を改めて行った。
「俺は我妻善逸。もう気付いてるとは思うが、ナイト・エージェンシー所属のエージェントで、今回の任務は秋場雪賀の護衛だ」
「私は竈門炭治郎。乙骨さんに秋場さんの事を頼まれてこの学校に来ました」
「私の名前は椿。私の一族は、名家・秋場家の護衛をしています」
「僕は秋場雪賀。僕は椿の事が大好きです」
「……ん?」
善逸は首を傾げた。
「雪賀さん、今回の自己紹介は、あくまであんたの護衛を円滑に進める為の簡易的なモノで―――」
だが、雪賀の口は止まらない。
「椿は可愛いし、その目も、高い背も、僕は大好きだよ!」
「雪賀さん……」
「あと、おっぱいクソデカなとこも、エッロい尻も、ほんとスケベな体で最高。むほほ」
「雪賀さん?」
善逸が慌てて制止した。
「はいはいはいはい。一応俺が周囲を警戒しているとはいえ、そう言うバカップルの馬鹿話は人目を気にしながらやってください」
そんな秋場達のやりとりに困惑する炭治郎であった。
「……これは面白い学校生活になりそうだ」
一方、早速雪賀を襲った呪詛師から例の『12億』について問いただそうとする乙骨憂太と夜蛾正道だったが、当の呪詛師はカンナに『平成29年』と言われたショックでまともな返答が出来ない状態だった。
「本当だ!嘘じゃない。あの学校には『平成29年』が居るんだよ!|高専なら、ちょっと調べれば直ぐに解るって!」
「そんな事より、誰に頼まれて、あの学校に行ったの?」
「お前は本当に乙骨憂太かぁ?『平成29年』だぞ!憶えてるだろ!?」
夜蛾が困惑しながら溜息を吐いた。
「……今日も、駄目そうだな?」
「……ええ……相変わらず『あの学校には平成29年が居る』の一点張りですよ」
「……平成29年と言えば……」
憂太が口惜しそうに俯いた。
「僕が呪術高専に転校した日……そして……あの男に……大切な仲間を傷付けられた日だ!」
日下部篤也が面倒くさそうに言った。
「じゃあ何か?あの事件の生き残りが、秋場雪賀を狙っていると言うのか?」
憂太は首をゆっくりと横に振った。
「……多分違うと思います。あの男は……大金如きで満足する程……無欲じゃない」
その頃、睡蓮とカンナが高級タワーマンションで鬼舞辻󠄀無惨に謁見した法衣姿の男にある報告を行っていた。
「炭治郎は既に、無下限呪術を取得した様です」
「ただ、あのアホが弱過ぎたせいか、蒼と赫の有る無しは確認出来ませんでした」
報告を男は満足げに答えた。
「つまり、あの女はすくすくと育ってる訳か?|無惨はまだその重大性に気付いていない様だが……」
原作との相違点
●不死川実弥
・私立善根高等学校数学教師。
・胡蝶カナエに横恋慕した生徒達や「算数ができなくても生きていけるから大丈夫です」とぬかしたワニの様な女と揉めた過去が有るらしい。
・だが、ナイト・エージェンシー(『スパイガール!』参照)は彼をあまり危険視していない。
・それ以外は『キメツ学園』とほぼ同一。
●胡蝶カナエ
・私立善根高等学校生物教師。
・それ以外は『キメツ学園』とほぼ同一。
●悲鳴嶼行冥
・私立善根高等学校公民教師。
・それ以外は『キメツ学園』とほぼ同一。
●夜蛾正道
・未だ生存。
・虎杖悠仁や両面宿儺とは無関係。
●平成29年
・乙骨憂太が東京都立呪術高等専門学校に転校した日。そして……
・とある事件のせいで、呪術師や呪詛師にとってはある意味禁忌的な存在となった……
第6笑:炭治郎ちゃんはお人好し?
我妻善逸。
表向きは私立善根高等学校1年生だが、彼の本来の所属はナイト・エージェンシー。つまりスパイである。
今回彼に与えられた任務は、秋場財閥次期総支配人である秋場雪賀の護衛。
なので、毎朝、ナイトが開発した特殊カメラを使って校門を通る生徒達を解析している。
「……今日も健全な登校風景、っと」
ただ、善逸にはちょっとした下心が有った。
「しかし……この学校は美人が多いなぁー!」
私立善根高等学校2年生で(一応)華道部の栗花落カナヲ。
同じく(?)、私立善根高等学校2年生で華道部の神崎アオイ。
私立善根高等学校3年生で薬学研究部とフェンシング部を掛け持ち胡蝶しのぶ―――
善逸の邪念を感じた生活指導担当の冨岡が、善逸の目の前に立っていた。
「うわぁ!?冨岡先生!?」
「お前今、服以外の物を観ようとしていただろ?」
冨岡の指摘に対して慌てて否定する善逸。
「失敬な!俺は秋場雪賀の護衛だぞ!」
そう言いながら善逸は特殊カメラによる登校する生徒達の解析を再開するが、そんな善逸の前を半袖でシャツの前は全開の伊之助が通過しようとした。
(あのバカ……余計な奴の前で余計な事を……しかも弁当しか持ってねぇ……)
当然、
「制服をちゃんと着こなせぇー!」
冨岡の鉄拳制裁が伊之助を襲った。
「ま、そうなるわな」
その後も、善逸は登校する生徒達の解析を続け、遂に肝心の雪賀が護衛である椿を連れて学校にやって来た。
「あ、椿さん、おはようございます」
「我妻さん、毎朝お疲れ様です」
すると、雪賀が騒ぎ出した。
「椿に近付かないでよぉーーーーー!」
「何でだよ!?ただの中間報告だろ」
「椿が他の男に引っ掛かるのは嫌ーーーーー!」
「心配ありません。高校生に手を出さないので」
「僕には手を出してよおぉーーーーー!」
(めんどくさい)
雪賀の厄介な性格に呆れつつ、雪賀が無事に校舎に入った事を確認すると、善逸は再び登校する生徒達の解析を続けた。
が、
「カア!カア!8時25分!8時25分!授業開始5分前ェエー!」
「おい!予鈴が鳴ってるぞ!早く教室に入れぇ!」
鎹鴉の叫び声と不死川の怒号を聴いて善逸が困惑する。
「え!?炭治郎はまだ来てねぇよ!」
そこへ悲鳴嶼がやって来て、
「竈門君ならまだ来ないよ」
「……何で?」
その頃、炭治郎は駅で変質者と揉めていた。
「やめろ!尻を出すな!しまうんだ!」
「出す!」
「出すな!」
電車に対して変態行為をする男。こいつは本当にやばい。
そのせいで遅刻してしまった炭治郎を不憫に思った駅員の三郎さんが一筆書いて渡したのだが、肝心の変質者が、
「今日こそは」
何故か何時の間にかいなくなってしまうのだ。
「本当に気色悪い変質者だ、打ち首にして欲しい」
「このお人好し」
「……ゴメン」
炭治郎の遅刻理由に呆れる善逸と悲鳴嶼。
「誇らしい事ではあるが、やはり遅刻は問題だ」
「ごめんなさい。でも、ほっとけなくて」
「……それをお人好しって言うんだよ……」
職員室での説教から解放された炭治郎と善逸は小声で話し合った。
「頼むよ。他は兎も角、呪術の方はからっきしなんだ」
「あー、あの時の沼男の事?」
「アレは正直、スパイとしては羨ましい限りなんだけどね」
「羨ましい……ね。でも、その力を正しく使わないのであればただの迷惑。排除対象ですよ」
その時の炭治郎の顔はどこか悲しげであった。
他人の感情を読み取る程非常に優れた聴覚を持つ善逸は、そんな炭治郎の悲し気な顔に心底呆れた。
「……本当、お人好しだなお前は」
が、ナイトの厳しい鍛錬を積まされ、スパイのなんたるかを叩き込まれた善逸もまた、『力の正しい使い方』に思うところはあった。
(ナイトから教わった爆弾解除、潜入、変装、戦闘、それを犯罪者の為に使ったらどうなるか……それぐらいは散々聞かされてきたよ)
そんな2人の背中を小夏カンナが複雑な気持ちで|視て《・・》いた。
(撮り鉄界隈ではかなり有名な変態だと聞いていたが、所詮は|非術師か)
その後は、何事も無く授業は進み、今日の雪賀護衛任務は終了する。
(流石は特級呪術師と恐れられた乙骨推薦の助っ人様だ。居るだけでちょっとした抑止力になっている)
善逸は確かに炭治郎の実力を認めてはいる。だが、それは対人戦に限った事であり、調査・推理の方面はやはり善逸達ナイト・エージェンシーが頑張る必要がある。
(『平成29年』の方の調査は9割9分俺の私怨だが……問題は『12億』の方だ。もし大方の予想通りだったら……頼みましたよ!後藤先輩!)
2日後。
『12億』に関する調査結果が善逸のスマホに届いた。因みに、これもナイトが開発した特殊スマホである。
「どうしたんです?急に我々を呼び出して?」
「その前に、怒らないで聴いてくださいね」
善逸のその言い方に不安を感じる椿。
「それは……どう言う意味ですか?事と次第によっては―――」
善逸に飛び掛かりかけた椿を炭治郎が制止する。
「それを聴いて悲しい気持ちにはなるが、私達は君を怒らない。約束する」
そう。炭治郎は相手の感情を嗅ぎ取る程非常に優れた嗅覚の持ち主。だから、善逸が今から事実を告げようとしている行為に悪意は無いと察したのである。
「話してくれ。秋場雪賀護衛任務に関するとんでもない暗部について……」
炭治郎は、改めて『親ガチャ』の影響力を思い知らされた。
そんな理不尽に完膚なきまで叩きのめされた気分で帰宅していると、乙骨憂太と出会った。
「どうしたんだい?そんな悲しい顔をして」
その途端、炭治郎は泣き崩れた。
「乙骨さぁーーーーーん!(涙)」
「何々!?何!?」
憂太は炭治郎から秋場雪賀護衛任務に関するとんでもない暗部を聞かされる。
「つまり、あの沼男の背後に『サマー』と呼ばれる犯罪組織がいたと言う訳ね?」
「……はい」
善逸曰く、『サマー』は密輸や闇バイトなどの総大将の様な犯罪組織で、ナイト・エージェンシーは『サマー』撲滅を目的とした調査・偵察を何度も繰り返してきたが、ボスの正体もメンバーの数も、本部がどこにあるのかも、全部謎だと言う。
そして、そんなサマーが秋場雪賀から秋場財閥次期総支配人の証である腕輪を奪いにやって来て、例の腕輪に12億と言う懸賞金を賭けたと言うのだ。
「なるほどね。それならあの沼男が危険を顧みずに秋場雪賀を襲うのも辻褄が合うね?」
憂太はある種の納得を得ていたが、その後の炭治郎の説明に怒りが籠る。
「……私が不機嫌なのは、その後ですよ」
善逸は、サマーだけが黒幕だとは思っていなかった。
だからこそ、善逸は椿に秋場雪賀護衛任務に関する覚悟を問うた。
その問いに椿は確かに困惑したが、ある程度予想は出来ていたらしく、迷わず、
『私の仕事は雪賀さんの護衛です。相手が誰であれ、私はそれを全うするだけです』
だが、炭治郎はそんな椿の宣言を全然納得出来なかった。
炭治郎が悲しんでいる理由を知った憂太が溜息を吐いた。
「……だから……君はそんなに怒ってる訳だね?」
炭治郎はしばらくだんまりしていたが、振り絞る様に言った。
「親ガチャって……事実だったんですね……」
憂太は親ガチャと言う言葉を嫌っていたので説教しようとした。
「何を言ってるんだい!親ガチャなんて負け犬の遠吠えにすぎ―――」
だが、炭治郎は大声でそれを否定する。
「私だって最初はそう思ってましたよ!だから、自分の両親が小さなパン屋に過ぎなかった事を恨んだ事なんて1度も無かった!でも……私があんな貧乏で小さなパン屋でぬくぬくしている間……間……」
その途端、炭治郎は再び秋場雪賀を襲うであろう過酷過ぎる宿命を思い出し、再び泣き崩れた。
「雪賀くんが何をしたって言うの!?秋場家に生まれたと言うだけで雪賀くんがあんな目に遭うなんて……非道いよ……非道いよぉー……」
それを見て、憂太は何も言えなくなった。
「炭治郎ちゃんって……本当に優しい子だね……」
善逸は今日も、毎朝の日課であるナイト・エージェンシー製の特殊カメラを使った登校する生徒達の解析を行っていたが、今回は溜息ばかりが出た。
(昨日は判断をミスったなぁー。炭治郎と秋場家は赤の他人だとばかり思っていたが……)
そう思いながらも登校する生徒達の解析を続けていたが、善逸にとっては予想外過ぎる人物が目の前にいた。
「炭治郎!?てっきり今日は来ないとばかり思っていたぞ!」
対する炭治郎は新たな決意を胸に満面の笑みで答えた。
「来るに決まってるだろ。私はこれ以上、雪賀くんを苦しめる心算は無いからね」
そして、善逸の左横を素通りする際、小声でこう宣言した。
「寒崎椿に秋場葛練は殺させない!秋場雪賀護衛任務が呪術高専やナイトの手を煩わせる必要が無い、話し合いだけで簡単に片付く楽な仕事だと証明して魅せる。それが、私の秋場雪賀護衛任務に対する覚悟だ!」
裏の世界を知り尽くした者にとっては、権力争いの本当の恐ろしさを知らない甘ったれた戯言だが、炭治郎のあの覚悟満載の笑顔を魅せられたら、そんな真実は本当にどうでもよくなってしまう。
だからこそ、善逸は笑顔で溜息を吐いた。
「……本当に……お人好しだな?あいつは」
しかも、炭治郎はこれからも秋場財閥を悩ませ続ける権力争いと言う剣呑を吹き飛ばすオチまで発生させてしまった。
「こらー!貴様、またしてもピアスを装着しながら登校したな?」
「ごめんなさい!父親の形見なんですー!」
「あー!あの馬鹿真面目先公!またむやみに竈門炭治郎を走らすなぁー!」
慌てて逃げる炭治郎とそれを追う冨岡とそれを慌てて追う睡蓮を観て、善逸はある種の確信を得た。
「これが……日常と言う名の『光』と言う訳か……ナイト・エージェンシーのエージェントをやってて良かったと思えるよ……」
が、例の特殊カメラが胡蝶しのぶを捉えた途端、冨岡の厳しさが善逸を襲った。
「そこのお前、またしても服以外の物を見ようとしていただろ?」
冨岡の指摘にドキッとしながらも必死で否定する善逸。
「ちょ!?何を言ってるんですか!?俺は秋場雪賀の身の安全をですね―――」
それを校舎から観ていた雪賀が満面の笑みを浮かべた。
「相変わらず楽しいね?この学校は」
「はい」
「葛練兄さんもこっちに来れば良いのにね?」
「……はい―――」
そこへ、炭治郎が慌てて椿に助けを求めた。
「椿さん!助けて!」
そこへ、冨岡が睡蓮に抱きつかれてカンナに窘められながらやって来た。
「本当にやめて!炭治郎を走らせないで!」
「何を言ってんだお前は!?本派と言えば、竈門がピアスを装着しながら―――」
「冨岡先生、とりあえず落ち着きましょう。PTAや教育委員会にとやかく言われてしまう恐れもありますし―――」
それを観て大笑いする雪賀の頬が濡れている本当の理由を知る者は……少ない!
原作との相違点
●栗花落カナヲ
・私立善根高等学校2年生。
・それ以外は『キメツ学園』とほぼ同一。
●神崎アオイ
・私立善根高等学校2年生。
・それ以外は『キメツ学園』とほぼ同一。
●胡蝶しのぶ
・私立善根高等学校3年生。
・それ以外は『キメツ学園』とほぼ同一。
●鎹鴉
・『キメツ学園!』とほぼ同一。
●魘夢民尾
・熱田睡蓮に操られ、竈門炭治郎の目の前で変態行動を行ってしまった。
・熱田睡蓮の見立てだと非術師らしい。
・それ以外は『キメツ学園』とほぼ同一。
●三郎
・『キメツ学園』とほぼ同一。
●後藤
・鬼殺隊とは無関係。
・ナイト・エージェンシー(『スパイガール!』参照)所属のエージェント。
・我妻善逸の先輩。
●サマー
・本作オリジナル組織。
・善逸曰く、密輸や闇バイトなどの凶悪犯罪の総大将の様な犯罪組織。
・『スパイガール!』における『スター』に相当する組織。
●秋場葛練
・本作オリジナルキャラクター。
・秋場雪賀の兄。ただし、雪賀とは秋場財閥次期総支配人の座を奪い合う政敵関係。
・『スパイガール!』における『黒宮ミナト』に相当する人物。
第6.5笑:むじゅさんぽ集②
●覆面警備員
乙骨憂太
「ナイト・エージェンシーはホワイトスパイ派遣機関の事で、不正の証拠を捜索したり覆面警備員などの仕事をしている団体だよ」
竈門炭治郎
「つまり、今から往く学校の不正を暴けと?」
乙骨憂太
「ううん。炭治郎ちゃんにやって欲しいのは覆面警備員の方だよ」
当日
我妻善逸
「何でこうなるんだよ!?しかも|覆面、100パー『水星の魔女』のパクリだろ!?」
竈門炭治郎
「え?でも、乙骨さんが覆面警備員をやって欲しいって―――」
我妻善逸
「俺らが求めてるのは覆面レスラーの覆面じゃなくて、覆面パトカーの覆面なんですけど」
竈門炭治郎
「そうなの!?」
我妻善逸
「普通そうだろ?と言うか(その格好だと)目立つだろ!?」
秋場雪賀
「悪いけど、君は出来るだけ遠ざかってくれる?」
竈門炭治郎
「……御免なさい」
●鬼滅の刃の声優事情②
ロボ太
「ちょっと待て!……今、物凄い苦労の日々を思い出させる声が聞こえなかったか?」
我妻善逸
「また覆面ネタかよ!?」
ロボ太
「顔出しNGなんで……そんな事より!物凄い苦労の日々を思い出させる声が聞こえなかったか!?」
我妻善逸
「誰の事だよ?私立善根高等学校の生徒は山ほどいるからな。でもまあ、真島の声が松岡禎丞だって言うのは知ってる」
ロボ太
「……知ってんじゃん誰の事か」
我妻善逸
「まあ、あの|嘴平伊之助の喋り方は、いやでも目立つからなぁー」
ロボ太
「あー、解るぅー」
我妻善逸
「でもまさか、あの声でキリト役を|務ってるのは意外だったなぁー」
ロボ太
「そうなのぉーーーーー!?キリトってアノ!?」
我妻善逸
「ソードアート・オンラインの」
ロボ太
「嘘だろぉー。あの真島の声でかぁー?」
我妻善逸
「後は、花江夏樹が水星の魔女のエラン・ケレスを務めてたんだが、グエル・ジェタークにボコられた時(水星の魔女第17話参照)の強化人士5号は炭治郎から程遠かったなぁー。卑の呼吸とか呼ばれてたし」
ロボ太
「アレは確かに竈門炭治郎ではなかったな」
我妻善逸
「そんな事より」
ロボ太
「ん?」
我妻善逸
「覆面違いネタはもういいんだよ。外せ」
ロボ太
「あーーーーー!顔出しNGぃーーーーー!」
●まじめ?風紀委員
我妻善逸
「アレが今回の護衛対象である『秋場雪賀』か……ん?」
殺し屋
「あの小娘の右腕を斬ってあの腕輪を手に入れれば良いだけか……楽に『12億』が手に入るぜ」
我妻善逸
(言ってるそばからいきなり命狙われてるよ。とは言え、あっけなくナイトのエージェントだとバレるのも芸が無いし、3年間の任務に支障をきたす。どうしたものか……は!?)
我妻善逸(妄想)
『はい、そこでじっとしていてください』
殺し屋(妄想)
『なんだ貴様は?』
我妻善逸(妄想)
『今から服装チェックをします』
殺し屋(妄想)
『は?何を言って―――』
我妻善逸(妄想)
『ひぃー物騒なの持ってるぅぅー!』
殺し屋(妄想)
『何を言ってるんだ君―――』
我妻善逸(妄想)
『あっちいってぇぇーーーーー!』
殺し屋(妄想)
『ぐえぇーーーーー!』
我妻善逸
(いける!これなら、俺がナイトのエージェントだとバレずに撃退出来る!)
殺し屋
「ぐえぇーーーーー!?」
我妻善逸
「て……あれ?」
寒崎椿
「2度と雪賀さんに触るな」
我妻善逸
「……お強い護衛のおまけ付きだったのね?」
●こいつ、普段何やってんだ?
夜蛾正道
「おい。そこの貧乏呪詛師」
沼鬼
「何でしょうか?」
夜蛾正道
「貴様は普段、何をしている?」
沼鬼
「コレクション収集です」
夜蛾正道
「コレクション?何の事だ?」
沼鬼
「これです」
乙骨憂太
「装飾品?しかも女性物ばっかだ」
沼鬼
「あ、因みに、17歳以上の年増老婆からは奪っていません」
夜蛾正道
「変態かこいつは。しかも17歳を老婆扱いって」
沼鬼
「女は16歳が最高で、それ以降は刻一刻と鮮度が落ちて|堕くんで」
乙骨憂太
「ロリコンかこいつは!?」
夜蛾正道
「これは……野に放てないな」
沼鬼
「あれ?……俺死んだ?」
●冨岡義勇VS熱田睡蓮
熱田睡蓮
「あの馬鹿真面目先公めぇー。炭治郎を全力疾走させるな!炭治郎が無下限呪術と|六眼をどの段階まで習得したかを(呪術高専には内緒で)観察しなきゃいけない私達の身にもなれ!」
小夏カンナ
「そもそも、私立善根高等学校の校則は、僅かならが昭和の匂いがするのよね」
熱田睡蓮
「いや、だからって、ファッションと言うものを知らんのか!?あの馬鹿真面目先公は!」
小夏カンナ
「とは言え、学業に支障をきたす程度を超えたファッションは、流石にダメでしょ?」
熱田睡蓮
「はさ……小夏先生はどっちの味方なん?」
小夏カンナ
「私は今は私立善根高等学校の教師なんで」
熱田睡蓮
「……こんな糞校則に染まらないでくださいよ」
小夏カンナ
「染まる訳ないでしょ。あの方の最終目標と相反し過ぎだし……ん?」
熱田睡蓮
「どうかし―――」
冨岡義勇
「貴様ぁー!またしてもピアスを装着しながら登校したなぁー!」
竈門炭治郎
「ごめんなさぁーい!父さんの形見なんですぅー!」
熱田睡蓮
「ぐえぇーーーーー!」
小夏カンナ
「……大丈夫?思いっきり踏まれてたけど?」
熱田睡蓮
「あの馬鹿真面目先公めぇー……炭治郎を全力疾走させるなぁー……」
第7笑:不可解な強襲
2023年7月23日の鬼舞辻無惨による竈門ベーカリー襲撃事件(鬼達が警察に報復攻撃しない様、事故として処理された)以来、竈門炭治郎は自主練が毎晩の日課となった。
炭治郎は確かに自分でもまだまだ未熟だと確信していた。実際、乙骨憂太達から教わったのは無下限呪術の基礎とヒノカミ神楽の基礎のみ。だからこそ、憂太は秋場雪賀の護衛を命じたのだ。呪霊が発生しやすい学校の巡回と呪詛師に襲われ易い護衛を兼ねた任務を3年間こなす事で、炭治郎の場数を蓄えようと言う魂胆で。
(まだまだ駄目だな……これじゃあ、父さんみたいに徹夜でヒノカミ神楽を踊り続けるなんて、夢のまた夢だ)
だが、炭治郎が毎晩自主鍛錬を行っているのはそれだけではない。
自分を囮にした罠なのだ。
始祖である無惨を含めた鬼達は、基本的に日光を浴びると死ぬ。だから、鬼達は夜しか活動出来ない。そして、鬼の主食は人間。確かに竈門禰󠄀豆子の様な人間を食べずとも理性を保てる鬼もいるが、大半の鬼は飢餓状態になると人食欲を抑えられずに凶暴化する。それを地道に斃していけば、いずれは無惨に辿り着けるのではないか?と、炭治郎は考えていた。
(ん?この臭いは!?)
そして、遂に炭治郎は自主鍛錬中に鬼を発見した。
(この臭いは鬼だ!2人いる!)
だが、その鬼達は藤襲山で出会った飢餓状態の鬼とは様子が違った。1人は何かを探している様子だし、もう1人はそれを尾行している感じだった。
つまり、その鬼達はある程度定期的に人間を食べている証であり、生きたまま藤襲山に連行される様な鬼や12億欲しさに雪賀を襲った貧乏呪詛師の様な雑魚とは違うと言う証でもあった。
(やはりあの7泊とは違う!もしかしたら、そいつらから無惨の事を訊き出せるかもしれない!)
そして、肝心の2人組の鬼に追いついた炭治郎。しかも、2人共目の前の事に夢中で背後に炭治郎がいる事に気付いていない。
だが……
「何なんじゃこれは!?何でこんな所に病院がある!?何でこんな場所に『逃れ者』がおるんじゃ!?」
「お前達こそ誰だ!?珠世様を如何する心算だ!?」
(いけない!)
2人組の鬼の目の前にいる、身を挺して女性を庇う男性を発見してしまった炭治郎が、鬼達とその男性の間に躍り出てしまった。
「こいつらの足止めは私がする!あんた達はその隙に逃げろ!」
(どの道、この2人から無惨の事を訊き出す心算だったんだ。寧ろ、戦う理由を与えてくれたあの2人には感謝しないとな!)
「こい!私の後ろにいる人達を食わせない!」
敵となる鬼は2人。
1人はおかっぱ頭で古風な口調と童女のような振る舞いをする少女。
もう1人は両掌に瞳孔が矢印の目玉が付いた青年。両目は閉じられている。
対となる要救助者も2人。
『逃れ者』や『珠世様』と呼ばれた女性とそれを庇う青年。
青年の方は兎も角、珠世と言う女性は無惨に命を狙われる理由があるらしい。
それを証明する様に、
「どけ。儂はこれからそこの逃れ者を残酷に殺し、『十二鬼月』となるんじゃ」
(じゅうにきづき?言葉の意味はよく解らないが……この匂いは本当の事を言っている時の匂いだ!)
「殺人で得た、汚い地位を守りたいか?そんな血塗れの汚い椅子を貰って、そんなに嬉しいか!」
珠世を襲おうとしている方の青年がめんどくさそうに言い放つ。
「もう良い。お前はどけ」
だが、
「何!?どかない!?まさか、貴様があの女が言っていた」
青年鬼は既に炭治郎に何かしたが、既に無下限呪術を発動させていたので何も起きなかった。
(これがあの女が言っていた無下限呪術。原子レベルに干渉する緻密な呪力操作で空間を支配する。それを可能にしているのが、あの目か!)
炭治郎は現実化させた無限が何かの接近を阻害している事は解ったが、それが何なのかまでは解らなかった。
「どうやら……あんたの血鬼術は無色透明らしいな。でも、生憎、乙骨さんから防御に適した術式を教わっていてね」
とは言え、今の炭治郎は庇ってる状態なので、無暗に飛び掛かれない。
(強がっては魅たものの……このままではヒノカミ神楽が使えない……)
炭治郎が背後をチラッと視る。
(せめて、あの2人の安全確保が出来れば!)
しかも、珠世が何故か目の前にいると言う混乱から覚めて臨戦態勢を整えた少女鬼が、炭治郎に鞠を投げつけた。
「キャハハ!なんだかよく解らぬが……この場で逃れ者を殺せるのは好都合じゃ」
「この鞠、触れたらどうなるの?」
一見するとからかう様に言っている様に見えるが、炭治郎は内心焦っていた。
(さっきまで混乱しかしなかった鬼が冷静になった!?もう1人の鬼の血鬼術の性質もまるで解っていないのに!)
その時、炭治郎が背負ってる箱から何かを引っ掻く音がした。
(禰󠄀豆子!?お前も戦う気か!?)
炭治郎は迷ったが、無限に阻まれて停止している鞠を視て好機だと感じた青年鬼が、迷っている時間を奪っていく。
「無下限呪術がある限り、あの花札の耳飾りには触れられぬか!?ならば!」
そうすると、鞠が無限を避ける様に軌道を変えた。
(しまった!あいつの血鬼術は移動補助系だったのか!?このままじゃ守り切れない!)
だから、炭治郎は苦渋の決断をした。
「頼む!禰󠄀豆子!」
それを合図に、禰󠄀豆子が飛び出して来て、珠世を襲った鞠を蹴り飛ばした。
「何ぃー!?そこの逃れ者以外に、あの方に刃向かう鬼がいただと!?」
炭治郎は一瞬迷ったが、禰󠄀豆子の判断は早く、気付いたら鞠を投げる鬼の方へと走っていた。
「禰󠄀豆子があっちを担当してくれるのか!?」
禰󠄀豆子が力強く頷く。
「ならばこっちは……透明な移動補助系の鬼を……担当するか?」
その鬼は『矢琶羽』と言い、両掌に存在する眼で不可視の矢印を操り、あらゆる物体の力のベクトルを捻じ曲げたり、今回の様に索敵や探知に利用する。
だが、流石に発生させた矢印に触れていない物を動かす事は出来ない。
「ならば!」
元々は珠世を殺す為に此処に来たのだ。珠世を動かして炭治郎の気を乱そうとする。
しかし、
「そう来ると……思ったよ!」
炭治郎はあえて術式を解き、珠世を突き飛ばして、自分だけ矢琶羽が放った不可視の矢印に巻き込まれた。
「かかったな!このまま転落死させてくれるわ!」
「何をやってんだあの馬鹿女は!?」
でも、炭治郎にとっては都合が良かった。あの技を初めて実戦で使えるのだから。
「なら……お前も道連れだ!」
「は!どうやって?」
「乙骨さんから最近教わった、無下限呪術の応用の1つ!無限を収束させて引力を発生させる。物体を吸い寄せる力。術式順転……『蒼』!」
その途端、矢琶羽が上昇中の炭治郎に吸い寄せられた。
「何!?無下限呪術はこんな事も出来るのか!?」
そして、矢琶羽が上昇中の炭治郎に激突しそうになったので、慌てて炭治郎の太刀筋を操作した。
「でしょうね!」
炭治郎は待ってましたとばかりに円を描く様に腰を回す。それが、垂直方向の強烈な斬撃を生んだ。
「ヒノカミ神楽、碧羅の天!」
頸を斬られて頭部を落としてしまう矢琶羽だが、やはり日輪刀ではないのが惜しまれる。
「させぬ!」
矢琶羽は自らの血鬼術で自分の頭部を呼び戻そうとするが、炭治郎のダメ押しの一撃……否!二撃が矢琶羽の胴体を襲う。
「ヒノカミ神楽、陽華突!円舞!」
でも、日輪刀ではないので矢琶羽はまだ死なない。が……
(儂の頸……何故戻らぬ!?)
気付けば、何者かによって矢琶羽の頭部は何者かによって縄でグルグル巻きにされて木に括り付けられていた。
「くそ!何時の間に!?だが!」
最早、珠世殺害の報酬は鞠を投げる鬼の物になった事。そして、自分が生きて十二鬼月に成れない事を悟った矢琶羽は、最期の悪あがきとして炭治郎の落下速度を激増させた。
「どうやら……本当に儂を道連れにしてくれた様だなあぁーーーーー!」
でも、炭治郎は無限をクッション代わりにする事で地面に激突する際の衝撃を最小限に抑え、軽傷で済んだ。
その間、禰󠄀豆子は朱紗丸と言う鞠を投げる鬼と戦っていた。
と言うか、朱紗丸が投げつけた鞠を禰󠄀豆子が蹴り飛ばし、朱紗丸が鞠をキャッチするの繰り返しだった。
「どうした?何故さっきの様に飛んで来ぬ?遠くから嬲り殺しじゃ!」
その言葉とは裏腹に、朱紗丸はこれでは埒が明かないと判断。故にとっておきを使う事にした。
「遊び続けよう。朝になるまで……命尽きるまで!」
すると、朱紗丸の腕が6本に増え、それに呼応するかの様に鞠も増えた。
対する禰󠄀豆子は困惑しながら後ろを視た。姉の炭治郎が庇っていた珠世を。
そう。憂太が禰󠄀豆子から人食欲を奪う為の暗示が、禰󠄀豆子の足を引っ張ってしまっていたのだ。
(拙い!?あの子、護りに入ってしまった!ならば!)
当の珠世だってただ護られるだけのか弱き存在ではない。
寧ろ、珠世が仕組んだあるカラクリが、後で朱紗丸の首を絞める事になる。
その間も、朱紗丸は次々と鞠を投げつけ、禰󠄀豆子が鞠を蹴り飛ばすが、先に限界を迎えてしまったのは……禰󠄀豆子の方だった。
矢琶羽を無力化して禰󠄀豆子の許に向かおうとした炭治郎が見てしまったのは……吹き飛んだ禰󠄀豆子の右足だった。
「……禰󠄀豆子おぉーーーーー!」
蒼褪めながら慌てて禰󠄀豆子の許へ駆け寄る炭治郎。
「足が……こめんな……禰󠄀豆子……」
一方、勝ちを確信した朱紗丸は高笑いしながら近づく。
「キャハハハハハ!最早、ここまでの様じゃのう?」
「お待ちなさい」
しかし、見かねた珠世が朱紗丸に話しかけた事で事態は一変する。
「何じゃ?先に殺されたいのであれば、直ぐに殺してやっても良いぞ」
「珠世様!?」
「大丈夫です。それより愈史郎、私は|アレ《・・》を使いました。貴方も下がった方が良いでしょう」
さっきまで珠世を庇っていた青年は一瞬戸惑うも、朱紗丸の目を見て何かを確信し、大人しく下がった。
「は!判りました!」
「|手下を全て捨てたか?お前がわしより強いと言うのか?」
「貴女が弱い?あの男より度胸が有る貴女が?」
珠世の|挑発に青筋を浮かべる朱紗丸。
「あの男……誰の事じゃ……」
「誰って、あの臆病者の事ですよ。適当に鬼を増やしてそれを盾にして、結局、自分だけ助かれば―――」
「黙れ黙れ! あのお方は小物などではない! 誰よりも強い! 鬼舞辻様は!」
その直後、朱紗丸は顔面蒼白になりながら大慌てで自分の口を塞いだ。
(なんだ!?急に殺気が消えた!?それに……何を焦ってるんだ!?)
「そこの呪術師よ、術式を収めなさい。既に戦いは終わりました」
「終わった?貴女はあの鬼に何をしたんです?」
原作との相違点
●矢琶羽
・令和7年まで生存。
・十二鬼月に昇格するべく独断で珠世を探し当てた。
・小夏カンナから無下限呪術と六眼の詳細を聞かされ、竈門炭治郎が無下限呪術を使える事も知っていた。
・炭治郎のヒノカミ神楽で頭と胴体を斬り離され、カンナに縄で木に打ち付けられて動きを封じられた。
●朱紗丸
・令和7年まで生存。
・矢琶羽の行動が気になって尾行していたら、珠世の隠れ家に迷い込んだ。
●珠世
・令和7年まで生存。
●愈史郎
・原作とほぼ同一。
第8笑:鬼舞辻󠄀改め汚物辻
十二鬼月への昇格を目論む矢琶羽とそれに巻き込まれた朱紗丸の魔の手から珠世を庇った炭治郎だったが、
「そこの呪術師よ、術式を収めなさい。既に戦いは終わりました」
「終わった?貴女はあの鬼に何をしたんです?」
珠世の謎めいた台詞に軽く混乱する炭治郎に対し、朱紗丸は大慌てで首を横に振った。
「違う……わしは何も言っておらぬ!何も喋ってはおらぬ!」
(怯えてる!?さっきまで殺意満載だったのに、何で!?)
その答えは、朱紗丸の急激な変化が|残酷に示した。
朱紗丸の口と臍から極太で筋骨隆々な腕が生えた。
それを見た炭治郎がされなる攻撃を警戒したが、珠世がそれを優しく制止する。
「いいえ……彼女はもう直ぐ死にます。残念ながら」
その言葉通り、突然生えた腕が朱紗丸を殴り始めたのだ。
「その名を口にしましたね。|呪い《・・》が発動する……可哀想ですが……さようなら」
珠世のこの言葉で、炭治郎は朱紗丸の身に何が起こったのかを正しく理解した。
「あの鬼は……無惨に殺された……そう言う事ですか?」
珠世は悲しげで残念そうに言葉を紡ぐ。
「……ええ。無惨はある事件をきっかけに、鬼に自白を禁じました。つまり、鬼は許可無く無惨の事を喋ってはいけないのです」
炭治郎は複雑な気持ちで拳を握り締めた。
(甘かった!自分を囮にすれば鬼を捕縛出来ると安易に考えてしまっていた自分が!この鬼は……私に殺された様なものだ!)
その間、無惨の自白禁止の呪いにタコ殴りにされていた朱紗丸の口からか細い要求が漏れた。
「鞠……鞠……」
炭治郎は涙を堪えながら近くにあった鞠を朱紗丸に手渡した。
「はい……これで良いんだな?」
「遊ぼ……遊ぼ……」
炭治郎は耐え切れずに滝の様な涙を流した。
「……ええ……何して……遊ぼうか!?」
そして、朝日が矢琶羽と朱紗丸を焼き尽くして消滅させるが、無惨の邪悪な悪意への怒りが強過ぎて、炭治郎の耳に矢琶羽の悲鳴は届かなかった……
「……鬼か……|鬼舞辻無惨は!」
「そこの呪術師……貴女はいったい?」
珠世は炭治郎が何者か判らなくなってきたが、炭治郎の耳飾りを見てハッとする。
(あの耳飾りは!?この子まさか……私に希望を与えてくれたあの男の!?)
そして、珠世は決断する。
「私は珠世と言います。既に気付いていると思いますが、私も鬼です」
「な!?珠世様!?殺されますよ!」
だが、確かに珠世が鬼だと既に気付いていたが、炭治郎はこの2人が敵だとは思えなかった。
「竈門炭治郎と言います。こっちは妹の禰󠄀豆子と言います」
「そうですか。鬼に変えられた妹さんを救う為に」
「ええ……」
炭治郎は迷ったが、珠世がその迷いを優しく否定した。
「私達は大丈夫です。密かに鬼を研究して無惨の呪いを解除していますので」
炭治郎は正直怖かった。朱紗丸の二の舞になるのではないのかと。
だが、禰󠄀豆子の姉としての使命の方が勝ったので、炭治郎は遂にあの質問を吐いた。
「では単刀直入に訊きます……鬼を人間に戻す方法は在りますか!?」
対する珠世が出した答えは、
「無いのであれば、造るしかありません」
「造るって、鬼を人間に戻す方法をですか?」
「そうです」
炭治郎にとっては竈門ベーカリー壊滅事件の時から探し求め続けた光明に、漸く手が届いた気分だった。
その光はマッチの様に小さいかもしれないが、炭治郎にとっては掛け替えの無い至宝だった。
「で!材料は!私は何をしたら良いのですか!」
愈史郎は珠世に飛び掛かりそうな炭治郎を慌てて制止する。
「落ち着けお前!珠世様の御話を最後まで聴け!」
「あ……すいません……」
申し訳なさそうに座る炭治郎を見てクスッと笑う珠世。
「良いのですよ。貴女も、無惨に多くの者を奪われてる身なのですから」
が、珠世は直ぐに真顔になる。
「治療薬を作る為には、沢山の鬼を調べる必要があります。貴女にお願いしたい事は2つ」
そう言うと、珠世は熟睡している禰󠄀豆子の方を見た。
「1つ、妹さんの血を調べさせて欲しい。2年もの間、人を食っていないにも関わらず、まったく凶暴化していない禰󠄀豆子さんの奇跡に、賭けてみたいのです」
炭治郎は一瞬迷ったが、
「解りました。で、もう1つは?」
「2つ……出来る限り鬼舞辻󠄀の血が濃い鬼からも血液を採取して来て欲しいのです。出来ますか?」
そっちの方は、既に覚悟は出来ていた。
「解りました。どの道、鬼舞辻󠄀を!……もとい!汚物辻を倒す心算で呪術を学んできましたから!」
それを聴いた珠世は、堪え切れずに笑ってしまった。
「ブッ!くく!」
「珠世様?」
「御免なさい。今まで(自分を含む)鬼舞辻󠄀無惨を殺したくなる程恨んだ者ならウンザリする程見てきましたが、鬼舞辻󠄀をここまでコケにした者は初めてでした」
対する炭治郎は真顔で答える。
「あんな糞を魅せられたら、誰だってああ言いたくなりますよ」
珠世は炭治郎の真剣な眼差しを視て決心する。
「解りました。貴女に、私達の命運を託しましょう」
「珠世様!?よろしいのですか?こんなお人好しに賭けても」
「私は……彼女達を信じます。事情が有るとは言え鬼となった者と助け合っていて、鬼舞辻󠄀に殺された者への哀悼の意を忘れない貴女なら、鬼殺隊ですら成し遂げられなかった奇跡、起こせるのかもしれません」
後日、老爺姿の鬼が炭治郎に勢い良く吸い寄せられた。
「むおぉーーーーー!?」
「あんたの笛のせいであんたに近付けないのであれば、あんたが私に近付いてくれれば良いだけの話よ!」
「サラッと超やばい事言ってる!」
「ヒノカミ神楽、烈日紅鏡!」
∞を描く様な斬撃が老爺鬼の身体を4分割した。
「おいーーーーー!儂を誰だと思っておるぅーーーーー!」
老爺鬼は頭部から腕を生やして炭治郎に襲い掛かったが、
「ヒノカミ神楽、日暈の龍・頭舞い!」
炭治郎の更なる斬撃が老爺鬼の身体を更に粉々になった。
「何なんだ貴様は!?糞っ!糞っ!儂はこれから十二鬼月に―――」
「あっ、忘れ物した」
「おいーーーーー!」
炭治郎が投げつけた短刀が老爺鬼から血を吸い採った。
「刺したら自動で血を採ってくれるなんて……こんなの作った愈史郎さんは器用だな」
そこへ、1匹の猫がやって来た。
「この子か?」
この猫は茶々丸と言い、珠世の使い魔である。
「こんな雑魚の血で悪いけど、珠世さんの所へこれを届けてくれ」
炭治郎が茶々丸が背負っているバッグに例の短刀を入れると、茶々丸が愈史郎の血鬼術を使って透明になった。
「珠世だと!?そいつを殺せば、儂は十二鬼月、に!?」
老爺鬼が茶々丸に飛び掛かろうとするが、炭治郎の無下限呪術がそれを阻む。
「気を付けてお行き」
「おのれぇーーーーー!何者なんじゃあぁーーーーー!」
そうこうしている内に夜明けとなってしまい、
「ぎゃあぁーーーーー!」
「『許して』なんて甘ったれた事は言わない。でも、感謝はして欲しい。やっと死ねて無惨の呪縛から解放されたんだ」
炭治郎の悲し気な顔の意味を理解出来ない老爺鬼は、恨みの言葉を吐いた。
「糞っ!糞っ!貴様さえいなければ!儂は十二鬼月に!」
それを最期に老爺鬼は消滅した。
(汚物辻……首を洗って待っていろ!鬼に殺された人達の為にも、汚物辻に鬼に変えられた人達の為にも!)
それを観ていたカンナがニヤリと笑った。
(出したわね?『蒼』を)
だた、カンナが完全に満足しているわけではなかった。
(でも、赫はまだ出していない。まだ使いこなしていないのか?それとも、十二鬼月より下の雑魚鬼如きでは赫を引き摺り出せないのか?)
そこで、炭治郎の観察を目論む呪詛師一派は、次の一手を打つべく最終選別用に生け捕られた鬼達が棲む藤襲山へと向かった。
一方、鬼舞辻󠄀無惨は炭治郎の成長と発言に怒りを覚えた。
「あの太刀筋……あの男を思い出させるあの太刀筋……」
そんな事も遭ってか、法衣姿の男は無惨に進言する。
「そろそろ、只の血鬼術だけでは歯が立たなくなってきている。いよいよ、十二鬼月の出番では?」
だが、無惨はそれを否定する。
「何を言っている?十二鬼月は青い彼岸花の捜索で忙しいのだ。お前も早く探し出せ」
「良いのかい?我々が青い彼岸花の正体を知る前に、あの娘が君を」
法衣姿の男は無惨に睨まれた為、渋々口を閉ざす。
「貴様……そんなに無下限呪術が怖いか?恐ろしいか?」
法衣姿の男は溜息を吐きながらその場を後にした。
「解ったよ。青い彼岸花を探しに行けば良いんだろ」
「行くではない……『|往く《・・》』だ!」
法衣姿の男は、無惨の青い彼岸花一辺倒に呆れながら部屋を後にした。
そんな法衣姿の男が当ても無く歩いていると、複数の呪詛師がやって来た。
「藤襲山に囚われている鬼の中に小学生ぐらいの女児が居ましたので、はさ……カンナの指示で稀血10人分と禪院家に殺されたと思われる女流呪術師達を食わせました。因みに、10人の稀血は全員非術師です」
それを聴いた法衣姿の男が溜息を吐いた。
「禪院家は最期まで相変わらずか……稀血の方は気を遣わせて悪かったね」
「いえ」
「で、その件の女児の方は?」
「は。つい先ほど、血鬼術と炎凝呪法に目覚めました」
「そうか……呪術を使う鬼か……流石の無下限呪術でも手古摺るだろうね。それこそ……茈を引っ張り出さなきゃいけない程に……くくくくく……ふははははははははは!」
そんな幼女の鬼は、まだ人間だった頃に親に売られて他の遊女達に虐待されており、その結果、鬼の中では引っ込み思案で内向的と言える性格になってしまった。それ故、鬼殺隊候補生が藤襲山にやって来た時も怯え過ぎて上手く襲えず、ただ何十年も空腹と飢餓に苦しめられてきた。
だが今は、自分を藤襲山から救い出してくれた呪詛師一派に恩返しするべく、顕現させた炎を拳銃に変えて恐怖に打ち勝とうとしていた。
震える手で彼女が銃口を向けるのは、竈門炭治郎の写真の……
原作との相違点
●鬼舞辻無惨
・令和7年まで生存。
・個人投資家として成功し、悠々自適の生活を送っている。
・気まぐれで(一応あの耳飾りの行方を追ったうえでの行動)竈門ベーカリーを壊滅させたが、その事がきっかけで禰󠄀豆子が鬼と対立する鬼となり、炭治郎が無下限呪術と六眼を習得するきっかけになってしまった。
・朱紗丸粛清を機に、炭治郎に『汚物辻』と言う仇名を付けられた。
●笛鬼
・令和7年まで生存。
・煉󠄁獄杏寿郎とは無関係。
・竈門炭治郎と交戦し敗北。
・死因は日光の浴び過ぎ。
●茶々丸
・原作とほぼ同一。
●銃鬼
・本作オリジナルキャラクター。
・最終選別用に生け捕られて藤襲山に囚われた幼女の鬼だったが、竈門炭治郎の観察を目論む呪詛師一派の策略によって稀血を有する非術師10人と禪院真依・禪院扇の脳を食わされ、下弦に匹敵する呪詛師として覚醒した。
・弾道や軌道などの『動き』を操る血鬼術と炎凝呪法を開花させており、銃などの武器に呪力を籠めて打ち出し、高威力のチャージショットを発射する事も可能。
・引っ込み思案で内向的傾向を有するものの、自分を藤襲山から救い出してくれた呪詛師一派に奉公するべく鬼特有の傲慢・凶暴に徹しようとする健気な一面も持っている。
●禪院真依
・とある諸事情(呪術廻戦第149話参照)のせいで死亡認定を受けている。
・脳を竈門炭治郎の観察を目論む呪詛師一派に奪われ、銃鬼に脳を食われた。
●禪院扇
・とある諸事情(呪術廻戦第149話参照)のせいで死亡認定を受けている。
・脳を竈門炭治郎の観察を目論む呪詛師一派に奪われ、銃鬼に脳を食われた。
●炎凝呪法
・本作オリジナル術式。
・炎を顕現させ、火を物体に変える術式。
・『呪術廻戦』における『構築術式』や『焦眉之赳』に相当する術式。
第9笑:坊ちゃん、困ります!
ある日の私立善根高等学校。
我妻善逸が大ピンチに陥っていた。
と言うか想定外!
情報不足による完全な想定外である!
「……やってしまった……」
善逸が返って来た答案用紙を視て愕然としていたが、何も知らない者が見たら、まるで善逸が赤点を取ってしまったかの様に見えるが、実際は逆で、
「何で雪賀さんが赤点を採ってんのおぉーーーーー!?」
つまり……善逸は『追試如きに自由時間を奪われる様な間抜けにスパイは務まらない』と言う思い込みに囚われ過ぎて、秋場雪賀が赤点を採る可能性を考慮せずにテストを頑張り過ぎてしまい、結果、雪賀|だけ《・・》が補習授業を受ける事になってしまったのだ。
「こんな間抜けな理由で護衛対象から離れる羽目になるとは……不覚!」
それについて、雪賀の護衛を務める筈の寒崎椿は善逸を擁護した。
「そもそもの要因は、雪賀さんが赤点を採ってしまった事にあります」
「それじゃあまるで、僕が悪い事をしてしまったみたいじゃないか」
「『みたい』じゃなくて実際にしてしまったんです」
椿に厳しく叱責されてしまった雪賀が困り果てる中、善逸は一縷の望みを託すかの様に竈門炭治郎の方を見た。
「そうだ!炭治郎!お前は呪術の練習で忙しいから!テスト勉強なんてしてないよね!してないよね!お願い!してないって言って!」
だが、
「……ごめん」
炭治郎の返答に善逸は愕然とした。
つまり、善逸と炭治郎は雪賀が受ける予定の補習授業に参加出来ない事を意味していた。
そして、雪賀が補習授業を受けてる間は、椿1人で雪賀を護衛しなければいけないと言う窮地を意味していた。
「と……とりあえず乙骨さんに相談してみるね(汗)」
「何で?ちゃんと生徒として認定されている俺達とは違って、そいつは完全に部外者だろ?しかも、今回の補習授業の担当は不死川実弥。ちょっとやそっとでは例外を作ってくれねぇぞ?」
と、善逸にツッコまれてしまったが、何か手を打たないといけない緊急事態には変わりなかった。
「……何でこの2人が赤点採れなかったくらいでこんなに騒ぐの?」
「雪賀さん|だけ《・・》赤点を採ったのがいけないんです」
「僕のせい?」
「雪賀さんのせいです」
「と言う訳で炭治郎ちゃんに助けを求められたんだけど、パンダくん、どうしようか?」
乙骨憂太の質問に対し、パンダは至極真っ当なツッコミを飛ばした。
「そいつ、本当に秋場財閥次期総支配人なのか?」
不幸中の幸いな事に、『サマー』が送り込んだ刺客が今回の補習授業を襲う事は無かったが、今後の為に善逸と炭治郎が雪賀が受ける補習授業に参加出来ない事態を未然に防がなきゃいけないと言う事で、
「しょーがない……やるかぁ……」
雪賀は渋々勉強する事になったが、
(1番苦手な数学……僕は文系に進むので、数学は捨てて良し!)
※よくない!
(英語は翻訳AIが発達しているから必要性ナシ!国語、理科、世界史、日本史……こんなんググれば良くない?美術とかも生成AIがやりゃーいいでしょ!)
と……こんな感じで一向に捗らず、
「椿ぃ……僕達若者が勉強する意義無くない?」
「屁理屈言わない!」
その頃、善逸は雪賀が受けた補習授業に参加した生徒達を秘密裏に調査してみたが、
「やはりこいつらには期待出来ねぇなぁ。あの|嘴平伊之助ならそこら辺の変質者と互角に戦えそうだが……」
やはり結果は『期待外れ』であった。
「そりゃそうだよなぁー……何の訓練も受けてない素人が、本物の暗殺者や炭治郎や乙骨憂太の言う様な呪詛師とまともに戦えるわけ無いよなぁー」
そして、善逸は自分が犯した失態に向かって悪態を吐いて舌打ちをした。
「こんな事なら、下手に背伸びせずに赤点採っときゃ良かったぁー!本当に不覚だよ」
その頃、炭治郎の許を訪れたのは、
「あ、パンダさんに七海さん。御足労おかけします」
「話は乙骨くんから聴きました。大変でしたね」
「まさかこんな形で護衛対象に足を引っ張られるとはねぇー。そいつ、本当に秋場財閥次期総支配人なのか?」
「寧ろ、私達と雪賀さん達の足並みが揃わないのがいけなかったんですが―――」
「何で?そもそも、そいつが赤点採らなきゃこうはならなかったんだろ?」
「確かにそうかもしれませんが、どんな理由が有れ護衛対象から離れるのは」
「感心しませんよねぇー。普通」
だが、
「かと言って、答案用紙を無記入でと言うのは……」
「いくら何でも馬鹿げてるよねぇー」
「つまり、『良心が痛む事無く雪賀が受ける補習授業に参加する方法を教えてくれ』と言う訳ですか?」
「……出来ますか?」
七海は少し考えたのち、1つの提案、いやナイト・エージェンシーへの依頼を口にし始めた。
「ナイト・エージェンシーの手を煩わせる事になりますが、少し狡い手を打ってみましょうか」
「狡い手、とは?」
「つまり僕が良い点取れたら、椿からえっちなご褒美を貰えるって事おぉーーーーー!」
七海が提案した『善逸と炭治郎が雪賀が受ける補習授業に参加出来ない事態を未然に防ぐ』方法は単純明快で、ただ雪賀が赤点採らないよう『|報酬で雪賀を誘導する』と言うモノだったが、どう言う訳か椿が(本当の意味で)一肌脱がないと実行出来ない作戦へと豹変してしまったのだ。
(何を言ってるんだこの人は?)
「許せ寒崎。これも秋場雪賀護衛任務を円滑に進める為だ」
が、直ぐに雪賀が弱音を吐き始めた。
「でも、流石に数学とかは教えて貰わないと難しい……」
「つまり教師役が必要って訳か?」
「それなら既に手は打ってあります」
「えっ?椿が教えてくれるの!?」
が、椿の答えは、
「私の父が教えられます」
そう、寒崎椿の父親は国立理学部を卒業しているのだ。
「若い頃、家庭教師のバイトもしておりました」
「高学歴だったの!?」
と言う訳で、椿の父親による雪賀へのスパルタ教育が始まった訳だが、
「この公式は死ぬ気で覚えて!今日はこの問題集10ページ進めます!」
「ひいい」
「違います!その解を求める時に使う公式は―――」
「し……死ぬぅー……」
5時間後。
「5分休憩しましょう」
(きっ……厳しい……5分って……)
とは言え、全ては身から出た錆。なので、
「椿パパ、スパルタ過ぎる。でも、ここは頑張って……」
「御子息ー?戻りましたよー」
(頑張って背後から1発食らわせて逃げよう!)
と、こんな感じでスパルタ教育から逃げようとする雪賀だったが、椿の父親はいとも簡単に大辞典をキャッチした。
「御子息、そんなパワーでは私を仕留める事は―――」
が、雪賀は逃走を諦めようとはせず……
「スタンガン攻撃ー!」
「あばばばば!じゃなくて!御子息!席についてください!」
「ヤダー!勉強飽きたー!」
結果……大地震に襲われたかの様の部屋は荒れた。
これには椿も炭治郎も呆れ顔である。
「どうしてこうなった」
「よほど勉強が嫌いなんですね?」
とりあえず雪賀を起こす炭治郎。
「でも、逃げちゃ駄目な時もあります。努力精進を怠らず誠実に生きていれば、何時かそれに気付いて認めてくれる素敵な女性が現れますよ」
「お前……何を言って、る!?」
その際、自分と同学年の少女とは思えない程に痛ましく、分厚く、鍛え抜かれた炭治郎の手を見た雪賀は、秋場家に生まれてのうのうと生きて来た自分とは真逆の存在だと思い知らされた。
その後、真面目に勉強する様になった雪賀は段々と成績を上げて往った。
「ああ……模擬テスト80点です」
これには善逸も少しだけ安堵した。
「この調子を期末試験まで続けてくれれば、雪賀が受ける補習授業に参加出来ない事態は防げそうだ」
「頑張りましたね、雪賀さん」
「もちろんだよー」
が、ここで雪賀の椿を困らせる邪念が出てしまう。
「えっちなご褒美の為だもん」
(まだ憶えていたか……)
「駄目ですよ。て言うか約束してません」
「えーーーーー!」
「許せ寒崎。これも秋場雪賀護衛任務を円滑に進める為だ。こう見えて、秋場雪賀だって男子なんだから」
善逸の台詞にヤバさを感じた椿が反論する。
「我妻!貴方はどっちの味方なんですか!?」
「もっち、秋場雪賀護衛任務の為に派遣されたエージェントなんで」
「ナイト・エージェンシーの許可も得ました」
退路を塞がれる形になってしまった椿が渋々言葉を紡ぐ。
「とにかくまだ、期末の結果は判らないので」
「ええー」
そうして、試験期間は過ぎていき……
「数学82点。理科78点……」
「40点以上も上がったよ!椿!」
この会話に善逸が不安を覚える。
(え……78から40を引くの?)
しかも、
「ただその……国語38点。社会32点……理系科目以外が低くて……」
「つまり……赤点を2つも採ってしまったって事?」
「完全にそっちの勉強忘れてた」
結局、雪賀が受ける補習授業に参加出来ない事態を防ぐ事には失敗したが、炭治郎は雪賀の努力を認めてフォローした。
「でも一生懸命頑張ったんだし、猥褻な願いでなければ、受けてやっても良いんじゃないか?」
「やたー♪えっとじゃあ……」
と言う訳で、椿はチアガール姿になった。
「何故……」
「椿かわいーーーーー!」
ただ、雪賀をおもいっきり後悔させる事になってしまった。
(かわいいけど……テスト前にこの格好で応援させりゃ良かった……)
その頃、雪賀が受ける補習授業襲撃を企てていた呪詛師が、法衣姿の男が率いる炭治郎の観察を目論む呪詛師一派の手引きによって強大化した幼女の鬼に襲われていた。
「貴様……貴様の狙いも雪賀のあの腕輪か!?」
この呪詛師はオガミ婆と言って、降霊術を悪用した変装を駆使して荒稼ぎを重ねて来た凶悪犯だが、長時間の念仏を必要とする為、今回の様な奇襲への対応には不向きな術式である。
本人もそれを知ってて幼い頃に誘拐して血縁を偽って育てた孫達に自身の介護をさせてきたが、敵は十二鬼月に匹敵する鬼。生半端な者では停められない。
「いいえ。貴女には彼女を呼び出す為の伝え手になって欲しいんです。そう……竈門炭治郎を」
原作との相違点
●七海建人
・未だ生存。
・虎杖悠仁や両面宿儺とは無関係。
●パンダ
・虎杖悠仁や両面宿儺とは無関係。
・お兄ちゃん核とお姉ちゃん核は無事。
●寒崎凍鶴
・本作オリジナルキャラクター。
・秋場家の護衛をしている一族出身。
・寒崎椿の実の父親。
・国立理学部を卒業した高学歴。
●オガミ婆
・未だ生存。
・羂索とは無関係。
・高額報酬欲しさに秋場雪賀をつけ狙う呪詛師。だったが……
●オガミ婆の孫
・銃鬼の襲撃を受けて死亡。
第10笑:炎凝呪法を使う幼女鬼
秋場雪賀がいつも通り寒崎椿を連れて登校していると、
「炭治郎ぉー!炭治郎はどこじゃぁー!」
雪賀がオガミ婆に抱き着かれそうになったので、竈門炭治郎と我妻善逸が割って入る。
「はいはいはいはい。観客はダンサーに触れないでくださーい」
「炭治郎は私です。この人は違います」
炭治郎は臭いで、善逸は声色で、オガミ婆の殺意を感知していた。
だが……
「待て!違うんじゃ!儂が、儂が鬼に襲われたんじゃー!」
雪賀と椿はオガミ婆が何を言っているのかが全く解らなかったが、炭治郎は臭いで、善逸は声色で、オガミ婆が本当の事を言ってる事が解った。
「鬼だと!?」
「殺し屋同士が獲物の奪い合いでも始めたか?」
善逸の推測を聞いて炭治郎は俯く。
(鬼は本当にいるんだ……汚物辻と言う正真正銘の鬼が)
対するオガミ婆は咄嗟に手紙を取り出す。
「本当じゃ。これを炭治郎に渡せと、鬼が」
炭治郎がオガミ婆から手紙を奪い取り、その場でその手紙を読むと……
「……私、早退する」
雪賀は首を傾げたが、善逸は別の意味で首を傾げた。
「その殺し屋に、思い当たる節があるのか?」
そんな質問をされた炭治郎の目には、正義感に満ち溢れた怒りが宿っていた。
「……ああ。とんでもない糞外道がね」
そう言うと炭治郎は足早に去って行った。
(たった一晩で|7人死亡した竈門ベーカリー殺人事件……呪術高専は明らかに殺人事件であるこの案件を無理を圧して事故として処理しようとしているが、まさか……この事件にかなりの大物呪術師が関与しているのか?それとも、とてつもなく強大な呪霊が犯人で、下手にこの事件を深堀し過ぎてそいつからの報復攻撃を受ける事を恐れているのか?)
善逸はあれこれ思案しながら、オガミ婆の右手首を捻ってオガミ婆が持っていたナイフを道路に落とす。
「あいたたたたた!?い、痛いではないか。ちょっとは老人を労わらんか!」
「よく言うぜ。その鬼に言われた事を実行するフリをして秋場雪賀を殺そうとしたくせに。そんな老体じゃ監獄の夏はきつ過ぎるし、12億は老後の備えにしては高過ぎる」
椿がオガミ婆が落としたナイフを雪賀から遠ざける様に蹴り飛ばしながら善逸に質問する。
「で、ナイトはこの方をどうする御心算で?」
が、善逸の答えは意外なモノだった。
「いや、呪術高専に引き渡す」
「なぬぅ!?」
「本来なら、俺達ナイトが徹底的に調査してサマーを丸裸にするのが正解なんだろうけど、俺個人としては、炭治郎のあの焦り方が気になった……それについてを乙骨憂太に問いただす為にこいつを利用する」
その日の夜。
炭治郎はとあるビル内にあるファミレスの入口前に来ていた。
そこには、ショートボブの物静かそうで大人しそうで引っ込み思案ぽい少女がいたが、過剰嗅覚の持ち主である炭治郎は見た目には騙されなかった。
「来て……くれたんですね……」
「招待状を頂いたので。いや、脅迫状ですかね。『今宵、このビル内にあるファミレスの前に来い。さもなくば、件のファミレスを客人ごと焼き払う』……」
炭治郎の態度に殺意が籠る。
「えげつない文面だ。貴様もかなり汚物辻に毒されたな」
そんな炭治郎の怒りに臆しかけた少女だったが、自分を藤襲山から出してくれた竈門炭治郎の観察を目論む呪詛師一派への義理を思い出し、気合を入れ直す為に両頬を叩いた。
「!?」
「た……戦わなきゃ……貴女と……」
そんな2人のやりとりを偶然目撃してしまった男性店員の背に、すうっと冷たい波がゆらめきはしった。
(俺は今から、バイトをバックレる!昔から責任感は強い方だった。給料も全部4人の義妹を大学に通わせる為に貯金している。そんな俺でも抗えない生存本能……あの2人に近付けば……死ぬ!)
「ん?君、そんな―――」
「今日はもう早退させていただきます!」
男性店員は即座に店長に退職を告げて着替えもせず荷物も持たず全速力でファミレスから逃げ出した。
そんな男性店員が去るのを待ってから……
先制攻撃は少女の方だった。
気付けば少女の両手には、まるで溶岩の様な二丁拳銃が握られていたが、|六眼がそれを血鬼術|以外だと訴える。
(炎凝呪法!?構築術式と焦眉之赳の合わせ技!?だが、この臭いは確かに鬼の匂いだ!)
その間、少女が発射した溶岩の様な銃弾が、器用に障害物を避けながら炭治郎を襲うが、飛んで来た銃弾は、炭治郎の手前で止まる。
(焦眉之赳で熾した火を物体化させる事で、構築術式の負担を大幅に軽減した!?しかも、使い手は鬼!ほぼ無尽蔵の銃弾を持っていると見て間違いない!)
だが、そんな少女の眼球には何も書かれていなかった……
(なのに……それだけの力を持ちながら、眼球に何も書かれていない!?これでもまだ、十二鬼月には届かないと言うのか!?)
炭治郎の眼前で停まっていた銃弾が炎へと姿を変えて炭治郎を襲うが、無下限呪術がそれを許さない。
「ぐ!」
炭治郎が発生させた無限に押し返された炎が、砕け散って霧散した。
(これが……あの方が言っていた無下限呪術の……基本中の基本!)
(長期戦は厄介だな……犠牲者が増える……)
一方、善逸は雪賀が無事帰宅した事を確認すると、その足で呪術高専へと向かい、オガミ婆を明け渡す準備をした。
「わざわざそんな事をしなくても……」
だが、善逸は直ぐには渡さない。
「その前に訊きたい事が有る」
善逸の鋭い視線に嫌な予感がする憂太。
「この呪詛師をメッセンジャーとして利用した殺し屋、奴には炭治郎と浅からぬ因縁を持っている」
嫌な予感が確信に変わった。
「浅からぬ因縁?」
「ナイトのエージェントとしての誇りを捨てて単刀直入に訊く!」
「!?」
「竈門ベーカリー殺人事件の犯人は誰だ?」
鬼舞辻無惨が炭治郎に無下限呪術と|六眼を習得させるきっかけとなったあの事件を、善逸はあからさまに『殺人事件』と呼んだ。
「アレが事故ではない根拠は―――」
「誤魔化すな。竈門炭治郎は、あの事件が発生する直前までただの一般人だった。そんな奴がどうやって裏社会の殺し屋と接点を持つ?あの事件しか思いつかないだろ」
それはつまり、ナイト・エージェンシーには呪術高専の隠蔽工作が通用しない事を意味していた。
「……流石はホワイトスパイ派遣機関だ。流石だ」
「つまらないお世辞は不要。答えろ」
善逸と憂太が睨み合う中、オガミ婆が口を開いた。
「鬼じゃ」
「!?」
「儂らを襲ったのは鬼じゃ」
それは、オガミ婆を襲撃した殺し屋が鬼の様に強いと言う意味だと思っていたが、憂太の様子からそう言う意味ではないと察する善逸。
「……よくよく考えれば、この婆さんも呪術師だ。生半端な小物にこいつを殺せるかは微妙だ。なら、は!?」
善逸が慌てて抜刀の構えを取る。
だが、善逸の視界にあるのは只の壺だった。
「……誤魔化すな……随分器用な体質をしているんだな?お前」
すると、壺の中から1匹の異形の鬼が出て来た。
(なんだ……こいつは……)
本来目が有る部分に口が有り、眉間と口の部分に目が有る他、複数生えた短い腕など生理的に嫌悪感を催す外見をしていた。
「ほう……わたくしの接近を、わたくしに触れられずに見抜くとは……貴様、鬼狩りの残党か?」
「残党!?昭和最終盤辺りから、鬼殺隊絡みの事件がめっきり激減した事は掴んではいたが、やはり解散したか」
ここで、善逸は致命的な見落としをしてしまった。
異形の鬼の眼球に刻まれた数字の意味を……『上弦の伍』の意味を。
ただし、憂太は異形の鬼の眼球に刻まれた数字を見て嫌な予感がした。
(目玉に漢字が書かれてる!こいつはまさか……十二鬼月!?)
話を炭治郎の方に戻すと、これから始まる炭治郎と炎凝呪法を使う幼女鬼との戦いを物陰から監視する者がいた。それも2人も。
1人は小夏カンナ。
私立善根高等学校英語教師だが、竈門炭治郎を観察する為に潜り込んでいる女スパイ。
例の幼女鬼を藤襲山から救助する事を提案したのも彼女であり、かつて炭治郎と戦い敗れた矢琶羽を誑かしたのも彼女である。
もう1人は……鬼舞辻無惨と繋がっていながら、炭治郎の観察を目論む呪詛師一派とも繋がっている法衣姿の男である。
「そろそろ、始まるね」
男は楽しそうに炭治郎を観るが、一方のカンナはある不安を抱いていた。
「1対1ならかなり食い込めそうですが、高専の連中が動き出したら」
そんなカンナの不安を聞き、男は少し考えこんで、
「それは……あの鬼が私の言う通りに動いてくれたら、玉壺と言ったか?玉壺が高専の足止めをしてくれたら」
「で、その玉壺は本当に高専の連中を止められるのでしょうか?」
「少なくとも意地は魅せるだろうね。十二鬼月として、上弦の伍として」
が、男は人を馬鹿にした笑みを浮かべてしまった。
「でも、所詮は|非術師だ。時間稼ぎが関の山だよ」
それを聴いたカンナは、ますます不安になりながら幼女鬼の方を観る。
「高専の連中が、玉壺を倒してこの決闘に間に合う危険性はあると?」
炭治郎は早速、術式順転「蒼」とヒノカミ神楽の合わせ技で一気に決着を着けようとする。
「!?」
「ヒノカミ神楽、陽華―――」
だが、観戦していた男は炭治郎の甘さを嘲笑った。
「甘いよ」
幼女鬼は炭治郎に吸い寄せられながらも、ファミレスの入口めがけて銃弾を発砲した。
「ああ!く!」
炭治郎は慌てて銃弾も吸い寄せたが、引き寄せると停めるの切り替えに失敗すれば炭治郎がダメージを背負う危険な賭けである。
結果、ヒノカミ神楽は不発に終わり、炭治郎は幼女鬼に体当たりされる形になってしまった。
「汚いぞ!」
炭治郎は乱暴に幼女鬼を蹴り飛ばすと、ファミレスの入口を陣取る。
それを観て呆れる男。
「あーあ……矢琶羽の時と同じ失敗をしてる。今回は今までの様な|非術師とは違う。十二鬼月の証が無いからと言って、十二鬼月より弱いとは、限らないよ」
第11笑:不義遊戯VS十二鬼月
炭治郎の観察を目論む呪詛師一派の策略に嵌った乙骨憂太は、十二鬼月の1人である玉壺の呪術高専侵入を許してしまった。
善逸にとってもこの事態は想定外であり、自分の不注意さを呪った。
「すまない」
「何の事?」
「俺がこんな化物に|尾行られていた事だ」
が、当の玉壺はそれを嘲笑う様に否定する。
「|尾行られた?何の事ですかな?わたくしは頼まれただけですよ。この建物内にいる……邪魔者共のお掃除を!」
「邪魔者?」
憂太は実に無惨らしい考えだと思った。
恐らく、禰󠄀豆子を一刻も早く人間に戻したい炭治郎の無下限呪術を恐れ、呪術師の徹底排除を決断したのだろう……憂太はそう思った。
「呪術を舐めてんのか!?そんなに呪術師が邪魔なら、無惨自ら来い!」
玉壺はそれも否定する。
「お断りする!ここにわたくしが到着したのです。無惨様の手を煩わせるまでもない!」
そして、玉壺は憂太にとって予想外な事を言った。
「それに、これは新入りの進言を基に動いている」
「新入り!?」
「まあ、情けない事に、不覚にもその者に抜かれてしまいましたがねぇ」
憂太が驚く中、善逸は既に臨戦態勢を取り、
「雷の呼吸、壱ノ型、霹靂一閃」
まるで瞬間移動の如く高速移動しながら玉壺とすれ違い、すれ違いながら抜き打ちを見舞う善逸。
「時間稼ぎ、ありがとよ乙骨。弱い犬程よく吠えるとは、正にこの事だな」
玉壺の胴体を切断した事で勝ちを確信した善逸だったが、善逸の異常聴覚がそれを否定する。
(何!?こいつの心臓、まだ動いているだと!?下半身を失った筈なのに!)
「やってくれましたねぇ……この玉壺様の芸術的な身体を切断しましたね?」
「くそ!見た目通りの化物め!」
「化物?それは君が審美眼のない猿……」
善逸は、霹靂一閃を連発して粉々にしてやろうとするが、
(こんだけ斬れば……何で動く!?奴の心臓!?)
それどころか、別の場所に在った壺から玉壺がにょきと生えた。
「斬りましたね!?わたくし自慢の壺を!」
霹靂一閃連発の副作用で空中に投げ出された状態に陥った善逸は、瞬時に武器を切り替え、二丁拳銃で玉壺を銃撃した。
「はあ……はあ……はあ……こんだけ銃弾が貫通すれば……」
だが、善逸の期待通りの展開は……来なかった。
「何でぇー!?顔面と心臓と肺に着弾した筈なのに!何でこいつの心臓はまだ動いてんの!?」
想定外過ぎる展開の連続に、善逸は大混乱した。
「何なんだこの化物は!?」
次は自分の番と言わんばかりに善逸を睨む玉壺。
「随分騒がしい猿だな貴様は!無教養の便所虫が!」
そして、一瞬の隙をついて善逸の肩に噛みつく玉壺であった。
「ぐ!?」
「私の腹の中で、精々芸術のなんたるかを、思い知るが良いぃー!」
その直後、何者かが柏手を打った。
「何やってんの君?物凄く痛いんだけど」
「それはそうだろ?わたくしに食われているのだから……」
よく視ると、さっきまで黄色だった筈の善逸の頭髪が、急に黒くなっていた。
「……誰だお前?」
そう……玉壺が気付いた時には、善逸と憂太の立ち位置が入れ替わったのだ。
しかし、玉壺はどうでも良かった。
(まあ、どうでも良いか。コイツをさっさと食い殺して、あの無教養の便所虫をさっさと―――)
が、玉壺は何者かに突き飛ばされ、憂太を手放してしまった。
(なんだ!?わたくしは何時殴られた!?動きが全く見えなかった!?)
玉壺が慌てて手に持った壺から水流を発射した。
「血鬼術!水獄鉢!」
水流は憂太を閉じ込め、液体ゆえに柔らかくグニャグニャと変形して内部からの破壊での脱出を防ぎ、同時に水責めで敵を溺れさせる。
(勝った!)
だが、柏手が響いた途端、憂太とぬいぐるみの立ち位置が入れ替わった。
「何いぃー!?何時の間に抜け出した?」
しかも、そのぬいぐるみは只のぬいぐるみではない。
(暴れてる。わたくしの水獄鉢の中で)
ぬいぐるみに見えたそれは、実は夜蛾が作った戦闘用呪骸である。
(いや!そんな事より、奴はどうやってすり替わった!?)
「知りたい?」
憂太の突然の発言に玉壺が慌て驚く。
「おわ!?何時の間に!?」
「これは本来、東堂葵と言う術師が使用する術式で|不義遊戯と言ってね、こうやって手を叩くと」
柏手が響いた途端、玉壺の目の前にいた筈の憂太が消え、代わりに筋肉質に膨れ上がったパンダが出現した。
「何だこいつ!?」
呪骸の心臓となる核は本来1つ。だがパンダの中には3つの核があり、メインの核を入れ替える事でボディを転換出来る。
「|激震掌!」
それこそがゴリラモードの真骨頂。
当てたものの内部に衝撃を浸透させる、防御不可能の打撃。直撃すれば、いかに十二鬼月とてひとたまりもない。
だが、玉壺の手に持った壺から蛸の足に似た触手が溢れ、パンダの視界を遮る。
「血鬼術!蛸壺地獄!」
いかに激震掌が大威力と言えど、それは『当たった物の内部を破壊する』事が本質。血鬼術を障害物として挟まれては、ダメージにならない。
「危な!?何なんだこれはぁー!」
玉壺はまたしても憂太に背後から声を掛けられた。
「お疲れ様、パンダくん」
「ぬおぉー!?すばしっこい奴だなお前ぇー!」
だが、憂太の返答は玉壺の想定外であった。
「いや、僕は1歩も|歩いて無いよ《・・・・・・》」
「何を嘘を言っている。現に貴様は―――」
「これが|不義遊戯の魔力。手を叩く事で発動し、一定以上の呪力を持った2つのモノの位置を入れ替える」
「入れ、替える?」
試しに憂太が柏手を打つと、憂太とパンダの立ち位置が入れ替わり、玉壺がパンダに正面を取られる形となった。
「ぎ!?」
だが玉壺はいやしくも十二鬼月。
壺から壺への瞬間移動でパンダの激震掌を回避する。
「危険極まりないな貴様ら!だが、お前の様な手足の短いちんちくりんの刃、私の頚には届かない」
が……柏手が響いた途端、憂太と玉壺の立ち位置が入れ替わり、玉壺がパンダに正面を取られる形となった。
「うお!?いい加減にしろ貴様ら!」
玉壺が慌てながら怒る中、憂太は呑気に自身の術式の説明をする。
「とは言え、僕の|不義遊戯は東堂葵の見様見真似。本物じゃない」
玉壺は言ってる意味が解らなかった。
「本物じゃない?どう言う事だ?」
「僕の本来の術式は模写。他者の術式を無制限にコピーしてるだけ。良く言えば見真似稽古。悪く言えば贋作だよ」
「贋作!?と言う事は、完成度は―――」
その時、憂太のスマホにメールが届いた。
「ん?ちょっと待って」
「おい!」
メールの内容を見た憂太は、意を決して柏手を打った。
「また消えた!?今度は誰と―――」
「堕ちろぉーーーーー!」
狗巻棘は一族に伝わる高等術式「呪言」の使い手。つまり、喋るだけで相手を呪う事が出来るのだ。
が、術の性質上、意図せず人を呪う事も多く、その為、普段は会話の語彙をおにぎりの具に限定している。また、連続で使用したり、「死ね」などの、より強力な言葉を使用するほど身体(特に喉)への負荷がかかるので、多用は出来ない術式でもある。
そんな呪言をもろに受けた玉壺の体に何倍、何十倍もの重力が襲った。メリメリと骨が軋む音が響き、やがて玉壺の足元が砕け、地面ごと圧し潰されてゆく。
だが、玉壺は壺から壺への瞬間移動で再び憂太の前に現れる。
「いい加減にしろよ蛆虫共……」
またしても柏手が響いたので、玉壺が慌てて身構えるが、憂太の身に何も起こらなかった。
「……あれ?」
「と、こんな感じで手を叩いただけで相手を驚かせる事も、|不義遊戯には出来ると、東堂本人は言い張ってるそうだよ」
「殺すぞ!」
改めて憂太の殺害を決意する玉壺だが、憂太は柏手が響く度に一瞬でどこかに行ってしまうので、
「こうなれば、一斉攻撃だ!」
ニシキゴイに人の手足を生やした様な姿の使い魔を次々と発生させ、更に手にした壺から金魚が飛び出して無数の針を飛ばした。
「血鬼術!千本針魚殺!」
(こうやって広範囲な攻撃を続けて行けば……)
だが甘かった。
千本針魚殺の餌食となったのは、どれも玉壺がさっき発生させた使い魔ばかりで、憂太には1本も当たらない。
「いい加減にしろよマジで!」
(いかん!このままでは、抜け出せない!)
けど、日輪刀を持たぬ憂太達も攻め切れずに困っていた。
(今は|不義遊戯でどうにかお茶を濁してはいるけど……日の出までまだ大分時間がある……そろそろ、別のネタで攻めないと)
「……ねえ君」
「ん?何だ?」
「君はTAROMANのファンかい?」
「ほほう。貴様もTAROMANに興味が有ると?」
「でも、その割には岡本太郎要素が1つも無いよね?特にその壺、岡本太郎らしさが微塵も無いよ。1からやり直したら。それとも、才能無し最下位?」
その途端、玉壺は両耳から直線状の溶岩を噴射する程激怒した。
「舐めんなよ小童が!その致命的で絶望的な不細工面をクロマグロ並みのイケメン顔に作り変えてくれるわあぁーーーーー!」
それを見た憂太がパンダと狗巻に耳打ちをする。
「パンダくん、狗巻くん、僕はこれから|アレ《・・》を使うから、少し離れてて」
パンダと狗巻は、視線を交わし、頷いた。
「応!」
「シャケ!」
一方、玉壺の驚異的な再生力に完膚なきまで完敗した挙句、憂太の|不義遊戯によって強制転送させられた善逸は、自慢の異常聴覚を頼りにオガミ婆を探していた。
(くそ!不覚だ!あの化物相手に打つ手が無かったとは言え、呪術高専から真相を訊き出す為の|人質として使える呪詛師を早々と手放すとは!)
で、どうにかこうにか玉壺がさっきまでいた場所に戻れた善逸であったが、パンダに肩を掴まれ、
「停まれ」
自慢の異常聴覚が仇となり、狗巻の呪言をもろに受けて足が停まってしまった。
「ぐ!?……動けない?これも呪術の一種か!?」
パンダは善逸の質問には答えず、ただ警告するだけだった。
「止めておけ、巻き込まれる」
「巻き込まれる?まだあの化物が近くにいると言うのか?」
「それもあるが……素人に領域攻略はキツイって」
幼少からホワイトスパイになる為の教育を受けてきた善逸にとっては理解不能な言い分だった。
「……領域?」
原作との相違点
●狗巻棘
・虎杖悠仁や両面宿儺とは無関係。
・左腕を失っていない。
・パンダとコンビを組む事が多い。
第12笑:領域展開VS十二鬼月
あわじ結びされた飾り紐のかかる空、朽ちた墓標とそこら中に突き刺さっている無数の刀、という異様な風景が広がっている。
その中を冷静に歩く憂太。
そこへ、異様な姿を晒す黒い影。
屈強な半魚人の様な上半身に蛇の様な下半身を持つ男。
その男こそ、先程まで憂太と戦っていた玉壺だ。
「ふふふ。貴様にはわたくしの真の姿を御魅せしよう」
「……能書きは良いから、さっさと出て来たらどうだい?」
玉壺は少しだけ不満になったが、気を取り直して再び口上を始めた。
「……せっかちさんね。まあいい、どうせこのわたくしの美しい真の姿にひれ伏す事になるのだから。光栄の極みだぞこれは。何せ、これを観たのは貴様で4人目で―――」
「意外と多いね?」
堪忍袋の緒が切れそうになる玉壺。
「……失礼なモヤシですねぇ……私の美しさを理解出来ぬとは……この美しい声、美しいフォルム、全てが美しい私こそ芸術なので、す……」
あえて無言を貫いた憂太。
「何とか言ったらどうなんだこの木偶の坊が!本当に人の神経を逆撫でするモヤシだな!」
「とは言われましてもねぇー、職業柄、もっとグロテスクな呪霊を山ほど視たしね」
遂に怒り狂う玉壺。
「グロテスクぅー!?このわたくしがだとおぉー!?」
その直後、憂太を殴ろうとする玉壺。それを地面に刺さった刀で防ごうとする憂太。
だが、その刀は玉壺のパンチに触れた途端……
「ヒョッ!どうだね、わたくしの神の手は?このわたくしの手に触れた物は愛くるしい鮮魚となる!では、約束通り貴様の絶望的な醜い顔立ちを、クロマグロの様な美しいイケメン顔に変えてやる」
刀身を失った刀を捨てて別の刀を抜くが、それも玉壺のパンチで無数の生きた鮮魚に変わる。
「無駄な足掻きは止せ。どうせ、その芸術センスの欠片も無いその顔立ち……気に入っていないのだろ?」
「君にだけは言われたくないな。どこに目を付けてるんだ?」
玉壺が勢い良く飛び上がり、不規則に何度もバウンドした。
(血鬼術、陣殺魚鱗!さあ、どうかねわたくしのこの理に反した動き!鱗によって自由自在!予測不可能よ!)
対する憂太は突き刺さっている刀で対応しようとするが、玉壺のパンチが刀身を無数の生きた鮮魚に変えてしまい、なかなか攻撃に転じられない。
(そもそも、その刀そのものが無駄!ダイヤモンドより硬いわたくしのこの鱗にそんなモノは通用せん!さあ、永年壺の中で練り上げた、わたくしの美しさに、平伏すが良いぃー!)
一見すると玉壺が優勢に戦いを進め、憂太がジリ貧に陥った様に見えるが、憂太の……勝利を確信したかの様な笑みは崩れなかった。
一方的に攻めていた筈の玉壺は、ふと目の前の風景の|不変さ《・・・》に首を傾げた。
(ん?どう言う事だ?わたくしは既にかなりの数の刀を愛くるしい鮮魚に変えた筈……なのに……)
確かに玉壺のパンチが憂太が拾った刀を次々と無数の生きた鮮魚に変化させている。
にも拘らず、憂太の周りにある刀は1本も減っていないのだ。
(どう言う事だ?寧ろ増えているとさえ言える!?)
さっきまで防戦一方のジリ貧状態だった憂太が漸く口を開いた。
「まだ気づかないのかい?この領域が、誰の物かを」
玉壺は言っている意味が解らなかった。
「領域?制空権の事か?」
「違うよ。漫画でよくある達人同士の戦い云々の話をしてるんじゃない。この場所その|物の事を言っているんだ」
(謎解きか?いや、止めよう。どうせ神の手と陣殺魚鱗で圧し切れば勝てる戦い。奴のペースに入らぬのが得策!)
再び猛攻を再開する玉壺に対し、憂太が呆れ果てた。
「君こそせっかちじゃん。人の話をまったく聴かないで……後悔する、よ!」
憂太は懲りずにまた刀を抜く。
「馬鹿め!拾った刀が愛くるしい鮮魚に変わったのは、これで何度目だ!?」
だが、憂太は1本しか抜いてない様に見えてちゃっかり2本抜いていたのだ。
「狗巻くんのを引いたか……」
その間、玉壺は憂太の背後を取った。
(おしまいだ!)
勝ちを確信する玉壺だったが、
「爆ぜろ」
たった一言。
その一言で、この両者の目の前に広がる異様な風景が、文字通り『爆ぜた』。
その途端、玉壺が不思議な感覚に襲われた。
(何だ?何だ!?感覚が消えた!天地が逆だ!)
それでも、倒すべき敵である憂太を睨みつける。
(見つけた!あのモヤシ!今度こそわたくしの神の手で……)
が、呪術高専に戻った時点で玉壺は既に生首だけになっていた。
「……あ?」
「……え?」
それを観た善逸は理解に苦しんだ。
領域が目の前に有るから停まれと意味不明な忠告を受け、突然目の前が爆発し、さっきまで自分を苦しめていた怪物が急に頭部だけになったのだ。
誰か詳しく説明して欲しいと思うのも無理はない。
「……どうなってんの?」
善逸にとっては『どうなってんの?』だが、頭部だけの状態となった玉壺にとっても『どうなってんの?』だった。
「き、き、斬られた!?斬られた斬られた斬られたぁー!そんな!馬鹿な!信じられぬ!とんでもない異常事態だ!この私が負けたのか!?モヤシにぃー。こんなモヤシ親父如きにぃー」
喚き散らす玉壺を観て呆れながら驚く善逸。
「ここまで|殺られてなお死ねない君も、十分異常事態だけどね(笑)」
「領域展開、真贋相愛。僕の最期の切り札さ」
憂太の言葉にハッとする善逸。
「切り札!?……とっておきの呪術を使ったって事か?」
「そう。領域展開は物凄く呪力を消耗するけど、それだけ利点もある。1つは環境要因によるステータス上昇。ゲームとかの補助魔法みたいなモノだと思ってくれて良いよ」
憂太の言葉にハッとする玉壺。
(そうか!先程の風景全てがあのモヤシの味方だったのか!だから領域の所有権云々の話をしていたのか!?)
「もう1つ、領域内で発動した付与された術式は、絶対当たる。命中率100%も夢じゃないよ」
呆れる善逸。
「100%って」
「そう!100%!必中必殺!」
「……えー……」
「故に、領域展開は呪術戦の極致とも言われてるんだ」
勝ち誇ったかの様に説明する憂太に激怒する玉壺。
「くそおぉーーーーー!人間の分際で!この玉壺様の頚をよくもォ!」
しかも、斬られた頚から徐々に肉体を再生させていた。
「貴様ら百人の命より私の方が価値がある、選ばれし!優れた!生物なのだ!弱く!生まれたらただ老いるだけの!つまらぬ下らぬ命を私がこの手で!神の手により高尚な作品にしてやったというのに!この下等な蛆虫共……」
と敗北を頑なに認めずに散々罵詈雑言を吐き散らした所で、憂太は玉壺の頭部を踏んだ。
「そんな事より、1つだけ訊きたい事が有る」
「黙れ便所虫!」
「ここに呪術高専がある事をどうやって知った?」
それについて責任を感じる善逸。
「それは間違いなく俺の不注意だ。まさかこいつに尾行されていただなんて―――」
だが、憂太は善逸の自首を完全否定する。
「いや、そうじゃない。裏に誰か居る。コイツに呪術高専の場所を教えたチクリ魔が」
対する玉壺は自白を拒否する。
「貴様の様な無教養の便所虫に何を言っても無駄だ」
憂太が足に力を入れると、踏まれている玉壺の顔が歪んだ。
「早くぅ。言っちゃいなよ」
「ふざけるな便所虫……」
「ほらほら」
「その醜い足を退けろ。便所虫」
が、よく考えると、この光景は善逸を驚かせる事ばかりであった。
(だが、この俺がどうやっても殺せなかった怪物を、この男はいとも簡単に獄門状態にしたその実力は、本物。生き物としての、格が違う!?)
その時、巨大な呪霊が地面から生え、憂太を吹き飛ばし、玉壺を飲み込んだ。
(しまった!十二鬼月が相手だからと、あいつに意識を集中させ過ぎた!)
憂太が慌てて巨大呪霊を追うが、呪霊は地中を猛スピードで突き進んで逃げおおせた。
「逃げられたか?逃がす算段も出来ていたと言う事は、あいつが僕に負けるのも想定済みって訳か?十二鬼月も舐められたものだな」
憂太は少し困った様子で夜蛾に報告しに向かう。
「たった今、十二鬼月に襲われたそうだな?」
「ええ。しかも取り逃がしました」
「逃げられた?十二鬼月が尻尾を巻いて逃げたと言うのか?」
憂太が気になるのはそこじゃない。
問題なのは……逃げ方だ。
「確かに奴は僕から逃げました。ただ、問題なのは逃走経路です」
憂太の真剣な顔が気になる夜蛾。
「……どう言う事だ?」
憂太の報告を聴いた夜蛾は、ある人物の関与を感じた。
「呪霊に乗って逃げただと!?式神や傀儡ではなくてか?」
「いいえ。アレは確かに呪霊でした」
「……確か、前に秋場雪賀を襲った呪詛師も、『あの学園内に平成29年が居る』と言っていたな?」
憂太は……嫌な予感をつい口から出してしまった。
「……あの事件から既に7年以上が過ぎてます」
「……何が言いたい?」
と、訊いてはみたものの、既にその意味を正しく理解している夜蛾。
「学長も……本当は嫌な予感がしていますよね?」
夜蛾は、観念したかの様に予想を口にする。
「7年も有れば、それなりに呪霊も回収出来よう」
それから……
2人共沈黙のまま、対玉壺戦に関する報告は終わってしまった。
一方、善逸も困っていた。
竈門ベーカリー殺人事件の真相を憂太から訊き出す為の人質として利用する筈だったオガミ婆が、玉壺襲撃のごたごたのせいで手放してしまい、気付いた時にはオガミ婆は呪術高専に捕縛されていた。
「……手土産が無い状態じゃ、誰も話したがらないか……出直すしかないな」
そう思って呪術高専を去ろうとするが、ふとある事を思い出した。
「すまん。乙骨憂太に伝えなきゃいけない伝言がもう1つ有った」
が、肝心の憂太がなかなか戻ってこないので、代わりに狗巻(とパンダ)に伝えた。
「と言う訳で、炭治郎はその婆さんをメッセンジャーに仕立て上げた鬼と戦っている筈だ。その事を、乙骨に伝えてくれよ」
「おう。解った」
「シャケ」
そう言って、善逸は竈門ベーカリー殺人事件の真相を訊き出せぬまま呪術高専を去った。
(ん?今、日本語を喋ったのは、パンダの方じゃなかったか?アレ……着ぐるみぃ、だよな?)
善逸にとって今日は、理解に苦しむ事ばかりの1日であった。
原作との相違点
●玉壺
・令和7年まで生存。
・乙骨憂太と交戦し敗北。
・『花の慶次 -雲のかなたに-』における『四井主馬』に相当する人物。
第13笑:呪術界最大の言禁
とある石材店が奇妙な青年の奇妙な依頼を受けていた。
「壺の形をした墓石ですか?」
「そ。玉壺殿は壺を造るのが得意でね、俺も幾つか貰ってるんだ」
石材店の店長は依頼内容に困惑したが、もっと重要な事を見逃していた。
それは、青年の目に書かれている漢字である。
『上弦の参』
即ち、この青年もまた、鬼舞辻無惨直属の精鋭『十二鬼月』の中でも最強クラス・上弦の鬼に属する1人であり、『上弦の伍』である玉壺より格上の鬼である。
そんな超強豪鬼に出遭ってしまったと言う大不幸に見舞われた……のだが、
琵琶の音が響き渡った途端、上弦の参が落とし穴に落ちたかの様に突然消えた。
「あれ?お客様?お客様!?」
上弦の参は奇妙な空間へと召喚されていた。
城内は空間が歪み、上下左右や重力の概念が無茶苦茶な状態となっているだけでなく、襖や畳、床、壁など様々な和室の要素が物理の法則を無視した様な出鱈目に継ぎ接ぎされた様な奇怪な空間となっている。
「ここは……無限城……」
そこへ、無惨が不機嫌そうにやって来て、
「童磨よ……ついさっきまで貴様の目の前にあった奇妙な物体は何だ?言ってみろ」
童磨と呼ばれた上弦の参は、悪びれも無く陽気な声で答えた。
「玉壺殿は生前美術が大好きだったので、美術らしい弔い方で―――」
だが、無惨は童磨の言い訳を最後まで聴かない。
「私は不快の絶頂だ。私は|また《・・》上弦を失いかけた……しかも許可無く自殺した猗窩座と違って、今回は他殺だぞ……私は上弦の存在理由が解らなくなってきた」
無惨は額に青筋を浮かべて睨みつける。
対する童磨は少しだけ困った顔をしながら返答した。
「また、その様な悲しい事を仰いなさる。俺が貴方様の期待に応えなかった時があったでしょうか」
だが、童磨の言い訳はまたしても水を差された。
「乙骨憂太がまだ生きているのにかい?」
「あ」
ちょくちょく無惨や竈門炭治郎を観察する呪詛師達と密会するあの法衣姿の男が玉壺の生首を抱えながらやって来たので、童磨は法衣姿の男の本名を口にしてしまった。
「夏油殿に玉壺殿!御無事でしたか!」
童磨は呪術界にとってどれだけの意味を持つ単語かをまったく理解出来ないまま軽々しく『夏油』と言う単語を使ってしまったが、呪術に興味が無い鬼達にとってはその程度の失態はどうでも良く、そんな事より玉壺の|今の姿の方がよほど大重要だった。
「童磨殿?わたくしのこの格好のどこが『御無事でしたか』だ……童磨殿はどこに目を付けておられる?」
「それで済んだだけマシだろ」
法衣姿の男の挑発に青筋を浮かべながら睨む玉壺に対し、法衣姿の男は舌を出したとぼけた。
だが、次の瞬間。
玉壺の視界いっぱいに、何故か逆さまになった無惨の顔が飛び込んで来た。
「元はと言えば、貴様があの様なうだつの上がらないあちこちガタガタになってしまった中年親仁如きに負けたのが大本の元凶だろ」
何時の間にか、玉壺の頭は無惨の手の中に逆さに掲げられていたのだ。
(無惨様の手が私の頭に!いい……とてもいい……)
玉壺が内心喜んでいる中、一見冷静に語る法衣姿の男の顔に、ビキキ……と、血管が浮かび上がる。
「乙骨憂太を……祈本里香を舐め腐るのは辞めた方が良い。死にたくなければな」
が、無惨は至極どうでもいいとばかりに自分の言い分を淡々と口にする。
「そんな事より夏油傑……青い彼岸花はどこだよ?」
無惨が法衣姿の男に向かって言い放った質問に最初に答えたのは、若武者の様な和服姿で顔面に三対六つの眼を持つ『上弦の壱』……十二鬼月の頂点であった。
「返す…言葉も…無い…青い彼岸花…あれは…謎が多い」
「おや?黒死牟殿。居られたか?」
「そんな事は…良い…それより…夏油…お前は…度が過ぎる」
不意に琵琶の音が響くと、重力の方向が変わり、無惨の手から玉壺の頭部が離れ、無惨から見れば上へ向かって落ちて行く。
「これからは、もっと死に物狂いで|殺った方が良い。私は、上弦だからと言う理由でお前達を甘やかし過ぎた様だ」
琵琶の音が響くと、中空に突然現れた襖が、無惨と上弦達を隔てる様に閉まり、無惨の姿は見えなくなった。
床に転がった玉壺の頭部が駄々を捏ねた。
「ちょっと!無惨様!わたくしの言い分も聞かずに往っちゃうなんて……でもそこが良い……」
無惨が去ったのを確認すると、黒死牟が法衣姿の男の許へ歩み寄った。
「夏油…お前は…7年前から…変わらぬな」
法衣姿の男は黒死牟の間合いが長くて丁寧な発声に、未だに慣れなかった。
「もっとテンポ良く発言してくれないか?」
が、黒死牟は無視した。
「あの時…私が拾わねば…お前は…呪術高専に…殺されていた」
「それはそうなのだがね」
そこへ童磨が割って入る。
「まあまあ黒死牟殿。夏油殿はこの俺を抜いて上弦の弐になった―――」
童磨の言い分はまたしても無視された。
「それ故だ…序列の乱れ…ひいては従属関係にヒビが入る事を憂いているのだ」
「あー、なるほどね」
童磨は指を鳴らしながら納得したが、法衣姿の男は内心『古いな』と想った。
「私は協力してくれる術師にそこまで無理強いした覚えは、無いがね」
黒死牟は呆れつつも、法衣姿の男に釘を刺した。
「夏油…私の…言いたい事は…解ったか…」
下手に反論しても話が長引くだけだと判断した法衣姿の男は、とりあえず返事をした。
「了解した」
「そうか…励む…事だ」
夏油傑。
かつては東京都立呪術高等専門学校の生徒で、将来を有望視されていた特級呪術師であった。
しかし、そんな彼に転機……もとい|転帰が訪れたのは、かつて現代最強の呪術師と呼ばれていた五条悟との共闘任務に失敗してしまった時に|視てしまった《・・・・・・》悪意に満ちたスタンディングオベーション。
自分達が死なせてしまった護衛対象の遺体に向かって惜しみない拍手を送る盤星教信者達の姿に、夏油は非術師を保護する理由を見失い始めた。
その後も夏油は後輩・灰原雄の死……更には9月に任務で訪れた田舎で、住人達に虐待されていた呪術師の少女達(菜々子、美々子)の惨状を目の当たりにする……
その結果、非術師との決別を完全に決意し呪術高専と袂を分かち、『非術師絶滅による呪霊誕生阻止』と言う大義を掲げてしまったのだ。
そして……運命の『平成29年』。
乙骨憂太から特級過呪怨霊と化した祈本里香を強奪するべく大規模な呪術テロを実行に移す。
手始めに呪術高専にのこのことやって来て、12月24日に新宿と京都で大規模な百鬼夜行を行うと宣言し、祈本里香を過剰に危険視した上層部の心理を巧みに利用する形で憂太を孤立無援に追い込んだ。
かに思われたが……
同級生が重傷を負わされた事への怒りで覚醒した憂太に返り討ちに遭い、逆に夏油が右腕を失う結果となった。
以来、術師の間では呪術師・呪詛師問わず、『夏油傑』と『平成29年』が発言禁止になる程忌み嫌われた単語と化してしまったのであった。
だが、夏油傑はしぶとく生きていた。
彼の呪霊操術に興味を持った黒死牟の手によって。
「このままでは…お前が望む…『次』は…来ぬ」
「次が無いだと?」
とは言え、夏油には思い当たる節があった。
「……悟が……もう直ぐ呪術高専に戻って来るのだな?」
黒死牟は夏油に五条悟への未練が残っていると悟りつつ、それでもなお、夏油を鬼にスカウトしようとする。
「鬼となり…更なる強さが…欲しいか…お前も…あの方に…認められれば…我らの…仲間と…なるだろう」
ここで夏油は自分の過去を振り返り、盤星教信者達が行ってしまった死体蹴りの様な悪意に満ちたスタンディングオベーションを思い出してしまった。
「もし、この私に次を与えてやるが嘘偽りだったら、只では済まさんよ。それでも良いかい?」
脈ありと判断した黒死牟はただ淡々と告げた。
「そうか…励む…事だ」
その後、夏油はたった7年で上弦の弐に登り詰めたが、黒死牟の期待に反し、無惨が求める青い彼岸花は未だに発見出来なかった……
で、話は再び炭治郎と炎凝呪法を使う幼女鬼との戦いに戻る。
何時の間にか戻って来た夏油にカンナが問う。
「この様子だと、玉壺は乙骨憂太に敗れた様ですね」
「ああ。為す術無くね」
「夏油様、結果を知っていながらやったでしょ?」
「言っただろ?あいつは只の時間稼ぎだと。ナイトのエージェントが余計な事をしたのは想定外だったが……ま、玉壺如きに殺せるなら、7年前に私が乙骨を殺していたよ」
この会話を玉壺が聞いていたなら、間違いなく怒り狂っていただろう。
が、夏油もカンナも心底|どうでもいい《・・・・・・》事だ。どの道、玉壺はただの|非術師なのだから。
「それより、あの子は……どうなった?」
「あの子なら、人質を盾にしながら粘っていますが、炭治郎は未だに『赫』を出していません」
「赫を使わない?」
その途端、夏油は不機嫌になった。
「乙骨……あの馬鹿、炭治郎に『反転』の事を教えるのを忘れていたな」
事実。
憂太は3年間の秋場雪賀護衛任務……つまり、学校と言う呪霊が発生しやすい場所に放り込む事で炭治郎の場数と経験値を蓄える魂胆だったのだ。
だから、憂太はこの時期に炭治郎が1級呪術師に匹敵する鬼と戦う事は完全に想定外だった。
故に、憂太はまだ炭治郎に反転術式を伝授していないのだ。
だからこそ、パンダから我妻善逸の伝言を聞かされた憂太が慌てて件のファミレスへと急いでいた。
「くそ!何故気付かなかった!?鬼舞辻󠄀無惨が夏油傑を鬼に変える可能性を!」
憂太の愚痴にパンダ達が驚く。
「はぁ!?夏油は憂太がやっつけたんじゃなかったのか!?」
「僕もその心算だった……だが、それは鬼舞辻󠄀無惨が夏油傑にまったく興味を示さなかったらの話だったんだよ!」
憂太の予測に禪院真希が少しいら立つ。
「無惨の野郎がどう思っているかは知らねぇが、マジでしつけえ奴だな夏油傑は!」
真希にとって今回の炭治郎への加勢は、ある意味雪辱戦だった。
平成29年の百鬼夜行テロの際、憂太と共に呪術高専で留守番させられたうえに、呪術高専に侵入した夏油に完敗してしまったからだ。
だが、今の真希は違う。
7年前は一般人並みの呪力を持ってしまった故に不完全・未完成だったフィジカルギフテッドも、真依の力と命を借りて全呪力を捨てた事で完成させ、人間離れした身体能力に磨きがかかったのだ。
それに、炭治郎の安否を気にしている憂太には悪いが、狗巻もパンダも今回の雪辱戦に燃えていた。
「ま、どっちにしろ、今度こそ叩き潰すのみだ!」
(炭治郎……禰󠄀豆子……頼む!無事でいてくれ!)
原作との相違点
●夏油傑
・未だ生存。
・上弦の弐。
・黒死牟のスカウトを受けて鬼になった。
・2017年12月24日の百鬼夜行テロの影響により、名前そのものが禁忌扱いされた。
●平成29年
・乙骨憂太が東京都立呪術高等専門学校に転校した日。
・そして、夏油一派が百鬼夜行テロを実行した日。
・2017年12月24日の百鬼夜行テロのせいで、呪術師や呪詛師にとってはある意味禁忌的な存在となった。
●黒死牟
・令和7年まで生存。
・夏油傑を鬼にスカウトした。
●童磨
・令和7年まで生存。
・上弦の参。
●猗窩座
・既に自害。
●鳴女
・令和7年まで生存。
●羂索
・2021年1月20日に相討ちと言う形で五条悟に殺害された。
・黒死牟に先手を打たれた為、夏油傑の遺体奪取に失敗する。
●熱田睡蓮
・本作オリジナルキャラクター。
・女性呪詛師。
・私立善根高等学校1年生。
・竈門炭治郎を観察する為に潜り込んでいる夏油一派のスパイ。
・特技は催眠術。
・頭部は黒木智子(私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!)で首から下は香椎愛莉(ロウきゅーぶ!)。
●小夏カンナ
・未だ生存。
・私立善根高等学校英語教師。
・竈門炭治郎を観察する為に潜り込んでいる夏油一派のスパイ。
・熱田睡蓮の上司。
・正体は枷場美々子。
●銃鬼
・本作オリジナルキャラクター。
・最終選別用に生け捕られて藤襲山に囚われた幼女の鬼だったが、竈門炭治郎の観察を目論む夏油一派の策略によって稀血を有する非術師10人と禪院真依・禪院扇の脳を食わされ、1級呪術師に匹敵する呪詛師として覚醒した。
・弾道や軌道などの『動き』を操る血鬼術と炎凝呪法を開花させており、銃などの武器に呪力を籠めて打ち出し、高威力のチャージショットを発射する事も可能。
・引っ込み思案で内向的傾向を有するものの、自分を藤襲山から救い出してくれた夏油一派に奉公するべく鬼特有の傲慢・凶暴に徹しようとする健気な一面も持っている。
第13.5笑:むじゅさんぽ集③
●玉壺へのおしおき(?)
夏油傑と童磨は不思議な踊りを踊った。
「今日も、良い日に、なるように」
「誰かに、笑顔で、ありがとおぉー!」
そんな2人を観て、玉壺は首を傾げた。
「んー?童磨殿?夏油殿?何をしておるのだ?」
「シマエナガ体操」
「もう一周しましょう。今日も、良い日に、なるように」
「何時でも、笑って、優しくね」
シマエナガ体操を一通り踊り終えた2人(?)。
「ぼちぼち温まったかな?」
「そうだね」
「ん?何の事だ?」
玉壺が軽く困惑する中、童磨が玉壺を持ち上げ……いきなりサーブした!
「ん?……うぎゃあぁーーーーー!?」
どうやら、先程のシマエナガ体操はバレーボールをする為の準備運動だった様だ。
しかも、夏油・童磨ペアーの相手はビキニ風着物を着た妖艶な美女『堕姫』と肋骨から下が異常に痩せている青年『妓夫太郎』の上弦の陸コンビ。
つまり、これは試合なのだ。
ただの練習・遊戯とちゃんとした試合では、ボール役の玉壺が背負う苦痛は段違いだ。
童磨のサーブを堕姫がレシーブして妓夫太郎がアタックするが、童磨にレシーブされてしまった。
だが、1番堪った物じゃないのはボール役の玉壺である。
「あげ!?あべ!?ぐえ!?」
だと言うのに……夏油はお構いなしにトスをする。
「童磨君!」
因みに……男子バレーは足も使う!
「オーバーヘッド……シュート!」
童磨が足で行ったアタックをレシーブしようとする上弦の陸コンビだったが、対応が間に合わずに夏油・童磨ペアーにポイントが加算されてしまった。
「きゃいいぃーーーーーん!」
ボール役の玉壺の悲鳴にエコーが宿る。
大事な事なのでも1度言うが、1番堪った物じゃないのはボール役の玉壺である。
(こいつら……何時か殺す!)
●もしも、本物の玉壺がヒノカミ血風譚2のあの技を受けたら?
宇髄天元
「派手なポーズを頼む」
玉壺
「……」
宇髄天元
「……無視してんじゃねえぇー!」
玉壺
「それは貴様の目玉が腐っているからだろうがアアアア!わたくしが壺の中で丹念に練り上げたこの美しき姿、どこが地味なんだアアアーーーーー!」
●鬼滅の刃の声優事情③
響凱
「忌々しい!」
悲鳴嶼行冥
「いかが成された?」
響凱
「腹立たしい。諏訪部順一は小生のCVだぞ。小生に充てられた小生のCVだ!」
不死川実弥
「響凱、先ずは貴様が落ち着け」
響凱
「何故CVが同じ小生の小説の閲覧数がまったく増えんのに、|ケネス・スレッグ《こやつ》は地球連邦軍大佐になっている?忌々しい、忌々しい、忌々しい!」
不死川実弥
「本当に落ち着け。関智一なんかパンダだぞ」
枷場美々子
「しかも、両面宿儺のCV―――」
胡蝶カナエ
「小夏先生、やめましょう。お話が更にややこしくなります」
脹相
「アニメ勢はどけ!ネタバレ注意だぞ!」
●呪術廻戦≡について思う事
祈本里香
「……バイバイ。元気でね。あんまり早く、|冥界にきちゃダメだよ?」
乙骨憂太
「……うん」
63年後。
乙骨憂太(79歳)
「やあ……遅くなっちゃったね。里香ちゃん」
祈本里香
「結局……|冥界に来るのね(涙)」
乙骨憂太(79歳)
「それと、真希さん見なかった?先に現着してる筈なのじゃが」
祈本里香
「そんな事より、もうちょっと頑張れるでしょ!鬼滅の刃の継国縁壱ですら85まで頑張ったんだから」
継国巌勝
「それを言うな!鬼滅の刃では、痣持ちは早死にすると言う|設定が有るのに、縁壱はそれを飛び越え80代―――」
祈本里香
「それに関するツッコミは『笑術廻戦~もしも竈門炭治郎が五条悟だったら~』の終盤でたっぷりするから、とりあえず置いといて」
継国巌勝
「おい!」
祈本里香
「せめて『≡』までは頑張って欲しかった。虎杖悠仁と釘崎野薔薇も『≡』に|出演たんだから」
乙骨憂太(79歳)
「……言われてみれば、儂はシムリア星人問題を孫達に押し付けた形になってしもうたのう」
漏瑚
「『≡』の話は止めい!アレはアニメ勢への配慮がまったく足りん!」
乙骨憂太(79歳)
「里香ちゃん……この者は誰じゃ?」
漏瑚
「お前は確かに渋谷事変不参加……そんな事はどうでも良い!」
乙骨憂太(79歳)
「何でじゃ!?」
漏瑚
「そんな事より、『≡』はアニメ勢に優しくない!」
祈本里香
「……どうして?」
漏瑚
「だってほら、『≡』に|出演た時点で、呪術廻戦のラスボス―――」
乙骨憂太(79歳)
「そう言う回りくどい言い方はせんで―――」
漏瑚
「ネタバレになっちゃうだろ!三条陸だってダイの大冒険の再アニメ化の話を聴いて、アニメ勢に配慮する為に続編制作を諦め、前日談である勇者アバンと獄炎の魔王に軌道修正したんだぞ!なのに、『≡』は堂々と呪術廻戦の後日談をやりおって。特に呪術廻戦のラスボスをもってしても釘崎野薔薇を殺せなかったは、あらゆる意味でアニメ勢を置き去りにし過ぎだろ!」
乙骨憂太(79歳)
「なら『≡』をアニメ勢に見せなきゃよいじゃろ?」
漏瑚
「……」
祈本里香
「……」
漏瑚
「……言われてみれば……そうだな」
●だんご3兄弟について思う事。
脹相
「弟想いの長男♪兄さん想いの三男♪自分が1番次男♪」
竈門炭治郎
「次男♪」
脹相
「『自分が1番次男』じゃなかったのかよぉーーーーー!(涙)壊相ぅーーーーー!(涙)」
竈門炭治郎
「お前もか……お前もなのか!?」
脹相
「そうだよぉーーーーー!俺も次男を殺されてるんだよぉーーーーー!」
竈門炭治郎
「兄弟がいなくて辛かろうが脹相くん。それらを押し殺せ。失った物ばかり数えるな!失っても失っても生きていくしかない!お前にまだ残ってるものは何だ!?」
脹相
「虎杖悠仁がいるよ……!」
乙骨真剣
「その人なら大丈夫。『≡』では特級呪霊の真人を鼻ほじりながら雑魚扱い出来るくらい強くなるから」
竈門炭治郎
「もはや五条悟越えのバケモンやんけ!」
脹相
「悠仁ぃーーーーー!お前は『≡』でも元気にしてるんだなぁーーーーー!お兄ちゃん嬉しいぞぉーーーーー!」
竈門炭治郎
「……君はいったい何者なんだ?」
乙骨真剣
「僕は未来から来た乙骨ツル……いや、パーティー名は余計なお世Wi-Fi。シムリア族のジャバロマです(嘘)」
竈門炭治郎
「おい!」
脹相
「俺の|虎杖悠仁が68年後もピンピンしてる事を、何故お兄ちゃんに教えてくれた?」
乙骨真剣
「勇者マルルならそうしたって事さ。んじゃお元気で。無限の彼方へ!さぁ|竈!」
脹相
「俺の|虎杖悠仁に関する重大な情報を告げておきながら、随分あっさりと別れましたね」
竈門炭治郎
「涙の別れは必要無いさ。また会った時に恥ずかしいからね」
原作との相違点
●堕姫
・令和7年まで生存。
●妓夫太郎
・令和7年まで生存。
●宇髄天元
・私立善根高等学校美術教師。
・それ以外は『キメツ学園』とほぼ同一。
●響凱
・私立善根高等学校音楽教師。
・ペンネーム『稀血求む』で小説投稿サイトを利用しているが、鳴かず飛ばず。
・それ以外は『キメツ学園』とほぼ同一。
第14笑:竈門炭治郎のうた
急ぎ竈門炭治郎の許へ急ぐ乙骨憂太。
「でも、まだ基本中の基本だけとは言え、その娘、無下限呪術が使える筈だろ?」
「それと、ヒノカミ神楽を使える様にしたんじゃなかったのか!?」
だが、憂太は残念そうに首を横に振る。
「いや……確かに僕は炭治郎ちゃんに無下限呪術と六眼を覚えさせた。けど、僕はまだ反転術式の存在を伝えてない!だから、炭治郎ちゃんは出来て無限と蒼が限度。茈どころか、赫すら使え」
だが、憂太達の前に1台のショベルカーが立ち塞がる。しかも、フォークグラブ(ツメで物を挟んで移動・積込み・解体を行うアタッチメント)タイプだ。
「何だ!?」
「この忙しい時に、秋場雪賀の命を狙う殺し屋か?」
操縦席の上で胡坐をかいている熱田睡蓮は質問には答えず、憂太の事を小馬鹿にする。
「随分呑気な教育手法だねぇー!そんなんでよく竈門炭治郎に鬼舞辻󠄀無惨を斃させるって言えたねぇー!」
これで憂太の嫌な予感が確信へと変わる。
(あのドライバー……あそこにいる呪詛師に操られてる。これだけの呪力があれば、僕達が動き出す前に秋場雪賀を殺せる筈……)
「何しに来たの?ここには秋場雪賀はいないよ?」
熱田はクスッと笑った。
「確かに、私の真下にいるドライバーに秋場雪賀を殺せば12億が手に入ると教えた。しかし、邪魔者がいるからそう簡単には殺せないとも教えてある」
「邪魔者は炭治郎ちゃんの事か!?」
「自分の胸に手を当て……貴様が本当にまだ生きているかを確認したらどうだ!」
(やはりな……この呪詛師の背後にいるのはサマーじゃない!夏油だ!)
憂太はカマをかけて視る。
「何故今更秋場雪賀を狙う!?金欠か!?」
その途端、熱田は不機嫌になる。
「貴様……あくまで秋場ではなく竈門を助ける気か……」
(我妻とか言うエージェントが言っていた鬼の背後にいるのも……夏油か?)
狗巻がネックウォーマーを指でずらしながら叫んだ。
「眠れ!」
その途端、ショベルカーのドライバーが居眠りを始めてしまった。
「しまった!呪言か!?」
熱田が歯噛みしている間に臨戦態勢を整えるパンダ。
「往け!こいつらの足止めは、俺と棘がやる!」
「任せた!」
その隙に邪魔なショベルカーの脇を通る憂太と真希。
「くそ!不味い!こら!起きろジジイ!」
熱田がドライバーを叩き起こそうとするが、パンダがそれを呑気に待つ筈もなく……
「うぉおりゃあぁーーーーー!」
パンダに殴られそうになった熱田が慌ててショベルカーから降りる。
「ちっ……外したか?」
熱田が催眠術の振り子代わりに使うチャクラムを取り出す。
「所詮は|非術師か……使えねぇ……」
一方の炭治郎は……追い詰められていた。
夏油一派が送り込んだ幼女鬼の炎凝呪法は無下限呪術で押し返せるし、弾道を血鬼術で変えても無下限呪術に阻まれて炭治郎には届かない。
本来なら、まだ基礎レベルとは言え無下限呪術が使える炭治郎に負ける理由が無い。
だが、問題は炭治郎以外の人間……つまり、ほぼ人質状態にあるファミレスの客や店員が炭治郎の足を引っ張ているのだ。
外れた銃弾が客や店員に当たりそうになる度に無限を使って銃弾を停め、幼女鬼に食われそうになった人を発見する度にその人を引き寄せて救出する。
そんな事を繰り返していては、余計な疲労が溜まるのも無理は無い……
「何故……茈で一気に片付けようとしないのです?そうすれば、この戦いは直ぐに終わるのに」
炭治郎は茈の意味が全く解らなかったが、使わないのではなく使えないと高を括っていると勘繰った。
(茈は恐らく……かなり強力な呪術を指す言葉だと思うが、そんな物をここで使えば被害が更に馬鹿デカくなる!こいつ……それを解って言っているんだ!なんて卑劣な奴なんだ!)
だが、この頑固なお人好し故の勘違いが炭治郎の首を絞める事になる。
そもそも、夏油一派に巻き込まれた客や店員を守る意思は無い。
寧ろ、|非術師を呪霊の素となる想いを垂れ流すだけの癖に下らぬ虐待・差別を駆使して呪術師の活動範囲を過剰に狭める害獣としか見ていない。
だから、この戦いで例のファミレスが死体だらけになっても気にもしていないのである。
それでも、ファミレスの客や店員を守る事を諦めない炭治郎は、お人好しで不器用な戦い方を己に強いる。
「粋がるなよ雑魚が。|人質が無いと何も出来ない弱虫が、一丁前に強がったって、ただ寒いだけだよ」
「だったら、茈とかで一気に片付けて、私が弱い事を証明したらどうです」
炭治郎は苦虫を嚙み潰した様な顔をした。
(下手な挑発は私を寒くするだけか……)
打開策がまったく思い浮かばない炭治郎。
それを観ていた夏油が少々困った顔をしながら呟く。
「んー……乙骨はやはり反転の存在を炭治郎に教えてない様だね?」
それを聴いたカンナが少し焦る。
「では、この戦いは全くの無意味。鬼舞辻󠄀を喜ばせるだけの無駄足だと言うのですか?」
夏油はカンナを安心させるかの様に首を横に振る。
「いや、乙骨が与えぬのなら、我々が与えたら良い。反転の存在を知る切っ掛けを」
この戦いに禰󠄀豆子も一応参加していたが、ダメージの蓄積が多過ぎて回復目的の熟睡に移行してしまった。
そんな禰󠄀豆子に何者かが話しかける。
「禰󠄀豆子、起きて」
「ん?」
「このままだとお姉ちゃんまで、炭治郎まで死んでしまう。だから、起きて」
「んん?」
「今の禰󠄀豆子なら出来る。頑張って」
それは、深層心理の中に居る死んだ母親の記憶だった。
そんな亡き母親の『想い』が、禰󠄀豆子に新たなる力を与えた。
一方、炭治郎は何者かに声を掛けられて困惑していた。
「炭治郎、憎しみを捨てろ」
そこにいたのは、無惨に殺された父親。
偽物?変身の術式?
全ての可能性を、|六眼が否定する。
(本物……!)
そして、竈門炭治郎の脳内に溢れ出す、13年間の青い春。
刹那。
だが彼女の脳内では1分などとうに―――
炭治郎が気付いた時には、あの幼女鬼が炎に包まれていた。炎凝呪法が使える筈のあの幼女鬼が。
「何だ!?この炎は!?私の言う事を聞かない!」
そして、禰󠄀豆子が炭治郎を庇う様に幼女鬼に立ち塞がる。
「ん!」
「禰󠄀豆子!?お前、その傷で―――」
炭治郎の心配をよそに、禰󠄀豆子が気合を込めて拳を幼女鬼に向ける。
(血鬼術、爆血!)
すると、幼女鬼が再び炎に包まれる。
「まさか……この炎は……血鬼術!?」
(血鬼術!?……まさか、これが禰󠄀豆子の!?)
その直後、炭治郎の耳に死んだ筈の父親の声が入る。
「憎しみに頼り過ぎるな。憎しみは傷付ける事しか出来ない」
(憎しみを捨てろ?……そうだ!禰󠄀豆子は私を守る為に無理して血鬼術を使ったんだ!なら、私は無理をしてでも、護りたいと言う『想い』を無理矢理呪術に変換する!)
「もう大丈夫だ禰󠄀豆子!お前のお姉ちゃんは、まだ戦える!」
そう言いながら、幼女鬼へと指を向ける。
「これ以上……お前の好きにはさせない!術式反転、『赫』!」
炭治郎が放つ赤い光弾を口から吐き出した炎を土壁に変える事で防ぐ幼女鬼。
(どうにか炭治郎に赫を使わせるたが……)
幼女鬼は浮かびかけた弱音を必死に振り払った。
(いや……もって魅せる!炭治郎が茈を使うまで!)
だが、幼女鬼の悲痛な覚悟に反し、炭治郎の赫2発目に合わせる様に禰󠄀豆子が血鬼術を使用する。
「術式反転、『赫』!」
(血鬼術、爆血!)
竈門姉妹の合体技を受け、幼女鬼は遂に戦場と化したファミレスから叩き出された。
赫と爆血の合わせ技に押し出される形でビルから転落して道路に叩き付けられた幼女鬼だったが、炭治郎に茈を使わせると言う使命を果たそうと無理矢理起き上がる。
が、そんな幼女鬼を夏油が優しく宥めた。
「大丈夫。この戦いは無駄じゃない。だって、竈門炭治郎に反転のコツを教える事が出来たんだ……君の戦いは無駄じゃない」
その半分は憂太に言い聞かせる形となった。
「反転だと?」
睨む憂太に臆する事無く苦言を呈する夏油。
「まさか、反転の事を教えずに鬼との戦いに参加させる心算だったのかい?だとしたら、無下限呪術を買いかぶり過ぎではないのかな」
「お前のやり方では早熟を強い過ぎるだけだ。教えないとは言っていない」
「気長過ぎるよ。彼女がそこまで、待ってくれるとでも?」
その直後、四足歩行をする錦鯉の様な怪物が憂太を襲った。
が、真希が跡形も無く微塵斬りにする。
「こっちだって成長してるんだ。7年前と同じだと思うなよ」
だが、その程度の時間だけで十分だった。
「それでは皆さん、戦場で」
その言葉を最後に、夏油は幼女鬼をサイの様な呪霊の背に乗せ、馬の様な呪霊に跨って走り去ってしまった。
カンナもまた別ルートで逃走しており、ファミレスに残されていたのは、巻き込まれた人達とそれを守った竈門姉妹だけだった。
「遅くなってごめん。これを、珠世さんの所へ……」
そう言いながら気絶した炭治郎の手から零れ落ちた採血器を茶々丸が口でキャッチし、珠世の許へと走り去った。
気絶して倒れそうになる炭治郎を支える憂太。
「本当なら、3年間の秋場雪賀護衛任務を終えてから反転術式を取得させる予定だったが……」
夏油が敷いたレールの乗っかる形で反転術式を会得してしまった竈門炭治郎。
そして、夏油の目に宿る『上弦の弐』と言う文字。
その事実に憂太が歯噛みする。
「無惨め……随分余計な奴を復活させやがって……」
そこへ、遅れてやって来たパンダが声を掛ける。
「おーい。無事かー?」
「炭治郎ちゃんと禰󠄀豆子なら無事だよ。寧ろ、悪い意味で元気になり過ぎたかも」
「どう言う意味?」
「……いずれ解る」
「それよりパンダ。さっきのデカブツはどうした?」
真希の質問に対し、パンダはバツが悪そうにゆっくりと答えた。
「あー……秋場雪賀はとりあえず無事だ」
「だろうな。で、襲った相手はどうした?」
「あー―――」
「逃げたんだよね?パンダくん」
「ちょっ!?待て乙骨!」
「逃げられただぁー?」
「シャケ」
「あー!棘!お前、なに本当の事を……あ!」
「何やってんだお前はあー!?」
またワチャワチャとケンカをするパンダと真希を観ながら、憂太は今後の事を考えるのを後回しにした。
(今はまあ、炭治郎ちゃんの頑張りにケチをつけるのは止そう)
原作との相違点
●竈門炭治郎
・2009年7月14日生まれ。
・竈門家長女。
・実家はパン屋。
・2023年7月23日に乙骨憂太に保護され、憂太の許で約1年8か月ほど修行して無下限呪術と六眼の基礎を叩きこまれた。
・更に、日下部篤也と禪院真希にヒノカミ神楽の基礎を叩きこまれた。
・2025年、秋場雪賀の護衛を命じられて私立善根高等学校に入学した。
・銃鬼との戦いの最中に夏油傑に見せられた竈門炭十郎の幻影の助言をヒントに反転術式のコツを掴み、術式反転「赫」を取得した。
・『スパイガール!』における『雪乃晴』に相当する人物。
●竈門禰󠄀豆子
・2010年12月28日生まれ。
・竈門家次女。
・実家はパン屋。
・2023年7月23日に乙骨憂太に保護され、憂太の暗示(人間は皆家族であり、家族を守り、家族を傷つける鬼を許すな)と反転術式によって人食欲を喪失。
・銃鬼との戦闘時に死んだ母親と深層心理で出会った事をきっかけに自分の血を発火・爆発させ燃やしたい物だけを燃やす血鬼術「爆血」を自分の意志で開花させる。
原作との相違点(第14笑時点)
●竈門炭治郎
・2009年7月14日生まれ。
・竈門家長女。
・実家はパン屋。
・2023年7月23日に乙骨憂太に保護され、憂太の許で約1年8か月ほど修行して無下限呪術と六眼の基礎を叩きこまれた。
・更に、日下部篤也と禪院真希にヒノカミ神楽の基礎を叩きこまれた。
・2025年、秋場雪賀の護衛を命じられて私立善根高等学校に入学した。
・銃鬼との戦いの最中に夏油傑に見せられた竈門炭十郎の幻影の助言をヒントに反転術式のコツを掴み、術式反転「赫」を取得した。
・『スパイガール!』における『雪乃晴』に相当する人物。
●竈門禰󠄀豆子
・2010年12月28日生まれ。
・竈門家次女。
・実家はパン屋。
・2023年7月23日に乙骨憂太に保護され、憂太の暗示(人間は皆家族であり、家族を守り、家族を傷つける鬼を許すな)と反転術式によって人食欲を喪失。
・銃鬼との戦闘時に死んだ母親と深層心理で出会った事をきっかけに自分の血を発火・爆発させ燃やしたい物だけを燃やす血鬼術「爆血」を自分の意志で開花させる。
●乙骨憂太
・虎杖悠仁や両面宿儺とは無関係。
・『リカ』と『無条件の術式模倣』の時間制限が無くなった。
・2023年7月23日に炭治郎と禰󠄀豆子を保護し、炭治郎に約1年8か月間の無下限呪術と六眼を習得する為の修行を施す。
・また、炭治郎の訓練期間の間、長期の睡眠に入っていた禰󠄀豆子に人間を守るよう暗示をかける。
・『鬼滅の刃』における『鱗滝左近次』と『冨岡義勇』の役割を果たす。
・公式記録では、2017年12月24日に夏油傑を殺害した事になっているが……
●我妻善逸
・私立善根高等学校1年生。
・ナイト・エージェンシー(『スパイガール!』参照)所属のエージェント。
・秋場雪賀を護衛する為に送り込まれたスパイ。
・雷の呼吸使用可能。
・聴覚が非常に優れている。
・『スパイガール!』における『奈々木新』に相当する人物。
・それ以外は『キメツ学園』とほぼ同一。
●呪術
・『KEY THE METAL IDOL』の『巳真家に代々伝わる超能力とその原理』を追加させていただきました。
●日下部篤也
・虎杖悠仁や両面宿儺とは無関係。
・とある諸事情(呪術廻戦第269話参照)のせいで、冥冥にシン・陰流の当主を推し付けられた。
・乙骨憂太の指示で竈門炭治郎にヒノカミ神楽の基礎を叩き込んだ。
●禪院真希
・虎杖悠仁や両面宿儺とは無関係。
・大型二輪免許取得済み。
・とある諸事情(呪術廻戦第149話参照)のせいで禪院家大破の実行犯として捕縛されるも、憂太が五条家当主代理の権限を使って罪状を抹消した。
・乙骨憂太の指示で竈門炭治郎にヒノカミ神楽の基礎を叩き込んだ。
●夜蛾正道
・未だ生存。
・虎杖悠仁や両面宿儺とは無関係。
●珠世
・令和7年まで生存。
●愈史郎
・原作とほぼ同一。
●茶々丸
・原作とほぼ同一。
●七海建人
・未だ生存。
・虎杖悠仁や両面宿儺とは無関係。
●パンダ
・虎杖悠仁や両面宿儺とは無関係。
・お兄ちゃん核とお姉ちゃん核は無事。
●狗巻棘
・虎杖悠仁や両面宿儺とは無関係。
・左腕を失っていない。
・パンダとコンビを組む事が多い。
●秋場雪賀
・本作オリジナルキャラクター。
・私立善根高等学校1年生。
・秋場財閥次期総支配人。
・美少女並みに滅茶苦茶可愛い男子高校生。
・少女趣味を持っているが、ちょっとゲスでスケベ。
・『坊ちゃん、困ります!』における『桜小路透』に相当する人物。
●寒崎椿
・本作オリジナルキャラクター。
・秋場家の護衛をしている一族出身。
・主な任務は秋場雪賀の護衛。
・高身長でグラマーなイケメン女子。
・『坊ちゃん、困ります!』における『七実』に相当する人物。
●冨岡義勇
・私立善根高等学校体育教師。
・それ以外は『キメツ学園』とほぼ同一。
●嘴平伊之助
・私立善根高等学校1年生。
・プロレスの時間(『鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚』参照)使用可能。
・それ以外は『キメツ学園』とほぼ同一。
●不死川実弥
・私立善根高等学校数学教師。
・胡蝶カナエに横恋慕した生徒達や「算数ができなくても生きていけるから大丈夫です」とぬかしたワニの様な女と揉めた過去が有るらしい。
・だが、ナイト・エージェンシー(『スパイガール!』参照)は彼をあまり危険視していない。
・それ以外は『キメツ学園』とほぼ同一。
●胡蝶カナエ
・私立善根高等学校生物教師。
・それ以外は『キメツ学園』とほぼ同一。
●悲鳴嶼行冥
・私立善根高等学校公民教師。
・それ以外は『キメツ学園』とほぼ同一。
●栗花落カナヲ
・私立善根高等学校2年生。
・それ以外は『キメツ学園』とほぼ同一。
●神崎アオイ
・私立善根高等学校2年生。
・それ以外は『キメツ学園』とほぼ同一。
●胡蝶しのぶ
・私立善根高等学校3年生。
・それ以外は『キメツ学園』とほぼ同一。
●鎹鴉
・『キメツ学園!』とほぼ同一。
●魘夢民尾
・熱田睡蓮に操られ、竈門炭治郎の目の前で変態行動を行ってしまった。
・熱田睡蓮の見立てだと非術師らしい。
・それ以外は『キメツ学園』とほぼ同一。
●三郎
・『キメツ学園』とほぼ同一。
●寒崎凍鶴
・本作オリジナルキャラクター。
・秋場家の護衛をしている一族出身。
・寒崎椿の実の父親。
・国立理学部を卒業した高学歴。
●宇髄天元
・私立善根高等学校美術教師。
・それ以外は『キメツ学園』とほぼ同一。
●響凱
・私立善根高等学校音楽教師。
・ペンネーム『稀血求む』で小説投稿サイトを利用しているが、鳴かず飛ばず。
・それ以外は『キメツ学園』とほぼ同一。
●鬼舞辻無惨
・令和7年まで生存。
・個人投資家として成功し、悠々自適の生活を送っている。
・気まぐれで(一応あの耳飾りの行方を追ったうえでの行動)竈門ベーカリーを壊滅させたが、その事がきっかけで禰󠄀豆子が鬼と対立する鬼となり、炭治郎が無下限呪術と六眼を習得するきっかけになってしまった。
・朱紗丸粛清を機に、炭治郎に『汚物辻』と言う仇名を付けられた。
●手鬼
・令和7年まで生存。
・平成や令和の存在を知らない。
・死因は太陽光の浴び過ぎ。
●矢琶羽
・令和7年まで生存。
・十二鬼月に昇格するべく独断で珠世を探し当てた。
・小夏カンナから無下限呪術と六眼の詳細を聞かされ、竈門炭治郎が無下限呪術を使える事も知っていた。
・炭治郎のヒノカミ神楽で頭と胴体を斬り離され、カンナに縄で木に打ち付けられて動きを封じられた。
●朱紗丸
・令和7年まで生存。
・矢琶羽の行動が気になって尾行していたら、珠世の隠れ家に迷い込んだ。
●笛鬼
・令和7年まで生存。
・煉󠄁獄杏寿郎とは無関係。
・竈門炭治郎と交戦し敗北。
・死因は日光の浴び過ぎ。
●玉壺
・令和7年まで生存。
・乙骨憂太と交戦し敗北。
・『花の慶次 -雲のかなたに-』における『四井主馬』に相当する人物。
●黒死牟
・令和7年まで生存。
・夏油傑を鬼にスカウトした。
●童磨
・令和7年まで生存。
・上弦の参。
●猗窩座
・既に自害。
●鳴女
・令和7年まで生存。
●堕姫
・令和7年まで生存。
●妓夫太郎
・令和7年まで生存。
●サマー
・本作オリジナル組織。
・善逸曰く、密輸や闇バイトなどの凶悪犯罪の総大将の様な犯罪組織。
・『スパイガール!』における『スター』に相当する組織。
●秋場葛練
・本作オリジナルキャラクター。
・秋場雪賀の兄。ただし、雪賀とは秋場財閥次期総支配人の座を奪い合う政敵関係。
・『スパイガール!』における『黒宮ミナト』に相当する人物。
●沼鬼
・鬼舞辻󠄀無惨とは無関係。
・高額報酬欲しさに秋場雪賀をつけ狙う呪詛師。
・それ以外は『キメツ学園』とほぼ同一。
●オガミ婆
・未だ生存。
・羂索とは無関係。
・高額報酬欲しさに秋場雪賀をつけ狙う呪詛師。
・銃鬼に敗れ、竈門炭治郎を誘い出す為のメッセンジャーをさせられ、我妻善逸の手によって呪術高専に連行された。
●オガミ婆の孫
・銃鬼の襲撃を受けて死亡。
●夏油傑
・未だ生存。
・上弦の弐。
・黒死牟のスカウトを受けて鬼になった。
・2017年12月24日の百鬼夜行テロの影響により、名前そのものが禁忌扱いされた。
●熱田睡蓮
・本作オリジナルキャラクター。
・女性呪詛師。
・私立善根高等学校1年生。
・竈門炭治郎を観察する為に潜り込んでいる夏油一派のスパイ。
・特技は催眠術。
・頭部は黒木智子(私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!)で首から下は香椎愛莉(ロウきゅーぶ!)。
●小夏カンナ
・未だ生存。
・私立善根高等学校英語教師。
・竈門炭治郎を観察する為に潜り込んでいる夏油一派のスパイ。
・熱田睡蓮の上司。
・正体は枷場美々子。
●銃鬼
・本作オリジナルキャラクター。
・最終選別用に生け捕られて藤襲山に囚われた幼女の鬼だったが、竈門炭治郎の観察を目論む夏油一派の策略によって稀血を有する非術師10人と禪院真依・禪院扇の脳を食わされ、1級呪術師に匹敵する呪詛師として覚醒した。
・弾道や軌道などの『動き』を操る血鬼術と炎凝呪法を開花させており、銃などの武器に呪力を籠めて打ち出し、高威力のチャージショットを発射する事も可能。
・引っ込み思案で内向的傾向を有するものの、自分を藤襲山から救い出してくれた夏油一派に奉公するべく鬼特有の傲慢・凶暴に徹しようとする健気な一面も持っている。
●炎凝呪法
・本作オリジナル術式。
・炎を顕現させ、火を物体に変える術式。
・『呪術廻戦』における『構築術式』や『焦眉之赳』に相当する術式。
●平成29年
・乙骨憂太が東京都立呪術高等専門学校に転校した日。
・そして、夏油一派が百鬼夜行テロを実行した日。
・2017年12月24日の百鬼夜行テロのせいで、呪術師や呪詛師にとってはある意味禁忌的な存在となった。
●五条悟
・虎杖悠仁や両面宿儺とは無関係。
・2021年1月20日に相討ちと言う形で羂索を殺害するも、その時の怪我が原因で2021年7月22日に死亡した。
●竈門炭十郎
・2023年7月23日に死亡。
・竈門ベーカリーの店長。
・無惨相手にヒノカミ神楽で応戦するも日輪刀を持たぬ故戦死。
●藤襲山
・かつては鬼殺隊の私有地だったが、現在は空き家状態。
・鬼殺隊最終選別の内容も呪術界にはやや曖昧かつ不完全にしか伝わっていない。
●後藤
・鬼殺隊とは無関係。
・ナイト・エージェンシー(『スパイガール!』参照)所属のエージェント。
・我妻善逸の先輩。
●禪院真依
・とある諸事情(呪術廻戦第149話参照)のせいで死亡認定を受けている。
・脳を竈門炭治郎の観察を目論む呪詛師一派に奪われ、銃鬼に脳を食われた。
●禪院扇
・とある諸事情(呪術廻戦第149話参照)のせいで死亡認定を受けている。
・脳を竈門炭治郎の観察を目論む呪詛師一派に奪われ、銃鬼に脳を食われた。
●アルバイト
・竈門炭治郎と銃鬼との激闘に臆してバイト早退。
●羂索
・2021年1月20日に相討ちと言う形で五条悟に殺害された。
・黒死牟に先手を打たれた為、夏油傑の遺体奪取に失敗する。
第15笑:早いよ炭治郎ちゃん
珠世は驚きを隠せなかった。
炭治郎が命懸けで採血した、夏油一派が送り込んだ幼女鬼の血が異質だったからだ。
「この鬼……まさか!」
珠世は炭治郎と結託する以前から、出来る範囲内で様々な者から血を採取しており、その中には3級とは言え呪術師も含まれていた。
そして、幼女鬼の血と下級呪術師の血を視比べた珠世がある推測へとたどり着く。
「やはり……術式。呪術師の鬼化は既に始まってる?」
汗だくの珠世を見て心配する愈史郎。
「珠世様!?」
だが、珠世が口にしたのは、本当に心配されるべき人物の名前だった。
「どうやら、竈門炭治郎の前に立ち塞がる敵は、鬼舞辻󠄀無惨だけではない様です」
一方の炭治郎はと言うと……
「これ……本当にやるのか?」
「そこの金髪は消しゴムだから良いけど、椿はナイフだよ」
「せめて名前で呼んで貰えます」
炭治郎に消しゴムとナイフを投げつけてくれと頼まれて困惑する善逸と雪賀。
「大丈夫。当たらなければどうということはない!」
「有名人の名台詞で言われてもぉー……」
雪賀の困惑を感じ取った憂太が見かねて前に出る。
「なら、僕が代わるよ」
そう言いながら炭治郎の肩を触ろうとするが、それと同時にリカが炭治郎を殴ろうとした。
しかし、
「あ!……」
「ね。当たらなければどうということはないでしょ」
リカの姿が見えない雪賀は憂太が炭治郎に何をやったのかは解らなかった。
「何言ってんの?もろに触られてんじゃん」
が、善逸は憂太の心拍数急変で炭治郎が何らかの攻撃を受けた事を察した。
「つまり……生半端な攻撃では傷1つ付かんと言う事さ」
だが、憂太が驚いているのはそれだけではなかった。
(触れる!?リカちゃんの攻撃ははじかれた筈なのに!)
「まさか、無限を出す出さないの判断を手動から|六眼による全自動に切り替えたと言うのか?」
「そう。『憎しみ』ではなく『守りたい』から呪力を捻出出来る様になってから、無下限呪術の常時発動がいつもより楽になっちゃって」
善逸が炭治郎の愚に呆れ果てる。
「常時臨戦態勢だと?それだと、疲労困憊となって長期戦が出来ない身体になるぞ」
だが、善逸の苦言はただの杞憂だった。
「それも大丈夫。『守りたい』から呪力を捻出している内は、傷の治りが物凄く速くて速くて」
憂太は、炭治郎の成長が夏油の思惑通りに早まってる事に驚いた。
(反転術式!?本当なら3年間の秋場雪賀が完遂してから教える心算だったのに……)
後日。
善逸は炭治郎が絶対に立ち寄らないと思われる場所に憂太を呼び寄せた。
「話の内容次第では、お前を軽蔑するぞ」
「言いたい事は解る。だからこそ、生真面目な生娘に聞かれたくない内緒話に最適だ」
善逸の意図を測りかねて困惑する憂太。
「……で、話とは」
善逸は憂太に1冊のファイルを渡す。
「例のファミレス事件の後で炭治郎に頼まれた調査報告書だ」
「炭治郎ちゃんがナイト・エージェンシーを利用?」
「それには、『全集中・常中』をラクーに取得出来るコツが書かれている」
「……全集中?」
「鬼殺隊がかつて使用していた操身術の1つだ。著しく増強させた心肺活動により、一度に大量の酸素を血中に取り込む事で身体能力を瞬間的かつ爆発的に大幅に上昇させ、鬼と互角以上の剣戟を繰り出す。かなり変わった言い方をすれば、大気中の酸素を高性能ドーピング剤として利用する体術だよ」
「……呪術師が呪力を使って行っている身体強化を、鬼殺隊は酸素を使って行っていた?」
「まあ……それで納得出来るなら?」
善逸は憂太の解釈の仕方に呆れながらも内緒話を続けた。
「で、全集中の応用技術の1つが『全集中・常中』。睡眠時を含む四六時中全集中の呼吸を維持し続ける方法だよ」
「?!」
憂太は驚きを隠せなかったが、善逸は構わず憂太に問う。
「炭治郎は何を焦ってる?」
「!?」
「だってそうだろ?炭治郎には既に無下限呪術がある。それに、この前お前が秋場雪賀にバレずに密かに実行した攻撃にも、炭治郎はほぼ完璧に対応した。ただ秋場雪賀を護衛するだけなら、その時点で既に実力過剰だ。君達が言う呪詛師が本当に呪術高専などの正式かつ大規模な講習機関を利用していないと仮定しての話だと尚更だ」
「けど……炭治郎ちゃんはこれ程の圧倒的優勢に満足していないと?」
首を縦に振る善逸を見て困り果てる憂太。
善逸の疑問は、鬼舞辻󠄀無惨が平安時代から続けている悪行の数々と直結しているからだ。
なんとか善逸の質問をはぐらかしてお茶を濁した憂太は、再びあのファミレス(既に『元』が付くが)を訪れた。
そして思い出す、現場検証を行った補助監督達の見立てを。
「例の鬼が付けたと思われる傷から検出された残穢を分析した結果、1級案件である事が判明しました」
報告を聴いた憂太が訊ねる。
「それ、どっちの意味?」
「どっち?……とは?」
「同じ1級でも、呪霊と呪詛師じゃ大違いだよ」
「あー……」
1級呪術師は、通常兵器換算で『戦車でも心細い』とされる1級呪霊を祓えるから1級なのである。
それを知っているからこその質問。
もしも、例の幼女鬼が1級呪霊ではなく1級呪詛師だとしたら、幼女鬼は十二鬼月より厄介な鬼と言える。
善逸から預かったファイルが重く感じる憂太であった……
菅田真奈美と言う呪詛師が少々困った表情をしながら夏油の許を訪れた。
「夏油様、美々子からの報告によると、全集中・常中習得のコツが炭治郎の手に渡ってしまった様です」
それに対し、夏油は明るく笑った。
「乙骨の奴、漸く竈門炭治郎の育成に本腰を上げたか?」
「ですが、全集中は術式ではありません。下手にヒノカミ神楽を使いこなし過ぎると、炭治郎が無下限呪術に頼らなくなる危険性も有ります」
真奈美の危機感に対し、夏油の見立ては楽観的であった。
「いや、竈門炭治郎は3つとも使うよ。何せ、彼女の|怨敵は、|鬼舞辻󠄀無惨だよ」
夏油の指摘を聴いて竈門ベーカリーの悲劇を思い出す真奈美。
「寧ろ、竈門炭治郎は使える武器が増えて万々歳だと思うよ」
「確かに、無惨は竈門炭治郎の親兄弟を皆殺しにしています」
「それに、全集中・常中が竈門炭治郎を黒閃へと導くかもしれないよ」
夏油の見立てに驚く真奈美。
「黒閃!?もしそれが可能なら、炭治郎と呪力の核心との距離はかなり縮まります」
「だろ?」
その時、夏油のスマホが鳴った。
「もしもし、夏油傑です」
電話の相手は枷場菜々子であった。
「美々子が連れて来た鬼、すげえよ!特級呪霊を2匹も取り押さえちゃったよ」
「直ぐ往く。後で取り込む」
炭治郎と激闘を繰り広げた幼女鬼が、長髪に身体中継ぎ接ぎだらけの青年とまるでクトゥルフ神話のクトゥルフの様な特級呪霊に向けて二丁拳銃を構えていた。
「術式を使う鬼か……興味深い」
余裕を気取る青年に反し、特級呪霊は自身が置かれた窮地に対して怒り心頭だった。
「貴様あぁーーーーー!鬼舞辻󠄀無惨にこき使われるだけが取り柄の偽りの鬼の分際でえぇーーーーー!」
だが、そんな怒号を幼女鬼は一蹴する。
「無駄だよ。夏油様がもう直ぐお前達を食べちゃうから」
「『お前』って言うなあぁーーーーー!我々には名前があるのだあぁーーーーー!」
それを聴いた夏油がクスクスと笑う。
「そう言えば、そろそろ|幼女鬼の呼び名を考えなくてはね」
勝手に仇名を付けられると勘違いした特級呪霊が必死に叫ぶ。
「勝手な事をするな!我の名は陀艮、ぐ!?おお?」
だが、幼女鬼との戦いで弱っていた事が仇となり、陀艮はまるで空中で咀嚼される様に、細かく引きちぎれながら夏油の掌へと吸い込まれていく。
その隙に青年が夏油に触ろうとするが、幼女鬼が青年の腕に銃弾を複数撃ち込み、その銃弾を火に戻した。
「ぐおぉ!?」
「なるほど。君は随分面白い術式をお持ちの様だ」
「僕は人間から生まれた呪霊だからね。君が何を企んでここに来たのか、手に取る様に解るよ」
「本当にそうなら、君は攻撃ではなく逃走を選ぶべきだった。もう……手遅れだけどね」
夏油がそう言うと、青年もまた、まるで空中で咀嚼される様に、細かく引きちぎれながら夏油の掌へと吸い込まれていく。
「こいつの術式の正体を知ったら、無惨様は泣いて喜ぶだろうね」
そして、夏油は手にした2体の特級呪霊を球体に変え、大きく口を開けて飲み込んでいく。
後日、善逸が教室に入ると、
「おはよーう」
炭治郎と椿が超巨大瓢箪を吐息で風船を膨らませる要領で破壊した。
「おい!?」
一般学生が大勢いる場所で人間離れした芸当を行う2人にツッコむ善逸。
「何やってんだお前ら!?怪しまれるだろ!」
(乙骨憂太の奴、竈門炭治郎だけでなく寒崎椿にも全集中・常中のコツを教えたのか!?)
が、善逸の危惧などどこ吹く風と言わんばかりに周りの生徒達が大盛り上がり。
「すっげぇー!お前らなら、ネロナ・イム聖にも勝てるんちゃう?」
「逃げ若の足利尊氏もいちころだろ!?」
「お前達がSAKAMOTOの代わりに有月憬をやっつけてくれよぉー」
予想外に大丈夫だったので、善逸は呆れながらも納得する。
(ここはやはり、欲しがってる者に預けるのが得策って訳か?)
ただし、嘴平伊之助だけは強気であった。
「だったらこの俺様を倒してみろよ!」
伊之助は炭治郎達を褒めてる連中の言葉が只のたとえ話だと侮っているが、椿は兎も角……
いや、サマーが掛けた12億の懸賞金に釣られた呪詛師から秋場雪賀を護らなきゃいけない以上、善逸達は漫画の登場キャラクターの様な敵と戦っていると自負出来てしまうと言う最悪な事態にいる事を自覚する必要がある。
(バカ猪め)
で、結局はプロレス対決では全集中・常中を習得した椿の圧勝だった。
「1。2。3。はい、こっちの勝ち」
善逸がレフリー役で場を収めようとする中、カンナが窓越しに廊下からその様子を視ていた。
「はいはい!みんな静かに!そろそろ教室に戻りなさい!」
「オラ!早く教室に入れェ!」
カンナの催促と不死川の怒号を聞いて慌てる生徒達。
「えぇー!?もうそんな時間!?」
「じゃあな!」
「やべぇ!1限目は化学だ!」
カンナは今日の炭治郎の行動が非常に怖かった。
何故生徒達に全集中・常中を披露したのか?その真意が。
(何故こんな目立つ場所でわざわざ……)
カンナは嫌な予感がした。
(これは誘いか?だとしたら、誰を?)
炭治郎の経歴を知る者ならまず鬼舞辻󠄀無惨を想像するだろう。
鬼の敵がすくすくと育って無惨の頚を狙える位置に確実に向かっている事をアピールして無惨に刺客を送り込ませようとする、自分の命を囮とした命賭けの罠。
だが、カンナは別の意図も脳裏に有った。
(まさか……私達の潜入観測に気付いて……)
確かに炭治郎はカンナの正体に薄々気付いているところはある。だが、それを晒せるだけの武器が無い。
カンナもカンナで、雪賀殺害争奪戦に参加する意図が無いとは言え呪詛師認定を受けている身なうえに、炭治郎が無下限呪術をどこまで使いこなせるかを観察する任務がある。
どっちも決め手に欠ける状態のまま、お互い笑顔で返し合うのであった。
(ん?炭治郎は小夏カンナに関して何か気になる事でもあるのか?)
「はーい。それでは授業を始めまーす」
原作との相違点
●陀艮
・銃鬼と戦い敗北。
・夏油傑に食われた。
●竈門炭治郎
・2009年7月14日生まれ。
・竈門家長女。
・実家はパン屋。
・2023年7月23日に乙骨憂太に保護され、憂太の許で約1年8か月ほど修行して無下限呪術と六眼の基礎を叩きこまれた。
・更に、日下部篤也と禪院真希にヒノカミ神楽の基礎を叩きこまれた。
・2025年、秋場雪賀の護衛を命じられて私立善根高等学校に入学した。
・銃鬼との戦いの最中に夏油傑に見せられた竈門炭十郎の幻影の助言をヒントに反転術式のコツを掴み、術式反転「赫」を取得した。
・ナイト・エージェンシー(『スパイガール!』参照)に依頼して集めさせた資料を参考に『全集中・常中』を習得した。
・『スパイガール!』における『雪乃晴』に相当する人物。
●寒崎椿
・本作オリジナルキャラクター。
・秋場家の護衛をしている一族出身。
・主な任務は秋場雪賀の護衛。
・高身長でグラマーなイケメン女子。
・ナイト・エージェンシー(『スパイガール!』参照)が調査・収集した資料を参考に『全集中・常中』を習得した。
・『坊ちゃん、困ります!』における『七実』に相当する人物。
●伊黒小芭内
・私立善根高等学校化学教師。
・それ以外は『キメツ学園』とほぼ同一。
第16笑:この罠は誰用?
竈門炭治郎はどう言う訳かナイトプールに渋々行かされていた。
(どうしてこうなった?)
切っ掛けは、悲鳴嶼が行った警告から始まった。
「えー…この近くのナイトプールで…盗撮魔が出ている様だ…みんなもプリントを確認して気をつける様に…」
だが、雪賀が悲鳴嶼の思惑とは逆の方向へ向かってしまった事で、話がどんどんややこしくなってしまった。
「……あっ!じゃあさ、そいつ、僕達で捕まえない!?」
「は?」
(何言ってんのこの人……)
「この事件、僕達で解決すれば僕の権威にも箔が付くし、サマーに加担する連中への牽制になるって寸法さ」
善逸はそれを許さなかった。
「ダメです」
「即答!?」
「そう言う思惑を見越したうえでのサマーの罠の可能性も有る。この事件に雪賀が関わるのは反対だな」
だが、雪賀は何故か食い下がる。
(でも、これは逆に椿に頼られるチャンス!)
「安心して。僕の可愛さで盗撮魔なんかやっつけちゃうよ!」
それでも善逸は雪賀がこの事件に関わる事を禁止しようとする。
「ダメです。可愛さ如きで盗撮魔を倒せるなら、警察がとっくに捕まえています」
「ご……如き!?」
因みに、この時の炭治郎は善逸を応援していた。
(押し切ってくれ頼む!)
しかし、雪賀は小声で善逸に悪魔の囁きの様な耳打ちをする。
(これは、椿にマイクロビキニを着せる絶好のチャンスなんだよ)
「な!?」
そう。
雪賀がこの事件に関わる真の目的は、椿の水着姿を見る事であった。
善逸は一旦は揺らぐも、この時はまだナイト・エージェンシーより与えられた覆面警備員任務を優先した。
「く!……ダメったらダメ!それこそサマーの思う壺だよ!」
だが、炭治郎は臭いで舌戦の形勢が雪賀に傾いている事に気付いてげんなりする。
(まさか……その問題のナイトプールに往かされる……のか?)
炭治郎の危惧は当たってしまった……
結局、雪賀は善逸と椿の反対を押し切り、盗撮魔が潜むとされるナイトプールにやって来てしまったのだ。
(どうしてこうなった?)
「申し訳御座いません竈門様」
で、肝心の炭治郎が問題のナイトプールに往かされる真の元凶たる寒崎椿のこの時の衣装はと言うと……
(プールでもスーツなんかい)
「……流石に不自然過ぎて、かえって目立つだろ?」
(これが椿さんの……ささやかな抵抗なんですね……)
淫らな思惑が思いっきり外れてしまったので、少しだけ不機嫌になる雪賀であった。
「どうして、僕が用意した水着着ないの?(涙)」
「アレは水着じゃなくて紐です!」
「じゃ僕、水着になろーっと」
椿が雪賀にパーカーを着せようとしたので、話は更にややこしくなる。
「えー?椿、照れてるの?かわいー♡」
(しまった!つい……)
「今日は遊びに来た訳じゃないんですからね」
炭治郎が不機嫌そうに雪賀に苦言を呈している中、善逸は怪しい者を早速捕まえた。
「お前今、雪賀にスマホを向けただろ?」
「俺の勝手だろ!あんな可愛い|娘を見たら、誰だって撮りたくなるだろ!」
変態の呆れた言い分に対し、善逸は現実を突き付けた。
「秋場雪賀は男だよ」
「何寝ぼけてんだお前?」
「じゃあ確認してみろよ」
「へ!良いぜ」
で、その変態は雪賀に容赦無く股間タッチを行うが、
「おりゃ!……え?」
女性が持たぬ筈のアレの感触を味わってしまった挙句、椿に思いっきり殴られた。
「……!?」
「2度と雪賀さんに触るな」
善逸がしてやったりな顔をするので、炭治郎が呆れながら訊ねた。
「善逸、お前、椿さんがああなる事を知っててやっただろ!?」
「当然!あいつのスマホの中を調べる為の良い時間稼ぎになった」
炭治郎はドン引きしながら結果を聴いた。
「……で……どうだった?」
「んー、正直言って黒だな。間違っても灰色ですらない。ただ」
「……『ただ』?」
「今回探している盗撮魔とは色が違うな。肝心のアレが無い」
善逸の意味深な言い回しに困惑する炭治郎。
「……アレ……とは……」
その途端、善逸は炭治郎を連れて物陰に隠れた。
「え?ちょ!?何!?」
「秋場雪賀にはまだ言っていないが、犯人は恐らく女だ」
(……一瞬、『何言ってんだこいつは』とも思ったが、この匂いは本当の事を言ってる時の匂いだ)
「まだ未確定な情報だがな。でも、今回の盗撮事件の被害が最も多いのは更衣室である事は確かだ」
盗撮魔の邪悪さにドン引きする炭治郎。
「更衣室って!?そこはナイトプールに来た人達が着替える場所!」
「そう。最も露出度が高い場所だ。が、故に最も男女の区別が厳しい場所でもある」
「それじゃあ、女性しか入れない場所で盗撮されたから犯人は女性だと言うの?」
「隠しカメラの線も一応考えたよ。でも、ナイトが先回りして買い盗った写真を解析した限りでは、固定された隠しカメラでは不可能なブレがあったし、被害場所も固定されているにしては不規則だ」
「つまり、中に入って直に撮影している?」
善逸は真顔で首を縦に振った。
「……非道い。同性を売るだなんて」
が、善逸は気が緩んだのか、炭治郎の男女兼用水着を視て変な感心をしてしまった。
「なるほど……露出が高ければ破廉恥って訳でもない訳か」
「……お前も椿さんに殴られた方が良いぞ」
「うーーーーーん……疑ってかかると、怪しい人ばっかに見えるなぁ……」
ひたすら当ても無く盗撮魔を探す雪賀とそれを心配する椿。
そんな2人の前に、あからさまに怪しげな紙袋があった。
(何だあの人目を避ける様に置かれた紙袋は……いかにも過ぎるだろ……)
問題の紙袋を調べようとする雪賀を椿が制止する。
「待ってください。我妻様に調べて貰いましょう」
呼び出された善逸が問題の紙袋を調べた結果……
「マナー悪いなー。ちゃんとゴミ箱に捨てろって」
で、結局のところ……
「手がかり……ありませんでしたね?」
(それそうだ。問題の更衣室から遠ざかる様わざと誘導してるからね)
「んー……このままだと僕達の負けな気がする」
善逸の気も知らないで負けず嫌いを発揮する雪賀に対して少しだけムカつく炭治郎。
「雪賀!実際にその盗撮魔と遭遇してしまったら、如何する心算なんだよ!?」
だが、これが雪賀にとんでもないヒントを与えてしまうと言う逆効果になってしまった。
「遭遇……そうか!こっちが探すんじゃなくて奴が来て貰えば良いんだ!」
「何でそうなるの!?私、致命的な失態をしでかしたの!?」
炭治郎が自分の失態に対して絶叫している中、椿はハッとしながら嫌な予感がした。
「雪賀さん……まさか……」
雪賀は椿を囮にするべく更衣室へと向かうが、それを観て善逸が絶叫する。
「だーーーーー!(汚い高音)そっちは駄目!男性立ち入り禁止!」
善逸が雪賀を更衣室から遠ざけようと必死に説得するが、説得も虚しく、問題の更衣室から悲鳴が上がる。
「きゃあぁーーーーー!あの人、私の方にカメラを向けたあぁーーーーー!」
(拙い!きゃつが更衣室から出たら、雪賀でもきゃつを捕まえる事が出来てしまう!)
炭治郎と善逸が慌てて更衣室に向かって走るが、その2人のあまりの速さに雪賀が完全に置いてきぼりを食わされる。
「何だあいつら……いくら何でも速過ぎるだろ!?車かよ!?」
と言うか、確かに炭治郎は無惨と戦う運命にあるし、善逸はナイト・エージェンシー所属のホワイトスパイとして散々しごかれてきた。でも、雪賀自身がトラック1周でもうグロッキーになる程の運動音痴なのも問題があった。
「もう……走れない……」
「後は竈門様と我妻様にお任せしましょう」
(頼みますよ!犯人が雪賀さんに出くわす前に!)
1人の女性がカメラを手に通路を歩いていると、突然善逸に呼び止められた。
「そのカメラ、何の為に持ってるんだい?」
「なんでって……と言うかナンパかよ?キモ!」
善逸を変態扱いする事で逃げ切ろうとする女性だったが、炭治郎が立ち塞がる。
「嘘を吐くな。そう言うのは臭いで判るのよ」
遂に女性盗撮魔を挟み撃ちにした炭治郎と善逸であったが、その割には、この女の不気味過ぎる余裕から不吉過ぎる何かが漂っていた。
「お前さん、まさか感光させて証拠隠滅させる気じゃないだろうな?」
「はあぁ!?何それ?私のカメラに変な物が入ってるって言うの?」
だが、女から出る臭いと音が女の否定的な発言を否定する。
「観光と聴いてフィルムのアレを思い浮かべる時点で、お前はかなりカメラの扱いに慣れてると視た!」
「本当に後ろめたい事が無いのであれば、そのカメラの中身、堂々と魅せられる筈でしょ!?」
問答無用でカメラの中を視ようとする2人に困惑している様に見える女の顔に、善逸は不気味な違和感を感じた。
(何だ?あの眼帯は?目の病気か?)
「それと、その眼帯、外せ」
善逸の予想外の命令に炭治郎は呆れたが、言われた女は先程の尊大な態度が嘘の様に慌て始めた。
「何でよ!?何であんたら如きの前で自分の目を晒さなきゃいけないのよ!?」
「何を言ってるんだ善逸……え?」
「何故『眼帯を外せ』と言われただけでそこまで焦る!?はっきりと眼帯を付けてる理由を言えば良いだけの話だろ!」
女と善逸との眼帯に関するやりとりを聞いて、理解に苦しみ困惑する炭治郎だったが、その困惑のせいで判断が致命的に遅くなってしまった。
「それとも、その眼帯について言えない何かが……炭治郎ちゃん!避けろ!」
突然背後から無数の糸が炭治郎を襲ったが、反転術式と術式対象の自動選別常時発動を事前に習得しておいたお陰で事無きを得た。
「うわあぁーーーーー!あ……あっぶねぇー!無下限呪術常時発動と全集中・常中が無かったら、今頃私はサイコロステーキになってた!?」
「と言うかお前!判断が遅い!どんだけ油断してるんだお前!?」
炭治郎の判断ミスに文句を垂れながら盗撮魔から眼帯を奪う善逸。
「ぐ!?」
「下肆?あの時襲われた化物に似てるな?」
善逸の化物発言を聞いて、珠世に事前に言われた警告を思い出した。
「眼球に数字が刻まれる鬼に注意してください。そいつは間違いなく、無惨直属、十二鬼月です」
(だとすると……この罠の本当の狙いは雪賀じゃなくて……私!?)
炭治郎が盗撮魔と被害者の本当の狙いに気付いた中、善逸はどうしても雪賀の方を気にしてしまう。
「盗撮魔と被害者がグルって事は……やはりこれは罠か!?炭治郎!?」
「はい?」
「そこにいる2人!任せられるか!?」
善逸は恐らく、炭治郎を嵌めた盗撮魔を炭治郎に任せ、自分は雪賀の許へ急ぐ魂胆だろうが、この2人のそもそもの狙いは炭治郎なので、寧ろ相手の思う壺とも言えた。
とは言え、雪賀の事が心配なのもよく解るので、ここはあえて月並みの返答をした。
「解った!こいつらは私が引き受ける!」
原作との相違点
●獪岳
・鬼舞辻󠄀無惨とは無関係。
・プールや海水浴場などで無断で女性をスマホで撮影する。しかも常習犯。
・我妻善逸の罠に嵌る形で寒崎椿に成敗された。
●零余子
・令和7年まで生存。
・竈門炭治郎をおびき寄せるべくナイトプールの更衣室で盗撮騒ぎを起こしていた。
・『まったく最近の探偵ときたら』における『スクープおじさん』に相当する人物。
●母蜘蛛
・令和7年まで生存。
・竈門炭治郎をおびき寄せる盗撮被害者をやらされた。
第17笑:ナイトプールに来た人達の思惑(前編)
零余子は最近焦っていた。
自分は下弦の肆。つまり十二鬼月の筈だ。
だが、最近は上位である上弦ばかりが無限城に呼び出され、自分達は全く呼ばれない……
そんな事態に零余子はある危惧を感じていた。
そこで彼女は那田蜘蛛山を訪れた。
下弦の伍である累の根城だからだ。
だが、
「何で君と手を組まなきゃいけないの?」
「何でって……お前が最後に無限城に呼ばれたの、何年前だ!?」
「それがどうかしたの?寧ろ、家族と共に平穏に暮らせるなら、それで良いよ」
累の釣れない態度に零余子はついボロっと陰口が出てしまう。
「何が家族だ。下弦にすら成れない雑魚を従えてるだけの独裁体制の癖に」
「何か言った?」
このまま累と口論になりかけたが、それでも零余子は累と手を組まなければならない理由があった。
「いやいや待て待て!私達が喧嘩してる場合じゃない!最近下弦が無限城に呼ばれないと言う事は、無惨様が私達下弦を見限るかもしれないって事よ!」
「無惨様が……下弦を見限る……」
その瞬間、累は無惨に言われたくない台詞が脳裏に浮かんでしまった。
「累、貴様は最近、下らぬ家族ゴッコしかしていないそうだな?その様な役立たずは最早不要だ」
その途端、涙目になりながらブルブル震える累。
「……嫌だ……」
脈ありだと判断した零余子は、わざと聞こえないフリをした。
「ん?何か言ったか?」
「嫌だ。僕達家族の静かな暮らしを邪魔するな」
「……同盟、成立♪ところで累、ナイトプールって知ってる?」
その結果がこれである……
寒崎椿にマイクロビキニを着せたがっていた秋場雪賀の命令で渋々ナイトプール内で暗躍する盗撮魔を捜索していた竈門炭治郎は、当の盗撮魔の罠に嵌って盗撮魔を含む2人の鬼に挟み撃ちにされてしまった。
しかも、盗撮魔の方は下弦の肆。つまり十二鬼月である。
夏油が送り込んだ幼女鬼ですら下弦に昇格していない。そんな幼女鬼ですら死力を尽くし奥の手や新能力を発揮しても倒せないのに、下弦とは言え本物の十二鬼月相手にどこまで戦えるか?
炭治郎は正直不安だったが、必死に冷静を装った。
「私1人を殺す為だけに多くの人達を巻き込んで、心が痛まないのかい?」
「とっくに気付いているとは思うが、アンタを食う為に那田蜘蛛山にいる鬼を掻き集め、ナイトプールの更衣室の写真をインターネットに売ったんだ。無下限呪術習得以降では初の言い訳は考えて来たか?」
「言い訳?君達を殺した理由の事かい?」
炭治郎は余裕に魅せたい笑みの額に、冷や汗を滲ませる。
「少々色気に欠けるが、まあ、女である事には変わりない。なら、その水着を斬り刻んであんたの傷だらけの裸もインターネットに売ってやるよ!」
零余子と累配下の鬼女が炭治郎を襲う。
零余子が手にした松の葉を巨大化させて炭治郎に突き刺そうとし、鬼女はほとんど見えない糸を小さい蜘蛛を介して炭治郎に取り付け、それを繰って炭治郎を操ろうとする。
判断が完全に遅れた炭治郎が両腕を盾にする事しか出来なかったが、幸い、無下限呪術の自動選別と常時発動に救われて無傷で済んだ。
「くっ!?……アレ?……痛くない?」
「嘘!?」
鬼女は完全に驚愕・狼狽するが、零余子は咄嗟に朝顔の種を炭治郎の足下にばら撒く。
「迦!」
だが、何も起こらなかった。
「何!?」
零余子の予定では急成長した複数の朝顔が炭治郎を締上げる筈だったのだ。
だが、無下限呪術が生み出した無限はそう言った邪悪な念話すら止めてしまうのだ。
「……噓でしょ……無下限呪術はそこまで出来るのか!?」
自分と鬼女の2人だけでは足りないと判断した零余子は、累配下の巨大蜘蛛に命令した。
「そこの兄!|累と粟坂を動かせ!プランBだ!」
とここで、炭治郎の足を掬う出来事が発生してしまう。
「うっ!何だ!?すごい刺激臭だ!」
突然うずくまる炭治郎に困惑する零余子。
「え?え?!」
(まさかこいつ……兄の体臭が苦手なのか?)
そう。炭治郎の嗅覚は警察犬顔負けなのだ。
「おえぇー!無下限呪術が自動発動する程臭いって……どんな生活をしたらそうなるんだよ!」
「……そうなの?」
それを観た巨大蜘蛛はこれを好機だと判断してしまい、零余子の命令を無視し始める。
(行け!蜘蛛共!)
「あ!?馬鹿!」
だが、巨大蜘蛛が放った小さな蜘蛛は、巨大蜘蛛の体臭のせいで勝手に発動してしまった無下限呪術に阻まれて炭治郎には届かなかった。
「!」
(やはり……兄の蜘蛛毒でもダメか……なら、本格的にプランBだ!)
「兄!お前も粟坂を手伝え!プランBに完全移行する!」
だが、巨大蜘蛛のプライドがそれを許さなかった。
「……!お前ら!もっと毒を打ち込め!」
「そんな事より粟坂に力を貸せ!お前1人で勝てるなら、こんな時間が掛かる……聴けやあぁー!」
巨大蜘蛛の体臭のせいで作戦の修正を余儀なくされた零余子が、舌打ちしながら鬼女に命ずる。
「チッ!?母!お前が粟坂の許へ往け!」
その結果、巨大蜘蛛は1人(?)で炭治郎と戦う羽目になってしまった。
一方、件の粟坂は零余子の命令を無視して(実際は兄の勝手な行動のせいで命令が届かず)勝手にプランBに移行しようとしていた。
「良いのかい?君が勝手に動いて」
「良いんだよ。俺が秋場雪賀を襲うフリをする事で、竈門炭治郎を迷わせて竈門炭治郎を殺し易くする。それがプランBだった筈だろ?」
「それはそうだけどさ―――」
「なら、つべこべ言わずに襲うべきだ。ほら、ナイトが送り込んだ例の金髪が秋場雪賀の許に向かってるぜ?」
因みに、粟坂は鬼ではなく呪詛師であり、雪賀を殺せばサマーから12億を貰えると誘われて零余子の仲間になった。
だが、粟坂が本当に殺したいのは雪賀ではなく炭治郎であった。
(俺達は自由だった……五条悟が生まれて世界の|均衡が変わるまでは……)
粟坂が自分の過去を妄想している間に、善逸が雪賀達の許に到着した。
「ここから出るぞ!これはやはり罠だ!」
「でも、竈門様がまだ―――」
「その炭治郎ちゃんが時間を稼いでくれている間にだ!」
(しかし、俺達から自由を奪った五条悟は死んだ筈だった……なのに!竈門炭治郎が五条悟が使っていた術式を習得しようとしている!)
粟坂は我慢出来ずに勝手(?)にプランBを始めてしまった。
「チッ!やはり仕込んでいたのはあの2人だけじゃなかったか!?」
(俺達は自由だった……晩年にしてその自由が奪われた!)
しかも、先に仕掛けたのは粟坂の方だった。
(ふざけんな!俺は生涯現役!死ぬまで弱者を蹂躙する!)
「どきな。雪賀が用が有るのは……この俺だけだ」
「黙れ外道。秋場雪賀をお前みたいなやばい奴から遠ざけるのが、俺がナイトから与えられた任務だ」
「でやあぁー!」
その隙に椿が粟坂の頬を勢いよく蹴り飛ばした。
「脅かすなよ善逸。椿の圧勝じゃん♪」
だが、戦況は雪賀が楽観視する程優勢ではなかった。
「ナイトのエージェントの力はこんなものか?」
「何!?」
(今の蹴り、絶対に『全集中・常中』が混ざってただろ!?なのにこの程度のダメージで済ませた……)
「嘘!?椿の蹴りなのに!」
粟坂が余裕で雪賀達に近付く。
「やる気が無いなら、そろそろ殺すか?」
(しかもこの余裕……間違いない!こいつの呪術は防御系だ!)
しかし、粟坂はここで幾つかの誤算を犯した。
1つはさっきのやりとりを見れば解る通り、累のやる気の無さが粟坂の足を引っ張てる事。
もう1つは、突然の飛び蹴りとなって粟坂を襲った。それも2回も。
粟坂を襲った2つの飛び蹴りの内に1つが善逸が嫌味じみた文句を垂れた。
「善逸てめえ!あいつまで呼んだんなら、そう言う事は先に言えよ!」
だが、最初の飛び蹴りがそれをやんわりと否定する。
「何で?何で善逸が|後藤に僕の居場所を、いちいち逐一教えなきゃいけないのかなぁー?君、敵を欺くならまず味方からって言葉を知らないの?」
その途端、後藤は一気に蒼褪めた。
「いえ……ぞんじてまう。ごめんなさい」
緊張と恐怖で噛んでしまう後藤であったが、それも無理は無い。
彼の名は時透無一郎。
一見若そうだが善逸と後藤の先輩で、訓練学校の教育係でもある。
課題を終えた候補生には笑顔で接する(優しい)が、課題を終えない候補生には冷たかったらしい。
しかもその課題はかなり厳しく、無人島や北極でサバイバルとか、敵地の真ん中に武器無しで放り込まれたりとかetc。
その内、後藤は時透の笑顔がトラウマになった。
善逸もよく見るとクールな顔が引きつってる。
「御免、後藤先輩。俺がマイクロビキニの魅力に屈しさえしなければ」
善逸にそう言われた途端、雪賀が嫌そうに自分を指差した。
「え?僕のせい?」
そこへ、時透がダメ押しの一言。
「じゃあ何で、秋場雪賀の護衛をしている筈の善逸が、こんな所で遊んでるのかなぁー?」
雪賀は改めて時透の恐ろしさを思い知った。
「……………………………………………………はい……(中退アフロ田中第1話参照)」
だが、呑気に漫才の様な会話を続ける余裕はそんなに無かった。
「おいおい。1番肝心な奴をほっぽって、何勝手に奥に進んでるんだよ」
時透と後藤の飛び蹴りをもってしても粟坂を止める事は出来ない。
「いい加減にしないと、本気で殺すぞ」
「無一郎さん。コイツ、防御系の呪術が使えるそうなので、どうぞ遠慮無く南極の真ん中に放り込んでやってください」
「……確かに、この男は頭を冷やす必要性が有るね」
「私も手伝います。雪賀に危害を加える気満々な様ですので」
善逸、時透、椿が臨戦態勢をとる中、後藤だけがキョトンとしていた。
「え?……これで終わりじゃないの?」
「何寝惚けてるの?仕事しなよ」
「……………………………………………………はい……(中退アフロ田中第1話参照)」
だが、粟坂は自分の術式に余程の自信が在ったのか、余裕の笑みを崩さなかった。
「将来有望。|殺り甲斐がある」
(時透先輩の前だからあんな事言っちゃったけど、問題は、どうやって奴の防御系呪術を破るか……だな)
原作との相違点
●零余子
・令和7年まで生存。
・竈門炭治郎をおびき寄せるべくナイトプールの更衣室で盗撮騒ぎを起こしていた。
・竈門炭治郎を打ち倒すために累と手を組んだ。
・最近無限城に呼んで貰えない事に内心焦っていた。
・植物を操り植物武器を作り出す。
・『まったく最近の探偵ときたら』における『スクープおじさん』に相当する人物。
●累
・令和7年まで生存。
・最近無限城に呼ばれていない事について寧ろ好都合だと考えていたが、零余子の説得を受けて漸く事の重大さを理解した。
・竈門炭治郎を打ち倒すために零余子と手を組んだ。
●兄蜘蛛
・令和7年まで生存。
・ナイトプール襲撃計画では連絡役を任されていた。だが元々好戦的で残忍な性格なのか、零余子の命令を無視して勝手に動いてしまう。
・図らずも竈門炭治郎の異常嗅覚看破に貢献した。
●粟坂二良
・令和7年まで生存。
・高額報酬欲しさに秋場雪賀をつけ狙う呪詛師。
・ナイトプール襲撃計画では秋場雪賀やナイト・エージェンシー(『スパイガール!』参照)の足止めを担当。
・かつて五条悟が使用していた無下限呪術を極めつつある竈門炭治郎を畏れ恨んでおり、故にその殺害を強く望んでいる。
●時透無一郎
・鬼殺隊とは無関係。
・ナイト・エージェンシー(『スパイガール!』参照)所属のエージェント。
・我妻善逸と後藤の先輩。
・平成生まれ。
・後藤が最も遭いたくない人物。
・『スパイガール!』における『志真蓮夜』に相当する人物。
第18笑:ナイトプールに来た人達の思惑(中編)
雪賀が粟坂に襲われている事に気付かない炭治郎は、零余子の命令を無視する兄と戦っていたが、
(この蜘蛛達は鬼じゃない!匂いが違う!何の罪も無い人達をこんな姿に変えて操るなんて!)
怒りで我を忘れて兄に突っ込む炭治郎。
「許せない……許せない!」
だが、突然の怒号が炭治郎を強引に冷静に戻す。
「落ち着けーい!」
その人物は、完全に人面蜘蛛である兄に負けないくらいの変わった格好をしていた。
上半身が裸で、ハート型のニップルステッカーとカチューシャを身に着け、顔には化粧をしている白人男性。ある意味1番目立つ人物だった。
「憶えておきなさい竈門炭治郎。慌てなきゃいけない時こそ冷静にならなきゃ、敵の思う壺よ」
謎の人物が炭治郎に説教を垂れる中、兄はしてやったりと言わんばかりにニヤリと嗤った。
「そこの変態、お前はもう負けてる。手を咬まれたろ?毒だよ。お前を蜘蛛にする毒だ」
「!?……貴様あぁー!」
炭治郎が怒りに任せて兄を斬ろうとするが、何かに引っ張られて動けなかった。
(何!?まさか、この男の術式に嵌った?無下限呪術がこの男の術式を危険じゃないと判断したからか?それとも……)
炭治郎は先程の変態に言われた事を思い出し、自分に怒りを恥じた。
(私の怒りが無下限呪術を歪ませたか?)
で、肝心の変態はと言うと、必死に力んで注入された毒を排出していた。
「ふん!」
「!?」
(は?毒を搾り出したぞ……何なんだコイツは……)
だが、兄の想定外はそれだけじゃなかった。
「|こっちを向いて《キューティーハニー》!」
「キューティーハニー!?」
変態に心を鷲掴みにされた蜘蛛達が、一斉に兄を襲った。
「何故俺を襲う!?くそ!」
想定外だらけの事態に兄は困惑して逃げ回る。
(くそ!こうなったら、奴らが届かない場所から俺の斑毒痰で!)
対する炭治郎は、謎の変態の変態行動のお陰で冷静のなれたお陰か、慌てず徒歩で兄の後を追う。
(そこからじゃ何も出来ないだろ!?ざまーみろ!グズグズに溶かしてやる!)
だが、炭治郎が習得した無下限呪術は冷静さを完全に失った悪党の悪足掻き如きで揺らぐ程やわじゃない。
(嘘!当たらない!)
「お前の骨1つこの世に残さない!」
打撃との誤差0.000001秒以内に呪力が衝突した瞬間、空間は歪み、呪力は黒く光る。その現象を呪術界では『黒閃』と呼ぶ。
威力は通常の攻撃の2.5乗におよび、黒閃を経験した者としていない者には、呪力の核心との距離に大きな差が生じる。
「ヒノカミ神楽、輝輝恩光!」
蜘蛛に変えられた人々の仇を仕留める。“誠心”竈門炭治郎の本領。
五条悟に次ぐ呪術界の奇跡。
そこに与えられた呪いの力。
彼女は、黒い火花に愛されている。
呪術師は日輪刀を持たぬ故に鬼を殺す術が無い筈だったが、炭治郎が放ったヒノカミ神楽に黒閃が混ざった事で、鬼である筈の兄が跡形も無く消えた。
「ぎゃああぁーーーーー!?」
(これで……蜘蛛にされた人達が支配から解放されると良いが……後、臭かったぁー)
兄を倒した炭治郎に対し、変態が優しく語る。
「黒閃よ」
「こくせん?」
「黒閃を打つ感覚を覚えちゃうと、呪力の核心にぐっと近づいちゃうの。これからも呪術師を続ける心算なら、憶えておきなさい」
「呪力の……核心……は!」
炭治郎はハッとして例の謎の変態に礼を言おうと慌てて駆けるが、既に変態は去った後だった。
「待ってください!せめて礼だけでも!……行っちゃった……」
(御礼、言いたかったなぁー)
一方、善逸達は粟坂の頑丈さに苦戦していた。
「雷の呼吸、壱ノ型、霹靂一閃!」
「ちょこまかと、すばしっこいなあお前」
(刃が通らない!?なんて頑丈な呪術なんだ!)
そんな中、零余子が慌てて現場に駆け付けるが、粟坂がたった1人で頑張ってる状況に頭を抱えた。
「あの馬鹿兄!累にプランBの事を伝えなかったのか!?」
その途端、累が不機嫌になる。
「君、僕の家族を悪く言う心算かい?」
(あ、やべぇ)
「その兄が竈門炭治郎と戦ってる。いや、既に死んでるかもしれん」
零余子の予想に呆然とする累。
「……マジで?」
その途端、遂に累が動き出すが、方向が逆。
「ちょっとちょっと!?どこ行くの!?」
「決まってる。炭治郎を殺しに」
「待て!1人で逝くな!」
とは言っては見たものの、最早、利用価値が有るのは粟坂だけだと確信する零余子。
「こんな事なら誘わなきゃ良かった。あいつらのせいで作戦が滅茶苦茶だ」
改めて善逸達の方を観る零余子。
「さて、粟坂には悪いが、そろそろ秋場雪賀を殺すか」
突然乱入した零余子に困惑する粟坂。
「おい!竈門炭治郎はどうした!?話が違うぞ!」
「悪い。累が作戦通りに動いてくれないから、その為の修正をしに来た」
「あのクソガキ!使えねぇなあいつ!」
「私もそう思う!」
零余子は近くの草をむしり取って血鬼術で剣に変える。
「更に予定変更だ。父!姉!プランCだ!ナイトプールに居る人間全員食い殺せ!」
零余子の命令に善逸が嫌そうに舌打ちをした。
「そこの盗撮擬き!お前は殺し屋を何人引き連れて来た!?」
善逸の質問を聞いて頭を抱える椿。
「……すみません。我々が軽率な事をしでかしたばかりに……」
だが、予想されていた惨劇は何時まで経っても起こらず、
「貴様……何の為にあの役立たず共を連れて来た?」
「私だって、累がここまでわがままだったなんて想定してないから」
そこへ、時透がダメ押しの一言。
「君ら、人望無いね?」
零余子は返す言葉が無かった。
「……………………………………………………はい……(中退アフロ田中第1話参照)」
とは言え、零余子の人望の無さが善逸を別の意味で追い詰めてしまった。
「……これは困った」
「ん?」
「人聞き悪いけど、炭治郎ちゃんを時間稼ぎにしてその隙に雪賀を逃がす算段だったんだけど」
善逸の口から炭治郎が出た途端、零余子と粟坂は少しだけドキッとした。
「ん?」
後藤は何故そこでとは思ったが、善逸は確信があった。
「お前らまさか、炭治郎ちゃんがこれ以上強くなる事を恐―――」
善逸はいきなり粟坂に襲われた。
「うわあぁー!?と言うか最後まで聴け!」
「どうやら、図星の様だよ」
時透に作戦を見抜かれて悔しそうに歯噛みする零余子。
「炭治郎と言う女性が本命であり、秋場雪賀暗殺は炭治郎の集中力を切る為のオマケ」
零余子はとうとう開き直った。
「それがどうした!どの道、秋場雪賀は賞金首だろ!」
「そうだね。それは認める」
「何?」
時透の冷静さに寒気を感じる零余子。
「でも、殺せなきゃ意味が無い。そうですよね?先生♪」
「先生!?」
気付けば、カラスの群れがナイトプール上空を覆っていた。
「何だ……これは?」
「誰が来た?何が来た!?」
「まさか、ナイトの教育係であるこの僕が、何の手も打たずにここにのこのこと来たとでも思った?いやぁー、レンタル料高かったから、我妻がうっかり倒しちゃったらどうしようかと冷や冷やしたよ」
やって来たのは、顔を三つ編みにした白髪で隠した謎の女性。巨大な斧を持っている事から戦闘要員だと思われるが。
「冥冥だ。よろしく頼むよ」
「冥冥だと!?」
粟坂の驚きに嫌な予感がする零余子。
「知ってるのか?」
「1級呪術師の中に守銭奴がいるって噂を聞いた事が有るが、まさかこいつの事か?」
「1級って、特級の次に強いって奴か?」
そんな冥冥が口を開く。
「ありがとう善逸。お陰で男の方の術式が解った」
「いや……正直言ってお礼を言うのはまだ早いんじゃないのか?」
冥冥が善逸にウインクする。
「大丈夫。既に対策済みだから言ったんだよ。それに……」
冥冥は雪賀の方を見る。
「足手纏いにはそろそろ退場して貰おうかな。ま、殺しはしないから安心しな。憂憂」
その直後、憂憂が突然前触れも無く現れた。
そして、憂憂と雪賀が突然前触れも無く消えた。
「……は?」
目の前の出来事に呆然とする零余子と粟坂。
「これで、竈門炭治郎の負担も少しは軽くなるってもんだ」
粟坂は怒りに任せて冥冥に詰め寄る。
「そこの糞尼!秋場雪賀をどこに隠した!?」
冥冥は動じず、愛用の斧をフルスイングする。
「いや、待って。それって俺達がさっきやったミスと全く同じ―――」
だが、冥冥の斧は粟坂を斬り裂く事は出来なかったが、代わりにまるで腹パンを受けたかの様なリアクションをする粟坂。
「え!?」
「ダメージが……通った!?」
善逸と後藤が漸く粟坂にダメージを与えた事に驚く中、冥冥はニヤリと笑った。
「やっぱりね。アンタ、あべこべだろ?」
後藤は理解に苦しんだが、善逸は粟坂の心拍数から図星なのだと察した。
「な……何故……それを……」
「我妻善逸とか言う子の頑張りのお陰かな?あれだけ攻撃が命中して無事なら、普通防御系を疑うだろ。で、私の記憶の中に、ちょうどあんたと似てる奴がいてね。いやー、私は金の神に好かれてる様だねぇ」
後藤はやはり冥冥の台詞の意味が解らなかった。
「御免。そのあべこべって、何?」
「術者に当たる攻撃の強弱を、文字通り『あべこべ』にしてしまうんだよ。強い攻撃を弱く、弱い攻撃を強くする」
冥冥が手にしていたのは、ただの水風船。
「何それ!?俺達の攻撃って、そんな風船未満って事かよ!」
後藤の文句に冥冥は笑って答えた。
「違う違う。あべこべを破るにはコツがいるって事さ。強い力と程々の弱い力の同時攻撃でないと、強い攻撃を弱くされ、弱い攻撃は弱いまま」
「く……くそが!」
冥冥の説明を遮るかの様に襲い掛かる粟坂であったが、カラスの群れの1羽が眉間を狙って急降下したので慌てて『あべこべ』を発動してしまう。
だが、これだと冥冥の思う壺であり、冥冥が投げた水風船が粟坂を吹き飛ばしてしまう。
「そいつ相手にあべこべを発動させるな!粟坂!」
と言われても、あべこべを解除すると斧で斬られるか黒鳥操術に食い殺される。かと言ってあべこべを発動されると水風船でタコ殴りにされる。
つまり、粟坂は既に詰みである。
それを察した零余子が冥冥に襲い掛かる。
その際、近くの草を毟って大きなハサミに変える。
冥冥はそれを紙一重で避けようとするが、あえてハサミ型にする事で一振りで連撃を繰り出せ冥冥に切り傷を付けた。
「おっと……こっちの対策はまだの様ね?粟坂!炭治郎の次にやばい女は私が片付ける!あんたはナイトの連中を!」
既に冥冥には勝てないと悟っていた粟坂にとってはありがたい命令だった。
「あいよ」
(意外と素直だなこいつ。呪詛師ってもっとわがままだと思っていたけど)
俗に言う『利害の一致』である。
原作との相違点
●竈門炭治郎
・2009年7月14日生まれ。
・竈門家長女。
・実家はパン屋。
・2023年7月23日に乙骨憂太に保護され、憂太の許で約1年8か月ほど修行して無下限呪術と六眼の基礎を叩きこまれた。
・更に、日下部篤也と禪院真希にヒノカミ神楽の基礎を叩きこまれた。
・2025年、秋場雪賀の護衛を命じられて私立善根高等学校に入学した。
・銃鬼との戦いの最中に夏油傑に見せられた竈門炭十郎の幻影の助言をヒントに反転術式のコツを掴み、術式反転「赫」を取得した。
・黒閃経験有り。
・『スパイガール!』における『雪乃晴』に相当する人物。
●累
・令和7年まで生存。
・最近無限城に呼ばれていない事について寧ろ好都合だと考えていたが、零余子の説得を受けて漸く事の重大さを理解した。
・竈門炭治郎を打ち倒すために零余子と手を組んだ筈だが、粟坂二良と違って自分勝手に動く。
●兄蜘蛛
・令和7年まで生存。
・ナイトプール襲撃計画では連絡役を任されていた。だが元々好戦的で残忍な性格なのか、零余子の命令を無視して勝手に動いてしまう。
・図らずも竈門炭治郎の異常嗅覚看破に貢献した。
・黒閃を帯びたヒノカミ神楽を受けて消滅。
●姉蜘蛛
・令和7年まで生存。
・ナイトプール襲撃計画では秋場雪賀やナイト・エージェンシー(『スパイガール!』参照)の足止めを任されていたが、粟坂二良と違って自分勝手に動く。
●父蜘蛛
・令和7年まで生存。
・ナイトプール襲撃計画では秋場雪賀やナイト・エージェンシー(『スパイガール!』参照)の足止めを任されていたが、粟坂二良と違って自分勝手に動く。
●ラルゥ
・未だに夏油一派に所属。
●冥冥
・原作とほぼ同一。
●憂憂
・原作とほぼ同一。
第19笑:ナイトプールに来た人達の思惑(後編)
遂に姿を現した黒幕・零余子を冥冥に任せ、善逸達は再び粟坂と対峙する。
ただ、粟坂が誇る鉄壁の防御のカラクリを冥冥が暴いてくれたので、先程よりは気が楽に戦えた。
一方の粟坂は弱点がバレた以上、あべこべはもう使えない。
あべこべを使うと時透が投げるソフトテニスボールが粟坂の体を貫通してしまう。
だが、あべこべを使わないと善逸の霹靂一閃が粟坂を切断してしまう。
つまり粟坂は劣勢だ。
すると、お互い口数が増える。
「そろそろ、諦めたらどうだ?黒幕である盗撮犯は兎も角、アンタのネタは割れてる。勝ち目は無いぞ?」
「ふざけるな!このまま俺は、一生無下限呪術に怯えて暮らせって言うのか!」
粟坂の言い分を不愉快に感ずる善逸。
「つまり、貴様は竈門炭治郎と言う小娘の事を何も解っていないと言う事だな?」
「貴様こそ!無下限呪術の本当の恐ろしさを理解していない!」
「出身国上、核抑止力を賛成も肯定も出来んが、この際ハッキリと言おう。竈門炭治郎の敵は『理不尽』だ。罪無き仲間が理不尽に蹂躙される事を良しとしない。つまり、竈門炭治郎に理不尽と認定される行為さえしなければ、竈門炭治郎が使用する無下限呪術は敵ではない。彼女が纏う“優しい音”がそう言っている!」
「じゃあ何か!?長生きする為に自由を捨てろと言うのか!?」
粟坂の反論から邪気を感じた善逸が更にムキになる。
「自由を捨てるだと?違う!炭治郎は他人の自由を面白半分に奪う程乱暴じゃない!そう言うお前こそ、法律と自由の因果関係を履き違えている!」
善逸の反論から知能低下を感じた粟坂は呆れながら諭す様に告げる。
「そう言うお前こそ、安月給だけが取り柄の仕事中毒の社畜じゃねぇか。もっと頭を使いな」
善逸は完全にキレた。
「そう言う……ルールの必要性も知らないお先真っ暗な癖に天才騙って真面目を見下す雑魚下衆が!死の次に大嫌いなんだよ!」
「そうやって律儀にルールルールと五月蠅い事を言って、社会に顎で使われて国にいい様に搾取されるだけの社畜馬鹿は、もっと頭を使う事を覚えな」
ホワイトスパイとして悪徳企業が行う不正や要人を狙う妨害・暗殺と日々戦ってきたナイト・エージェンシーだからこそ、楽しながら簡単に儲かる術に溺れて法律の加護を失った犯罪者の生き汚さを飽き過ぎる程見てきた。無論、その末路も死に様も……
だからこそ、真面目を見下しながら弱者を蹂躙して理不尽な大金を得る腐った凶悪犯が心底気に入らない。
「俺は今……お前みたいな天才を騙る馬鹿犯罪者の事をお先真っ暗と言ったな?」
だが、そんな善逸の大義の怒りなど、粟坂にとってはどうでも良かった。
誰にも縛られず、何にも縛られず、ただ弱者を蹂躙し続ける事さえできれば、それで良い。
「お前は本当に学習能力が無いな。お先真っ暗なのは、正しい生き方を知らぬお間抜け社畜の方だ。世界はどこまで言っても弱肉強食。食われない様に工夫するのが、賢い生き方って言うだろ?」
「ならば証明してやるよ。俺とお前、どっちがお先真っ暗かを」
いよいよ舌戦がめんどくさくなってきた粟坂は、
「やる気が無いなら、そろそろ殺すか?」
粟坂は善逸達を皆殺しにして炭治郎の動揺を誘おうと中華包丁を思いっきり振り下ろすが、善逸は粟坂の中華包丁を右へと払い流し、その隙に納刀する。
「お前、あべこべさえなければ大した事ないじゃん」
善逸のこの苦し紛れの言葉はある意味的を射ていた。
善逸達が所属するナイト・エージェンシーは悪徳企業の不正捜索や犯罪組織の証拠発見、要人の警護などを行うホワイトスパイ派遣機関である。
故に、全ての悪党から恨みを買っている組織と言っても過言ではなく、だからこそ万が一の為の戦闘訓練も欠かさず行っており、構成員同士の模擬戦も星の数ほどこなしてきた。
また、リトル・エージェント時代に任務先で出会った老人に『雷の呼吸』を教わった事も善逸にとっては幸運だった。
それに対し、粟坂は相手の必殺の一撃を術式で凌ぎ、攻撃した後に出来た隙を狙うのが常套手段。つまり、相手が疲れるのを待ってから攻撃する性質上、無理して技数を増やす理由が無い。
その上、弱者の蹂躙を好む残忍さと嘘を平然と吐く純然たるゲスな性格が仇となり、呪術高専や御三家などの正規の育成機関に頼るどころか敵対しており、独学で鍛えなければならない立ち位置も粟坂の技数が増えない理由となっている。
粟坂が善逸に技数で大差を付けられて負けるのも至極当然である。
(だがよ、俺には……)
それに、粟坂には真に頼れる戦友がいない。
故に粟坂は常に1人だ。
この差はデカかった。
だから、時透にソフトテニスボールを投げつけられながら善逸の霹靂一閃を捌かなければならない状況を脱する方法を粟坂は知らないのだ。
(あべこべだけじゃ……どうにもできねえ……)
時透のソフトテニスボールと善逸の霹靂一閃に挟まれ、粟坂は遂にダウン。
更に、善逸は堂々と粟坂の腹を踏みつけた。
「が!?」
「俺はお前に、法律と自由の因果関係を魅せてやるって言ったよな?」
そう言いながらゆっくりと抜刀する善逸。
「貴様……何をする気だ?」
「今から貴様の四肢を2、3本ぶっこ抜いて、この俺が法律の加護と自由を同時に失う瞬間を拝ませてやるよ」
そう言いながら刀を振り下ろそうとしたが、時透が何かに気付いて善逸に命じる。
「善逸!避けろ!」
そう言われて粟坂の腹から降りると、善逸はギリギリで何者かの火炎放射を回避した。
「あぶね!?」
「誰!?」
それは、入隊試験用に藤襲山に幽閉された下っ端鬼でありながら、1級呪術師となり夏油一派に寝返り竈門姉妹をあと1歩まで追い詰めた、あの幼女鬼であった。
「その汚い足を除けてください……|非術師さん」
「足を除けろって言ったよね?」
「そうです。この方はあなた達|非術師が見下していい人じゃありませんので」
幼女鬼の言い分に対してわざとらしく頭を搔く時透。
「とは言ってもねぇー……そこの|犯罪者を野放しにしたら、更に罪無き人が死んじゃうでしょ」
「罪が無い?呪術が使えない|非術師が無罪になるのは、どう考えても、おかしいです」
冷ややかな目で幼女鬼を見る時透。
「あー、嫌だ嫌だ……こう言う『弱肉強食』を履き違えてる馬鹿な|加害者は自分勝手で困る」
「でも、弱いのは罪です。弱い人達は寄ってたかって、強い人から居場所を奪っていく」
時透は溜息を吐いた。
「善逸君もさっき言ったよねぇ?そう言う奪う側を裁く為に法律はあるって。だから……」
「もし、その法律……」
「ぐ!?」
善逸達が気付いた時には、粟坂の頭頂部にナイフが刺さっていた。
即死だった。
「何時の間に!?」
「やっぱ時透先輩……こええぇー!」
善逸は自身の異常聴覚をもってしても言われるまで気付かなかった事を困惑しながら恥じ、後藤はただひたすら時透の恐ろしさを再確認した。
(気付けなかった?この俺が!)
(もう……時透先輩には遭いたくない)
自分の足元に転がっている粟坂の死体に視線を落とし、幼女鬼は身体を震わせた。
「どうして……|非術師共は呪術師の命を何だと思っているのですか?彼がいったい何をしたと……かわいそうに……」
幼女鬼の言い分に身勝手さを感じた善逸が反論しようとするが、幼女鬼は聞こうとしない。
「呪術師の命の尊さが解らない|非術師に生物を名乗る資格はありません。殺して差し上げないと」
「おおい!聴こえろ!俺が今言っただろ!時透先輩が成敗した悪人の罪状を!」
時透は善逸の肩を叩いた。
「無駄だよ。ああなったら正論は届かない。どんなに正しかろうとね」
「あの方の|非術師駆除は意味のある許された行為なのです」
そう言いながら口から炎を吐く幼女鬼。
そんな幼女鬼の悪意に狼狽えながら呆れ果てる善逸。
「テロリストかこいつ!?正気かよ!?」
一方、零余子VS冥冥は接戦だった。
「なるほど……これが“鬼”か」
「しかも、私は下弦とは言え十二鬼月。そこら辺の雑魚鬼とは訳が違うんだよ」
冥冥は通常兵器換算で『戦車でも心細い』と評される1級呪霊を確実に祓える1級呪術師。つまり、彼女は戦車より強いのだ。
対する零余子も鬼の強さランキングベスト12と言っても過言ではない十二鬼月の一角を担う鬼。他の鬼に比べて再生力、血鬼術、実力が格段に高く非常に強い。
正に化物同士の戦いである。
ただ、呪術師と違って摺り減らしたスタミナをその場で回復する術を鬼は持っている。
「そんな事より、お腹が空いた。と言う訳で……」
零余子は逃げ遅れた客達に向かって走り出した。
「プランCへと移行させてもらうよ!」
プランCは竈門炭治郎抹殺計画の緊急最終手段。
ナイトプールの客達を次々と皆殺しにし、彼らの死体を見て後悔する竈門炭治郎の隙をついて殺す算段である。
まあ、本来ならプランAかプランBの内に終わらせるのが零余子の理想ではあったのだが……
そして、零余子は1人の女性を捕まえて口を大きく開け、
「口を開けろ」
その途端、零余子の口が閉じなくなった。
(何故だ……なぜ噛めない?……どうして噛めない?)
その答えは、憂憂が持っていた。
「お姉さま!探し者、漸く見つけましたよ」
憂憂が自身の術式を使って秋場雪賀を逃がす傍ら、粟坂を倒す為の助っ人を探していたのだ。
零余子がナイトプールの客を食い殺せなかったのも、狗巻の呪言によるものだった。
つまり、鬼と違って自身の弱点を補う術を呪術師達は持っている。
(ならば……私の血鬼術でナイトプールの客を斬り殺―――)
憂憂は七海建人も呼んでおり、七海が零余子を捕まえて殴り飛ばした。
「ぐはあぁー!?」
その時に歯が折れたのは零余子のミスだった。
「共鳴り!」
「ぐおぉー!?」
釘崎野薔薇も呼ばれており、お得意の芻霊呪法で零余子を追い詰める。
「1人では勝てないのであれば、よってたかって大勢でかよ。それだと強く見えてしまうぞ?私が」
と、強がって魅たものの、追い詰められているのは明らかに零余子の方だった。
そして、
「うわあぁーーーーー!」
「なんだぁー!?」
何故か累が全裸で吹っ飛んで来たのだ。
「累!?アンタ、今までどこで何やってたのよ!?」
だが、その質問に答えたのは累ではなく、
「このナイトプールにいる十二鬼月は、本当にこの2人だけなんだな?お姉……いや、お嬢ちゃん」
その声色に零余子は恐怖した。
「ま……まさか……あいつら……もう全滅したのか……」
そう!
とある理由により不機嫌になった炭治郎が改めて正眼の構えをとった。
「お前達の独裁政権、ここで終わらせる!」
原作との相違点
●粟坂二良
・令和7年まで生存。
・高額報酬欲しさに秋場雪賀をつけ狙う呪詛師。
・ナイトプール襲撃計画では秋場雪賀やナイト・エージェンシー(『スパイガール!』参照)の足止めを担当。
・かつて五条悟が使用していた無下限呪術を極めつつある竈門炭治郎を畏れ恨んでおり、故にその殺害を強く望んでいる。
・最期は時透無一郎が投げたナイフが頭頂部に刺さって死亡した。
●釘崎野薔薇
・虎杖悠仁や両面宿儺とは無関係。
・東京都立呪術高等専門学校卒業生。
第20笑:詭弁的家族愛と炭治郎の義憤
憂憂がかき集めた呪術師達の猛攻に零余子が劣勢となり、時透が漸く粟坂を撃破した頃、炭治郎は累の手下の鬼達と戦っていたが、
「ヒノカミ神楽、飛輪陽炎!」
(やられた!あの人形が1番速くて強いのに!)
こちらの戦いも炭治郎が優勢だった。
「術式反転、あ……」
追い詰められた母は必死に策を練ろうとするが妙案がまったく浮かばない。
(殺される!考えて……)
だが、考えれば考える程……那田蜘蛛山での苦痛と苦悩しかない生活しか思い出せない。
那田蜘蛛山での生活は、累に恭順を示した鬼達が、言われるがままに容姿を作り変えてそれぞれが母・父・兄・姉役を演じているだけの歪な日々だった。
母だって元は幼女の鬼だったが、累の命令で容姿を変えて大人の女性の姿になっている。顔は累によって顔面を剥がれて作り変えられている。
血鬼術も累から蜘蛛の形にした力を飲み込む形で与えられたもので、自身で獲得した血鬼術ではない。
正に偽物だらけの人形の様な日々だった。
(ああ……でも……)
母の体臭から何かを感じだ炭治郎。
(不味い!この匂いは!)
「間に合え!術式順転、蒼!」
後から撃った蒼で先に撃った赫を相殺・消滅させようとする炭治郎。
(間に合え、間に合え、間に合え……間に合えぇぇぇぇ!)
「停まってえぇーーーーー!」
だが、炭治郎の願いに反して赫と蒼が融合して茈色の閃光へと姿を変えてしまった。
「なんでえぇーーーーー!」
対する母は、
(死ねば解放される!)
累から解放されたい思いから一切の抵抗をせず、嬉々として茈色の閃光を浴びた。
「ダメ!避けて!」
炭治郎の懇願虚しく、母は虚式『茈』をもろに食らって消滅した。
「十二鬼月はあの女だけじゃない。もう1人いるわ。気をつけて」
「え?」
「それと、私をあいつから遠ざけてくれて、ありがとう」
歓喜の涙を流しながら嬉々として消滅する母からの感謝の言葉は、炭治郎の無惨に対する怒りに油を注いだだけだった。
(哀しい匂いだ……こんな哀しい匂いを汚物辻は私利私欲の為に撒き散らしているのか……許せない、許せない、許せない!)
「十二鬼月……珠世さんが言っていた汚物辻の側近。汚物辻の血もかなり濃い筈。そいつらの血を手に入れて、鬼を人間に戻す薬を完成させ、必ず汚物辻という呪いを、完全に祓う!」
(だが、その前に……)
炭治郎は母が消滅直前まで立っていた場所に向かって合掌しながら黙祷した。
(ごめんなさい……貴女は、間に合わなかった!だから、この私を怨んでくれても、かまわない!)
長々と黙祷している炭治郎を父の剛腕が襲う。
「オ゙レの家族に゙近付くな゙あぁーーーーー!」
だが、炭治郎が纏う無下限呪術はその様な悪しき邪な攻撃を徐々に減速させて炭治郎に触れさせない。
「!?」
「……嘘を吐くな。恐怖で雁字搦めに縛り付ける事を『家族の絆』とは言わない!その根本的な心得違いを正さなければ、お前達の欲しい|自由は手に入らないぞ!」
父は近くにあったベンチで炭治郎を何度も殴ったが、無下限呪術に護られた炭治郎には当たらない。反則じみた鉄壁の防御。
それでも懲りない父は、近くの壁を破壊して配線を炭治郎に圧し付ける。
勿論、当たる訳も無い。感電して無下限呪術の使い手が死ぬなら、誰も苦労はしない。
「……言い忘れてたけど、私の仲間はお前が思っているほどヤワじゃない。家族も仲間も、強い絆で結ばれていればどちらも同じ様に……尊い!」
炭治郎が漸く父に反撃した。
「ヒノカミ神楽、斜陽転身!」
黒い火花は本来、微笑む相手を選ばない。
だが、炭治郎の人々を次々と殺して鬼達から自由を奪う鬼舞辻󠄀無惨への義憤は黒い火花の意思を捻じ曲げ、ヒノカミ神楽に黒閃を宿らせる。
鬼は黒い火花に嫌われている!
屈強な体格を誇る筈の父であったが、頑強過ぎる皮膚も虚しく思いっきり吹き飛ばされる。
そして黒閃を決めた炭治郎は、その手応えが残っている内は、ゾーンの全能感に浸り続ける。
「ヒノカミ神楽、陽華突!」
父はまたしても炭治郎に吹っ飛ばされ、背中から壁にめり込んでしまう。
そして……炭治郎は顔面が蜘蛛そのものに変貌している父を小馬鹿にする。
「その顔から察するに、お前、あまり人に好かれた事が無いだろ?周りの人を大切に出来ない奴には何も成し遂げられない」
「オ゙レの家族に゙……近付くな゙あぁーーーーー!」
形勢は完全に炭治郎に有るのに、懲りずに再び炭治郎を殴る父。
「顔を馬鹿にされた事より存在しない記憶に反応する?本当はその十二鬼月の事が怖いんだろ?」
父は結局、無下限呪術と黒閃に護られた炭治郎に何も出来ず、腹に受けた黒閃を宿らせた掌底から放たれた赤い光をもろに食らってしまった。
「術式反転、赫」
赫は父の身体を貫通して腹部に巨大な穴を開けた。
その直後、女性の悲鳴が響く。
(痛そうな臭いだ!しかも、こいつからじゃない!誰が誰を傷付けてる!?)
臭いを頼りに悲痛な悲鳴の主を探す炭治郎。
その姿を見送る余裕も無く、父は仰向けのまま動かなかった。
「ギャアァーーーーー!」
悲痛な悲鳴の主は姉だった。
父を圧倒する炭治郎に臆した姉は逃走を図ろうとしたが、それが累にバレて血鬼術を使った鉄拳制裁を受けていた。
「……何をしてるの?ねえ、自分の仲間に何をしてるの?」
炭治郎の質問に、累はけたたましい笑い声を上げた。
「あっはっはっはっは!仲間?はっはっはっは!」
何が面白いのか、大口を開けて笑う累。ひとしきり笑ったところで、突然、眼光鋭く炭治郎を睨みつけた。
「そんな薄っぺらいモノと同じにするな。僕達は家族だ。強い絆で結ばれているんだ」
だが、炭治郎も負けてはいない。
「嘘を吐くな!血の繋がりが無ければ薄っぺらいだなんて、そんな事は無い!お前からは恐怖と憎しみと増悪の臭いしかしない!紛い物……偽物だ!」
その途端、姉は慌てて炭治郎に抗議した。
「え?言っちゃう?バカなのか。え、え?バカなのか?全部、言っちゃう?しかも、ちょっとなんか、ハードな仕上がりにしてない?」
だが、姉の抗議虚しく炭治郎の悪口は止まらない。
「それにアンタ、さっき私が倒したおばさん……もとい!お嬢ちゃんが言っていた十二鬼月でしょ?アンタの血、|盗らせて貰うよ!汚物辻と言う忌々しい呪いを完全確実に祓う為に!」
「出来るならやってごらん。十二鬼月である僕に……勝てるならね」
「必ず勝つ!汚物辻が犯した悪行は全部祓う!」
炭治郎と累が臨戦態勢をとる中、姉だけは慌てふためいた。
「いや、冗談です!やめて!お願いだから!」
姉の訴えも虚しく、先に仕掛けたのは累であった。
累の手から出す糸は生きているように自在に動き、敵を切り刻む鋭い刃にもなると同時に、鋼鉄並みの硬度を誇る攻防一体の武器となっている。
けど……当たらなければどうということはない!
「な!?」
(触れられん?寸前で停まる)
相変わらずの無下限呪術の鉄壁さに、累は正面からの正攻法では勝てないと判断。
全ての糸を壁に突き刺し、糸が壁の中を通って炭治郎の両横を襲う。
「それも、無駄!」
全速力で累の眼前へと走る炭治郎。
隙ありとばかりに炭治郎が累の頸に一閃!
とはいかず、炭治郎が振るった刃は累の頸を斬る事無く……ボロボロに朽ちて砕け散っていく。
下弦の伍に登り詰める程長生きした累の血鬼術である『糸』は、シンプルであるが故に、強度も上級に相応しいものを持つ。
一方、16年しか生きていない炭治郎が振るい続けてきたその刀は、呪術高専の武器庫に保管されていた、生徒達にも扱える類の物。
経験と、道具の質。
それらはこの戦いにおいて、累と炭治郎の絶対的差であった。
「お前は一息では殺さないからね」
呪力がいくら強くても、取得した術式がいくら優秀でも、実戦経験の未熟さは否めない。至近距離での得物の喪失、累の手には鋼鉄並みの硬度を誇る糸。これこそが累の読み筋。この戦いにおける、投了図。
「血鬼術、殺目篭」
してやったり、と累は口端を吊り上げる。
だが、そんな計略や定石は、炭治郎の義憤と無下限呪術には関係無かった。
「え?……」
累の目の前に映ったのは、炭治郎の眉間。
刀が無かろうと、炭治郎がやる事は変わらない。怒っているのだから、目の前の鬼を倒すのだから、刀が無ければそれ以外に頼れば良い。
咄嗟に、累は無数の赤い糸を召喚し、防御を試みる。
「血鬼術、刻糸輪転」
単なる打撃であれば、難なく返り討ちにしただろう。
累が読み違えたのは、無下限呪術の強度と炭治郎の怒りの純度。
飛んで来た赤い糸は、炭治郎の手前で止まり、砕け散る。物理攻撃は常に、炭治郎との間には『無限』の距離を置かれて無意味となる。反則じみた鉄壁の防御。
更に、ゾーンに至った時、呪術師が引き起こす現象がある。
呪力を乗せた打撃を放つ時、打撃との誤差0.000001秒以内に呪力が衝突した際に生じる黒い光。
黒閃!
防御を貫き、累の顔面を頭突きが捉える。空間が罅割れる様な衝撃が、漆黒の余波を撒き散らして彼を激しく弾き飛ばす。
(最硬度の糸を……斬られた?そんな筈はない!)
想定外の展開に困惑して狼狽する累に対し、累の全てを否定する様に炭治郎が先程倒してしまった累の手下について語り始めた。
「私はさっき、たまたま偶然出来た新技でお前に操られていた奴隷を倒したんだけど、そいつ、その新技から逃げなかったよ……まるでお前から逃げる様にね!」
炭治郎はあの時の茈色の閃光を再現しようと試みる。
「術式順転、蒼。術式反転、赫」
引力と斥力の融合によって生成される仮想の質量。呪術界御三家の1つである五条家の中でもトップシークレットな複合術式。
その名は、
「虚式……茈!」
圧倒的破壊力は累の頸から下全てを容赦無く抉り取った。
「ゲフッ!?」
勝ちを確信したかの様に歩き出す炭治郎であったが、その背後に、聞こえる筈のない声が響いた。
「僕に勝ったと思ったの?可哀想に。哀れな妄想して幸せだった?僕は自分の糸で頸を切ったんだよ。お前の呪術が頭まで達するその前に……」
炭治郎は累の強がりを最後まで聞く事無く、累の眉間に愈史郎から貰った採血用ナイフを、ずぶりと深く突き刺した。
「もう何をしても無駄だよ」
炭治郎は、累の体を掴んだまま走り出した。
原作との相違点
●母蜘蛛
・令和7年まで生存。
・竈門炭治郎をおびき寄せる盗撮被害者をやらされた。
・最期は累から解放されたい思いから一切の抵抗をせず、偶然出来た茈に身を晒した。
●父蜘蛛
・令和7年まで生存。
・ナイトプール襲撃計画では秋場雪賀やナイト・エージェンシー(『スパイガール!』参照)の足止めを任されていたが、粟坂二良と違って自分勝手に動く。
・竈門炭治郎と(零余子や粟坂二良の許可無く)戦うも赫で腹に穴を開けられた。
第21笑:ナイトプール血戦決着!
「うわあぁーーーーー!」
「なんだぁー!?」
何故か累が全裸で吹っ飛んで来たのだ。
「累!?アンタ、今までどこで何やってたのよ!?」
だが、その質問に答えたのは累ではなく、
「このナイトプールにいる十二鬼月は、本当にこの2人だけなんだな?お姉……いや、お嬢ちゃん」
その声色に零余子は恐怖した。
「ま……まさか……あいつら……もう全滅したのか……」
そう!
累が手下に行った理不尽を察して不機嫌になった炭治郎が改めて正眼の構えをとった。
「お前達の独裁政権、ここで終わらせる!」
「そ……そ……そんなへし折れた刀で、何が出来るぅーーーーー!?」
口では偉そうな事を言っているが、零余子に勝算は既に無く、この攻撃はただの悪足掻きである。
しかも、零余子の破れかぶれな攻撃は炭治郎に届かず、その隙に冥冥の斧の餌食となった。
「が!?……だが、その程度の攻撃で―――」
炭治郎が投げたナイフが零余子の眉間に突き刺さり、血を採取されてしまう。
そして、炭治郎は累と零余子の眉間に刺さったナイフを抜くと、待ってましたとばかりに茶々丸がやって来てそのナイフを受け取る。
「お願い。珠世さんの所へ」
炭治郎が茶々丸が背負っているバッグに例の短刀を入れると、茶々丸が愈史郎の血鬼術を使って透明になった。
「ちょっと待て!何で貴様があの逃れ者の名を!?」
零余子の質問には答えず、炭治郎が皮肉を言う。
「喜べ。貴方達の血が久々に人の役に立つ」
斬り分けられてしまった零余子の上半身と下半身が合体し、元通りになった零余子の近くにあった草や花が次々と武器化した。
「私は死なない……私は死なないぞおぉーーーーー!」
とは言ったものの……
(この様子だと、粟坂はとっくに逃げたとみて間違いないし、累の手下の鬼は既に死んだ……更に、数もあっちの方が多い……)
零余子は必死に策を弄しようとするが……
(どうする。どうする……どうしよおぉーーーーー)
零余子は既に詰んでいる。
ただの盗撮犯だと勘違いさせて油断させるプランA。
秋場雪賀を襲うふりをして慌てさせるプランB。
ナイトプールの客を襲うふりをして慌てさせるプランC。
そのどれもが既に実行不可能。
しかも、憂憂が集めた呪術師達に包囲されている。
(……あれ?……私……終わった?)
ただ、憂憂が呼んだ呪術師の中にこの状況に困惑している者がいた。
勿論戦況が優勢なのは良い事だが、どうしても気になるのが……
「と言うかあんた……何で裸なの?」
そう。釘崎は累がなんで全裸なのかが気になっていた。
だが、零余子は一応『確かに』とは思うが、累はそんな事を気にする冷静さを欠いていた。
「そんな事より、僕の家族をぶち壊したそこの不細工女を殺―――」
「ちょちょちょ、待って待って!足を大きく動かすな!見える見える!」
食い気味に釘崎が慌て、累が呆れるしかなかった。
「この戦況でそんな事気にしますかね」
「そういうのいいから!」
対する釘崎は必死だ。
「そういうのってなに」
「そんな事より、自分を見て。ほら見て見て。よく視て」
釘崎の言ってる意味がまったく理解出来ず、構わず炭治郎に向かっていく累。
釘崎は、これまでの余裕が嘘の様に、必死な様子で累に訴えた。
「ちょちょちょちょちょ、ちょっと、ままま、待って、待って。そこの男の子の着替えが終わるまで待って」
炭治郎を襲おうとする累の体を手で制し、切実な声を出す釘崎。
「着替えが済むまで待って貰って」
「いや、何、何、何?」
「ちょちょちょ、なななななん、何で?何で何で?」
累と釘崎、両名の『何?何、何?』と言う問いが、ナイトプールに轟いた。
このコントの様なやりとりの元凶である炭治郎が俯きながら手で顔を覆った。
申し訳なさそうに俯く炭治郎が累の怒りと殺意を刺激した様だった。
「貴様……敵の前で何を……」
構わず炭治郎に向かっていく累。
炭治郎を襲おうとする累の体を手で制し、切実な声を出す釘崎。
「やばいから!コンプライアンス的にもやばいから!まずいから!」
累にしてみれば理解不能であり、気合を入れ直す様に指の骨をボキボキと鳴らし始める。
「邪魔するなら、君も死んでよ」
釘崎の顔がますます赤くなる。
「じゃあ、感じて感じて。ほら……観られて恥ずかしいじゃん。こう、なんつーの?デリケートゾーンに向けられる視線を感じて。そんなんだからさぁ、あの、コミュ障とか言われちゃうんだよ!」
しびれを切らした累が遂に血鬼術を発動させて釘崎を襲ったので、炭治郎が釘崎に抱きついて庇う。
「もうあの鬼、自分の容姿を気にする余裕を無くしてますよ!」
「マジか!?」
とんでもない姿で再戦の火ぶたを切った累に心底呆れる零余子。
「……いや……いくら私達が鬼だからって……なぁ……」
結局、全裸のまま襲い掛かって来た累を睨みつける炭治郎。
「私がさっきあんたらに虐げられていた女の子から託された技。また見たい様だね?術式順転、蒼。術式反転、赫」
さっきまで累の羞恥心の無さに呆れ固まっていた七海が、炭治郎がやろうとしている複合術式を観て、別の意味で慌てた。
(アレはまさか、茈!?何と言う事だ!乙骨憂太が立てた成長予定より、大幅に早い!?)
「全員散開!防御態勢!」
「だ、そうだ。そこの恥知らず男子から離れるよ!」
冥冥に猫つまみされる形で累から離される釘崎。
「ちょ、ま、えぇー!?」
狗巻も察して累との距離を広げる。
そんな中、零余子だけは呪術師達の動きの意味が解らず困惑していた。
「何々!?何を始めようと言うの!?|炭治郎!」
その為、零余子は完全に逃げ遅れた。
「虚式、茈」
引力と斥力の融合による茈色の閃光が、先ずは零余子を完全に消し去る。
「なんだよ!もうおぉーーーーー!」
そして再び、累の頸から下全てを容赦無く抉り取った。
「ちょっと待った!ちょっと待った!またかよおぉーーーーー!」
しかも、先程の様な失敗をしない様、累の体が元通り再生する前に頭部を斬った。
「ヒノカミ神楽、碧羅の天!」
累の頭部は真っ二つとなり、黒い火花が累の頭部を内から焼いて消滅させた。
「どうやらあの娘、片目だけとは言え十二鬼月を倒しちゃったよ」
冥冥の軽口に反し、七海は素直に喜べなかった。
(黒閃まで!?やはり成長速度が予定より早い)
ここで遂に疲労困憊になったのか炭治郎が膝をついた。
「大丈夫か?竈門さん」
炭治郎は既に目玉グルグル状態である。
「さ、流石にちょっと、疲れましたぁー」
(ちょっとどころじゃない。さっき消し飛んだ十二鬼月の言い分が正しければ、彼女は既に虚式『茈』を2回以上発動させている)
と、その時、
「一旦引くぞ!奴は化物だ!」
善逸達が慌ててやって来て、炭治郎を含めた呪術師達に逃走を促そうとする。
「何を言ってるの?こっちは十二鬼月を2匹……」
釘崎の訴えは、善逸達を追って来たあの幼女鬼を見た炭治郎の驚きと狼狽にかき消された。
「アレは!あの時の強い鬼!」
そこに七海が絶望的な補足を付け加えた。
「しかも、彼女は1級呪詛師。1級呪霊を上回る強敵です」
その幼女鬼が、粟坂を|殺られた怒りから殺気だっている。
「どけ!炭治郎!そこの大罪|非術師は……」
が、幼女鬼は突然目がハートになりながら後ろを振り向き、そのまま捨て台詞を吐きながら走り去った。
「|非術師共!今日の所は見逃して差し上げます!精々、|非術師が呪術師を殺したと言う許されざる大罪を後悔しながら残り僅かな余生を楽しみなさい!」
「……は?」
幼女鬼の予想外の行動を見て、口をあんぐりと開けて、声にならない声を発する炭治郎であった。
危機が去った事を確認すると、善逸は安心したかの様に饒舌となった。
「いやぁー。あの女、化物だったわぁー。口から火を吐くし火から二丁拳銃を取り出すしで、あのまま戦っていたら確実に全滅してたわ」
「……でしょうね」
七海のこの言葉に善逸が愕然とする。
「……え?」
「何か?」
七海はいたって真面目に答えている。
それが善逸を更に困惑させる。
「いやいや、こう言うのって普通、『お前達の未熟さを棚に―――」
「あの鬼はただの鬼ではありません。もはやアレは1級呪詛師。下手な十二鬼月や1級呪霊より厄介な強敵です」
七海の口からは例の幼女鬼の危険性ばかりで、善逸の未熟さへの指摘そのものは一向に行わなかった。
「待てって、こういう『相手が悪過ぎる』発言は、絶対に成長の妨げになるから―――」
「その時点で、私はあなた方が例の1級呪詛師を見縊っていると、判断しますが」
『お前が未熟だから悪いんだろ!』すら言って貰えない程の圧倒的な差を突き付けられ、反論出来ずに口をあんぐりと開ける善逸。
それを観ていた時透は冷静に大切な質問をする。
「そんな事より」
「そんな事って……」
「秋場雪賀はどこに隠した?」
時透にとっては『善逸の勝利』は、目的ではない。
大事なのは雪賀の無事である。
それについて、憂憂の答えは、
「大丈夫ですよ。雪賀へのおしおきを兼ねて物凄く安全な場所に飛ばしましたから」
その答えに時透は困惑した。
「……おしおき?」
当の秋場雪賀は、夜蛾正道の眼前で正座させられていた。
「……」
「……」
長い沈黙の中、雪賀が汗だくとなる。
「……雪賀さん?」
「ヒッ!?」
突然口を開いた夜蛾に驚く雪賀であった。
秋場雪賀を死守すれば良いだけで、善逸が無理して勝利する必要は無い……
とは言っても、敵の圧倒的な力に屈して秋場雪賀をなすがままにされては護衛の意味が無い。
だから、時透は決断する。
「……呪術高専の皆さんがそこまで言うのであれば、最早可哀想なんて甘えは、言えないね」
その途端、後藤がかつての苦痛を思い出して仰天した。
「ちょ!?まさか……また北極点でサバイバルとか言わないでしょうね……」
時透は後藤をチラッと見てから答えた。
「今はそんな時間が無い」
「……助かったぁー……」
後藤の喜びの溜息を見て、善逸が愕然とする。
「後藤先輩……悔しくないの?」
そう言ったものを無視して話を進める時透。
「こうなったら……あいつらから日輪刀を貰い受ける!」
その言葉に驚く炭治郎。
「え!?実在するの!?鬼殺隊が!」
その途端、残念そうに呟く時透。
「……そいつら、戦力としては期待出来ない。ただ、幸いな事に日輪刀の作り方を知ってる。今の奴らは、それだけの存在だ」
原作との相違点
●累
・令和7年まで生存。
・最近無限城に呼ばれていない事について寧ろ好都合だと考えていたが、零余子の説得を受けて漸く事の重大さを理解した。
・竈門炭治郎を打ち倒すために零余子と手を組んだ筈だが、粟坂二良と違って自分勝手に動く。
・最期は、黒閃付きのヒノカミ神楽で頭部を割られて消滅。
●零余子
・令和7年まで生存。
・竈門炭治郎をおびき寄せるべくナイトプールの更衣室で盗撮騒ぎを起こしていた。
・竈門炭治郎を打ち倒すために累と手を組んだ。
・最近無限城に呼んで貰えない事に内心焦っていた。
・植物を操り植物武器を作り出す。
・『まったく最近の探偵ときたら』における『スクープおじさん』に相当する人物。
・最期は、虚式「茈」の直撃を受けて消滅。
第21.5笑:むじゅさんぽ集④
●本作の零余子について
飛影
「お前、『もしも竈門炭治郎が五条悟だったら』では植物を武器化させるそうだな」
零余子
「はいそうです」
飛影
「それ、幽☆遊☆白書の蔵馬のパクリではないのか?」
零余子
「う……し、仕方ないだろ!原作では捨て駒扱いすらして貰えずに早々と粛清されたんだから」
飛影
「何故そうなる?鬼舞辻󠄀無惨は馬鹿なのか?」
零余子
「そう言う言い方はやめろって!無惨様に殺されるぞ!」
飛影
「まあ、零余子は植物の栄養繁殖器官の一つで、わき芽が養分を貯え肥大化した部分の事だと、蔵馬が言っていたしな」
零余子
「そうなの?」
飛影
「と言うか、俺が気になるのはパクリそのモノではない。蔵馬の技をパクっておきながら何で貴様はここまで弱いのかだ」
零余子
「う!?……それはぁー……そのですねぇー……」
飛影
「アニメ版で貴様を演じたのが、八神はやて(魔法少女リリカルなのは)や遠坂凛(Fate/stay night)でお馴染みの植田佳奈だと言うのに」
零余子
「いやあ……照れるなぁ。ははは」
飛影
「いや、褒めてない。出演時間はさっきの2人の方が圧倒的に永いぞ」
●鬼滅の刃の声優事情④
神々廻
「そう言えば……アニメ版で大佛を演じてたのは、早見沙織やったなぁ」
大佛
「神々廻さん、それ、鬼滅の刃に関係ある?」
神々廻
「おおありや。早見沙織はな、鬼滅の刃では胡蝶しのぶを演じてたし、呪術廻戦では伏黒津美紀を演じてたし、今はSPY×FAMILYでヨル・フォージャーを演じとるんやで」
大佛
「早見さんって、殺し屋の役ばっかしてるね」
伏黒恵
「津美紀は違うから。殺し屋じゃないから」
大佛
「でも、津美紀の正体は|万なんだよね」
伏黒恵
「津美紀は違うから。津美紀と|万は別人だから」
神々廻
「そうやで。|万は津美紀の正体やのうて、|万が津美紀の体を占拠しとるんやで」
伏黒恵
「ぐ!……言い返せない!……|万め!」
大佛
「それより神々廻さん、私を含めたこの4人が戦ったら、誰が勝つと思う?」
神々廻
「何で戦わなあかんねん」
伏黒恵
「津美紀は違うから。津美紀は戦わないから」
大佛
「でも、津美紀は|万なんでしょ」
伏黒恵
「津美紀は違……もし|万の声が早見沙織だったら絶対に泣く!」
姉蜘蛛
「因みに、サイコ蝶は剣士に見せかけた毒使いなんで、大佛さん、気をつけてくださいね!」
神々廻
「いらんこと言うな」
姉蜘蛛
「様子見なんかせずに一気に攻めるのが、サイコ蝶攻略の鍵ではないかと私は思っております!」
大佛
「貴女、そのサイコ蝶に何をされたの?」
神々廻
「と言うか、名前間違っとるでえ。サイコ蝶やのうで胡蝶やで」
姉蜘蛛
「失礼、はしゃぎ過ぎまみた」
●鬼滅の刃の声優事情⑤
南雲与市
「因みに、アニメ版でこの僕を演じてたは花江夏樹なんだよぉー」
ミニマリスト
「嘘を吐くな!お前のどこに|竈門炭治郎要素が有る!?縮めてボールにするぞ!」
南雲与市
「まあ確かに、炭治郎より強化人士5号(機動戦士ガンダム 水星の魔女)の方が似てるってよく言われる。あ、因みに強化人士5号も花江夏樹だからねー」
ミニマリスト
「やっぱり|竈門炭治郎要素ゼロじゃねえか!縮めてボールにするぞ!」
竈門炭治郎(?)
「命をもって、罪を償え!」
ミニマリスト
「ぬお!?」
南雲与市
「僕でしたぁー♪」
ミニマリスト
「ふざけるな!お前のどこが|竈門炭治郎なんだよ!縮めてボールにするぞ!」
南雲与市
「さっきからそればっかだね。技数少なっ」
ミニマリスト
「五月蠅い!」
南雲与市
「それより、とりあえず僕は優しいからさ、特別に死に方選ばせてあげるよ。どれで逝きたい?僕的にはね、2番の赫刀が御勧めかな。鬼殺隊のちょっといいトコ見てみたい~♪」
ミニマリスト
「やっぱり貴様は|竈門炭治郎要素ゼロじゃねえか!人の心とか無いんか?」
●コラボの魔力
五条悟
「SAKAMOTO DAYSベストバウト決定戦の結果発表、楽しく拝見させて貰ったんだけどさ」
南雲与市
「それ、僕が1位になりましたぁー。楽の奴があまりにもしぶと過ぎたからさ」
五条悟
「おめでとー。おめでとー。はいんだけどさ、何で僕までエントリーしてるの?SAKAMOTO DAYS内の出来事だよね?」
南雲与市
「そこは僕も笑った。SAKAMOTO DAYS内で存在しない記憶発動だよ。ナレーションを務めた殺連職員なんか『自由を履き違えるんじゃない!』って怒ってたよ」
鬼舞辻󠄀無惨
「それこそがコラボの魅力。魔力なのだよ」
五条悟
「は?」
鬼舞辻󠄀無惨
「つまり、どいつもこいつも作品の垣根を超えた夢の戦闘を観たがってるんだよ」
五条悟
「いやいや。だからってルールを勝手に破る理由にはならないでしょ―――」
鬼舞辻󠄀無惨
「実際、私だって観たい!篁VS継国縁壱が」
南雲与市
「無惨様の願望駄々洩れなんだけどねー」
鬼舞辻󠄀無惨
「もしも第2回SAKAMOTO DAYSベストバウト決定戦が始まるのであれば、私は、篁VS継国縁壱と殺連VS鬼殺隊に投票するぞぉー!」
某殺連職員
「ねえよそんなバウト!自由を履き違えるんじゃない!」
第22笑:パワハラ反省会
零余子が企てた竈門炭治郎抹殺計画……もとい、竈門炭治郎が修得した無下限呪術から逃げた姉。
しかし、その代償は大きかった。
「う!?」
そもそも、姉の姿も力も累から貰った借り物に過ぎず、累が死亡するか累の姉と言う役割を辞めるかすると消えてしまう、幻の様な紛い物に過ぎない。
「力が……抜ける!?累の奴……死んだのか?」
姉は本来、極悪な利己主義者で現代的な悪辣さを持つ鬼であり、累の手下の中ではかなり勘も良く狡賢い。
だが、元々力を持たない弱い鬼だった事も有ってか、炭治郎との圧倒的な力の差が『累を見捨てて逃げる』の代償を姉の脳裏から奪い去ってしまったのだ。
「しくじった。しくじった!私だけは今までしくじった事無かったのに!この家族ゴッコを!」
このままでは那田蜘蛛山に移住する前の弱い自分に戻ってしまう事を恐れた姉であったが、那田蜘蛛山で得た力の本来の持ち主である累を|逝った時点で、もうどうする事も出来ない。
現に、鬼の再生力が姉を元の……血鬼術を持たぬ雑魚鬼だった頃の顔に戻そうとしている。
「冗談じゃないわよ!もっと力をよこせ!クソガキ!」
しかも、姉……もとい元姉に近付く足音が元姉の運命を図星を衝きながら嘲笑う。
「鬼の最期はどれも儚い。鬼は死んだ途端、この世に何も残せない。胃袋の中に居る人間達ですら」
元姉は血鬼術で攻撃しようとするが、肝心の強酸性の糸束がいっこうに出ない。
「やはり累の死に気付いていませんでしたか。炭治郎さんの言う通り、累の言う家族愛は紛い物だった様ですね?」
「ぐ!?」
先程1級呪詛師認定された幼女鬼が只ならぬ圧迫感で訊ねる。
「可愛いお姉さん、貴女は何人殺しましたか?」
血鬼術が使えない頃に戻ってしまった事を漸く察した元姉は、
「……5人。でも、命令されて仕方なかったのよ!」
と嘘の涙の演出付きで言いくるめて逃れようとする。
だが、小手先の弁明が効かず、最早面倒になったのか、幼女鬼が元姉の頸を片手で締め上げる。
「頸、頸!頸入ってる!頸入ってる!」
「お姉さんは正しく罰を受けて生まれ変わるのです。そうすれば私達は仲良くなれます。呪術師の命を奪っておいて何の罰もないなら殺された呪術師が報われません。一緒に頑張りましょう。大丈夫!お姉さんは鬼ですから。死んだりしませんし、後遺症も残りません!」
元姉は幼女鬼の危険性に気付いて身の丈に合わぬ逆上をしてしまう。
「頸入ってるって言ってんだろ!死ね、糞女!」
「それは……貴女の仕事じゃない」
「え?」
その直後、幼女鬼はまるで落とし穴に落ちるかの様に襖の中に消え、元姉もそれに巻き込まれた。
完全に本来の姿に戻った元姉が目を覚ます。
「ここは……」
と言いかけて……目の前の光景に圧倒された。上下左右や重力の概念が無茶苦茶な広大過ぎる城内だからだ。
「なんなんだ!?なんなんだ!なんなんだここは!」
元姉が慌てて走るが、そもそも出口どころか入口すら解らない状態では完全に無意味である。
しかも、琵琶の音色が響く度に元姉は強制的に瞬間移動をさせられた。
「ダメだ……出られない!なんなんだ!?……ここは!」
更にダメ押しとして、先程の幼女鬼とは比べ物にならない程の殺意を内蔵した視線が元姉を精神的に圧迫する。
「|頭を垂れて|蹲え。平服せよ」
無惨が命令した途端、元姉は何故か正座させられていた。その隣で、あの幼女鬼が土下座していた。
「……え?」
その途端、無惨の異様に長いパンチが元姉の頭頂部を少しだけ抉った。
「あっ、あっ……」
「正坐で足りると思ったか?実る程なんとやらだ。余程頭が軽いと見える」
(息……息……息……息息息息息!息、して良いんだよね?殺されないよね?)
元姉は既に汗だくである。
しかし、そんな元姉の淡い期待は早々と砕かれた。
「累が殺された。下弦の伍だ」
(無理無理無理無理無理!累を失った私に―――)
「何が無理だ?言ってみろ」
思考を読まれてしまい、元姉は更に追い詰められる。
(何でこんな事に……殺されるの……せっかく累の家族ゴッコに付き合うだけで生き永らえる立ち位置に成れたのに―――)
「十二鬼月に数えられたからと言ってそこで終わりではない。そこから始まりだ。より人を喰らい、より強くなり、私の役に立つ為の始まり」
(嫌だ!嫌だ!嫌嫌嫌嫌嫌!死にたくない……死にたくない……死にたくなぁーーーーーい!)
元姉は無惨の前から全速力で逃亡を図る。
それを幼女鬼は嘲笑う。
「バカだねぇー」
(何とか逃げ切れ!何とか!)
気付けば無惨に頸をもぎ取られていた。
「……え?」
無惨が元姉の頭部を無造作に捨てると、元姉は自分の身体の異変に漸く気付いた。
「何で?……何で体が……元に戻らない!?」
「最期に何か言い残す事は?」
と遠回しに死刑宣告を言い渡される元姉。
だが、この期に及んでもなお、他人が悪いかの様な事を言ってしまう。
「竈門さえ……竈門炭治郎さえいなければ!零余子の馬鹿女が藪蛇なんかしなければぁーーーーー!」
「私よりも鬼狩りの方が怖いか?」
その言い訳を『敵前逃亡』と見做され、元姉の頭部に、無惨の蹴りがめり込んだ。
元姉はサッカーボールの様に宙を飛んだ……
そして、無惨は幼女鬼にも遠回しに死刑宣告を言い渡す。
「最期に何か言い残す事は?」
対する幼女鬼は静かに粛清免除を願い出た。
「私はまだお役に立てます。もう少しだけ、ご猶予を頂けるのであれば、必ずお役に―――」
「具体的にどれ程の猶予を?お前はどの様な役に立てる?今のお前の力でどれ程の事が出来る?」
無惨の食い気味な問いに対し、幼女鬼はある者を指名した。
「半天狗を……半天狗を殺させて頂ければ、私は必ず、より強力な鬼となり、戦います」
幼女鬼の予想外の指図に興味を示す無惨。
「入れ替わりの血戦を申し込むか?半天狗に」
「もし、この私が半天狗より弱いと判断為されるのであれば、私の人生はそこまで。その時は、遠慮無く」
そんな粛清から逃れる為の死闘に挑む幼女鬼の弁明を、無惨は受け入れた。
「そもそもな話、私が殺すも半天狗が殺すも同じ事。鳴女!半天狗を連れて来い」
琵琶の音が木霊した途端、半天狗が幼女鬼の眼前に出現した。
が、一見すると額に大きなコブと二本の角がある臆病そうな老人にしか見えない。
「ヒィイイイ!無惨様、これは一体どう言う事でぇー?」
「そこにいる累を見殺しにした役立たずが、貴様に入れ替わりの血戦を申し込むそうだ。だから、貴様がそいつを殺せ」
「ヒィイイイ!かしこまりまし、た!?」
幼女鬼が発射した複数の銃弾が、半天狗の身体を何度も貫通した。
「いくらなんでも遅過ぎます。無惨は既に『よーいドン』と言いました」
しかも、幼女鬼の血鬼術に操られた複数の銃弾(実際は弾道を操っている)が何度もUターンして半天狗の身体を何度も貫通する。
だが、無惨はまだ半天狗の敗北を認めない。
粉々にされた半天狗の身体が、各個バラバラに再生し始めたからだ。
「……数で圧し切る戦法ですか?上弦にしては拍子抜け……」
が、4人に分離した半天狗の姿は、先程の臆病な老人とは比べ物にならない程若々しかった。
「何をしているんだ馬鹿者が!」
「即死できぬというのは哀しいのう」
「震えるがいい!歓喜の血飛沫をもっと上げてみせろ!」
「楽しそうだのう!儂も仲間に入れてくれ」
幼女鬼は改めて半天狗が十二鬼月に任命された理由を理解する。
「……なるほど……これは確かに厄介です、ね!?」
十文字槍が幼女鬼の左腕を斬り飛ばす。
(速い!?)
だが、幼女鬼は臆する事無く周囲を炎上させ、更に火炎をを吹き付けて左腕を再生させる時間を稼ぐ。
(腐ってもと言う訳ね。でも、こっちも負ける訳にはいかない!)
半天狗は、本体含めて最大6体までの分身を作る血鬼術を使用する。
空を自在に飛び音波攻撃を放つ『空喜』。
錫杖から電撃を繰出す『積怒』。
三叉槍の使い手の『哀絶』。
羽団扇で突風を起こす『可楽』。
そして、いずこかへ隠れた本体とまだ姿を現していない分身体。
本体を見つけださないかぎり、理不尽な多対1の消耗戦を強いるこの鬼の単独討伐は困難を極めるだろう。
「カカカッ、喜ばしいのう。分かれるのは久方振りじゃ」
「おおおお、これは楽しい面白い。初めて食らった感触の攻撃だ」
「何も楽しくはない、儂はただひたすら腹立たしい」
「哀しい程熱い……」
4体の分身体の性格が別々なので、喋られると意外と五月蠅い。
夏油から与えられた任務の遂行に尽力したい幼女鬼にとっては只々イライラさせるだけであり、半天狗戦最大の難敵は自分の忍耐力ではないかと疑う程であった。
「五月蠅いです。静かにしてください」
幼女鬼がダブルサブマシンガンを乱射するが、4体とも軽々と回避する。
特に飛行能力を持つ空喜は、まるで弄ぶ様に幼女鬼の真上を取る。
「真面目に|殺らぬか!空喜!」
積怒の怒号もなんのその。空喜はただ真上から爪で幼女鬼を引っ掻くのみだ。
「どうだ俺の爪は?この速度切れ味!金剛石をも砕く威力だ」
積怒が空喜の油断・慢心に舌打ちする中、哀絶が再び幼女鬼に十文字槍を向けた。
「血鬼術、激涙刺突」
5つの衝撃波が幼女鬼を襲い、幼女鬼の四肢を斬り落としてしまう。
「無駄にしぶといのは、哀しいのう」
「でかした!哀絶!」
積怒がここぞとばかりに錫杖から電撃を放って幼女鬼の動きを封じた。
「可楽!」
可楽が羽団扇を扇いだ途端、幼女鬼の身体が吹っ飛んで太い柱に激突し、床へ叩き付けられた。
「やったか!?」
積怒が期待しながら叫ぶが、煙が多過ぎて幼女鬼の姿が見えない。
「ええい!鬱陶しい煙じゃ!可楽!もう1度じゃ!」
だが、四肢を失った筈の幼女鬼が再びダブルサブマシンガンを乱射する。
「何!?十二鬼月ではない筈の者の再生が、何故こんなにも早い!?」
そう。煙の中から出て来たのは、四肢が元通りとなった幼女鬼であった。
「反転術式……本来は負のエネルギーである呪力を掛け合わせて正のエネルギーを生み出して治療に活かす高等呪術。最低出力は順転の2倍。今の私では、自分を治療するのが限界ですがね」
積怒は舌打ちをしながら言い放った。
「クソガキが!」
原作との相違点
●姉蜘蛛
・令和7年まで生存。
・ナイトプール襲撃計画では秋場雪賀やナイト・エージェンシー(『スパイガール!』参照)の足止めを任されていたが、粟坂二良と違って自分勝手に動く。
・累を見殺しにして逃げた罪で無限城に連行され、鬼舞辻無惨に粛清された。
●半天狗
・令和7年まで生存。
第23笑:炎凝呪法VS半天狗
夏油一派に呪術師としての才を認められた幼女鬼と上弦の肆である半天狗との長き死闘は熾烈を極めた。
が、幼女鬼は半天狗を護る4体の分身体の各々の特徴が大分視えてきた。
「如何した如何した!そんな豆鉄砲では俺達は殺せねえぜ?」
「遊ぶなぁー!」
「何か、飽きてきたな」
「殺してから言えぇー!」
と、こんな感じで空喜と可楽は遊びが過ぎて油断・慢心から来る隙が多いので危険度はお世辞にも高いとは言い難い。
特に可楽は飽きっぽいので空喜と比べたらそんなにしつこくない。
寧ろ、
「哀しい。永過ぎて哀しい」
「ならばそ奴を殺せ!そうすれば直ぐに終わるわ!」
哀絶と積怒は神経質に怒っている上に怒号も多いが冷静沈着。空喜や可楽と比べたら隙が無い。
特に積怒は司令塔的な役目を果たしている。
(ならば!)
幼女鬼は炎凝呪法で構築したダブルサブマシンガンを出鱈目に乱射……
「どこを狙っておる?俺はここだぜ?」
に見せかけて血鬼術で弾道を操り、厄介な哀絶と積怒を集中攻撃した。
「何で儂なのだ?哀し過ぎる」
「貴様ら!儂より弱いと思われてるではないか!腹立たしい!」
「実際そうでしょ?特にあの鳥さん、弱いもん」
本来内気で内向的な幼女鬼ではあるが、ここはあえて空喜と可楽の隙を更に助長するべく、挑発的にニヤリとした。
それに敏感に反応してしまったのが、積怒であった。
「舐めるなよ小童が!その分不相応な腹立たしい笑顔ごと飲み込んでくれるわー!」
積怒が再び錫杖から雷を発射する。
だが、寧ろ幼女鬼のニヤリは更に悪辣なモノとなった。
「先ずは1人目」
構築したサブマシンガンの発射モードを単発に切り替え、銃弾に大量の呪力を籠める。
「近付き過ぎだ!腹立たし……」
幼女鬼から離れようとバックステップをする積怒であったが、時すでに遅し。
幼女鬼が発射したチャージショットは、積怒に命中した途端黒い火花となって消滅し、積怒の腹部を吹き飛ばして上半身を床に転がした。
「な……何いぃー!?」
つまり、幼女鬼は黒閃を成し遂げたのである。
無論、ゾーンに入った幼女鬼の猛攻はこれだけでは終わらない。
背後から槍を突き刺そうとしていた哀絶にも、先程のチャージショットを打ち込み、その銃弾は哀絶に命中した途端に黒い火花と化して消滅した。
「か……哀しい……哀し過ぎる……」
チャージショットが本来なら狙って出せない筈の『黒閃』と成ったのは、幼女鬼にとっては幸運だった。
「後は……楽な方が、残りましたね?」
その時、幼女鬼は異様な気配を感じてそちらに目が向く。
そこにいたのは、あの老人鬼である。
「アレが……半天狗の本体!?」
半天狗(?)は慌てて逃げる。
「ひぃぃいぃい!弱いものいじめをするなァァァァァ!」
が、当然幼女鬼は逃がさない。
諄い様だが本来なら藤襲山に連行・監禁された雑魚鬼として一生を終える筈だった幼女鬼は、夏油一派の導きによって呪術師としての才能に目覚め、火を顕現・放出させて物質を構築する『炎凝呪法』を得て1級呪術師相当の実力者へと成長した。
その後は藤襲山から自分を救い出した夏油一派への恩に報いるべく炎凝呪法に向き合い、構築出来る道具の種類を徐々に増やしていった。
幼女鬼の背後に現れた炎がパーソナルジェットパックへと変形し、幼女鬼を宙に浮かべた。
それを観た半天狗(?)が驚き慌てる。
「何じゃそれはァァァァァ!?卑怯とは思わんのかァァァァア!」
そんな半天狗(?)の耳に、幼女鬼の冷たい声が響く。
「嘘を言わないで下さい!上弦と言う事は、私の様ないつも空腹に苦しむ鬼が羨ましがる程人間を食べてますよね?」
「お前はああ、儂がああああ、可哀相だと思わんのかァァァァア!」
叫びながら逃げ回る半天狗(?)をパーソナルジェットパックを使って追撃する幼女鬼であったが、
「何なのこの人!?判断が早過ぎます!どんだけ逃げ慣れてるんですか!?」
半天狗(?)の逃げ足の速さに舌を巻きながら焦る幼女鬼。
(早く本体を倒さないと……例の4体の分身の内の厄介な2人が復活してしまう!その前に!)
幼女鬼の予想通り、チャージショットによる黒閃を受けて2つに割れた積怒が復活しつつあった。
しかも、その再生は他の鬼とはどこか違っていた……
と言うか……何故か攻撃されてない筈の空喜と可楽が徐々に塵となって消滅しかけていた。
「なんだよ!もうおおおおおお!股かよおおおおおお!」
「ちょっと股!ちょっと股!儂もかよおおおおおお!」
塵と化した空喜と可楽を吸収した積怒の上半身が、積怒とは別の鬼へと豹変した。
「不快、不愉快、極まれり」
その途端、木で出来た龍が次々と幼女鬼を襲い、パーソナルジェットパックを破壊してしまう。
「極悪人共めが」
「え?……復活したの1人だけ?しかも、姿が大分変ってない?」
幼女鬼が積怒の変異に驚くその隙に、半天狗(?)が先程の木龍の中へと逃げ込んでしまった。
「あ!?待って!」
「停まれ、極悪人」
異形積怒の言葉に違和感を感じる幼女鬼。
「悪人?敵の間違いでは?」
「貴様は敵であり極悪人だ。『弱き者』をいたぶるからよ」
冗談はいい加減にしろと言いたげに、幼女鬼は声を尖らせた。
「や、半天狗は上弦の肆ですよね。これ、下剋上なんで……!あの、階級的に言うと―――」
「先程貴様は、手の平に乗る様な『小さく弱き者』を撃とうとした。のう?」
異形積怒は幼女鬼が言おうとした正論に耳を貸す気は、最初から無かった。
でも、藤襲山に連行・監禁され、臆病で内向的な性格も災いして永き空腹を味わわされた幼女鬼は、上弦のくせに自分勝手な言い訳が多い半天狗に色々と言いたくなる。
「ち……『小さく弱き者』おぉーーーーー!?上弦のくせにふざけた嘘を言わないでください!」
故に……幼女鬼は気付かなかった。異形積怒が言ってしまった致命的なミスに。
「黙れあばずれが。儂のする事に何か不満でもあるのか?のう、悪人共めら」
異形積怒が背中の連鼓を叩くと、木龍達が再び動き出した。
幼女鬼が慌ててダブルサブマシンガンを乱射するが、木龍達は怯まずものともしない。
「く!」
木龍達の噛みつきをどうにか躱した幼女鬼であったが、木龍は口から雷や超音波を発射する。
(コイツ、長距離もいけるクチか!)
思考の中で、幼女鬼は歯噛みした。夏油と言う存在を間近に見ていた筈だが、実際に相対して初めて解る『上弦』と言う壁。隙が見えない。
しかも、もう1人の厄介者である哀絶が未だに復活しない……
もしかすると、哀絶も異形積怒に吸収された可能性も有り得る。
だが泣き言を言ってる場合じゃない。幼女鬼は跳ね起きると、飛び掛かって来る木龍達に対し、ダブルサブマシンガンを打ち込む。
無論、ただで受ける異形積怒改め『憎珀天』ではない。連鼓を叩く事で木龍が再び幼女鬼に飛び掛かる。
大きな質量が床に叩き付けられ、木屑か飛び散る。
すぐさま幼女鬼に反撃を行おうとする憎珀天。
しかし、木龍達が破壊した床の破片が、火に包まれながら膨れ上がっている。
幼女鬼が炎凝呪法で周囲に飛び散る木屑を燃やして誘導弾へと作り変えたのだ。
「いけ!」
幼女鬼が命じると、多数の誘導弾が一斉に憎珀天に襲い掛かる。
対する憎珀天は連鼓を叩いて木龍達に誘導弾を落とさせようとするが、誘導弾は木龍達の噛みつき・体当たり・雷・超音波を全て躱して憎珀天へと向かって往く。
しかし、憎珀天が口から超音波を発射して誘導弾を幾つか撃ち落とした……
様に見えるが、落とされなかった残りの誘導弾は憎珀天を無視して急上昇。
「しまった!貴様ぁー!」
幼女鬼の狙いが半天狗の本体だと気付いた時、木龍達が一斉に炎上した。
「な!?何故!?」
想定外連続にあたふたする憎珀天。
それを見越して幼女鬼が指を鳴らすと、今まで撃った銃弾が一斉に火へと姿を変えた。
「何!?」
これが幼女鬼が使う炎凝呪法の真骨頂。
炎凝呪法を使って物体を構築する事も可能だが、逆に構築した物体を火に戻す事も可能なのだ。
憎珀天が最初に出した木龍達も炎凝呪法で構築したダブルサブマシンガンの銃撃を浴びる程受けて胴体に何発か残ってしまっていた。
それを火に戻す事で木龍を焼き尽くそうとしたのだ。
しかも、
「ぎやゃあぁーーーーー!」
本体(?)である半天狗(?)がその炎に耐え切れずに木龍から飛び出してしまったのだ。
「しまった!駄目だ!」
当然、憎珀天が落とし損ねた誘導弾が一斉に半天狗(?)を襲う。
「ひぃぃいぃい!」
半天狗(?)は直ぐに逃走するが、誘導弾はしつこく追いかける。
「おのれ!」
見かねた憎珀天が半天狗(?)を庇いに行こうとするが、
「させません!」
幼女鬼が放った銃弾が憎珀天の進路を阻む。
「……貴様……最早鬼畜の所業」
憎珀天が連鼓を叩くと、先程とは細長い木龍が幼女鬼を縛り上げる。
「あばずれが。今までの悪行の数々、死をもって詫びろ」
憎珀天が必死に連鼓を高速で交互に打ち続けた。
「血鬼術、無間業樹」
その途端、大量の木龍が広範囲を埋め尽くそうとする。
しかも、
「無間業樹……雷鳴風刺!」
その内に8本が、積怒の雷、可楽の風、空喜の超音波、哀絶の激涙刺突を2本ずつ放つ。
だが……焦っていたのか憎珀天は位置取りを間違えた。
「滅びよ……あ!」
渾身の雷鳴風刺が幼女鬼だけでなく、肝心の半天狗(?)にまで命中してしまったのだ。
雷鳴風刺が発生させた爆風に耐え切れずに吹っ飛ぶ半天狗(?)。
「のおぉーーーーー!?」
「しまった!なんて事を……」
しかも、
「いやぁー、今のは凄かったですねぇー。まともに食らっていたら、私が木っ端微塵になるところでした」
そう、細長い木龍が締上げた幼女鬼は炎凝呪法で構築した偽物。
半天狗の分身体に着想を得て、幼女鬼が土壇場で構築を試みたのである。
「な!?」
憎珀天が反撃をしようとするが、幼女鬼は既に銃弾に大量の呪力を籠めていた。
「これで……後は本体のみ」
幼女鬼が放った2発のチャージショットは、憎珀天に命中した途端、憎珀天の3分の2を巻き込みながら黒い火花となって消滅した。
黒閃が必ず鬼の敵となるとは限らない。黒い火花は微笑む相手を選ばない。
結局この戦い、全てにおいて上手をとったのは幼女鬼だった。
原作との相違点
●銃鬼
・本作オリジナルキャラクター。
・最終選別用に生け捕られて藤襲山に囚われた幼女の鬼だったが、竈門炭治郎の観察を目論む夏油一派の策略によって稀血を有する非術師10人と禪院真依・禪院扇の脳を食わされ、1級呪術師に匹敵する呪詛師として覚醒した。
・弾道や軌道などの『動き』を操る血鬼術と炎凝呪法を開花させており、銃などの武器に呪力を籠めて打ち出し、高威力のチャージショットを発射する事も可能。
・引っ込み思案で内向的傾向を有するものの、自分を藤襲山から救い出してくれた夏油一派に奉公するべく鬼特有の傲慢・凶暴に徹しようとする健気な一面も持っている。
・黒閃経験有り。
第24笑:上弦の肆、炎菓
分身体の最高戦力である憎珀天まで失った半天狗(?)に残されたのは、逃げの一手のみ。
(あ……相性が悪過ぎるーーーーー!)
だが、幼女鬼が発射した誘導弾はしつこく半天狗(?)を追い回す。
「ヒィィ!」
(斬られれば分裂出来るものを、燃やされてしまっては分裂出来ぬ!憎珀天の|石竜子も燃やされてしまった!)
そうこうしている内に、半天狗(?)を追尾していた誘導弾が次々と床に命中して爆発し、半天狗(?)が宙に投げ出されて幼女鬼がそれを待ち構える。
「あっ……あぁ……」
「お待ちしておりました」
半天狗(?)は咄嗟に幼女鬼の顔に掴みかかって握り潰そうとする。
「弱い者いじめをォォォ……するなああああ!」
だが、幼女鬼が持つサブマシンガンはいつの間にかグレネードピストルへと姿を変えていた。
「てめえの理屈は全部糞です。ボケ野郎さん」
グレネードピストルから放たれた擲弾は、半天狗(?)の腹に命中して爆発し、黒い火花を撒き散らした。
「ふぅー……これで勝、った!?」
幼女鬼は漸く自分の重大な失態に気付いた。
半天狗(?)の舌に刻まれている文字は『恨』、だが半天狗本体の舌には『怯』の字。
つまり、この鬼は|影武者なのだ。
「どこに隠れた……」
だから幼女鬼は気付けなかった。
恨の鬼の心臓の中に隠れた、豆粒の様に小さい半天狗本体を。
幼女鬼が気配に気付くより早く半天狗は動いた。と言っても逃げの一手のみである。
しかも半天狗本体の全速力は先程の恨の鬼より速かった。
「ふざけないで頂きたい!小賢しいですね!忿懣が溜まります!」
だが、幼女鬼にとって幸いだったのが、乱射した銃弾が床や柱などに多数突き刺さっている事。
それを火に戻せば……
「ぎゃあぁーーーーー!?」
半天狗本体の逃亡を阻む炎の壁となる。
「つーかまーえた♪」
そして、幼女鬼は半天狗本体を火達磨にしながら右手で握り潰した。
「うわあぁーーーーー!」
その瞬間、半天狗の脳裏に1人の男の言葉がフラッシュバックする。
「貴様のした事は、他の誰でもない貴様が責任を取れ。この二枚舌の大嘘吐きめ」
(これってまさか……)
「旦那様は知らぬふりをしてくださっているが、私が許せぬ。これから奉行所へ行く」
1人の男性がとある盲人から盗みを咎められ、奉行所へ告発しようとする彼を口封じに殺害。
しかし結局奉行所へ送られ、そこで裁きを受ける事となる。
「別の町でも貴様は盗みと殺しを繰り返していた様だな?同情の余地も無し」
町奉行の薄情な一言に男性は反論する。
「滅相もない、儂には無理でございます。この様に目も……」
男性は自分の弱さを晒した心算だった。
が、町奉行は培った観察力でそれが嘘だと看破した。
「貴様は目が見えているだろう?以前この白洲の場へ来た|按摩は、私が話し始めるまで塀の方を向いていたぞ」
「ぐっ!?」
最早言い逃れが出来ない状況下で、男性は更に見苦しく言い逃れをする。
「儂が悪いのではない!この手が悪いのだ。この手が勝手……」
「手が悪いと申すか!?ならばその両腕を斬り落とす!」
食い気味に町奉行が答え、男性は面食らった様な顔をした。
「……え?」
当然両手を落とすくらいで済まされる筈もなく、男性は打ち首を言い渡された。
ところがその日の晩……
「明日打ち首とは可哀想に 私が助けてやろう」
たまたま居合わせた鬼舞辻無惨の手によって男性は鬼となり、報復の為に奉行の寝込みを襲った。
対する町奉行は手にした刀で応戦するも敵わず、それでも最期まで臆する事無く、
「貴様がなんと言い逃れようと事実は変わらぬ。口封じしたところで無駄だ。その薄汚い命をもって罪を償う時が必ず来る」
町奉行が最期にした事は、毅然とした糾弾であった。
そして時は令和7年。
(まさかこれ……走馬灯かあぁーーーーー!?)
己の悪行を突きつけるかの如き走馬灯を見た半天狗は、己の責任から逃げ続けてきた卑劣さごと断罪の呪炎に焼かれ、その罪の報いを受ける事となった。
「ぎゃあぁーーーーー!」
灰と化した半天狗を捨てる幼女鬼であったが、散々苦戦した怒りからかその灰に唾を掛けた。
とにかく、270年を超える年月も被害者を騙りながら罪無き人命を殺め続けた『生まれながらの外道』が遂に死んだのである。
琵琶の音が響くやいなや、幼女鬼は鬼舞辻無惨の目の前に転送された。
「まだ生きていたか」
気付けば、幼女鬼の左右に6人の鬼がまるで上座・下座に別れて並べられている様に並んでいた。
その中には夏油傑の姿もあった。
その6人の鬼全てに共通する特徴として……両目の眼球に数字が刻まれている事。つまり、この者全員が十二鬼月の上位である『上弦』なのだ。
その1人である玉壺は、1つだけポカンと空いている場所が気になった。
「ん?……あれ?半天狗殿はどこに行かれた?」
が、幼女鬼はそれどころではない。
自分が役に立つ事を証明しないと、目の前の無惨に殺されてしまうからだ。
「ご覧いただけましたか?私が半天狗を殺すところを。ですの、で!?」
その直後、幼女鬼の首に何かが刺さった。
その正体は、無惨の触手であった。
「うぁっ…カッカっ…か…ああ…かぁ…ああ…あぁ……」
「気に入った!私の血をふんだんに分けてやろう。ただし、お前は血の量に耐え切れず死ぬかもしれない」
無惨の血を注射の様に流し込まれた幼女鬼は、あまりの激痛にもがき転がる。
「だが、順応出来れば更なる強さを手に入れるだろう」
幼女鬼は何度も立ち上がろうと四つん這いになるが、激痛激しく、何度もうつ伏せになってしまう。
(駄目だ……ダメだ駄目だダメだ駄目だ!死ぬわけには……恩を……返さなきゃ!)
「がっ……がああぁーーーーー!」
幼女鬼の目に劇的な変化が現れた。
左目に『上弦』、右目に『肆』の文字が浮かび上がった。
それを観た無惨が上機嫌で幼女鬼に命じる。
「そして私の役に立て。耳に花札の様な飾りを付けた鬼狩りを殺せば、もっと血を分けてやる」
夏油は幼女鬼の処刑が回避された事に安堵の溜息を吐き、黒死牟はただジッと幼女鬼を直視する。
童磨は呑気に幼女鬼に質問した。
「そうかぁー……肆かぁー……半天狗殿は亡くなられたかぁー……で、そこの君、名前は?」
代わりに答えたのは夏油だった。
「|炎菓……は、如何ですかな?」
「|炎菓か……まあ、それで良かろう」
一方の玉壺、妓夫太郎、堕姫は少し焦っていた。
今まで上弦や十二鬼月どころか、血鬼術にすら達していない鬼殺隊最終選別用に捕らえられて藤襲山に閉じ込められた雑魚鬼が、入れ替わりの血戦に勝利して上弦の肆へと飛び級したのだから。
(この小娘が、わたくしより上だとぉー!?)
特に堕姫は妓夫太郎と結託して漸く上弦の陸なので心中穏やかではない。
(え……私……結構ヤバイ位置にいない?)
幼女鬼改め|炎菓が漸く立ち上がると、琵琶の音色が鳴り響き、夏油と妓夫太郎達の間に座らされた。
炎菓が入れ替わりの血戦を成し遂げて上弦の肆と成ったのを見届けた夏油が無惨に提案する。
「とは言え、最初から炭治郎はきつかろう。慣らし運転は必要だ」
「で、私にどうしろと?」
「実は……『鬼舞辻無惨被害者の会』の拠点が漸く判明してね、その見苦しい残穢の全処分、炎菓に任せてみては如何か?」
そんな夏油の提案に玉壺が困惑する。
「え?言っちゃう?ね、サマーオイル。全部、言っちゃう?しかも、わたくしが掴んだ情報なんですけど」
が、玉壺の困惑は無視され、無惨が玉壺と炎菓に命じた。
「玉壺。情報が確定したら、炎菓と共にそこへ向かえ」
その直後、琵琶の音色が鳴り響き、中空に突然現れた襖が無惨と上弦達を隔てる様に閉まり、無惨の姿は見えなくなった。
それを聴いた玉壺が震え悶えた。
(そんな……わたくしが掴んだ情報なのに……御無体な……でも、そこが良い……)
そんな玉壺の眼前に一瞬で現れた童磨。
「あ」
「玉壺殿、その『鬼舞辻無惨被害者の会』とはどこなのだ?俺も一緒に往きたい」
「いや……それは……」
「教えてくれないか?この通り、だ!?」
突然、童磨がハチの巣と成った。
無惨の血を注射の様に飲まされた激痛から漸く解放された炎菓の散弾銃だった。
「貴方は何も言われていない筈ですよね?なのに何故……」
だが次の瞬間、炎菓の右腕が斬り落とされて床に落ちた。
「炎菓……」
何時の間に来たのか、黒死牟がゆらりと炎菓の右前に立っていた。
「よいよい黒死牟殿。俺は何も気にしていない」
が、黒死牟は童磨の意見を無視して炎菓に説教を垂れる。
「お前の為に言っているのではない…序列の乱れ…ひいては従属関係にヒビが入る事を…憂いでいるのだ…」
それを聞いた童磨が指を鳴らす。
「あー、なるほどね」
それも無視され、黒死牟の炎菓への説教が続く。
「炎菓よ…気に食わないのであれば…再び…入れ替わりの血戦を…挑む事だ」
そんな黒死牟を童磨が宥める。
「まあまあ黒死牟殿。俺はわざと避けなかったんだよ。ちょっとした戯れさ。こう言う風にして仲良くなっていくものだよ。上に立つ者は下の者にそう目くじら立てず、ゆとりを持って―――」
「炎菓…私の…言いたい事は…解ったか?」
対する炎菓はただ一言、
「私は、成し遂げるべき事をするまでです」
「そうか…励む…事だ」
その途端、黒死牟がいきなり消えた。
「さよなら黒死牟殿。さよなら」
その直後、玉壺がこの隙にとばかりに叫んだ。
「わたくしと炎菓を同じ場所に飛ばしてくだされー!」
「待ってくれ!じゃあ俺も……」
童磨の台詞はまたしても無視され、玉壺と炎菓の姿が琵琶の音色が響いた途端に消え、それを合図に夏油が飛び去って行った。
妓夫太郎と堕姫も何時の間にかいなくなっており、ポツンと1人残る童磨。
「おーい!琵琶の君。もし良かったらこの後俺と―――」
「お断りします」
琵琶を持った女性にまで無視される様に童磨の姿も消えた。
「誰も彼もつれないぁー」
原作との相違点
●半天狗
・令和7年まで生存。
・最期は炎菓の炎凝呪法で燃やされ、炎菓に握り潰された。
●半天狗を裁いた奉行
・原作とほぼ同一。
●銃鬼 / |炎菓
・本作オリジナルキャラクター。
・最終選別用に生け捕られて藤襲山に囚われた幼女の鬼だったが、竈門炭治郎の観察を目論む夏油一派の策略によって稀血を有する非術師10人と禪院真依・禪院扇の脳を食わされ、1級呪術師に匹敵する呪詛師として覚醒した。
・弾道や軌道などの『動き』を操る血鬼術と炎凝呪法を開花させており、銃などの武器に呪力を籠めて打ち出し、高威力のチャージショットを発射する事も可能。
・引っ込み思案で内向的傾向を有するものの、自分を藤襲山から救い出してくれた夏油一派に奉公するべく鬼特有の傲慢・凶暴に徹しようとする健気な一面も持っている。
・黒閃経験有り。
・半天狗に入れ替わりの血戦を挑んで勝利し、上弦の肆となった。
・夏油傑に|炎菓と命名された。
第25笑:屈強の無駄遣い
時透無一郎は前回のナイトプール決戦の詳細を鑑み、遂にある場所を訪れる事を決意する。
「と、その前に、乙骨さんには悪いけど、竈門さんにもあの場所に関する話をさせて貰うよ」
憂太はあからさまに嫌そうな顔をする。
「まさかとは思うけど、|君達も炭治郎ちゃんの成長を早める心算か?」
「求めているのは僕じゃない。戦況だよ」
時透の即答に憂太はあんぐりとする。
「鬼達がこんなに早く勢力を回復して秋場雪賀護衛任務に此処まで支障を与えるとなると、もう節約なんて言っていられない。使える武器は全て使わせて貰うよ。非情と罵るのであれば、お好きにどうぞ」
そんな時透に全否定された憂太の師匠心を無視するかの様に炭治郎が質問する。
「はい!」
「はい、竈門さん」
「貴方は鬼殺隊の居場所を知ってますか?」
時透は残念そうにこう答えた。
「正確に言えば残党だよ。既に断絶してしまった豪族『産屋敷家』の後ろ盾すら失い、『鬼舞辻󠄀無惨被害者の会』と名を変え、刀鍛冶の里と呼ばれる山奥の秘境で細々と再編成準備中だよ」
炭治郎は自分の耳を疑いたかったが、時透の体臭から嘘の臭いがしない事と以前戦った鬼の台詞を思い出してしまった事で、それが現実だと思い知った。
「……だとしたら……藤襲山で出遭ったあの鬼の質問と辻褄が合っちゃう」
「藤襲山?鬼殺隊剣士及び隊員となるための最後の試験会場だったあの山に入ったのか?」
「はい。そこで遭った大玉の様な巨大な鬼に、『今年は昭和何年だ?』と訊ねられました」
その途端、善逸は炭治郎の実年齢を疑った。
「昭和!?君が藤襲山に入ったのは、何年前だ?」
「3ヵ月前ですけど」
時透は残念そうにこう呟いた。
「やはりな」
「……時透先輩?やはりって?」
「藤襲山に幽閉された鬼共は、令和どころか平成すら知らない……そう言う事だろ?」
「……多分……きっと……」
炭治郎は自信が無かったが、時透は確信した。
「つまり、年号が平成になる前から新人を藤襲山に放り込む余裕を失った」
時透の口から出る理不尽な現実に対し、善逸は声を荒げる。
「それじゃあ何ですか!?鬼殺隊以外が鬼を斃せと、そう言う事ですか!?」
「残念ながら、現状はそうなる」
「糞!何が鬼殺隊だよ」
「それだけ、罪深いって事だよ。大日本帝国が鬼殺隊に対して行った結果的な妨害が」
善逸は時透に向ける鋭い視線が更に鋭くなったが、それに引き換え、炭治郎はピンとこなかった。
「はい!」
「はい、竈門さん」
「だいにっぽんていこくって何者なんですか?」
炭治郎の質問に唖然とする時透。
「え?……中学校で習わなかった?」
大日本帝国が日本の昔の国名だと説明したうえで、現時点で推測される鬼殺隊編成経緯と弱体化原因を語る時透。
「鬼殺隊は元々、産屋敷家が鬼舞辻󠄀無惨を暗殺する為に結成した私設軍隊だったんだよ。ま、その結果は知っての通りだけど。その理由は産屋敷家断絶に関わる厄介な呪いに有った」
「呪い?」
「誰がどう言う経緯で産屋敷家にあんな非道い呪いをかけたか知らないけど、とにかく、鬼舞辻󠄀無惨が鬼化した辺りから産屋敷家関係者の享年が激減し、享年が30未満の者が続出したんだ。因みに、享年とは死亡した時の年齢の事だよ」
炭治郎も憂太も絶句した。
「30!?」
「僕達の世代から観たら短いな」
「僕もそう思うよ。だからこそ、産屋敷家は鬼舞辻󠄀無惨暗殺に心血を注いだ。金に物を言わせて屈強や聡明を掻き集めて鬼殺隊を結成したんだ。だが……」
「ある時期から産屋敷家は鬼殺隊を存続出来なくなった。そうですよね?」
善逸の質問に時透の言葉が重くなる。
「……その原因こそが、大日本帝国。つまり、昔の日本政府だよ」
今度は炭治郎の声が荒くなる。
「何で日本政府は汚物辻󠄀なんて悪党の味方をしたのよ!」
時透は残念そうにこう答えた。
「……日中戦争と太平洋戦争に、勝つ為さ」
その答えは炭治郎の怒りの炎に油を注いだ。
「戦争に勝ちたいから……たったそれだけの理由でなんの罪も無い人々が鬼に食われるのを、指を銜えて見てたって言うの!」
「そうだ!だから、戦争発生はどんな手を使ってでも絶対阻止だ!」
時透の体臭から何かを感じた炭治郎は、黙って聞き手に徹した。
「元々、産屋敷家は鬼舞辻󠄀無惨と鬼を歴史の闇に葬る為に鬼殺隊に政府非公認組織と言う設定を与えていた。そこら辺の集団暴行が史実に掲載されないみたいな事を狙ったんだろう。結果論的にはそれが失敗だった。鬼殺隊が行っていた鬼狩猟を大日本帝国に無駄な遊びと断じられ、そんな事をしてる暇が有ったら鬼畜米英を成敗しろと言いくるめられ、鬼殺隊が搔き集めた屈強や聡明が次々と旧日本軍が没収した」
「その結果が、本来駆除すべき鬼の野放しと鬼殺隊が鬼の撲滅の為に使う筈だった屈強や聡明がアメリカ人駆除に使われてしまったと?」
「……そうだ。現代風に言えば、国内のアーバンベア被害を無視しながら他国と戦争するだよ。全くもって屈強の無駄遣いだ」
そこへ、善逸が冗談じみた追加説明を加えた。
「しかも、本当に解決すべき問題点を無視しながら本来殺さなくてもいい人命を大量超虐殺とは。しえぇー!嫌だ嫌だ。戦争って本当に野蛮」
「けど、全ての大人がそれを良しとした訳じゃない。大日本帝国はもっと早く降伏するべきだったと考える人も帝国陸軍の中に確かにいたんだ。僕達ナイトにも深く関わる酢堂綱正陸軍少将もその1人だよ。ま、それも日本の為であって鬼殺隊の為じゃないけどね」
「で、その人は実際に何をしたと言うんです?」
「早い段階で日本の敗北を察して早期降伏するべきだと考えていた酢堂少将は、陸軍中野学校生の質を向上させ、国内から日本を戦争が出来ない国に作り変えようと考えたんだ。彼は窪田兼三少佐や畑中健二少佐などの本土決戦賛成派の反対を押し切って帝国陸軍を去り、密かに陸軍中野学校分校を作り反戦主義者を増やす為の工作員を育成して来たんだ。それこそが、僕達ナイト・エージェンシーの前身だよ」
「ナイトって、そんな昔から在ったの!?」
炭治郎がナイト・エージェンシー創設理由と太平洋戦争との因果関係に驚く中、憂太はある者達にとって不都合な矛盾点に気付いて考えこんだ。
「ん?乙骨さん、僕の話に何か違和感でも?」
「いや……一見すると辻褄が合ってる様に聞こえるけど、1つだけ辻褄が合わない部分があるんだよ」
その言葉に善逸が首を傾げた。
「それじゃあ何か?第2次世界大戦以外にも鬼殺隊大破の原因が有るとでも?」
だが、憂太は首を横に振った。
「いや、そうじゃない。太平洋戦争の余波のせいで鬼殺隊が滅びたと言うのであれば―――」
「何で汚物辻󠄀はまだ生きているのか?太平洋戦争の最中の日本が何故鬼を利用しないのか?ですか?」
だが、憂太は首を横に振った。
そこで時透が確信する。
「驚いたよ。君の様な特級呪術師がその言葉を口にするなんて」
それには善逸も納得した。
「つまり、第2次世界大戦のせいで鬼殺隊が大破しちゃったのに、呪術高専は今も平然と建っているのか……そこが気になると?」
「え?」
憂太の疑問は炭治郎にとっては予想外だったが、善逸は「確かに」と思った。
「言われてみればそうだな。鬼より強い兵士や兵器を欲しがっている政府が、呪術と言う強大な力に目が向かないのは不自然だ」
しかも、憂太は自身の疑問の答えを既に持っていた。
「上層部や御三家が伝統や地位を駆使した巧妙な立ち回りで、鬼殺隊や鬼達が味わわされた戦力没収を上手く回避した。そう言う事だろ?」
憂太の発言に怒りが籠る。
それを視て時透が俯く。
「自己保身や権力維持を優先する腐敗政権が生み出した悲劇……僕達ナイトの真の目標、酢堂綱正が目指した反戦浸透はまだまだ道半ばの様だね?」
時透はふと自分のミスに気付く。
「あ。そんな事より、竈門さんに『鬼舞辻󠄀無惨被害者の会』の本部に往く気は無いかを訪ねるのを忘れてた」
時透がそれを思い出してしまった事に憂太は困り果てて頭を抱えた。
「話を現代に戻さないで!まだ早いから!」
「いえ!寧ろ遅いくらいです!」
炭治郎に食い気味に反論され、憂太があんぐりと口を開けて焦った様子を見せた。
「大人達が間違った戦争や権力争いをしたせいで、鬼や呪詛師の被害がどんどん拡大していると言うのであれば、私達子供が修正し改善していくべきです!自分達の子や孫に悪い大人の汚い背中を見せない様に」
それを聴いた時透が憂太の肩を叩いた。
「君の負けだよ?乙骨さん。君は秋場雪賀護衛任務を3年間|務らせて、ゆっくりと竈門さんを育てる心算だったのかい?」
「う……」
「だとしたら、君は現状と竈門さんを舐め過ぎだ。子供の成長は、時に大人の想定を大きく超える時がある。今回は正にそれだよ」
それは良い事なのだが、善逸はある問題点に気付いて困惑する。
「それはそれとして、炭治郎が鬼舞辻󠄀無惨被害者の会に行くとなると、炭治郎が夏休みの間は秋場雪賀護衛任務から離れる事になりますけど?」
「不安かい?」
「不安と言うより、正直言って炭治郎の無下限呪術がメッチャ便利だったんですけど」
時透が少しだけ考え込む。
「……確かに……秋場雪賀暗殺任務=無下限呪術と戦うは丁度良い抑止力になったのは事実だ。サマーが秋場雪賀に12億の懸賞金を賭けた割には呪詛師の集まりが悪いのは、多分それが原因だろう。つまり、無下限呪術を秋場雪賀護衛任務から外したら、ナイトプールで始末した鬼達の様な馬鹿が蛆虫の様に大量に湧くだろうね」
「なら―――」
「だからと言って、黒幕には手を出さずに実行役だけを倒すのは、ただのもぐら叩き、いたちごっこだよ。だから闇バイトや特殊詐欺は亡くならない」
「う……」
善逸が冷静に話を聴く中、反論の余地を失った憂太が困って固まってしまった。
「つまり、結局は炭治郎の鬼舞辻󠄀無惨被害者の会往き決定と」
「で、私はそこで何をしたら良いんですか?」
時透が真顔で答えた。
「鬼を殺せる唯一の武器である日輪刀を手に入れて欲しい。欲言えば、日輪刀の製造方法もだ」
数日後、私立善根高等学校が夏期休暇に入った途端、炭治郎が禰󠄀豆子を連れて鬼舞辻󠄀無惨被害者の会の本拠地である刀鍛冶の里へと向かった。
ただし、時透は1つ心配があった。
(その娘も連れて往く気か?バレたら拙くないか?)
原作との相違点
●鬼殺隊
・日中戦争および太平洋戦争の煽りを受けて人材不足に陥った。
・令和7年時点で『鬼舞辻󠄀無惨被害者の会』として細々と活動しつつ再結成を準備している。
●産屋敷家
・日中戦争および太平洋戦争の煽りを受け、昭和20年頃に断絶。
●刀鍛冶の里
・令和7年時点で『鬼舞辻󠄀無惨被害者の会』の本部として利用されている。
●酢堂綱正
・安永航一郎による日本の漫画作品『陸軍中野予備校』からのゲスト出演。
・ナイト・エージェンシー(『スパイガール!』参照)の前身である陸軍中野予備校の創設者。
・大日本帝国陸軍少将だが隠れ反戦主義者で、降伏の遅れによる戦争被害拡大を憂いでいる。
●陸軍中野予備校
・安永航一郎による日本の漫画作品『陸軍中野予備校』からのゲスト出演。
・ナイト・エージェンシー(『スパイガール!』参照)の前身。
第26笑:玉壺の潜伏盗聴
私はとある芸術家。
名を玉壺。
この見目麗しき厳かなる壺に身を潜めている。
「まあ、なんて美しい壺」
などと油断して近付いて来た人間を襲うのが大得意。
「『鬼舞辻無惨被害者の会』に止めを刺してこい」
と言う上司の命により、今日は、奴らのアジトに潜入し、ヒヨッコの鬼狩り(女子希望)を待ち構える事にした。
……の、だが……
「よ。遊びに来たよー♪」
「お久しゅうございます。|九十九さん」
なんか、ゴッツい女が来た!
……女だよな?こいつ。
思ってたんと違うの来た。
どうせ出涸らし残りカスの様な連中だって聴いていたのに、なんか、やたら強そうなの来た。
しかも何だ?この気配。
これは、サマーオイルが言っていた特級じゃないか……
特級呪術師じゃないかこいつ!?
……凄く楽しそうだな。
しかし好都合!
このまま隠れていれば、特級呪術師ならではの有益な情報を話すかもしれぬ。
ヒョッ♪
それに、この女、ハンガーラックの材料としても好都合だ。
スタンドは仙骨・尾骨を残した寛骨をベースに、加工した大腿骨で安定させる。
背骨は腰椎・胸椎・頸椎まで使う。
長さは……
そうだな……
神代楠が良いな。
ヒヨッコの鬼狩り(女子希望)の背骨を使って交互に入れ込む事で長さを出す。
全体のバランスを見ながら……
棘突起や横突起を延長してラックにする。
これもヒヨッコの鬼狩り(女子希望)の背骨を使って接ぎ木の様にな。
色合い次第では、脳でなめした皮を被せるのも良し。
あの女を殺すのが今から楽しみになってきたぞ。
ヒョッ♪
「―――でさ」
お?危うく聴き逃すところでした。
危ない危ない。
「このあいだ借りたあの本だけど」
本の話か。指南書か?
「君、なかなかいい趣味してるじゃないか」
なんだ趣味の話か。
呪術師の技の詳細などを聴く事が出来るかと思ったのだがなぁー。
「君は、低身長で胸がデカい女が|好み《タイプ》なのかい?」
あ。違うわコレ。
絶対秘術じゃないわ。
と言うか……
「ロリ巨乳はやはり至高ですよ」
何を言っているんだこの仮面男は!?
わ……解らん。
私が芸術に傾倒している間に、世の理が変わったのだろうか?
「で、|尻はどれくらいが良いのよ?」
「いえいえ。私は巨尻より巨乳です」
|仮面男は黙れ!
どんな本を読んでんだこいつは!?
呪術の話をしろ!
呪術高専の話を!
「おや?君が乙骨が言ってた竈門炭治郎かい?」
「貴女は?」
「九十九由基。乙骨憂太と同じ特級呪術師だよ」
お!?ここにきて例の耳飾りの御登場か?
これは良い……
|炎菓とか言う新米より先に奴を斃してしまえば、わたくしの評判も鰻登り―――
「竈門さん。せっかく若い娘なのですから」
げ!貴様は!
「もっとバストを大きくした方が良いですよ。|九十九さんみたいにね」
「ほっといてよ」
|胸好き《きさま》は黙ってろ!余計な話の折り方をするな!噛み殺すぞ!
……いや、アレは不味そうだ。稀血って感じでもなさそうだし……
あの|胸好き《バカ》は鬼にしよう。乳房が3つも有る両性醜女に。
「しかし」
ん?
「どの方もひょっとこのお面を付けた人ばっかですね?顔を隠す理由でもあるのでしょうか?」
どうせあそこの|胸好き《バカ》の様にふざけた妄想をして顔が歪んでおるのであろう。観る価値も無いわ。
「なんでも、刀鍛冶の里の昔からの伝統らしいよ」
「そうなんですか!?てっきり、ここで日輪刀が作られてるって聴いてたんですけど」
「もしかしたら、そのひょっとこのお面が溶接用保護面の様な役割を果たしてたりしてな」
刀鍛冶!?日輪刀!?
それだよそれ!そう言う|情報を聴きたかったのだ!
わたくしはけっして乳だの尻だのアハーンだのの話をしに来た訳ではないのだ!
「それなら、新しく完成したのが幾つかありますが、如何です?」
|胸好き《こいつ》、急に真面目になりおった?
と言うか、|胸好き《きさま》はもう何を言っても引き返せない気がする。
……んー?
でも、あいつらに日輪刀が渡ったら、わたくしがやばい事にならないか?
だとしたら……日輪刀を作っている刀鍛冶は後回しにして、そろそろこいつらを殺すか……
でも、それだと無惨様に仇なす刀鍛冶の行方が判らなくなるし……
これはぁー……タイミングが難しくなってきたぞ。
奴らに日輪刀を触らせたくないが、日輪刀を作っている刀鍛冶も殺したい。
どっちを優先するべきか……
呪術師か刀鍛冶か……
マジでどうしよう……悩む……
もうめんどくせぇから使い魔と一万滑空粘魚を広範囲に一気にぶっ放しちまおうか!
ええい、ままよ!
(……)
「……それより、この壺、重くね?」
「はい?」
は!?
は……速い!
いつの間にか抱かれている!
「この壺の中に何か入ってるの?」
上弦ですが。
上弦の伍ですが。
何か?
とは言えフフフ。
壺から滲み出るわたくしの魅力に怯んでしまったのでは……
「確かめて視るか」
躊躇無し!
いきなり手を入れるか普通!?
ええい、ままよ!
もうこいつから噛み殺してやる……痛ーーーーー!?
え……
ちょ……
強ッ!
ちぎれる!ちぎれる!
鼻もげる!
何なんだこの巨大女は!?
恐怖心と言うものは無いのか!?サイコパスか!?
「あのぉー……どうでした?」
「うーん……何か弾力のある……もっちりとしている様な、吸い付く様なしつこい感じの」
「……|九十九さん……何を言ってるんですか?」
わたくしも全然解らん。
あらゆる意味で全く解らん。
「君もやってみろ」
「覗くのではなく?」
覗けよ!
自信過剰だなぁー。危機感が無い。
「覗くは反則だろ竈門ちゃーん」
何でだよ!?危険だろ!怖くないのか!?
鬼よ。わたくし。
今度はこいつか……|炎菓より先に耳飾りを噛み殺すもまた、良し!
「じゃあ……やりますね?」
いただきます。
……って!あれ!?
触れられん。寸前で停まる。
「あれ?手が奥まで入りません」
「竈門さんは胸が小さいだけでなく、手も短いのですか?」
|胸好き《きさま》は黙ってろ便所虫!
「あ。もしかして無下限呪術を出しっぱになってないか?」
なんだそれは?
「あ。そうでした」
それもまた呪術の類か?
わたくしにも解る様に説明して欲しいのだが?
「でも、無下限呪術を常に発動している状態に慣れちゃったから、今更offするの怖いなぁー」
切るなよ。
わたくしを舐めるなよ。
切ったら噛み殺すぞ。切らなくても殺すけど。
「あいて!?」
「どうかしましたか?」
「手を咬まれた」
くそ!手を引っ込めるのが早過ぎる!
これでは、壺の中に引き摺り込めん!
「中に何らかの動物がいるのかもしれません」
「そうなんですか?何時の間に?」
「なら……その中に居るのを傷付けずに、ハンマーで壺を割ってみるか」
何言ってんだ巨大女!?
この壺はわたくしが作った壺だぞ!
それを叩き割るって、貴様らには審美眼と言うものが無いのか!?
「金槌なら有りますけど、これってハンマーの代わりになりますよね?」
ふざけんなよ|胸好き《きさま》!
このままだと、わたくしの作品を本当に叩き割られてしまう!
「ええい、ままよ!血鬼術!一万滑空粘魚!」
わたくしとした事が、怒りに任せてつい撃ってしまった。
とりあえずわたくしの壺を叩き割ろうとした連中から離れる事は出来たな。
ま、相手は一万滑空粘魚だ。
アイツら、今頃死んでいるかもしれませんねぇー!
これもまた、良し!
ただ、日輪刀製造場所を掴めなかったのは痛かったな。
ん?
あそこにも例の耳飾りを着けた奴がいるぞ……
……誰だ?
『何が楽しい?何が面白い?命を何だと思っているんだ』
なんだ!?この記憶は!?
わたくしの物ではない……
だが……怖い!
何か、得体も知れない恐怖を感じる!
ここでこいつを殺さねば……大変な事になる!
「血鬼術、千本針、魚殺」
って、何いぃー!
なんだあの異様な太刀筋は?
まるで腕が6本有るかの様な動きだ。
だが……上弦であるわたくしには、勝てない!
「血鬼術、蛸壺地獄」
この蛸足の肉は柔らかい上で強い弾力を持つため、斬撃にも―――
って!?全部斬りおった!?
化物かこいつ!?
「こうなったら。血鬼術、水―――」
「あの壺、どこへ行った?」
えええええええーーー!?!?!?
アレはさっきの……|胸好き《バカ》と耳飾りの竈門さんではないか!?
何故生きている?相手は一万滑空粘魚だぞ!
どうやって逃げ切った!?
「あれ?アレは?」
お。
奴らもあの化物に気付いた様ですね?
これは見物―――
「このロボットは?」
……はぁ!?
ロボット!?
「これは『縁壱ワンゼロ』。鬼殺隊がかつて使用していた訓練用絡繰人形・縁壱零式を改良した人型ロボットで、腕が六本もある理由は、この人形の基になった始まりの剣士の動きを再現するのに、それだけの数の腕が必要だったからだと言われています」
(これも運命の巡り合わせか?縁壱さん……)
ちょっと待てお前ら!
それじゃあ何か!?
わたくしは試斬用巻藁相手にムキになっていたと言うのか!?
それはそれで恥ずかしいぞ!
でも……逆に言えばそれだけ私が集中していたという事だ!良し!
てあれ?
アイツら……このわたくしを無視して例の巻藁と戦う心算なのか?
……まあいい。
どの道、例の耳飾りは全員殺すのだ。
少し見物していくか。
原作との相違点
●九十九由基
・未だに生存。
・鬼舞辻無惨被害者の会との交流が深く、よく刀鍛冶の里に遊びに行く。
●縁壱ワンゼロ
・本作オリジナル道具。
・縁壱零式の改良版。
第26.5笑:鬼滅の刃の声優事情EX
マトリフ
「ま、せっかく呪術廻戦と鬼滅の刃の登場キャラが揃ったんだ、ちょっとしたバトルをやろう。とは言え、あんたらも血塗られた死闘は原作でうんざりする程やってるから、少し軽めにモノマネ対決と行こうじゃねぇか」
Dr.マシリト
「ただし、あまりにも似てない場合は、例によっておしおきだべぇー」
東堂葵
「1番、東堂葵、キン肉スグルをやるぞ。『へのつっぱりはいらんですよ』」
マトリフ
「惜しいね。もう一息だったね」
玉壺
「おや?もうわたくしの番ですか?ではでは、クールポコをやらせてもらおう。『なーにぃー!?やっちまったな!』」
マトリフ
「これまたぁ惜っしいー。もうちょっとだったのにー」
冨岡義勇
「来る12月24日、我々は百鬼夜行を行う」
Dr.マシリト
「反則!おしおきだー!」
冨岡義勇
「うわぁー!?」
半天狗
「えぇー!?もう儂の番!?えーとえーと……そうじゃ!聖徒会長ヒカル~淫魔に占領された学園~に登場する―――」
Dr.マシリト
「良い子のみんなは解んねぇーよ。おしおき!」
半天狗
「非道い!理不尽!」
伏黒津美紀
「伏黒津美紀、ヨル・フォージャー。『息の根、止めさせて頂いてもよろしいでしょうか?』」
Dr.マシリト
「おしおき!」
伏黒津美紀
「ご!?」
漏瑚
「中学の修学旅行で聞いた奈良の大仏のため息。『はぁー』」
Dr.マシリト
「おしおき!」
漏瑚
「あーやっぱりやられたぁー」
童磨
「シンク・イズミやりまーす。『勇者シンク、ただいま参上!』。あ、やっぱりやられた(笑)」
釘崎野薔薇
「はためく翼!キュアフラミンゴ!」
Dr.マシリト
「反則!」
釘崎野薔薇
「やっちゃったぁー」
狗巻棘
「おかか。わしゃモノマネ出来んけぇ、パス」
真人
「凪誠士郎、やってみるぞ。『俺はサッカーで、俺を試したい』。ごっつんこー!」
夏油傑
「藤田玲さん。『こんばんわ!藤田玲です!』。ご!?」
童磨
「浦井健治さん。『こんばんわ!浦井健治です!』。ご!?」
零余子
「八神はやてのモノマネをしている遠坂凛さんのモノマネをしてみます。『鉄槌の騎士ヴィータと[[rb:鉄 > くろがね]]の伯爵グラーフアイゼンが、こんなにボロボロになるまで』……嫌な、感じぃー!」
我妻善逸
「ドラえもぉーーーーーん!」
Dr.マシリト
「うえ!?」
我妻善逸
「ジャイアンに無理強いされて困ってる時の野比のび太の魂の叫び」
Dr.マシリト
「これはどうだぁー!?」
マトリフ
「惜しい!あと1歩だったのにね」
漏瑚
「小学校3年に聞いた裏山のタケノコの叫び。『うぅおぉーーーーー!』。上手い!ばあぁー!?」
嘴平伊之助
「嘴平伊之助様だ!究極メカ丸をやるぞ。『誰がペッパー君だ?』。びいーーーーーいぃぃぃ……」
狗巻棘
「パス2」
虎杖悠仁
「虎杖悠仁でーす。煉󠄁獄千寿、ご!?」
竈門炭治郎
「竈門炭治郎。豊臣秀吉やります。『こんばんわ、豊臣秀吉です』」
マトリフ
「似てるんだか似てないんだか全然判んないのに、満点だ!」
継国縁壱
「あのぉー。拙者がまだでござるでしょ」
笑術廻戦~もしも竈門炭治郎が五条悟だったら~