全て私の理想
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耳から逃げた吟声の
行方を探して歩いたら
辿り着いたのは現の端
誰かの夢の入口
空に移る地上の輪郭
双眸を惹く街明かり
浮遊するあの影も
全ては誰かの理想
アスファルト伝う靴の音
韻律を刻む腕の運動
静寂を破る鼓動は
私の歩みの証
夢の地に傷をつけながら
その果てを目指し前を向いて
きっといつかは帰れると
かすかな希望を抱いた
それでも終点は見えない
疑いの声が先を駆ける
瞳に映る生命の影は
たしかにそこに満ちてる
空の紅が落ちた
鳥は家路に迷い始めた
私の足音が消えた
ここは本当に夢?
泡沫に酔う声
風に揺る黒い直線
空を揺蕩う燈火
全ては虚構の姿
夢と現を混ぜた
白〝夜〟夢の輝きに見惚れて
帰るべき場所も忘れて
私は瞼を閉じる
本物の夢に落ちて
回る景色に蓋をして
空っぽの本能を止めれば
全ては私の理想
全て私の理想