還暦夫婦のバイクライフ 51

紀伊半島を旅する 最終日

 ジニーは夫、リンは妻の、共に還暦を過ぎた夫婦である。
 早朝、ジニーは目が覚めた。窓のカーテンを開けて、外を覗く。白良浜が朝日に照らされて輝いている。きれいだ。
「ジニーお早う」
「お早うリンさん。今日はいい天気だ」
リンも外を覗く。
「あの鬼の洗濯岩みたいなのって、宮崎もそうだよね」
「そうなん?僕は見たこと無いから分からんな」
「宮崎行ったこと無いっけ?」
「無い」
「じゃあ、次は宮崎行くか?」
「いいね。知覧も行ってみたいし」
次の旅行は九州に決まりそうだ。いつ行けるかは分からないが。
「リンさん、朝食はまた部屋食だから、さっさと着替えよう」
「そうね」
二人は浴衣を脱いで着替える。
「失礼します。お早うございます」
布団片付け隊がやってきて、手際よくかたずける。その後仲居さんチームが朝食の準備をしていった。
「ではごゆっくり」
卓上に料理がいっぱい並んでいる。
「いただきます。今日もいっぱいだなあ」
そう言いながら、二人はご飯を頂いた。
 十分な量の朝食を完食して、仲居さんに片付けてもらう。
「不用品を送って来る」
「私も行く。お土産買っとく」
二人は一階に降り、昨日のうちに箱詰めしていた荷物を、宅配で送る手配をした。それからお土産を数個買って一度部屋に戻る。荷物を持ってフロントに行き精算してからバイクに向かう。フロントマンがバイクまで荷物を運んでくれる。
「ありがとうございました」
宿の人のお見送りを受けて、二人は出発した。
「結構荷物を送ったから、すっかり身軽になった」
「バイクの取り回しが軽いわねえ」
「リンさん、まずは三段壁に行くよ」
「オッケー」
今日もリンがナビを見ながら走る。
「え~どこだ?そこを右だけど、道が無いよ」
「リンさん、あそこが駐車場だ。止めるよ」
「?うん」
道沿いに広い駐車場がある。バスも止まるようになっている。そこにバイクを乗り入れて、止めやすい所を見つけて止めた。
「ジニー少し行き過ぎたみたい」
「え?でもここ、三段壁駐車場になってるよ?そこに歩道もあるし」
「本当だねえ」
「まあ、行ってみよう」
バイクを置いて、二人は下り坂の歩道を歩いてゆく。丁度観光バスがやってきて、駐車場に止まった。中から大勢の人が出てくる。
「ジニー急げ!人波に飲まれる」
「はい」
二人は早足で歩道を降りてゆく。すぐに三段壁の上の展望所に着いた。
「場所は合ってるねえ。今日のナビ様はあやしいねえ」
リンがスマホをチェックする。
「リンさん、この下に洞窟があるみたいだけど」
「パスしよう。団体さんが来たし、この先も長いから」
「わかった」
展望所で何枚か写真を撮り、早々のうちに離れる。
「次は南方熊楠記念館だよ」
「来た道戻るんだな?」
バイクに戻った二人は出発準備を整え、走り始めた。県道34号を走り、白浜のホテル街を通過して、白良浜を横目に見ながら走る。左手に穴が開いた島が見える。円月島だ。
「ジニーもう少し先に、眺望スポットがあるから止まってね」
「了解」
ジニーはスピードを落として、通りすぎないように気を付ける。
「あ、多分ここだ」
右カーブで円月島に一番近い所に、少し広い路側帯がある。車が止められないようにポールが何本も立っているが、バイクは通れる。そこにバイクを止めて、何枚も写真を撮った。
「さて、この先を左に入って記念館に行くよ」
「おう」
ふたたびバイクを走らせて、すぐに左に曲がる。海沿いの道を走り、記念館に続く小径に入った。少し走ってジニーは驚愕した。
「うお~やばいやばい、なんだこれ怖い!リンさん絶対止まるなよ!!」
ジニーは狭くて急激に上がる激坂に驚いたのだ。
「・・・・」
リンは無言で付いてくる。何とか無事に坂を上り切って、駐車場にバイクを止めた。
「危なかった。止まったら一巻の終わりだった」
「途中で止まるかと思った。2速で走っちゃって、ギヤ落とす間もなかったよ。クラッチ切ったらこけると思って必死でアクセル開けてた。怖かった~」
「ひょっとして下に駐車場あったっけ?」
「あったよ、ここに上がる道のすぐ先に」
「気が付かんかったなあ」
二人はヘルメットを脱いでバイクに固定した。ジャケットも脱いでバイクにかぶせる。そこから少し歩いて南方熊楠記念館までゆく。途中に昭和天皇の歌碑があり、熊楠との思い出を歌に詠まれていた。記念館は閑散としていて、ゆっくり展示を見ることができた。
「やっぱりこの人は異能だな」
ジニーがつぶやく。
 展示をすべて見終えて、お土産に曼荼羅Tシャツを二枚買って、駐車場に戻る。準備を整えて出発する。
「ジニー下り坂、怖いんですけど」
「大丈夫、ブレーキ効かせながらゆっくりと下りるから」
下りはそんなに怖くない。止まっても、ブレーキの操作で前に進むからだ。それでも気を付けながら下り切った先に、遠足で来たと思われる中学生の集団がやって来た。
「リンさん、良かったね。あの集団と記念館で鉢合わせしなくて」
「そうね!」
二人は降りたところにある不動明王に立ち寄り、お参りする。すぐそばにある京都大学白浜水族館に気持ちが引かれるがスルーする。県道34号に出て半島をぐるっと回る。前を路線バスが走っている。結構乗っている。バスが停留所に止まったのをかわして先に走ってゆく。次のバス停に、大きな旅行ケースを持った人たちが5人ほどいた。どうやら中国からのお客さんのようだ。その先のバス停にも10人くらいの旅行ケースを持った人たちが待っていた。
「リンさん、朝から思ってたんだけど、中国の人たちって、馬力があるなあ。観光地を路線バスに乗って観光するなんて。しかもやって来るバスは小さい路線バスだし、結構乗ってたし、しかもあの荷物。どう考えても乗れんよねえ」
「そうねえ」
「あれはもっと周回バスなりなんなり便を増やさないと、対応できんって」
バス停ごとに観光客が立っている。それを横目に走ってゆく。県道31号に乗り換え、白浜町から出る。
「ジニー私、ラクダ岩っていうのを見たいんですけど」
「ラクダ岩?あ、リンさんあのスタンドで給油するよ」
「はい」
左手にあるスタンドに立ち寄り、給油する。ハイオク2台で21L、188円/Lだった。
「うん、普通だな」
「そうね」
「ラクダ岩だけど、ナビできる?」
「出来るけど、時間がどうだろう。今丁度12時だし」
「多分二度と行かないだろうから、寄ってみよう」
スタンドを出て県道33号を先に進む。R42に合流してさらに走る。海岸沿いに走ってゆき、小山を越える途中で左側に横道があった。
「あ!ジニーそこ左」
「おおう」
ジニーは行き過ぎそうになってかろうじて横道に左折した。
「そのまま道なり」
「うん」
二車線の道を、海に向かって下ってゆく。途中でセンターラインが無くなり、さらに進むといきなり2ⅿ幅のコンクリート舗装になった。
「ジニーヤバい。突然行き止まりになったりしないよね」
「多分大丈夫。なんだかみかん畑の作業道みたいになってきた」
ビビりながら走ってゆくと、民家の裏を通り、何とか海岸の4m道路に出た。行きつくところまで行くと、駐車場で道は終わっていた。
「リンさん、こちらに立派な道がある。やっぱり今日のナビ様は曲者だな」
「どうなるかと思ったよ」
駐車場の向こうにはグランドがあり、学校の校舎が立っていた。
「星光学院?こんなところに?」
「校舎の横に車があるから、どこかに道があるんじゃない?」
「それにしてもすごい所だな。店も何もないや。まるで世間から隔離されているようだ」
「勉強がはかどるでしょうね。さて、ラクダ岩はどこかな?」
二人は浜に降りて、少し歩く。すぐそこにそれはあった。
「ん~、ラクダに見えなくはない」
「見る角度だねえ」
リンは何枚も写真を撮った。
「さて、ジニー次行くよ」
「白崎海岸だっけ?」
「そう。今何時?」
「12時50分だ」
「帰りの船間に合う?」
「どうかな。出航は16時20分だけど、だめなら橋渡るだけだよ」
「とにかく急ぎましょう」
ジニーは広い道を走ってゆく。それは来た道につながっていた。T字路を見落としていたのだ。ナビが距離優先になっていると、こういうことが起きる。
 R42に戻り、ひたすら北上する。
「ジニーおなか空いた」
「ハラ減ったなあ。それにしても、食べる所無いなあ」
二人は食べれる所を探しながら走る。
「あれは?・・・・閉まっとる」
「あれ・・・パーマやさんだ」
「あの喫茶店・・・閉まっとる」
「あ~開いとった~しまった~」
そんなやり取りを繰り返した挙句、右手に営業中の食堂を見つけた。
「リンさん、あそこだ!」
「わかった」
丁度車が切れた所で右に入った。
「どんな店?」
「入ればわかる」
店に入ると、地元に愛されているタイプの食堂だった。表に店員さんが居なくて、ジニーはどうすればいいのか分からず戸惑う。
「一品ずつおかずを取って、ご飯は注文するスタイルだな」
ジニーは二皿取る。リンも何点か取って、適当に空いてる席に座った。そこでおばちゃんが出てきたので、ご飯と汁を頼む。
「お会計は後払いです」
「わかりました」
「いただきます」
手を合わせてから早速食べる。すっかり平らげて、おなかもいっぱいになった。会計を済ませてから店を出る。店先に準備中の札がぶら下がっていた。
「ギリギリ間に合ったみたいね」
「うん。さて急ごう。もう13時55分だ」
2人はバイクにまたがり、店を出発する。
 R42をさらに北上して、美浜町を抜ける。
「ジニーこの先で右に曲がるよ」
「右ね、分かった」
ジニーは通り過ぎないように慎重に走る。
「もうちょっと・・・もうちょっと」
「リンさん、あれかな?」
「あ、それ!」
二人は右に曲がり、県道23号に入った。少し走ると港に出た。道は広くなり、県道24号につながる。常石ドックをぐるっと回りこみ、海岸線をなぞるように走ってゆくと、道の駅白崎海岸公園に到着した。
「リンさん、着いた。白いねえ」
「石灰岩だね」
ジニーとリンはバイクを駐車場に止め、あたりをうろつく。
「リンさん、さらに奥があるみたいだ。行ってみよう」
2人はバイクにまたがり、さらに奥に向かう。
「あ、未舗装だ。リンさんちょっと待ってて」
ジニーが先に走り、偵察する。
「奥にちゃんとした駐車場がある。ゆっくり来て」
「え~砂利道怖いなあ」
そう言いながらリンは未舗装路を走って駐車場に来た。ジニーの横に停める。
「あそこに階段がある」
二人はバイクを置いて、崖の上にあがる廻り階段に向かう。上がり切ると遊歩道があり、展望所に続いていた。次々に人が上がってきて、結構混雑している。周囲は石灰岩の白い岩肌が広がっていて、日光が白さを際立たせている。海の向こうに四国の山並みも見えていた。
「リンさん、この半島だけ石灰岩なんだな。あっちの海岸は普通の岩だ」
「不思議ねえ」
一通り風景を見た後、展望所から降りる。
「ジニーさっきの道の駅に寄って」
「どしたん?」
「一つお土産買って帰る」
「わかった」
バイクにまたがり、未舗装路をゆっくりと走り抜け、先ほど止まった駐車場に再び止まる。売店まで行って、一つお土産を買った。
「さあ、出よう。あとは家まで帰るだけだ。ジニー今何時?」
「15時20分」
「船間に合う?」
「15時50分には乗場にいなくてはならないから、間に合わないね」
「次の船は何時だっけ」
「確か18時過ぎだったと思う」
「あ~それならやっぱり橋渡れだねえ」
「そうだな。急ぐ理由もないし」
二人は道の駅白崎海洋公園を出発した。御坊由良線から御坊湯浅線へ乗り継ぎ、途中で右折して湯浅御坊道路の広川I.Cから高速道に乗った。
「リンさん、次のP.Aに止まるけど」
「ええよ。どしたん」
「おなかの調子が良くない」
「わかった」
15時50分、二台のバイクは吉備湯浅P.Aに止まった。ジニーはトイレに向かう。その後水分補給をして、少し休む。
「ジニーこの先はどう走る?」
ジニーはスマホの地図アプリを呼び出す。
「このまま阪和道走って、途中で関空に行って、阪神高速4号線経由5号線で神戸に行って明石海峡大橋かな。でも途中、一般道走った記憶がうっすらとあるんよね」
「まあ、行ってみたらわかるでしょう」
「今日は怪しいナビ様頼りだな」
16時15分、二人はP.Aを出発した。和歌山を通過し、泉佐野JCTで関西空港方面に向かう。まっすぐな高速道を駆け下り、阪神高速4号線に乗り換える。
「ふぁあ~」
リンがあくびを始める。
「リンさん眠い?」
「ねむいよ~」
「どこかに止まるよ」
「よろしく~」
そこからしばらく走り、泉大津P.Aに進入した。
「さすが大阪。ビルの下にP.Aがある」
「駐輪場も広いねえ」
バイクを止め、ヘルメットをホルダに固定する。
「リンさん、展望ルームに行ってみよう」
「オッケー」
二人はエレベーターホールに行ってエレベーターに乗り込む。11階にある展望ルームは、周囲がガラス張りで、全周景色が見える。夕日があたりの景色をオレンジ色に染めて、少しのわびしさを感じる。
「夕暮れか。何時だ?」
ジニーが時間を確認する。
「17時20分か。日が陰るのが早くなったな」
「ジニー明石海峡大橋見えるよ」
「どこ?」
「あの向こうにちっちゃく見える」
「うわあ、遠いなあ。そう言えば万博会場見えるかな?」
ジニーは捜すが見えなかった。
「そもそもどこでやってるのか知らんもんな」
「南港の向こう?」
「さあ?」
ジニーは捜すのをやめた。
 17時45分、暗くなり始めた高速道を再び走り始めた。途中で5号線に乗り換える。
「ジニーそこは右車線」
「はい」
「その先左車線」
「オッケー」
「あ、5号線が終わる」
「へ?あ、しまった。今の所右だった」
二人は間違って六甲アイランドに進入してしまった。一般道を走り、六甲大橋を渡ってハーバーハイウェイに乗る。そこからどこを走ったのか分からないままリンのナビを頼りに進む。気が付いたら阪神高速3号線京橋I.Cが目の前にあった。そこから高速に乗り、西に進む。
「リンさん、この先垂水JCTに行くみたいだ。案内が出てた」
「垂水?」
「うん。玉葱切ったみたいなところ」
「ああ、あそこね」
二台のバイクは垂水JCTを無事通過して、明石海峡大橋を渡る。
「ジニー淡路S.Aでご飯にしよう」
「うん」
橋を渡ると、観覧車が緑色にライトアップされているのが見えた。導入路に入り、S.Aに到着した。駐輪場にバイクを止め、ヘルメットを脱ぐ。
「ふう、疲れた。何時だ?」
「19時丁度」
「フードコートやってるよねえ」
「やってるんじゃない?」
二人は施設に歩いてゆく。フードコートは営業中で、券売機をしばらく見て悩んでいたが、ジニーはカツカレー、リンは丸ごと玉葱カレーを注文した。席についてしばらく待つ。隣の席のおばちゃん二人がしゃべっている。ひたすらしゃべっているのを聞きながら、リンが小声で言う。
「しまったねえ~もっと離れた席にすればよかった」
「うん」
出来上がったカレーを取りに行き、食べ終わって席を立ってもまだしゃべっている。
「良く話題が尽きないもんだ。さて、お土産見て帰ろう」
売店をうろうろして見て回る。さんざん悩んでから京都と神戸のお土産を買って、バイクに戻る。
「リンさん、給油するよ」
「はーい」
準備を済ませ、バイクを発進させる。そのままスタンドに寄り、ガソリンを給油する。2台で17.5L、214円/Lだった。
 20時丁度、二人はスタンドを出発した。そこからはゆっくりと走って淡路島を抜け、大鳴門橋を渡って四国に上陸する。
「リンさん、徳島道通行止めがある」
「え~そうなん?どうしよう」
「この先鳴門P.Aに止まって考える」
「わかった」
鳴門JCTから高松道に入り、その先の鳴門西P.Aで止まった。時間は21時丁度になっていた。
「う~ん、土成I.Cまで工事通行止めか。板野I.Cで降りて土成まで一般道走るか、このまま高松道行くか」
ジニーは考える。リンは疲れがたまっているのかどんよりとしている。
「リンさん、板野で降りて、土成で徳島道に乗る」
「そうする?少しでも距離は短いよねえ。わかった」
二人はそこで50分ほどゆっくりと休憩する。充分休んだところで再び走り始める。板野I.Cで降りて一般道を走る。夜の闇のせいか、何度か道を間違える。
「ジニーナビ様こっちと言ってる所、通り過ぎちゃったよ?」
「ごめん、あまりに細い道で見落とした」
「もう!知らんし」
リンが不機嫌になる。一度止まって、ジニーは地図アプリで再度確認する。
「行くよ」
ジニーは確認した通りに走り、土成I.Cに辿り着いた。徳島道に乗って走り出すが、周囲は真っ暗で、前も後ろも、対向車すら走っていない。真っ暗闇をヘッドライトを頼りに走る。あまり見通せないので、ゆっくりと走る。気付くとリンが後ろに離れてしまっている。ジニーが減速すると、急激に車間が詰まった。
「わ!びっくりした。遅れとるのはわかってるから、ジニーは定速で走ってよ!」
ジニーはまたまたリンに怒られる。しばらく走ると、前に遅い車が現れた。追い越し車線が出てきたタイミングで、ジニーがリンに声をかける。
「リンさん、追い越すよ」
「ええ?後ろ見てる?」
「見てるよ」
リンは100mほど後ろを走っている。
「追いついてきて、抜けってか~?よーし抜いてやろうじゃないか!おりゃああ!」
リンが加速して一瞬で追いつく。遅い車をパスして、そのままスピードを上げる。
「ジニーもっと飛ばせー」
「いや、前見えんし」
そんなやり取りをしながら川之江JCTを通過して松山道に入る。
「ジニーなんだか落ち着く。帰って来たって感じやね」
「うん。リンさん入野で休憩しよう」
「わかった」
二人は入野P.Aに進入して止まった。ヘルメットを脱いで、バイクのミラーに引っ掛ける。
「さすがにトラック多いね」
「まあね。23時30分だし」
「日が替わるねえ」
リンはスマホを操作している。
「ジニー徳島の下道は、ジニーが走ったのが正解だった。またナビ様にやられる所だったよ」
「ナビ様最短距離で案内するからなあ。昼間ならともかく、夜は迷子になるよ」
「そうだね。ここまで帰ったらナビ様いらないな。もう少しだから気合で走るよ」
休憩を切り上げて、二人は再び走り始めた。松山I.Cまで一気に走り、外環状を余戸まで走り、R56を市内向けて走る。家に到着したのは、0時40分だった。
「お疲れー」
「お疲れでした」
バイクを車庫に片付け、バッグを外して家に入る。休む間もなくバッグを開けて、中を出して整理する。すべて終ったのは1時30分だった。
「リンさん、もう寝るよ。朝から仕事だし」
「おやすみ~。私は休みだよ~」
「いいねえ。お休み」
ジニーは寝室でベッドに倒れ込んだ。長かった一日が、こうして終ったのだった。

還暦夫婦のバイクライフ 51

還暦夫婦のバイクライフ 51

  • 随筆・エッセイ
  • 短編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-11-01

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