zokuダチ エスカレート編・22
短編集・4
妹命と中二病
此処の処、暫く新規住人の追加がなかったが、
今回はそのエピである。……また黒子から
お叱り電話が掛って来たのである。まだ
住人の数は足りません、もっと気合いを入れて
人を増やしなさいと、それこそ黒子本人が
受話器から飛び出てきそうな勢いの雷電話を
よこした……。
「焦らなくて大丈夫よ、入る時はちゃんと
入るんだから、シグ君達がある日突然
異世界から来てくれた時みたいにね……」
「毎度の事だけどな……、てめえでやれっつーんだよ、
糞黒子……、欲カキ野郎……」
「ジャミルのお仕事なんだから!仕方ないでしょ、
いつも言ってるけど!」
「う~ん、またポスターでも張らなきゃ
なんねえのかな~……」
ジャミルはアイシャの顔を見て考え込んでしまう。
すぐにでも誰か又入れないと黒子からお叱りが
来るのは確実だった……。
数日後……
「こんにちはー!今度から此処のマンションに
入る事になりましたっ!代表者のシング・メテオ
ライトですっ!!あはははっ!!」
統合玄関の方で異様にバカデカい声が聞こえた。
その声は自室にいるジャミルの耳にまで
キンキンとはっきり聞こえるぐらいの大声だった。
「……おい、何でおめえが代表者なんでぇ!……ああ!?
代表者はこのオレだろうが!!」
「え?なんで?主人公はオレだよっ!ヒスイは
大人しくしててよっ!!」
「もうっ!お兄ちゃんもシングもっ!こんな処で
ケンカしないでっ!!」
「あのう……、もしかして、新しく此処に
入居される方ですか?」
ジャミルよりも先にアイシャが玄関に駆けつけ、
新しい珍客らしき人達を出迎えた。玄関先に
いたのは、茶髪で活発そうな感じの少年、
前髪パッツンストレートロンゲの黒髪美少女、
少女と同じく、ロンゲで黒髪、ゴーグルを
首に掛けた青年だった。
「こんにちは!私、コハク・ハーツです!あっ、
こっちの長身でやたらとうるさいのは私の
お兄ちゃんの……」
「おう、ヒスイ・ハーツだ!宜しくな!!」
「あれー?オレ、主人公なのに、自己紹介最後?
まあ、いいや!オレ、シング・メテオライトって
言います!主人公やってます!!宜しく!!」
「あはは、見れば分るかも……、(おバカっぽいし……)
何だか隕石が衝突しそうなフルネームね……」
「ん?」
「な、何でもないわ、今、担当責任者を呼んできますっ!」
アイシャは一旦マンション内に戻ると、ジャミルの
部屋までパタパタ走って行った。
「ジャミル、新しいお客さんよ!それも3人も来たわ!
これで又お部屋の穴埋めが出来るじゃない!良かったね!!」
「……知ってる、俺の部屋まで大声が聴こえた……」
耳を押さえながらジャミルがアイシャに返事を返す。
その表情はちっとも嬉しそうでなかった。
「……何だか不満顔ね~、もっと嬉しそうに
しなさいよ……」
「当たり前だろ、此処に来るのは絶対変りモンの
どっか癖のある奴らなんだからよ……」
「もうっ!担当責任者なんだからっ!しっかりしてよっ!
ホラ、新しいお客さんのご案内よ!!」
「……あ~うう~……」
ジャミル、いつも通りアイシャに引っ張られ、
玄関先まで連れて行かれた。
「……よう、俺が一応、このマンションの……」
ジャミルが挨拶で口を開こうとした瞬間、茶髪、
シングが先に口を開いた。
「初めまして!あはっ!君、随分小さいんだね、
オレはシングです!宜しく!!」
「……小さい……、あのな、これでも一応気にしてんだぞ……」
「シングったら!失礼でしょ!ご、ごめんなさい……」
コハクと言う少女が慌ててジャミルに謝る。どうやら
この少年は一件能天気バカっぽいが空気を読めず
思った事をズケズケ言う癖の悪いタイプのバカらしい……。
「もうええわ、アイシャ、部屋まで案内してやってくれ……、
まだ3階は大丈夫だろ」
「あ、うん、こっちへどうぞ……」
「♪よーし!ガンドコ行こうーっ!」
「おっじゃましまーすっ!」
「入るぜー!」
「……ガンドコって何だよ……」
アイシャがいつもの通り、新住居人を部屋まで案内する。
それを見たジャミルは、これから又新たな騒動に
巻き込まれるのかも知れないのをひしひしと痛感する。
「……お前、何してる……」
自室に戻ろうとしたジャミルは、廊下の片隅で
新しい新入りを何やらじっと見つめていた人物を
発見する、リウであった。
「……あの茶髪、オレと同じ声がする……」
「……」
リウはそれだけ言うと、3階へ戻って行った。
「あいつもすっかり此処のペースに慣れちまったの
かなあ~……」
そして更に数日後、騒動はやっぱり起きる。
「ねえ~、コハクちゃーん!オレとデートしようよ!」
「おい、この尻尾野郎!ウチの妹に手ぇ出したら……、
この尻尾引っこ抜くぞ!!」
速攻で新入りのコハクに目を付けたジタンが
コハクの兄貴のヒスイに早速取っちめられそうに
なっていた。
「何だよ!おっさん!アンタにゃ関係ねえだろ!」
「関係ねえも糞もあるかっ!オレはコハクのアニキだぞっ!!
それに誰がおっさんだっ!!」
「お兄ちゃんっ!やめてったらっ!折角此処に
お引越しして来たんだもん!私だって新しい
お友達が沢山欲しいわよっ!!」
「……だからってなあ、こんな癖の悪い猿野郎!友達は
ちゃんと選べっつんだよっ!!」
廊下で揉める新入り軍団vsジタン……、外出から
帰り、丁度現場を目撃してしまったジャミルは
巻き込まれない様に何とかこっそりと、自室へ
戻ろうとするのだが……。
「あっ!ジャミルーっ!助けてくれよーっ、
このおっさんがさあ……」
ジャミル、早速ジタンに見つかり、もう呼び止められた。
「だからっ、おっさんじゃねえって言ってんだろがっ!!
俺は18だぞっ!!」
……みしっ……
「お、おう!?何だっ!?」
「どうも、私の連れがお騒がせ致しまして、本当に
申し訳ありません、新しい方達ですね、ほら、ジタン、
部屋に戻るわよ、あ、私はダガーと申します、これから
末長いお付き合いの程、どうぞ宜しくお願い致します……、
では……」
……みしみしみし、みし……
「いだだだだ!ダガーさん、痛い……、んじゃコハク、
またね、今度デートしてね……」
「……ジタンっ!!」
ダガー、ジタンの頭に猫の手ラケットを喰い込ませたまま、
ジタンを掴んで引っ張り退場する。
「何だか清楚でお淑やかみたいな感じだけど、ん~、
結構、パワフルなのかな?リチアみたいだね、
お兄ちゃん!」
「此処にも悪い虫がいるみてえだな、コハクは
俺が守ってやんねえと……」
「お兄ちゃんってばっ!!」
癖の悪いガンドコ腹黒馬鹿に、アルベルトとは
又違う系統の極度のシスコン……、又癖のある
入居者達の登場にジャミルはこれから更に
振り回される事になるのをもう諦めて覚悟した……。
そして更に、騒がしい住人が来て一週間が過ぎた頃……。
タバコを買いに行こうとジャミルが部屋から出ると
例のバカップル、シングとコハクが何やら慌てており、
側には何故か近藤が倒れていた。どうやらこの町の
偵察か何かにヒスイは現在出掛けている様子で、
今日は妹の側に珍しくいなかった。
「何か結構巻き添え体質なのかな、あのデブも……」
「大変だっ!ゼロムにスピリアを乗っ取られたんだ!
コハク、スピルリンクしなきゃ!!」
「うんっ!シングっ!!」
「何してんだ、お前ら……」
「あっ!大変なんだよ、この人、ゼロムにスピリアを……」
ジャミルは近藤の様子を覗き込むと困った様に
シング達の方を見た。
「あのな、よく分からんけど、お前らの世界での
お約束事みたいなモンなんだろうが、こいつは違うよ、
唯の食べ過ぎだ、心配する事ねえから」
「ええーーっ!?だって、表情に生気がないよ!!
やっぱりゼロムに乗っ取られてるよ!!」
シングが興奮して喋り出すと漸く近藤が呻き声をあげた。
「うう、つい食べ過ぎてしもた……、珍ポ故堂の
おまんじゅう、でも、腹壊してもうまいわ~」
「こいつっ!……だ、そうだ、いいか、この話では
普段は今んとこバトル要素はねえから、お前らも
あくまで一般人として普通に毎日過ごしてくれよ、
普通によ……」
「あてっ!」
丸井に代わって今日はジャミルが近藤の頭を
引っ叩いた。
「……そっか、そうなんだね……、うん……」
「シング、平和なのもいい事だよ、折角だし、
此処では羽を伸ばそうよ」
「うん、そうだね……」
コハクに言われて納得したかと思いきや、実際は何か
騒動が起きるのをシングはウズウズと待っている様な……、
そんな感じをジャミルは彼から受けた……。
「ああっ!あの人っ!」
「?」
「……谷口さんやで、ワイらの先輩……」
「あの人、此処に来てから暫く見てたけど、やっぱり
顔の表情があまり変化がないっ!デスピル病だっ!!
早く助けないと!もう白化寸前状態なのかも知れない!!」
「……あのな、あの普段の無表情顔は多分生まれつきだと……」
ジャミルが言い終わらない内に、シングは谷口目掛けて
走り出していた。
「大丈夫ですかっ!?ゼロムめっ!!」
「……は、はあ?」
自分に向かって突進してくる暴走シングに谷口は
きょとんとした顔をしてみるが、やはり表情は
変わらず……。
「シングったらっ!本当にごめんなさい、騒がしくてっ、
もうっ!!」
コハクもシングを止めようと走り出し、呆れた様に
ジャミルもそれを見ていた。
「このマンションも更に楽しくなりそうでんなあ、
……あはは、あはは、あーははは……」
「ワイの真似せんといてや……」
コンプレックスといつもの日常
新しいお騒がせ住人、通称、ハーツ組が越してきてから
数日が過ぎた。……しかし、ジャミルにはどうしても
納得出来ない事があったのである。
「……信じらんねえ……」
それは、ヒスイがジャミルよりも年下、アルベルトと
同歳だったからである。知らない者が見れば、
どうしてもヒスイの方がジャミルより年上に見えるのだ……。
「ジャミル、いる?入るよお」
「!!こら、ノックぐらいしろっ!バカダウド!!」
いつもながらまるでトイレ前での会話の様な状態の2人。
「……ノックも何も、ドア開けてあるし……、ん?
珍しいね、本読んでたんだ?」
ジャミルは慌てて見ていた本……、雑誌をさっと
後ろに隠す。
「ジャミルが読むとしたらどうせまたエッチな
本でしょ、今更隠さなくてもいいよお、オイラと
ジャミルの仲じゃん!」
ダウドはニヤニヤしながら部屋に入り、ジャミルの
側に近づき後ろに隠している雑誌をぱっと取り上げた。
「あ、こら!よせっつーの!」
「なに?背が高く見えるシークレットブーツ……、
足伸ばし器、これであなたも短足からサヨウナラ?」
「よせって言ってんだろ!!」
「あ!」
ジャミルは顔を赤くして再びダウドから雑誌を取り上げた。
「何だ、背丈の事、気にしてたんだねえ、けど、
何で今更?」
「うるせーっつんだよ!早く自部屋へ戻れ!!最近、
又別のにも出なくちゃなんなくなっちまったから
2重に頭痛えんだよ……」
「なんだよお!ケチ!……オイラ何しに此処に
来たか忘れちゃったじゃないかあ!!」
ジャミルはダウドを部屋から追い出すとダウドは
ぶつぶつ文句を言いながら戻って行った。
「はあ、それにしても……、流石に今度の変な住人
見てたら自信無くしちまったよ、俺より年下だ
なんてさあ~……、しかも俺より背は高いしよう……」
……次の日、ジャミルの部屋にシングとシグが
襲撃……、訪ねて来た……。
「おい、随分変な組み合わせだな、しかも名前が
被ってるじゃねえかよ、ややこしいな……」
「オレ達意気投合したんだよ!気も合うし!
いい友達になれそうだよ!」
「こいつ、リウと声が同じなんだぜ!すげえ
親近感があるんだ!」
「それは(声優ネタ)分ったよ、まあ、馬鹿と
アホ同志だしな、いいんじゃね?」
「何だよ!バカなのはジャミルだって同じなんだろ?
あははっ!あちこちで聞いたよ!」
「……だから、笑顔で言うんじゃねえっての、腹立つな……」
屈託のない笑顔で平然と悪気なく毒舌を飛ばすシング……、
今までいそうでいなかったタイプなので、ジャミルは
本当に少々疲れ気味であった……。
「で、何だい?何か用か……?」
「うん!音楽堂って言う施設があるよね、チーム登録して
ステージに立って歌が歌えるんだよ、面白そうだろ?
個人でも歌えるらしいけど」
「……んなモン、この話であったか……?ま、書いてる
ヤツが思い出して、いきなり入れたんだろうけど、
朝市と言い……」
此処に来たばかりなのに、性格上すぐにすっかり
環境にも溶け込んだシングは常にじっとして
いられないので色んな情報を彼方此方で手に
入れてくるすっとび野郎だった。
「……で、何?お前ら出るのか?まあ、頑張れよ……」
「ジャミルも誘いに来たんだよ!なあ、チーム組んで
一緒に出ようぜ!」
「……な!?何で俺なんだよ!お前らいつも
つるんでるダチと出りゃいいだろ!」
ジャミルがそう言うと、何故かシグは口を尖らせる。
「だってさあ~、リウもマリカもジェイルも
嫌だって言うんだぜ、だからオレ、シングと
一緒に出てみる事にしたんだよ」
「うん、オレも当然の如く、ヒスイとコハクに
断られちゃったよ……」
「まあ、そうだろうな……、って、だから何で
俺を誘うんだよ!」
「オレ達、あちこちで馬鹿だなんのかんの
言われてるだろ?だからもう、この際馬鹿は
馬鹿で馬鹿らしく開き直ろうって決めたんだ!」
「おう!んで、チーム・ノーテン菌馬鹿を結成する
事にしたんだ!その為の活動の一歩として音楽堂で
歌を歌う事にしたんだ!あ、ノーテン菌ていうのは、
こいつ→(シング)が発生源なんだってさ!」
「あははっ!」
シグとシングは目を輝かせてジャミルの方を見ている、
もうジャミルにはこのアホとバカの2人組が何を
言いたいかはっきり分った。
「メンバーに入ってよ、ジャミルっ!!」
「チーム・ノーテン菌馬鹿のリーダーになってくれっ、
ジャミルっ!!」
「……却下……」
ジャミルはシングとシグの服の襟首を掴んで
速攻で2人共部屋から叩き出した。
それから数日後……、更に又騒動は起きる。
「ててて!ててててて!」
「おいおい、何なんだあ!?この赤ん坊はよ!
勘弁してくれや~!!」
「ひまっ!もうっ、駄目でしょっ、新しいお兄さんを
追い掛けちゃ!どうもすみませーん、でも、ホントに
お兄さん渋くてイケメンですねえー、あははは!では~!」
「たいやい~!」
新人イケメン入居時の恒例行事で、ヒスイに目を付けた
ひまわり、みさえに捕まり即退場。
「あはっ!お兄ちゃん、モテモテだねえー!けど
渋いのは外見だけだもんねー!……おっちょこちょいだし、
カナヅチだし!」
「コハクっ!だ、誰かが聞いてたらどうするっ!!」
「やいやい!(味噌クセー女め!)」
「ひまっ!往生際が悪いっ!もうねんねの時間でしょ!」
「……ん?今、誰か何か言ったかな?」
「聞いたか?ダウド」
「うん、聞いた、あの人カナヅチなんだって……、人は
見掛けによらないねえ……」
「……そうかそうか、誰にだってコンプレックスと弱点、
葛藤はあるよな、うん、よし、今度太っ腹のジャミル君が
温水プールにでも誘ってやるか!」
「……」
ヒスイの欠点らしき物が分ったジャミルはご機嫌で
自分の部屋に戻って行った。
「たく、馬鹿だねえ~、相変わらずあの人も、
やってらんないよお~……」
今度は其処へ、ドタバタと廊下を走って逃げ回る
しんのすけが走って来た……。
「うおおーい!誰かたすけてー!助けての反対てけすたー!」
「待て小僧……、今日という今日は逃がさん、ガキと
言えどももう容赦せん、許さんぞ……」
「今度は何だよ……」、てか、まーたブロリーの奴……、
来てやがる……、今日は掃除の日じゃねえのに……」
「あれ?あの子達も此処の人達だよね?こんにちわー!」
コハクがしんのすけに手を振る。しんのすけもコハクに
気づくとニヤニヤしながら手を振った。
「おおー、新しいおねいさーん、オラ、凶悪な
ブロリーおぢさんに追い掛けられてるのー!
おぢさんに向かってちょっとまたオナラしちゃったのー!
焼き玉ねぎの臭いでいつもより臭かったから余計
怒らせちゃったんだゾー!」
……ジャミ公もしんのすけも大体やる事は同じである。
しかし、しんのすけとブロリー、奇妙なコンビに
なりつつあったのである。
「あらっ?あらららー!」
しんのすけはまだ子供なのをいい事にコハクに
抱き着く。見ていたヒスイは激怒。
「てめえっ!ガキだと思ってからに!……許さねえぞっ!!」
「お兄ちゃんたらっ!こんな小さい子に怒っても
しょうがないでしょ!」
「そうよ~、ンモー、おにいさんたら、イケズねえ~……」
しんのすけ、調子に乗りコハクに抱き着いたまま
ヒスイを挑発。其処にブロリーが到着する。
「小僧……、逃がさん、貴様を排除する……」
「あ、この子のお父様ですか?」
……んなワケがない。
「やばいゾ!お、おねいさん達、逃げてっ!!」
「はあ~?何言ってやがんだ……」
コハクとヒスイは目を点にしてさっぱり分からないと
言った顔をした。
「ヒスイくーん!あのさー!」
よせばいい物を、調子に乗って又ジャミルも再び部屋から
出てしまい、エントランスへ……。
「……糞怒りMAXです、ターゲット、ロック、オン……、
ヌォォォォォォーーーーーー!!」
その時間帯、エントランスではタ○ム○カンの様な
髑型の爆発煙が上がったと云う。
「……任務完了、ゴキブリ共排除……」
ブロリーはしんのすけを掴み、親のいる部屋まで戻そうと
のしのし階段を上がって行った。
「……あれあれ、あれれ~?何が起きたんだろう……」
エントランスには巻き添えを食らい倒れた野郎2人と
唯一人無事なコハクだけが残された……。
「相変わらず逞しいな、コハクは……、に、兄ちゃん、
嬉しいぞ……」
……そして、このマンションは、皆アホで今日も
何時でも平和なのです……。
無理はスンナ!
「……いきなり突然だけどさ、俺、禁煙しようと思うんだ……」
「はあ……?」
ジャミルの部屋に遊びに来ていたアイシャとダウドが
揃って目を丸くする。
「どうしたのよ、急に……」
「何か最近さ、身体の調子が悪い様な気がするんだよな、
これってやっぱりニコチンからきてんのかな……、と」
「あははは!無理無理無理っ、無理な事はしない方が
いいよお!だってさ、それって、藤○先生の漫画で
良くあるお約束じゃん、太った外観のパパがよし、
パパ今日から禁煙するぞーとか言って、絶対
続かないパターン!」
ダウドは腹を抱えてゲラゲラ笑いだす。
「ダウドったら、もうっ!茶化しちゃ
駄目じゃないっ!でも、そう決めたのなら
偉いじゃないの、ジャミル!私も応援……」
「そうか、じゃあやめるか、無理はしない方が
いいよな、返って身体に悪いな、よし、やめた……、
じゃあ一本!あー、うめえ!」
……するわのセリフを言えないまま、アイシャが
そのまま固まり、呆れてしまった。
「アイシャ、大丈夫だよお、この人、何があっても
生き残るから、多分……」
「……そうね……」
「と、言う事で無理はしないっ!よし、おやつだ、
これ、珍しいだろ、ブドウヨウカンて奴らしい、食えよ」
ブドウヨウカンとは、周りをゴムで包んである
丸いヨウカン。このゴムを楊枝か何かでちょんと
突いて中身を出し、ちゅるちゅる食べるのである。
「美味しそう!じゃあ、私も今だけダイエット止めるー!」
「そうそう、無理はしないっ!コレ、一番!食え食え!」
「だねえ!楽しむのが身体にも一番健康にいいんだよお!」
「あははははっ!」
……何とも根性の無い、笑って誤魔化す皆様。取りあえず、
ヨウカンが美味しかったので良しとするらしい……。
そして、時刻は夕方、ダウドとアイシャはとっくに
部屋に戻り、ジャミルも夕食の買い物に行こうと
部屋を出た。
「あっは!やあ、ジャミル、久しぶりだねえー、夏の間は
姿が見えなかったみたいだけど何処へ行方をくらまして
たんだい?夜逃げかな?借金取りにでも追われたのかい、
大変だねえ!」
「どうも、ガーネルです、……私の事は忘れてい
ませんでしょうな……」
部屋を出ると、これ又お久のガーネルとドナルドがおり、
何故か両者、肩を組んでスキップしていた。
「あのな、テメーらこの間屋敷で俺らの邪魔したじゃねえか、
何が久しぶりだよ……」
「ハア!?聞こえなーい!」
「それにしても……、縁起わりいなあ、嫌なモン
見ちまったよ……」
「何だい?それより、ドナルド達はね、反省したんだよ!」
「ハア?反省?お前ら謝罪する事だらけだろうが……」
「私達は今度こそ、心から共に一緒に力を併せ、共同で
一緒に歩いて行こうと決めたのですよ……」
「だよね、ガーネル君!あははあはっ!」
「……おいおい、一体何回目だ、その台詞、
無理はしねえ方がいいぞ……」
ジャミルの言葉に、ドナルドとガーネル、
両者の耳がぴくっと動いた。
「そうですな、無理はしない方がいいですな……」
「だね、ガーネル君……」
「うむ、では参ります!」
「久々に行くよ、ガーネル君!……容赦しないよ……」
「……それはこちらの台詞です……」
……ドナルドとガーネルは服を脱ぐと、メタボ腹
さらけ出しモードになり、いつも通り、激しい
殴り合いを始めた。
「だから、ストレスが堪るぐらいなら、無理な事は
最初からやるなっつんだよ!たくもう……」
ジャミルはキモバカ2人を放置し、そのまま
玄関へと向かう。と、玄関前にはいろはと悟の
仲良しカップルが。
「こんにちは、これからジャミルさんもお買い物ですか?」
「どうも、こんにちは……」
「よう、相変わらず仲良いな、ちょっとコンビニにへな……」
「この間のきのこ狩りで話題になった通り、今日は皆で
お部屋でお鍋パーティするんです!ね、悟君!」
「あはは、僕達が代表で材料の買い出しに……」
「へえ~……」
ジャミ公は目の前のカップルをじっと見つめる。
恐らく、まゆに編んで貰ったのだろう、お揃いの
マフラー&手袋……。仲良く手を繋いで、お出掛け
準備万端の二人を見て、ジャミ公はもう、勝手に
して下さい状態だった……。こむぎ&大福は本日は
お留守番らしい。
「鍋ね……、俺は今日は既製品の惣菜弁当で
簡単に済ますかなと……」
「コンビニですか?……あの、手軽に済ますのも
良いですけれど、ご飯はやっぱり手作りが一番
いいと思います、健康の為にも、コンビニのご飯は
防腐剤が入っているのが大半ですし……」
「う~ん、だけどなあ、今日は面倒臭くってなあ、
気分が乗らねえんだよ、無理はしないんだ……、
ついでにケーキでも食うかな……」
「……駄目ですっ、駄目ですよっ!ジャミルさんっ!
コンビニの誘惑に負けては駄目ですっ!お金も飛んで
行ってしまいますよっ!それに、無限のコンビニ
スイーツは糖尿病の原因にもなるんですよ!……将来の
ご自身の健康の事も考えないと……!」
「……さ、悟君!?」
「お、おおう……」
悟は突然眼鏡を光らせ、熱くなりジャミ公に詰め寄る。
普段、大人しい悟が……。いきなり説教を始めた……。
適当に食事を済ませようとするジャミ公をびしっと一喝……。
「でも……、私も最近……、食欲の秋だから……、
ご飯が美味しくて美味しくて、食欲が止まらないのーっ!
悟君、どうしようーーっ!……どうしたら食べるのを
抑えられるのかなあ……」
「……い、いろはちゃん!ストレスになる様な
無理は止めよう、でご飯は美味しく食べられて
健康に良いのが一番だもの、僕はね、美味しい物を
食べている時の笑顔のいろはちゃんが大好きだから……」
「……悟君……♡」
「いろはちゃん……♡」
「あの、もしも~し、……おいいいっ!」
悟といろはは、手を取り合い、ハートを
振りまき、ニコニコでジャミ公に頭を下げ、
その場を退場していった……。
「……ったくっ!けど……、今、色々無理
しないブームなのかよ、う~ん……」
あれこれと色々考えながらジャミルは外に出て行った。
……悟の忠告聞かず、結局は手抜きをし、コンビニで
天ぷらがたっぷり乗った狸うどん&こしあんたっぷり
激甘どら焼きを買って、マンションへと帰宅する。
「あー、腹減った……、ん?」
「お、おおー!ジャミルのお兄さーん、大変だゾー!」
「おお、ジャミルさん、これは、い、一大事です!」
「……お~い、掃除屋……、今日は基地害ブロリーの
親父も来てんのかよ……」
中に入ると、ジャミルの姿を見つけ、しんのすけと
パラガスが大慌てで走って来た。……おっさんと
幼児の非常に珍しい組み合わせである。
「何かあったのか?」
「ブロリーのおぢさん、なんかおかしいんだゾー!!」
「む、息子が……、へ、へ、へへへ……、変です……」
「ああ?おかしいのは元から……、……?」
ふと、気配を感じ……、後ろを振り返ると……、
ブロリーが立っていた。しかも……。
「……こん、にちは……」
「……ぎゃあああーーーっ!!」
白目モードに……、顔中の筋肉をぴくぴく引き攣らせ、
あのブロリーが無理矢理挨拶をしたのである……。
「お帰り……、なさい……、外は……、さむかろう……、
でしたか、もう……、秋……、ですね」
「……オウ!?」
「お父さん、臭いのでお風呂に……、入って、下さい……、
しんのすけ……くん、もう、夜です、お家に……、
帰るの……、です」
「……こ、これなんだゾ……」
しんのすけがガクブルしながらブロリーを指差す。
しかし、顔は相変わらず引き攣った白目モードのまま……。
「……うわ、うわわわわ……、ど、どういう風の
吹き回し……」
あまりにブロリーが怖すぎるのでジャミルも
腰を抜かし、折角買って来た狸うどんを思わず
下に落とした。
「俺、おかしい、でしょうか……」
「……充分おかしいだろうがよっ!!」
「でも、俺、今度こそ、……優しい、冷静な男に……、
なろうと思うの、です、……お父さん、心配しないで……、
下さい……、にこり、……ぴきぴき……」
「あああー!地球の終わりですーー!」
「たすけてえー!アクション仮面ーー!!」
「い、いや……、頼むから、無理しないでくれ、
いや、本当に……」
「ハハハハ!……フン、冷静になるだとう……?貴様に
出来る訳がなかろうが!この、バーカめがああっ!!
はーっはっはっはあ!」
「あちゃあ~……」
ジャミルが頭を押えた。呼んでない、来なくていい、
ベジータも登場。……優しいブロリーさんになるなんざ
不可能なのは分かっているが、わざわざそれを忠告しに
出て来なくてもいいのである。
……ピクッ……
ブロリーの顔に相当の青筋が浮かぶ。……ベジータの
毒舌攻撃はやはりブロリーを刺激。
「……やはり無理は出来ぬか、取りあえず、
貴様に感謝する、……ベジータアアアアアッ!!」
「は?……ウオオオオオオーーっ!?」
結局、いつも通り、ブロリーはスーパーサイヤ人化
すると、ベジータの頭を掴み、壁へと叩き付けた。
……ブロリーの冷静な男になるです計画はベジータの
オジチャンのお蔭で数分で幕を閉じた。
「ブロリーのおぢさん、元に戻ったの?何かよかったゾ……」
「……らしいぞ、だから出来ねえ事は最初からすんなっ
つんだよ、どいつもこいつも……」
最初に禁煙しようかと言っていたあんたもである。
「……おい、ジャミ公、急に思い出したが、貴様、この間、
俺の前を素通りした時、黙ってスカシを落していったであろう、
……謝罪もせず、何事だああーーっ!!」
「……急に余計な事思い出すなあーーっ!あ、ああああーーっ!!」
〔げんこつ×50〕
「……何だか異様にすっきりました、では、お父さん、今日の
仕事は完了です……、帰宅します……」
「う、うむ……、では、ジャミルさん、我等親子を
今後とも宜しく頼むです……、壁の修理、トイレの詰まり、
何でもお任せです……」
「頼むかあああーーっ!!」
「……じゃ、ジャミルお兄さん、オラももう
夕ご飯だから、帰るね……」
しんのすけも、さっさと自分の部屋に逃げ帰って行った。
「畜生……、もう俺も無理しねーぞっ、ええっ、
無理なんかしないわよっ!むきーーっ!!」
……そして、その日の夜、ストレス解消に折角
買った夕食も食べずに、ジャミルはタバコを只管
吸い捲くっていたそうじゃ……。
zokuダチ エスカレート編・22