zokuダチ エスカレート編・21
短編集・3
秋の味覚は……強敵
久々に平和な日々が戻ってきて数日。早朝から
ジャミルは又黒子に呼び出しを食らう。……最近、
全然食料品店に足を運んでないだろう、来いとの事で
盛大なお叱りも食らう。ちなみに最近は住人の殆が
食料品だけでなく、一回の買い物で何でも揃って
しまう処の方が便利で黒子が経営している?
食料品店は客足が遠のいていた。
「だってさあ~、スーパーとか、コンビニの方が
明らかに味がいいんだよ、ふぁあ~、……それに
してもクソ黒子め……、何で俺だけ怒るかな……」
「そんな事言うと、又電話が掛かってくるよお~……」
……トゥルルルル……
「う、うわ、来たっ!バカダウドっ!余計な事言うなっ!」
「何だよお!いつもいつもオイラの所為にすんなよお!」
仕方なく、受話器を嫌々取るジャミル。
「……もしもし?」
『ウヴぁー、老人会の会長さんかい?今度のゲートボール
大会の件だんべけど……』
……ガチャリ……
「間違い電話だ、ダウド、とにかく食料品店行くぞ、
まあ、何か一つでも買えば黒子も気が済むだろ」
「しょうがないなあ、もう……」
2人は早朝から足並み揃えて、食料品店へと向かった。
「いらっしゃいませっ!宇佐美いちかです、
お久しぶりですね!最初の頃のお話以来ですね、
お元気でしたか!?」
「はあ……」
食料品店でバイトをしていたのは…、初期一回だけの
登場の筈の宇佐美いちか嬢である。彼女は相変わらずの
キラキラの笑顔を振りまいている。
「黒子さんに又、限定でバイトを頼まれまして来ました!
新商品入荷してます、どうぞ、どうぞ此方へっ!」
(……ジャミル、コレ、何か意地でも買わないと
気の毒だよお、買わなかったら、あの子落ち込ん
じゃうかも……)
「ちっ、是が非でも客に買わせる為に又アイドル要因で
バイト呼んだってか、汚ねえな、黒子の奴……」
「さあ、新商品ですよおっ、見てってくださいっ!」
「ゲ……、げええええっ!?」
※ 本日入荷商品 松茸 値段 10,000円……
しかも、他には商品見当たらず、松茸しかない。
「ちょ、ちょちょちょちょ、無理っ、無理だからっ、
そんな金ねえのっ!」
「……駄目ですか……?」
「駄目なモンは駄目っ!今の俺の所持金幾らだと
思ってんだっ!とにかく駄目っ、買えねーっての!
そんな顔されても絶対無理っ!」
「そうですか……、では次回は絶対買って下さいねっ、
お待ちしてます!」
「えう……」
いちか嬢はそれでも怯む事なく、ジャミル達にキラキラ
スマイルを振り撒き続けた。ジャミルとダウドは気分が
モヤモヤしたまま、マンションへの帰り道を歩く。
「可哀想だったよお~……」
「んな事言ったって、買えねんだよ、じゃあ、お前、
買ってやれよ……」
「無理です……」
「……バイト員がブウ子みたいなのだったら、
速攻で逃走したんだが……」
「逃げる前に殺されますよお……」
「……はああ~~……」
ジャミルとダウドは2人揃って大きな溜息をついた。
そして、その日はもう黒子からも電話は掛かって来ず。
……翌日
「ジャーミルっ、おっはー!早朝のランニング行こうーっ!」
ジャミル、朝っぱらから、異様に張り切っている
ジャージ姿のアイシャに叩き起こされる。
「うええ……」
「ほら、起きて起きてっ!起きるのーーっ!」
「うげええええ~……」
ジャミルはアイシャに無理矢理引っ張られ、公園へと向かう。
「あふう……」
「……ぐっど……、いぶにんぐ……」
「あ……?……げえっ!?」
声に振り向くと、立っていたのは、不機嫌状態極まり
ない様な表情のブロリーである。いや、彼はいつも
こういう顔であるが。洗脳編で悟空が元の世界に
一度送り返してはくれたらしいが、又こうして此方に
戻って来てしまったらしく……。何だかプチ……、嫌、
ビッグマンモス迷惑系レギュラー化してしまいそうだった……。
「どうしたの?朝早くから……」
「書いてる奴が朝市の設定を忘れていたらしいです、
どうでもいい……、朝市のバイト……、住人交代、
毎朝……、住人ではない俺が今日は臨時バイトで
わざわざ来てやった……」
「うわわわっ!何で今頃っ!?んな、どうでもいい事っ!
てか、今はイブニングじゃねえだろっ!」
「……どうでもいいんだ、明日は貴様(ジャミル)が担当だ、
……必ずやれ、忘れるな……」
「ねえねえ、今日の朝市はなあに?」
狼狽えるジャミルを余所に、相変わらずアイシャは無邪気。
「……折角だ、見て行け、特別に半額セールだ……」
「わあー、行くっ!」
「……こ、こらアイシャっ!オメー、ランニングに
来たんだろうが!こら待てっ、おーいってのっ!」
ジャミルが慌ててアイシャを追掛けるが、アイシャは
すでに朝市へ。付き合いで走りに起されたあげく、
痩せたい本人が食べ物の誘惑に負けている様では
早朝にわざわざ叩き起されたジャミルも溜まった
モンでない。
「今日の品は松茸だ……」
「松茸さん?」
「げえええっ!?、またかよっ!」
「半額、5000円だ……、買え」
「それでも高えっての、買えねーよっ、オラ、アイシャっ!
走るんだよ、行くぞっての……っ!」
「……え、ええ?ちょっと待って、……はあ~、
凄くいい匂いねえ……」
ジャミルは必死でアイシャを引っ張り、松茸から
何とか遠ざけようとするが、アイシャは松茸の匂いに
うっとりしてしまい、その場から動こうとしない。
「買わないのか……、ならば……、ヌ、ヌオオオ
ォォォーーーっ!!」
「スーパーサイヤ人になったって駄目なモンは
駄目だっつーの!金ねえんだからっ、じゃあなっ!」
「あ~ん、も、もうちょっと~、嗅がせてえええ~……」
「……駄目か……、糞めが……」
露天に残されたブロリーは、目の前の大量の
松茸を見つめ、松茸を1本掴むと、躊躇せず
片手で1本5000円の商品を握りつぶした。
「……ぶうう~っ!」
「不貞腐れてんじゃねえよ、ったく、痩せる為の
ランニングしに来たんじゃないんですかあ~、
お嬢さん、ええーっ!?」
「だ、だから……、匂い嗅いでただけでしょっ、
買うなんて言ってないわよっ!第一、買えないわよ、
あんな高いの、はあ、お腹空いた……」
結局、走る気を無くしてしまった二人はマンションへと
戻ったのであった。
「たく、俺は何の為に起こされたんだよ、……あ~あ……」
「松茸さーん、うう~……」
そして、時刻は正午、ジャミルはアイシャを改めて
部屋に呼んだ。
「ジャミル、なあに?」
「いいから入れよ、お昼まだだろ?食ってけよ」
「お昼ご馳走してくれるの?嬉しい!」
「大したモンじゃねえけど、ほら……」
ちゃぶ台の上に載っていたのは、ほかほかの栗ご飯と
焼いた椎茸であった。
「うわあ、美味しそう!いいにおい~!」
「この間、チビがモンブラン山で取ってきてくれた
差し入れの栗があったの忘れてたからさ、さっと
急いで作った、まあ、椎茸は……、松茸の代わり……、
にならねえけど、とにかく食えよ、美味いぞ!」
「うん、おいしーっ!甘くてほくほくーっ、はあー、
松茸さんじゃなくても、秋は美味しい物いっぱいだね、
ふふふっ!」
「よーし、俺も食うかなっ!」
2人は栗ご飯をお腹いっぱい堪能。……そしてアイシャが
帰った後も、その日の夜、又調子に乗り、一人で栗ご飯を
食べ捲ったジャミルは、屁……、栗のガスが止まらなく
なってしまい、用事が有り、ちょっと部屋に顔を出した
ダウドをエントランスまで吹き飛ばしたのである。
アホ軍団のキノコ狩り・前編
「……松茸狩りツアー、入園、利用料含め、大人
15000円、うわ、これ程貧乏人を見下したモンが
あっかよ、気に食わねえな……」
新聞の広告を見ていたジャミルが文句を言いだした。
今回は松茸狩りツアーの利用徴収料がどうやら
お気に召さない様子でご立腹。
「何だよお、まだ松茸にこだわってんの?」
「松茸なんかどうでもいいんだっ、唯、貧乏人から
高額徴収する根性が気に入らねーって俺は言ってんの!
……畜生……」
だから別に行きたくないと思えば通常は無理して
誰も行かない。
「やっぱり、何かまだ未練がある様な言い方だねえ~、
それよりさ、面白い話があるんだよ、聞いて!あのね、
この間見た変な猫なんだけどさ、喉鳴らすと鳴き声が
コロコロコロコロ言うんだよお!……ジャミル、聞いてる?」
ダウドがジャミルの顔を覗き込むと、ジャミルは
広告を睨んだまま固まってしまっていた。
「ハア、駄目だこの人……、全く……」
「そうだ、ありますよ、唯で思いっ切り茸狩り
出来る場所がよ、見てろ、高額徴収細菌野郎共……」
「ハア?」
「ふふふ、ふふふ……」
そして、数日後、ジャミルの部屋にチビが遊びに訪れた。
「ぴい、これ全部チビが食べていいの?」
ちゃぶ台の上に並んだお菓子、なけなしの金で
チビの為にジャミルが買って来た物である。
「いいんだいいんだ、どんどん食べろ!食え食え!」
「きゅぴ、ジャミル、何か企んでる?チビ、ジャミルの
考えてる事、すぐ分る、……ジャミル、お鼻の穴が
ひくひく開いてる、いじりたい……」
「……ぎく!」
チビがジャミルの顔を見つめ、首をきょとんと傾げた。
その仕草も何処となくチビは愛らしい。
「と、とにかく菓子は食えよ、な?あは、あは、あはは……」
「きゅぴ、じゃあ、食べる!」
チビは目の前のロールケーキを美味しそうに食べ始める。
それを見て、ジャミルは揉み手をしながらチビに話し掛けた。
「あのさ、んで、チビさん、モンブラン山は……、
普段滅多に人間は立ち入らねえ場所だと思うんだけど、
その、茸とか生えてる……、よな?」
「うん、いっぱいあるけど、前にジャミル達が山に
行った時も、チビが採って来てあげたよね?」
「俺ら自身で採りに入って、構わねえ……、かな?な……」
「駄目、ぴゅぴ」
「おい、そんな、あっさりと……、おい……」
ジャミル、速攻でチビにノックアウト……。
「別に人間達が山に入るのは構わないけど、茸は
黙って採っちゃ駄目だよお!茸だって、チビ達
ドラゴン達の立派なご飯だよお!きゅぴ!」
「……そうか、ショバか……、確かにな、モンブラン山は
ドラゴン達が仕切ってんだもんな、当然か、あはは、あは、
あははは……」
「ぴい~……」
急に錯乱し始めたジャミルを見て、いたたまれなく
なったのか、チビが口を開いた。
「じゃあ、今回だけ、チビがレッドドラゴンさんに
頼んであげる、でも、荒らしは駄目だよお!程々に
してね、約束できる?欲張り過ぎても駄目だからね!」
「するする、約束するって!うんっ!」
「じゃあ……、人間には食べられない毒キノコもあるから、
チビも案内で付いていくね、それでいいきゅぴ?」
「ああ、助かるよ!」
「……それと、もしもマツタケさん採っても、売って
お金儲け……、とかもしちゃ駄目だよ……」
「そうか、その手があったか……、思いつかなかった、
ちっ……」
「ぎゅっぴ!ジャミルっ……!」
チビがジャミルの顔の側まで近づき、ブレスを
吹きそうになった。
「冗談だよ、チビ……、ははは、はははは……」
「びいい~……」
そして、チビが帰った後、ジャミルは部屋で
一人考える。
「今回は松茸独り占めしてえからな……、よし、今回は
俺一人で行くか……」
「……駄目だよお、ジャミル……、昼間チビちゃんと
話してたでしょ、隣だし全部聞こえてんだから……、
お菓子でチビちゃん釣るなんて……、駄目でしょ、ンモ~、
んで、オイラも行っていいんでしょ?」
「ダウド、……この野郎……」
ダウドがぬっとジャミルの部屋に入って来る。ダウドは
ジャミルの方をちらちら見ている。
「……分ったよ、たく……、仕方ねえ……」
「おほほー!交渉成立っ!んじゃあ!」
「……あ、おい待てダウドっ……!」
と、ジャミルが言った時には遅く、数分後にはジャミルの
部屋にアイシャが雪崩込んで来た。
「ジャミル、松茸狩りに行くの!?ずるーい、私も
連れてってよっ!」
「やっぱりこうなるか……、ダウドの野郎~……、
いいよ、連れてくよ、けど……、松茸採れるとは
限らねえぞ……」
「じゃあ、アルも誘うね、アルのお部屋行ってきまーす!」
「おい、だから……、人の話聞けよ……」
……こうして、いつものメンバーに落ち着いてしまい、
当初ジャミルが考えていたもしかしたら松茸独り占め
出来るかも?作戦は無残に失敗に終わる……。
「ううう~……」
そして、更に……。
「キノコ狩りに行くんですかー?はいはいーっ!私達も
お供しまーす!」
「きのこきのこー!もちろん、こむぎもいくわんっ!」
「あの、僕も一緒にいいですか……?あ、大福も……」
「……」
「ニコもいっくよー!♪マツタケって皆がニコニコに
なれるキノコなんだよねー!」
洗脳編で新たにレギュラー化した、わんぷりチームの
サポートメンバーであるニコとメエメエ。だが、
彼女達は直にマンションに住んでいる訳ではなく、
普段はニコガーデンにいる。いろは達が特別に黒子から
許可を貰って部屋に置いているキラニコトランクを
通じ、マンションへと遊びに来るんである。……今回は
ニコガーデンの大掃除がある為、メエメエはお留守番。
「モンブラン山、私達はまだ行った事ないから、
今回は一緒にお邪魔していいかしら?」
「……よ、宜しくお願いしますっ!」
何処で情報が漏れたのか、いろは、こむぎに続き、
今回は、さとだいコンビ、ニコ、ユキとまゆも
モンブラン山へ動向を申し出た。
……そして、更に、更に……。
「バナナ狩り行くんですかあ~?楽しそう!私も
連れてってくださいっ!」
「僕も行く、ゆーなのボディガードだからね……」
ゆうなとマモルも今回は付いていく事態になった。
「……とほほのほお~、てか、バナナ狩りって何だよ、
おい……」
こうなってしまった以上、仕方がないのでジャミルも
行きメンバーの同行を承諾した。そして、日曜日、変な
集団はバスに揺られ、チビの待つモンブラン山の山頂付近へ。
「はあ、このバスに乗るのもお馴染みになっちゃったなあ、
やれやれ……」
バスのシート座席にもたれ、溜息をつく爺さん
みたいなアルベルト。
「楽しくていいよね!私は皆でお出掛けするの大好きだもん!」
「え?ああ、うん、そうだね……」
そしてアルベルト、……天然アイシャに何も言えず
顔を赤くする。
「バナナ沢山生えてるといいねー、まも君!」
「……バナナは土に生えないよ、ゆーな、それに
バナナじゃなくて、採りに行くのは茸だよ……」
「そうなんだ、う~ん、残念……」
ゆうな、彼女は本当はモンブラン山へ何しに行くのか、
良く分かっていないらしい。
「キノコのお料理……、はあ、お吸い物に茸ごはん、
おこわ、あ~、考えただけでお腹ぎゅるぎゅるだよう~」
「♪こむぎもいっぱいキノコ食べるわん!」
「舞茸は天ぷらもいいよね、熱々のうどんに
さくさくの天ぷらをのっけて……、あ、ああ、
考えただけで僕、お腹が空いて来ちゃったな……」
「うんっ、うんっ、おうどんも美味しそうー!」
「♪きのこっ!きのこっ!のこのこきのこっ!
のっこのこ~っ!!」
「……♪」
「全く、いろはとこむぎはともかく、悟まで……、
皆、食いしん坊なんだから……」
「……そう言うユキも……、涎……、垂れてるよ?ふふっ!」
「!ち、違うわよっ!これはっ!……ま、まゆったら……」
「うん!美味しいごはんはみんなをニコニコに
してくれるもんね
「どいつもこいつも、どうしようもねえなあ、てんで
好き勝手だなあ~」
「……ジャミルったら!いいでしょ、皆それなりに
楽しみにしてるんだから!茸狩り!」
ジャミルの呟きが聞こえたらしく、ジャミルの後ろの
座席に座っているアイシャが身を乗り出した。
「ア、アイシャ、大声出すなよ、ま、周りに聞こえるって……」
「……一番どうしようもないのは、チビちゃんを
お菓子で買収した何と言っても意地汚いこの男、
ジャミ……あうっ!」
(……黙ってろっつーんだよっ、馬鹿ダウドっ……!)
さて、いつもの如く、この変なメンバーで無事に
松茸は見つけられますでしょうか、続く。
アホ軍団のキノコ狩り・後編
モンブラン山に到着した一行は、チビの案内で茸が沢山
生えている山林付近まで案内して貰う。
「皆、チビの後に離れないでついてきてね、……ぴ?」
「一人、足りない気がする、ん?」
ジャミルが後ろを振り返ると……。
「あ……、ゆーなっ!」
マモルが一直線で、慌てて元来た道を下って行った。
「やっぱりか、……やれやれ、俺も見てくるか……」
仕方なしに、マモルの後にジャミルも坂道を戻って行った。
「……きのこさーん、ここかなあ……」
「ゆーなっ、何してんの!駄目だろ、ちゃんと付いて来なくちゃ!」
2人がゆうなを迎えに行くと、ゆうなは大きな木を見上げて
ボケッと突っ立っている処だった。
「あ、まも君、ジャミルさん、あのね、きのこさんは
箱をぽんて、下から突くと出てくるんだよね?何処に
あるのかなあ~、きのこさんが出てくる箱さん……」
「……ゆーな、そんな物此処にはないから、しかも
それは箱じゃなくてブロックだから……」
「そうなんだ~、ふ~ん、ないのか~、残念……」
「……わざと言ってんだろ?わざと狙った
ボケだよな?な、な……?」
ジャミルが訪ねるとマモルは牛乳瓶底眼鏡を光らせ、
ジャミルの方を見、複雑そうな表情を見せた。
「最初に話したと思うけど、あれがゆーななんだ、
ゆーなは本気だよ、悪気はないんだ、しかも成績は
学年でもトップクラスだからね……」
「そっか~、じゃあ、気を取り戻してー、バナナ狩り
行こうーっ!」
「おい、またバナナに戻ってるし、だから、バナナじゃ
ねえって何度行ったら……」
……ジャミルとマモルはゆうなが離れない、
逸れない様にとどうにか気を配りながら、皆の
いる処までどうにか連れて戻って行った。
「ゆうなは、大丈夫だった?……、……大丈夫みたいね……」
「ケガが無くて良かった……」
ユキとまゆが出迎えるとジャミルは塩を舐めすぎた
様な、しょっぱそうな表情を見せた。
「いたよ、確かにいたけどさ……」
「ジャミル、なんだかお顔がおつかれしてるー、折角の
おいしい、キノコ狩りだよっ、もっと楽しくわんだふるに
行こうっ!」
「どうせ出掛ける前に食べ過ぎてお腹でも
壊したんでしょ、しょうがないわねえ~……、
気を付けなさいよ……」
「おい……、其所の猫娘っ!勝手に納得すんじゃ
ねえってのっ!第一、俺は腹なんか下してねえぞ!」
「……どうだか……」
「ユ、ユキ~……」
「……ぴい~……」
「チビちゃん?どうしたの?まさかまた……」
「動けなくなっちゃったの……、動いたらうんち出る、
皆に会う前に、お腹空いてたから……、ごはんいっぱい
食べ過ぎたの……」
どうやら、来る前に食べ過ぎで腹を壊したのは此方の方である。
「じゃあ、私が連れて行くわ、おいで……」
「ぴい……、アイシャ、いつもありがとう、ごめんなさい……」
「いいのよ、チビちゃん、気にしないで……」
アイシャが抱いて、チビを野グ……トイレに連れて行った。
「……下痢は向こうだっつーの、たく、いつになったら
茸取れるんだか……」
「バナナさーん、どこー?」
「……だから、そっち行ったら又山下っちゃうだろっ、
ゆーなっ!」
少しメンバーが違うだけで、又こんな大変な事態に
なるモンなのかよと、ジャミルはひしひと痛感する……。
ダウドは近くにあった石に腰掛けたまま鼻ちょうちん
放出の居眠りをこき、アルベルトは持参した文庫本を
読みだす始末。……いろはと悟は仲良く、ラブラブ
森のどうぶつさん観察タイム……。
「どいつもこいつも……、たくっ!」
そう言いながらジャミルも隠していたタバコを取り出し、
ライターで火を着け一服しだした。 ……そして、チビも
ゆうなもどうにか落ち着いた頃、ジャミルも気を取り直し、
再び茸狩りモードへと気分を変える。
「着いたよ、この辺に茸が沢山生えてる筈だよお」
「おお!こりゃすげえ!」
険しい山道からは考えられない程の開けた
草原の様な場所に出、土から茸が沢山生えて
いるのを発見する。
「でもこれはね、人間が普段食べている茸とは
又違う種類の茸なんだよお!ちゃんと食べられるのは
チビが教えるから安心してね!」
「そうなのか、食えりゃなんでもいいや、んで、
松茸何処だい?」
……結局は松茸が気になる男、ジャミル……。
「……此処だってマツタケさんはそんなに
生えてないよお、凄く貴重なんだからね……、
ぴい……」
「そうだね、普通に栽培するのもまず無理だしね、
諦めなよ、ジャミル……」
「うるっせーな、アホベルト!タダで松茸が食える
チャンス、此処で諦められるかよ!1本だけでも俺は
松茸探すかんな!」
「はいはい、好きにして下さい、はあ~……」
「……ぎゅっぴ……」
「マツタケじゃなくてもいいよー!いろは、みんなで
食べられるおいしいキノコをさがそうー!」
「そうだねっ、こむぎ、行こうっ!」
(……よし、オレも人間モードで……、と、)「やるぜ、悟!」
「だ、大福ぅ~!あはっ!」
「私達もっ、頑張ろう!ユキ!」
「ええ!こむぎ達に負けられないわ!行くわよ!」
「♪ニッコニコ~!秋の陽気の中、皆一緒に
仲良くキノコ狩り、楽しいねーっ!」
「彼方さんチームは凄く純情で青春モードだよね、
只、食うことしか頭に無いジャミ公さんと違っ……、
あだああーーっ!!」
ダウドの頭を殴るジャミル。……暴走し始めた
ジャミルをほおっておき、他のメンバーはチビに
教わりながら食べられる茸を採り始める。
「わっ!すっごいおっきいキノコっ!みつけたよっ!」
「こむぎちゃん、それはエリンギだよ、かなり大きめのだね、
色んなお料理に使えるけど、お鍋料理に入れるのが一番いいかな、
もうすぐ寒い季節になるし……」
「わん~!」
「流石悟ね、こう言う知識も豊富だわ……」
「そうだねえ~、もうすぐお鍋の季節だもん、あったかい
お鍋を突っついて、フーフーして、ユキを抱っこして……、
ユ、ユキも一緒にフーフー……、しちゃおうかなああ~……、
キャーー!!だってだって、ユキってばね、お耳をフーフー
すると……、かわいいの♡」
「……ま、まゆ……、ひ、引っ掻くわよ!」
ニャンバカ妄想モードに入ってしまった猫屋敷まゆさん……。
いろはは、こむぎはお腹がすいたわん!と、駄々捏ね
し始めた為、こむぎを急いで犬に戻し、おやつのクッキーを。
そんなこんなで、本日の時間も大分過ぎた頃……。
「アル、ジャミルがどこか行っちゃったわ……」
「大丈夫だよ、アイシャ、その内、松茸が無ければ
諦めて戻って来るから……」
「あの人も、ゆうなちゃんの事決して言えないからねえ~…、
時と場合によっては、こむぎちゃんより子供だし」
……アホのジャミルを心配しつつ、取りあえず引き続き
茸狩りを楽しむアイシャ、アルベルト、ダウドの3人。
「アイシャ、チビがジャミル見てくるね、うっかり変な処
迷い込んじゃったら大変だからね」
「ホント?チビちゃん有難う、助かるわ!それにしても……」
「本当に……、まるで大きい幼稚園児だね……」
「あは、あはははは……」
アルベルトの言葉にアイシャは唯、只管苦笑するしかなかった……。
「……まいった、何か奥まで来すぎちまった、やべえ……」
ジャミルはムキになり過ぎて、草原から離れた藪ワールドへと
入り込んでしまっていた。しかし、側に生えている木に松茸が
生えているのをジャミルは目撃する……。
「うはっ!?あったっ、ありましたよおっ!松茸っ、
……ううう、やっと見つけた~、これを探すのに
どれだけ苦労したか……」
唯、うっかり藪の奥に入ったら偶々見つかっただけである。
「しかしマジでいいニオイだなあ~、、なんか
このまんま食えそうな……、どうせマンションに
持ち帰っても独り占め出来ねえしな、よし、今
この場で食っちまえ!」
……バカジャミル、等々生のまま松茸に噛り付こうとする……。
「ジャミルー、どこ~?……きゅぴっ!?」
「あ、あ~……」
「……駄目ぎゅぴっ!ジャミルのバカっ!!」
「ひ、ひいっ!?」
チビは今にもジャミルが口に入れそうだった茸を
思い切り爪で地面に叩き落とした。
「び、びっくりした……、チビ、何すんだっ!」
「はあ、間に合ってよかったきゅぴ、もうっ!荒らしは
駄目だって、最初にチビ、言った筈だよお!これは
食べられない毒茸なのっ!めっ!!」
チビ、ジャミルの頭部を爪で思いっ切り叩く。
「……いって!え、だって、これ、どう見たって見た目
松茸だろ?香りもいいし……」
「それが罠なのっ!この茸はね、アホウダケって言って、
人間を化かすんだよっ!」
「……ア、アホ?」
「しかも悲しいお知らせきゅぴ、しかもこの茸は……、
アホと断定した人間を幻覚で騙すの、だから、ジャミル、
マツタケさんと間違えたでしょ?」
「あ……」
ジャミルが地面に落ちた松茸をもう一度良く見ると、
悲しいかな……、松茸とはとても似ても似つかない
グロテスクな色の茸が転がっているだけであった……。
「ぎゅぴいい~……」
「……あは、あは、あははは……、あ、あのさ、チビ、
この事はさ、恥ずかしいからさ、誰にも言わないでくれや、
な?頼むよ、……チビちゃん……、チビさああ~んっ!!」
「嫌きゅぴ、約束守らないジャミル嫌い、ぷんぷん、
ぎゅっぴ!」
「……あああああ~っ!!頼む、チビちゃん、可愛い
チビちゃん!チビ様~っ!!」
優しいチビは結局、さっきの騒動を自分から誰にも
話す事はしなかったが、それから後は終始機嫌が
悪かったのである。
「ぎゅっぴぎゅっぴ!!」
「どうしたのかしら……、チビちゃん、何だか機嫌が悪いわ、
ジャミル見つけて、戻って来てからずっとよね、ね……?」
アイシャがちらちらとジャミルの方を目線で窺うが。
「何でかな、あは、あは、あははは……、困っちまうな……」
「……どうせまた、何かしでかしたんだよ、ジャミルがさ……」
「そうなんだよ、あ……」
「……」
ダウドの言葉に、焦ってつい口を滑らせたジャミルを
他のメンバーが一斉に見た。
「……ダウドっ、この野郎っ!誘導尋問に
掛けやがったなっ!?」
「何だよお!オイラ冗談で言ったのにっ!ふ~ん、
本当だったんだ……、プ……」
「ジャミル、チビちゃんが機嫌悪くなった理由、
ちゃんと聞かせて……、ね?」
腰に手を当て、アイシャがジャミルの方を睨む。
こうなったが最後、ジャミルはもう引っ込みが
つかなくなってしまったのであった。
「はあ、で、結局は暴走したジャミルがチビに
心配掛けて迷惑も掛けた、そう言う事で纏めて
いいかい……?」
アルベルトはそう言って、いつも通りしっかり常備していた
スリッパを取り出した。
「う~ん、ちょっと今回はガルガル度が
スギましたねえ~……、ジャミルさん……」
「わんわんわん!もうっ!ジャミルってばっ!独り占めは
ダメだよーっ!!」
「そうだね……、今日はニコがお仕置きして……、
あげようかなあ?」
「アル、ニコ様……、今日はしっかりお仕置きを
お願いします、ジャミルの為にも……、はあ~……」
「……おーいっ!アイシャーーっ!!」
流石のアイシャも、本日は呆れてジャミルを庇う気無しであった。
「じゃあ、一緒にお手伝いをお願いします、ニコ様……」
「うんっ、じゃあ、アルベルトー!♪いっくよーっ!」
「……ひいいいいい~~っ!!」
そして、アルベルトとニコにしこたま仕置きされたジャミル……。
アルベルトに叩かれ、頭部のコブがまるで茸が生えた状態に
なってしまった……。
「食いしん坊も程々にしないとよ、ジャミル……、
その内お腹が出ちゃうわよ……、食欲の秋とは
言うけれど……」
「で、でも、お腹が空くのは健康な証拠だよ!」
ユキに、めっ!をされ、まゆに苦笑されてしまうジャミ公。
「あーうー、も、もう……、こんな人生イヤだ……、
あううう~……」
「……ジャミルさん……、頑張って下さい……」
「自業自得……、だな」
さとだいコンビはフォローはしてくれてはいるが……。
やはり、大福アニキはクールである。
「あー、ジャミルさん、頭にきのこが生えちゃって
ますよー、取ってあげますねー!」
「こ、こら、バカやめろっ!おいっ、本気でっ、うわーーっ!!」
「ゆーな駄目だろっ、それは茸じゃなくてコブだからっ!」
「え?そうなの?ふう~ん……」
マモルがこの場にいなかったら、多分ゆうなは
ジャミルの頭のコブを本気で刈ろうとしたに違いない。
今日はつくづく天然と毒茸の恐ろしさを実感した
ジャミルであった。そして、この後暫くジャミルは
茸を口にしなかったらしい……。
zokuダチ エスカレート編・21