zokuダチ エスカレート編・10

復讐のゲス・6

……おい、オメエら、ケガしたくなかったらちょっとどいてろ……


「え?えええーーっ!今度はなにーっ!?」

……突如、何処からか……、謎の声が外の領内に響き渡る。
倒れていたダウド、突然起き上がりそのまま逃走しようと
するが、アルベルトに捕まる。


ケガするって言ってんだ、下手すっとケガぐれえじゃ
すまねえぞ、……死にてえのか……?……オラと同じに
なってもいいんか……?


「お、オラアアアっ!?あうーーっ!」


……パンッ!


「ふう、これで少しは静かに……」

アルベルト、ダウドの頭をスリッパで一発。大人しくさせた。

「す、スゲエえ、アイツ……」

「狂気技だ……」

「実は敵に回したら一番厄介な系統かもな……」

固まって丸くなり、ヒソヒソ話をする、
シグ、ユリアン、ジタンの3人。

「……其処、無駄話してる場合じゃないだろっ!」

「おう、ジタン、分かってんじゃねえか!」


……パンッ!パンッ!


「おおおおうっ!?」

アルベルト、ついでに余計な口を聞いたジャミルも
連打。……残りの男性陣達は自分達も叩かれない様、
なるべくアルベルトを刺激しない事を学習した。

「アルベルトさん、すごい……」

「モフ……」

「もうーっ!そんな場合じゃないったら!」

アイシャの言う通りである。こんな事してて
いいのだろうか。

「……例え弱い敵でも構わない……、ルーゼ様の
ご命令とあらば、どんどん殺ってしまいましょう!」

「……待て!悟飯っ!」

「むっ!?」

遠慮せず今にもジャミル達に突っ込んで行きそうな
悟飯をピッコロが止めたのである。

「ピッコロさんっ!何故止めるんですっ!!」

「……奴の気配だ……」

「え、えええ……」

「孫が来るぞ……」

「孫……?」

ジャミルの頭の中に、何処かの会社のおエライ
社長さんの姿が……、アルベルトに阻止されたので、
浮か……、ばなかった。

「……ジャミル、その孫じゃないよ……」

「分ってるからっ!スリッパ頭に近づけんなってのっ!」

「何処だっ、何処にいるっ!……孫……悟空ーーーっ!!」


「……此処だあああーーっ!!」


「!!」

ジャミル達と洗脳されているブロリー達との間に
割って入り、突如現れた謎の青年……。

「……カカロット……、貴様……、邪魔をするか……」

「おう、誰だか忘れたのです、痴呆が始まったようです……、
なので、お父さんはこれで……、アーーーー!?」

ブロリーは逃げようとしたパラガスの頭を
憎々しげに強く掴み、目の前に現れた
亀マークの胴着の青年を睨んだ……。

「ひっさしぶりだなあ、おめえら、……下界で
おめえらが操られてちょっこしわりィ事始めて
暴れてるらしいって界王様から聞いてよう、
んで、ひでー事になる前にって仕置きの許可が
出たからきてみたんだけんど、……んだよ、
ピッコロお、おめえ、まーたピッコロ大魔王に
なっちまったのかァ?……ベジータも、サイヤ人の
名がなさけねっぞ!」

「フン……、ごちゃごちゃと……、相変わらず
口だけは達者だな、孫……」

「カカロットおおお!黙れェェェェ!!……ルーゼ様の
命令は絶対だァァァ!!」

「たとえ悟空さんと言えども……、邪魔するのなら
容赦しない……」

「……お父さん、僕は本気であなたと勝負して
みたかった、お父さんを倒してみたかった!!」

「おい……、これ、どうすべ……」

ジャミルは困って仲間達を振り返る。今回は完全に
何も出来ない上、突如現れた青年といい、一体何が
何だか分からん状態になってきているからである。
青年はどうやらたった一人でブロリー達に
立ち向かおうとしているらしいが……。

「それにしても、あいつ……、どっかで……?」

「ジャミル、今回は僕らは引っ込ませて貰おう、
あの人に任せてみよう……」

「ああ、だけど……」

「うん、オイラもアルの意見に賛成ー!」

「……ダウド、君はホントに……」

「おう、オラの事なら心配いらねえっぞ、だから
早くどっか行っててくれ、おめーらが近くに
いっとよう、落ち着いて戦えねんだ!」

「う~ん、じゃあ、任せたよ……」

「ああっ!オラを信じろ!」

ジャミルは青年、悟空……、がそう言って
くれているので、女の子達を連れ、一旦
屋敷の門前まで避難し、事を見守る事にした……。

「だけど、……何だかなあ……」

今はただ黙って、状況を見守るしかないのであった……。

「よし、これで思う存分戦えらあ!悟飯、おめえ、
オラと勝負したいって言ってたな?」

「はい、お父さんを倒したい、……この手でっ!」

「……残念だけんど、悟飯、今のおめえじゃ
オラには勝てねえ、トランクス、……おめえもだ……」

「なっ!?何をっ……!?」

「ブロリー、ベジータ、ピッコロ……、おめえ達にも
忠告しておいてやる、おめえ達もオラには絶対に勝てねえ、
……なぜならよ……」

「……ッ!!」


「……洗脳なんかされてるおめーらの今の力はああああーーッ!
100パーセント本物の力じゃねえからだあああーーッ!!」


「ウオッ!?……が、はああーーっ!?」

悟空、言うが早いが、敵に突っ込み、まずは肩慣らしに
ベジータを軽くぶっ飛ばした。

「ちょっといてえぞ、ピッコロ我慢しろーーっ!!」

「おのれええええーーっ!孫ーーっ!!ぐ、
がほぁああーーっ!!」

次にピッコロをあっさり蹴り倒す。……遠くで
ぼーっと状況を見守っているジャミル達だが……、
本当に何が起きているのか理解出来ず。ただ、
たった一人で残りの5人相手に暴れている悟空が……、
相当凄いと言うのは理解出来たが。

「すげえ、あそこだけ世界が違う……、近寄れねえ……」

「ち、……近寄れって言われても、オイラ絶対
行きませんよお!」

「あはは、流石に今回は僕もダウドの意見に賛成かも……」

「かっこいいきゅぴー!」

「すんげーなあ!ホントに別世界の奴らって
色んな奴らがいるんだなあ!」

「……そうだね、僕ももっと色んな世界を
旅して色んな人に会ってみたいな、叶うのなら……」

「本当、ワクワクもんだよーっ!」

「モフーっ!」

何だかワクワクしてしまっている、チビさん、シグさん、
ティルさん、みらいさん……、の3人とモフルンさん。
ジャミルは頼むから、アイシャさんもワクワクして
ません様にと、切に願う……。のだが。

「あーん、素敵ーっ!」

「やっぱり……、やたらと刺激されるんじゃ
ありませんっ!デコピンっ!」

「ちょっとっ!私何もしてないじゃないのっ!
ジャミルのバカっ!」

「……もう~、二人ともしょうがないなあ~……」

「みらい、そんな時は飛空艇のクルージング、今度、
このジタンと、……どうだい?」

「……だから今はそんな場合じゃないですっ!」

〔ハリセンチョップ〕

場を弁えない緊張感のないジタン、みらいに
丸めた新聞紙で頭を叩かれた。

「何だかヒーローが出て来たって事は……、僕ら、
何とかこの場を切り抜けられるかな、ユリアン……」

「ああ、今は状況を見守ろう!それしか出来ないからな……」

(そう、ゆーなのヒーローには僕しかなれない、
……ゆーなは僕が守る!)

……と、後ろで皆様が状況を見守っている頃、
悟空は既にトランクスを殴り気絶させてしまっていた。

「がはあ……、ぐうううう……」

「トランクス、少し眠ってろっ、おし、次はっと……」

悟空は、今度、実子、悟飯の方を振り返る。
悟飯は憎々しげに父、悟空の方をじっと睨んでいた。

「僕は……、僕は負けなィィィーーッ!!ハアアアーーーっ!!」

「悟飯ーーっ!目を覚ませええええーーーーっ!!」

……親子は空中に飛びあがる。そして、激しいスピード、
技のぶつかり合い。しかし、結果は圧倒的であった。
悟空にノックアウトされ、悟飯、あっという間に地上に
落下する。

「お、お父……、さ……」

「よし、残るはおめえだけだっ!ブロリーっ!」

悟空はご飯の様子を確認すると、……最後に残った
ブロリーと対峙する……。

「……俺は奴らの様にはいかんぞ……、カカロット……」

ブロリーはのしのし悟空に迫る。しかし、悟空は
本当に余裕であった。

「オラ、おめえなんか全く相手になんねえからよ、
スーパーサイヤ人にもなんね、このまんま、素で充分さ!」

「……糞が……、……糞ガァァァァァァーーーーー
ーーーー!!」

「来いよっ、ブロリーっ!」

悟空が構える。ブロリーは本気であった。悟空に
突っ込んで来る。そして。

「……死ねええええーーーーっ!!」

「ああっ!」

悟空、ブロリーに殴られ、ふっ飛ばされ、……地面に
叩き付けられた。

「や、やっぱり……、あの人でもブロリーには勝てないんだよお!」

「ダウド、黙ってろよ!……敵の様子を窺ってんのかもしんねえ……」

「うん、僕も何となくそんな気がするよ……」

「くうくう……」

「むにゃ……」

「モフ~……」

疲れてしまったのか、飽きたのか……、アイシャと
みらいはモフルンを間に挟んで座り、すっかり
眠ってしまっていたのである。取りあえず
うるさいのが眠ってくれて安心するジャミ公。

「……何っ!ジャミルっ!」

「少しの間でも寝て身体休めてろっつーんだよっ、
おめーはっ!」

〔ぴんぴんデコピン×3〕

アイシャ、ジャミルに連打デコピンされ、
眠りのツボを刺激され、再び眠りについた。
そして、悟空とブロリーは……。

「……カカロット、遊びは終わりだ、……そろそろ
死んで貰う……」

「へ、へへ、さすがブロリーだな、やっぱ力は
ハンパねえや、オラ、ワクワクしてきたぞ!でもな……」

「……死ねっ!カカロットォォォォーーー!!……な、
何ィィィーーッ!?」

「……やっぱり、こんなモンか……」

悟空は自分に殴り掛かってきたブロリーの拳を軽々と
片手でばしっと受け止める。……やはり一応相手の
力量を確かめていた様であった。

「改めて確認したぞ、おめえは正真正銘のニセモンだ、
……ブロリーなんかじゃねェェェーーーッ!!」

「ガフウオォォォォォーーーッ!!……ガ、ガハ……」

「ついでに言っとくとな、オラはもう死んでるんだァァーーッ!
これ以上死なねェェェーーッ!!」

本当に……、ジャミル達には今自分達の目の前で
起きている事態を飲み込めなかった。……あの
ブロリーが、ボコボコにやられているのである。
悟空曰く、彼等は洗脳されている為、本当の力を
失っていると言っていた。それでも、たった一人で
凶悪ブロリー相手に立ち向かい余裕でシメている
悟空は本当に凄すぎであった……。

「ウウ、カカ……、ロッ……、ト……、貴様……」

遂にブロリー倒れる……。悟空の大勝利?であった……。

「……終わったみたいだ、……相手が倒れた……」

「ティル、ホントかっ!?よしっ、今度はこっちの番だっ!」

「はい、ジャミルさんっ!」

「みらい、行くモフ!」

ティルに確認して貰い、ジャミル達はブロリー達の
元へと走った。今度は此方の仕事である。ブロリー達に
清涼剤を飲ませなければらない。

「へー、その薬で完全に洗脳が元にもどんのかァ、
仙豆とはまたちがんだなあ」

「はい、目が覚めたらきっと皆さん、元の皆さんに
戻る筈です……、さあ、お薬ですよ……、飲んで下さい……」

「モフモフ!モフルン、みらいとお薬のお手伝い頑張るモフ!」

今回は人数が多いので、薬を飲ませるのにジャミル達
野郎も加わり、皆でブロリー達に薬を飲ませて行く……、
のであるが。

「……元に戻っても何かあんまり変わらない様な気……、
わわ!?」

「ピ、……ク……」

ダウドの余計なひと言が聞こえたのか、ブロリーの
瞼の端がぴくっと持ち上がった……、様な気が
したんである。ダウドはぶったまげ、コアラの様に
アルベルトに飛び付く……。

「ダウド、黙ってなってば!全く君は……」

「そうだぞ!どうしようもねえなあ!」

「……」

みさえの時の暴言を棚に上げ、シグが糞威張りする。
横で見ていたユリアンはアルベルトに自分もスリッパを
借りてシグの頭を叩きたい衝動に駆られた。

「ふう、これでお薬みんなに飲ませられたね、みらいちゃん!」

「はい、アイシャさん、お仕事完了です!」

「うふふ、やったー!」

「やりましたーっ!」

アイシャとみらいは喜び合ってハイタッチする。その
可愛らしい無邪気な姿に……ジタンのあそこは数分
立ちっ放し……、だったとか、ないとか……。

「よし、こいつらはオラがオラ達のいた元の世界に
送って行っていってやる、待ってろ!」

「あ……」

悟空は一人で6人を抱え、あっという間に瞬間移動で消えた。
そしてジャミルは漸く思い出した。悟空は一度、夜中に
ジャミルの部屋にいきなり現れて部屋のドアを壊して
いった事も。思い出すと微妙にムカムカしてきたが、
取りあえず、危険物全員、元の世界に連れ帰ってくれた
みたいなので安心はしたが。

「よし、みんな元の世界にぶち込んできたぞ!あの様子だと
当分起きねえなァ、多分、みんなもう全部忘れて寝てら!」

「さいですか……」

悟空は一瞬でその場に戻って来た。……そら、アンタに
あれだけ激しくボコられれば、一週間は目を覚まさねえよ……、
と、ジャミ公は思う。

「これでオラの仕事は完了だ!残念だけんど、此処までだ、
これ以上はオラは力を貸せねえようになってんだ、後は
おめえら、頑張ってくれよな!」

……おい、チートさん、力貸してくれよ……、と、
頼むからよ……、と、ジャミ公は思う。

「えー、悟空さん、帰っちゃうの……」

「淋しいですね……」

「モフ~……」

「ぴい~、お別れ悲しいよお……」

「ははっ!んな顔すんなよ、なんせオラ、死んでる
かんなあ、いつまでも地上にはいられねえんだなァ、
でえじょうぶだ、うん、きっとおめーらならやれるさ!
な!?」

悟空は力強い手で、アイシャとみらい、モフルン、
チビの頭をぐじぐじ撫でて励ますのであった。まるで
自分の娘達にエールを送るかの様に。

「はいっ!頑張りまーすっ!」

「よしよーし、2人ともいい返事だっ!」

「そうだぜ、レディ!このジタンもついてるぜ!」

「……悟空さんがいいんだもーん!」

「でーす!」

「モフー!」

「ぎゅっぴ!」

「……があああーーんっ!!」

アイシャとみらい、揃ってジタンを拒否。
……彼女達は完全に気がそっちに行って
しまった様である。

「バカだな、本当にバカだよ……」

「うん、バカだな、アルベルト!」

……シグに言われたくないだろと、ユリアン、
思う。最近は彼がシグの突っ込みに回って
いる様な、……無い様な。

「えうう~、だれかああ~、心が傷ついた
このオレに癒しおおお~、まだ見ぬ何処かの
可愛い子ちゃん、デートしてえええ~ん……」

「……コホン、……ジタンさん、あなたは
一体屋敷に何の為に来たんですかっ……!
しっかりして下さいっ!」

[ハリセンチョップ]

「あああ~、やっぱ可愛い女の子のお仕置き
……、きくう~ん……」

「ははは、はははは!まいったな、こりゃ!あはははは!
これじゃオラ、チチに怒られちまうなあ!」

「ジャミル、……ジャミルもやばいんじゃないの……」

「は!?何がだよっ!」

「だね、アイシャ完全に……、だよ、君ももう少し
しっかりしないと……、アイシャに愛想つかされ
ちゃうよ……」

「きゅぴ、アイシャは逞しいお兄さんが
好きみたいきゅぴ……」

ダウドとチビに突っ込まれ、アルベルトが静かに
ジャミルの肩に手を。……悟空はアイシャと
みらいにモテモテで困っている様であった。

「……んだよっ、俺は関係ねーぞっ!!」

やがて悟空も界王星へと戻り、辺りは嘘の様に
再び静けさが戻ったのである。

「はあ、ブロリー達も何とか片付いたか……、後は」

「……まだ危険クラス残ってるよお、グレイ達とか……、
今度は誰が、何処から来るのかな……」

「はあ~……」

ダウドの言葉に全員が肩を落とした……。まだまだ
先行き見えず。前途多難だらけであった……。

「とにかく……、前に進まねえとな、急ごう……」

そして一行は遂に、屋敷内部へと……、突入する……。

「……ゲスっ!!ルーゼっ!!出て来いっ!!
……仲間を返せっ!!」

しかし、中は誰もおらず、ジャミルの声だけが響き渡る……。

「誰もいねえぞ、……逃げたんじゃね?」

「シグ、そんなワケないだろう、まさか
ダウドじゃあるまいし……」

「……緑バカ、……オイラ傷付いたよお……」

「罠があるかもね、慎重にだね、気を付けないと……、
みらいちゃんもね……、今度は無理しちゃ駄目だよ、
大事な友達を助ける前に怪我でもしたら……」

「……はい、アルベルトさん、大丈夫、大丈夫です……、
モフルン……」

「モフ……」

「安心しな、レディ達、オレが守るからな!……ご、
悟空の野郎に負けて堪るか……」

「あーん、ジタンー!……オイラも守ってえええー!!
……女の子ばっかりずるいよおーー!!ううーん!」

「わ!コ、コラ!アホっ!!わわわわわ!!」

ダウド、ジタンに飛びつく。こんな時でも
マモルとティルは至って冷静である。だが、
直後、そんなティルを豹変させる様な現実に
立ち会うのであった……。

「……ああっ!?ジャミルっ、大変!!」

「アイシャ……、どうした?」

「あそこ……、ケイちゃんが……!!それと、
横にグレミオさんが!い、一緒に縛られてる!!」

「……ケイっ!!」

「……グ、グレミオ……!!」

アイシャの言葉に正面を見ると、螺旋階段
付近からぶら下がるシャンデリアに、ケイが
両手を縛られ、まるで見せしめの様に吊されて
いたのである。同じく、ケイの横には荒縄で縛られ、
一緒に吊されているグレミオもいた。

「……お、女の子に何て事をっ……!!許せねえ……!!」

「ジタンは……、オ、オイラが吊されてても、助けて
くれるかなあー、えへ、えへへ……」

「……」

何だか最近妙におかしくなっている様なダウドを、
冷や汗を掻きつつ、横目で見るジタン。

「……グレミオーーっ!」

「ティル、待つんだ、罠かも知れない……!落ち着いて!」

「アルベルトっ!……ううっ……」

普段冷静なティルがいても立ってもいられず
飛出そうとするが、アルベルトが何とか止めた。
だが、捕まっていると言う事は、グレミオは
どうやら洗脳状態ではなさそうだが……。

「……ああ、私は一体……、どうしてこんな事に……、
ぼっちゃん……」

「ケイっ!!グレミオっ!しっかりしろ、
今助けるからな……!!待ってろ!!」

「……グレミオ、僕だよ!分かるかい!?」

「……ジャミル……?……みんな……」

「!!ぼぼぼぼぼぼ!!ぼっちゃああ~ん!!
ジャミルさんっ!皆さんもっ!!……ああああ!」

皆の声に反応し、気絶していたケイがうっすらと
目を開け、現れたティルの姿を目にし、拉致られ、
気落ちしていたグレミオも反応。……そして……。

「……来ちゃ駄目だよっ!!……お願い、逃げて!!早くっ!!」

「ぼっちゃんもですっ!……は、はははは!早く
逃げて下さいっ!こ、ここここ!此処は危険……」

「グレミオっ、そんな事出来る訳ないだろう!
僕達は危険覚悟で皆と一緒に困難を乗り越えて
此処まで来たんだ!」

「そうだぜ、何言ってんだよ!そんなお約束は
百も承知さ!大丈夫だ、今行く!!」

「……ジャミル……、……馬鹿野郎……」

「……ぼっちゃん……、ジャミルさん……」

ケイとグレミオが止めるのも聞かず、ジャミルは
捕まっている二人の側まで急いで走る。

「……っと、何ともねえや……、いや、大概
こういうのってさ、近づくとお約束で床が
ぱかっと開いて下に落ちたりすんだろ?
……一応俺も警戒はしてたんだよ、でも、
本当に何もねえみてえだぜ!」

「はいはーい!そりゃ本当かーい?」

「……ラグナっ!!てめえ……!!」

「ラグナさんっ!……冗談はやめて下さいっ!!」

「……お前……、止めろおおーーっ!!」

「……みらいちゃん、おぼっちゃま、コレ、
冗談じゃないんだよ、……おじさん……、
お兄さんは本気だよ!」

螺旋階段上部にラグナが突然姿を現し、吊されている
ケイ達にマシンガンを向けた。……やはり此処からが
本当の最悪の事態の幕開けであった……。

「静かにしときな!その方が身の為だよん!」

「冗談じゃねえよっ!……今すぐ二人を降ろせっ!!」

しかしラグナは平然とした顔でジャミルと向き合い、
何故かいつもの笑顔を見せた。

「……忠告したのになあ、ま、仕方ねっかな、あのね、
お約束って言ったでしょ、お約束はね、いつでも
発動出来んのよ、お勉強はちゃんとした方がいいよ」

「……え……?」

ラグナがそう言うと、ジャミルの足元にパカッと穴が開き……。

「……う、わああああーーっ!?」

ジャミルは奈落の底に落ちて行く瞬間に、薄れゆく
意識の中で自分を呼ぶアイシャの悲鳴が聞こえ、
自分の後を追って穴に飛び込んで来たチビの姿しか
気を失う寸前、うっすらとしか脳裏に覚えていなかった……。

「……ジャミルーーっ!!あ……!!」

「アイシャ!!駄目だっ!!」

アルベルトが止めるのも聞かずアイシャも
急いで後を追おうとすると、瞬く間に穴が
塞がってしまったのである……。

「……ジャミル……、こんなの……、嫌だよ……、
どうして……」

「ジャミルさん……」

ティルもみらいも唖然とするがどうにも出来ず。
塞がれてしまった穴を見ているしか出来なかった……。

「ジャミル……、冗談……、だよな……?」

「マモル、……お前一体何処行ってたんだよ、
いたのか……?」

「シ、シグっ!うるさいなっ、ちゃんといたよ!
今はそんな場合じゃないだろっ!」

「そんな!……やだ、嘘っ!!嘘っ!!」

「……アイシャ、大丈夫だよ!……チビも一緒に
助けに飛び込んでくれた、……今はジャミルを
信じよう、それしか僕らには……」

「アル……、う、うう……、ひ、ひっく……」

「ふふ~ん!」

錯乱するアイシャを落ち着かせる様にアルベルトが
アイシャを慰めた。そんな2人をあざ笑うかのように、
ラグナが螺旋階段の手すりに手をついてニコニコしながら
一行を楽しげに眺めていた。その明るく楽しげな表情は
本当にいつもの陽気なラグナと変わらず……。

「なんてこった……、ジャミルがっ!……畜生っ!!」

「……ジャミル……、う、嘘だよな……?」

「くそっ!早く助けに行かねーとっ!でも、
あの親父が邪魔だなっ!!」

目の前の出来事が信じられず、ジタン、ユリアン、
シグが言葉を無くした……。

「……ジャミルさん……、嘘……、こんなの、
こんなのやだ……、酷過ぎるよ……」

「モフ~……」

モフルンをぎゅっと抱きしめ、みらいが肩を落とす。
大きく声には出さないが、マモルも静かにその場で
唇を噛みしめる……。

「……いやら……、あうう~、ジャミルうう~……」

……ダウドはダウドでショックを受けたのか
その場にひっくり返って倒れていた……。

「ちょっとおじさん行ってくるけど、良い子に
してるのよ?そこ動いたら撃っちゃうからね」

(こちらへ……、領主様からのお褒めです、
美味しいお菓子とお茶がお部屋にご用意して
あります、ささ、御休憩を……)

(へえ~、気がきくねえ~、此処の旦那様ってさあ~!)

……ラグナは部屋に隠れている見張りの兵と何やら
会話をしている様子であった。下にいるメンバーには
兵の姿は見えない。どうやら兵と交代し、自分は休憩を
しようとしているらしかった。ラグナは階段の先に有る
正面の部屋へと姿を消した。

そして……

「ん~?なんか、おっさん、さっきからあの部屋に
入ったきり出て来ねえけど……」

シグが首を傾げる。するとモフルンが思いついた
様にちょこちょこと動き出した。

「……モフルンがちょっと見てくるモフ!」

「モフルン、……お願い!」

「モフ!」

モフルンがラグナが入って行った階段の先の部屋まで
自分もこっそりと入って行った。

「……そうだ!今のうちに二人を助けよう!!」

「任せなっ!」

ユリアンの言葉にジタンが颯爽と階段の手すりに登り、
ジャンプすると、素早く二人が吊されている縄を
ナイフで器用に切った。ケイとグレミオは下に
落下するが、これ又ジタンが速攻で下にとび降りて、
ケイをお姫様抱っこで受け止める。介抱された
グレミオはスタンと床へと着地。何となく様子を
見ていたユリアンは……。

「……あ、何かずるいな、ジタンめこの野郎……、
はあ、俺も……、エレンをあんな風に抱き留め
られたら……」

「まず無理だね……」

「ダウドぉ……、速攻で言うなよな~……、とほ~……」

「……グレミオーっ!グレミオーっ!……無事で
良かった、本当に……」

「ああ、ぼっちゃん……、ぼっちゃんもご無事で
本当に良かった……、ぼっちゃん……」

「へへ、レディ、大丈夫かい?」

「……あ、有難う、アンタ確か……、チカン……、
だっけ……?」

「おいおいおい、……そりゃねえぜ~、オレは
ジタンだよ……!ちゃんと覚えてくれよなー!」

「……ご、ごめん、それよりあたしの所為で……、
ジャミルが……、ジャミルが……」

「!そ、そうです!私達の為にジャミルさんが……」

ティルと再会を喜び合い、頑なに抱き合っていた
グレミオだが、状況を思い出すと悲しそうな
表情になる……。

「……グレミオ……」

「ケイちゃん、グレミオさん、無事で良かった……、
ううん、二人の所為じゃないよ、大丈夫、アルが
言ってくれてる通り、ジャミルは大丈夫だよ、私も
信じてるから……」

「アイシャ……、あんたが一番辛いんじゃないの……、
ごめんね……、あたし、どうしていいか……」

「アイシャさん、……私も本当に何とお詫びをして良いのか……」

「ううん、私は本当に大丈夫だよ、……大丈夫だから……」

「でも、グレミオ……、グレミオはあいつらに洗脳
洗脳されなかったのかい?」

「……ぼっちゃん、その事なんですけど、グレミオは……」

グレミオは静かに、自分が此処に来た経緯を語り出す。
確かに自分はあの時、買い物帰りに黒い影に飲み込まれ、
意識がなくなり、そうで、気が付いたら魂の様な姿に
なっており、もう一人の残忍な自分が其所にいるのを
見ていたと……。だが、負けたくない、私はぼっちゃんを
守る者、その気持ちが洗脳を打ち消し、自分を取り戻す
事が出来た。だが、正常になった彼は疲れて力尽きて
しまい、問答無用でルーゼに捕獲され、先程の状態に
なっていた……。

「何だか凄いです、、これもグレミオさんが
ティルさんを思う強い気持ちが……、洗脳に
討ち勝ったんですね……」

「……あ、愛の凄すぎパワーって奴……?ほええ~……」

「ああ、いつだって……、大切な人を守りたいと思う
強い気持ちは皆同じさ……」

みらいが目頭をそっと擦り、ダウドが溜息を付く中、
マモルも行方不明のゆうなへ思いを馳せる……。

「でも、僕達だけが喜んでいられない……、ジャミル、
そして洗脳されている仲間を助けなくては……!」

「ええ、ぼっちゃん、命懸けで私達を助けに来てくれた
ジャミルさんと皆さんの為に……!このグレミオも
今度は皆さんのお力に……!」

「……ティル、グレミオさん、有り難う……」

アイシャがそっと二人の手を握ると、ティルと
グレミオも決意に燃えた目でアイシャへ静かに頷く。
側に仲間達も寄ってくるのだった。絶対に助けると。
ジャミルも洗脳されている仲間達も……。

「……モ、モフー!?大変モフ!みんな来てモフー!」

「えええ!?」

モフルンの声に、他のメンバーも慌てて階段を登り、
先の部屋の中に入る。すると其処には……、何故か
倒れて眠っているラグナの姿が……。兵らしき者の
声はしていたのに、部屋には他に誰も姿が見当たら
ないのである。

「んが~……」

「何これ……、眠ってるし……、何がどうなって
んのお……」

おそおそる……、ダウドがラグナを突っついてみる。
そして、頭も殴ってみた。ジャミルを穴へと叩き
落としてくれた恨みもあるのかも知れなかった……。
ダウドにしては珍しく、心から怒っていたのである。
しかし、ラグナは目を覚ます気配は無く、完全に
爆睡している様子であった。

「誰かに睡眠薬で眠らされたんだろうか……、でも……」

シグに続き、ユリアンも訳が分からないと
言った様子で首を曲げた。

「……ふ~ん、催眠スプレーを掛けられたみたいだな……」

「ええっ!?スケベシッポ!お前、そんなの見ただけで
わかんのかよっ!」

「何だよ、その言い方……、オレは元シーフだぜ、
それぐらい当たり前だろ……、てか、誰がスケベ
シッポだよ……」

「言いにくいからこの方がいいんだよっ、スケベシッポ!」

……あんたらもう好きにして下さいと、アルベルトは
単細胞コンビに呆れるのであった。

「あ、それよりもっ、チャンスですっ!……ラグナさん、
ほら、お薬ですよっ!正気に戻って下さいっ!!」

隙を逃さす、みらいが急いでラグナの口に清涼剤を……、
すると……。

「……もぐもぐ、むにゃむにゃ……、……んー、
良く寝たなあ、此処……、何処だい?あれえー?
皆もー!……み、皆揃ってどうしたの、恐い顔して……」

清涼剤を飲んだラグナは一瞬で元に戻るが……、
操られていたとは言え……、性格上、あまりにも
軽すぎる態度に、普段のほほんのダウドが熱くなり
ブチ切れた。

「……何だよっ!その態度はっ!よくも、よくも
ジャミルをーーーっつ!!」

「ダウド、駄目だよ!ラグナは操られていたんだからっ!」

「アルっ、何で止めるのさ!……アンタは自分のした事に
ちゃんと責任持てーーっ!!」

「やめてえーーっ!」

「……アイシャ……」

ラグナとダウドの間に割って入ったのはアイシャであった。

「もういいよ、……だって……、やっと……、ラグナさんも
元に戻ったんだもん……、嫌なの……、大事なマンションの
人達がこれ以上傷つけあうの、私、見たくない……」

アイシャはダウドの方を見る。その瞳は涙で濡れていた。

「ハア、ホントにもう、呆れたよお……、でもね、
オイラ思うの、お人好しばっかじゃ、世の中渡って
いけないって……、今回はホントにそう感じた、
いつかまた別の大きな壁が立ちはだかるんだ……」

「いいの、渡って行けなかったら、それならそれで、
別の方法がある筈だわ、ね?」

「……」

「ジャミルが、いつもそう……、教えてくれてるの……」

「……そうだね……、ジャミルなら……、ね……」

「ね、ねえねえ、……俺、何かやったのかなあ……、ね?」

「仕方がないなあ……」

アルベルトはラグナのやった事、詳しい状況を
本人に説明したのである。

「……え?俺が?操られてたっての?うっそーん!!
嘘でしょっ!!で、ジャミルを落とし穴に落とし
ちゃったっての!?……あらま……、んで、
ケイちゃん、グレミオにまで酷い事したってのかい……?」

「……」

男勝りなケイが力なく俯き、皆は呆れ、黙りこくる。
被害者その2のグレミオも言葉を閉ざす。当然の事
ながらラグナに罪はないのだが、だがやはり軽い
口調は聞いている者をいらっとさせるのであった。

「……だからちゃんと反省してよお!どれだけアイシャも
皆も心配して不安な思いしてると思ってんだよお!!いや、
反省して貰った処でどうにもならないけどさ……」

「ダウド、私、大丈夫だよ……、此処でメソメソ
してても仕方ないもん、ジャミルは大丈夫、側に
チビちゃんも付いていてくれる……、だから……、
今は他の皆を助けに行かなくちゃ!!」

アイシャは本当は誰よりも今すぐジャミルの所に
向かいたかった。けれど今は気持ちを切り替えて、
……ジャミルの無事を信じるほか無かった……。

「ご、ごめんな、アイちゃん……、ダウド、
こうなった以上俺も責任持って協力すっからさ、
さっさとその、ルーゼとブスとやらをブッ倒して
皆を助けようじゃないの!ジャミルもな!」

「……ラグナさん、……うん!」

「決まったな!でも、ラグナ……、ブスじゃないぞ、
ゲスだよ……」

「ユリボーくん、どうでもいいでしょ、悪人の
名前なんかさあ!わりィ事したんだもんさ!
こんな善良な俺に催眠術掛けるとか、たまった
モンじゃねーっての!」

「……ユリボー……、何か複雑なあだ名だなあ~……」

「おっしゃあー!!今度こそ暴れてやるぜっ!!」

「シフ……、あなたとも……、どうしても戦わなくては
いけないのだろうか……」

「……」

ダウドが真面目に呟いているアルベルトを見る。
真剣モードでもどうしてもスリッパを離さない
らしいので……。アルベルトとダウド、この2人は
最近代わる代わるで最近天然とボケが更に増していた。

(……僕もそろそろ戦いの時だ……、ゆーなの為にも……)

「よし、行こうぜっ!……アイシャも、もう泣かないで
くれよ?ジャミルは絶対大丈夫だ、な?」

「ジタン……、うんっ!!」

ジタンにも励まされ、アイシャが再び笑顔を
取り戻すのだった。

こうして、さっきまで敵であったラグナも再び味方に付き、
グレミオも加わって、メンバーは頼もしい戦力が増え……

……どんがらがっしゃああーーん!!

「大変モフっ!!ラグナのおじちゃんが階段から
落ちちゃったモフ!!」

「……だ、大丈夫ですか!?ラグナさああーんっ!!」

「まだまだ、前途多難……、みたいですね、
ぼっちゃん……」

「うん……」

……たかに、見えたが、まだまだ不安は残る……。
みらいの声に下でラグナがピクピクしながら
声を絞り出し、どうにか反応した……。

「……畜生……、足がもつれちまった……、
とほほお~……」

……一方、落とし穴に落とされたジャミルは……、屋敷の
最深部の地下にある水路へと落とされたのである。


「……ぴいい~」

???:大丈夫だ、ちょっと水を飲んだだけだ、
しっかあし、俺が此処通り掛からなかったら、
マジで溺れて死んでたぞ、ま、俺も経験あっからね、
ぐふふふう~!

「おじちゃん、笑い方が嫌らしいきゅぴ、それに
お顔も長くてきゅうりみたい、ちょっとお鼻を
いじらせて……、ぴー!」

???:こ、こら!よせっての!それより、水は
吐かせたけど、まだ油断出来ねえぞ、チビドラゴン
ちゃん、兄ちゃんが目を覚ますまでちゃんと側に
付いててやんなよ……

「きゅぴ……、おじちゃん、どっか行っちゃうの……?」

???:おじちゃんはおじちゃんで、色々と忙しいのよ、
……まだ若いんだから、俺が手助けしてやれるのは
此処まで、自分の危機は自分で乗り越えな、な……

「う……」

「……ぴ?ジャミルっ!」

???:お?反応したな?んじゃ、もう大丈夫だな、
チビドラゴンちゃん、くれぐれもおじさんの事は
黙ってるんだよ、いいな?

「……うん、おじちゃん、ありがときゅぴ!」

???:ぐっばあーい!んじゃあね~ん!
ぐ~ふふふうー!!

「……う……、チ、チビ……?」

「きゅぴーっ!!ジャミル、良かったきゅぴーー!!」

漸く目を覚ましたジャミルに飛びつき、チビが
ペロペロ顔を舐めた。

「よ、よせよ、チビ、くすぐってえな……、それより俺、
地下に……、此処、モロ、水道だな……」

「ぴ、ジャミル、気絶したまんまお水に落ちて
溺れそうになったの、でも……」

「……」

「通りすがりの正義の味方、キュウリマンが助けて
くれたんだよお!!」

「ハア……?」

あまりにも適当なチビの説明にジャミルは顔をしかめた。

「いいのっ!ジャミル無事だったんだから!それよりも
早く此処を出よう!!」

「……まあいいか、そうだな、何処かに上に行ける
場所がある筈だ、一刻も早く皆と合流しなくちゃな!」

「きゅっぴ!」


謎のキュウリマン:……ばえくしっ!!……あ~、やっぱ
少し無茶して風邪ひいたかね……


ジャミルとチビは地下水路を暫く歩き回り、漸く
上らしき階へと続く隠し階段を見つける。

「何だあれ?何か水路から物凄い勢いで泳いで来るんだけど……」

「ぴ?」

「あはははっ!!十四松だよっ!!……あ~ははははっ!!」

……水路をバタフライで泳ぐ謎の人物はそのまま泳いで
何処かに行ってしまった。

「見なかった事にしよ、……それより此処登って
みるか、……変なのと鉢合わせしなきゃいいけどな、
此処でウロチョロしてても……、ん?チビ、どうした?
まさか、又ウンコじゃねえだろうな……」

「ぴい……」

いつもの事ながら、チビが急に立ち止まる。チビが
この状態の時は大概は大量ウンコがしたくなって
動けない時なのだが……。

「今日は違うの、逆……、お腹がすいて動けないの、
キュウリのお味噌漬け食べたいよお……」

……どうやらさっきのキュウリマンがチビの腹の
ツボを刺激してしまったらしき……。

「おいおい、んな事言われても、んじゃ、ちゃんと
戻ったら又ホットケーキ作ってやるよ、……だから
もう少し頑張れるか?」

「ぴい!チビ、ジャミルのホットケーキ食べたい!
だから頑張るきゅぴ!ぴいっ!!」

「よしよし、約束な……、もう少しだからな……」

「きゅっぴ!」

ジャミルがチビの頭を撫でた。チビは何とか
元気を取り戻せた様であった。

「あ、でも……、この間のホットケーキは……、後で
チビのお腹がまん丸になって、何だかポンポコぽんに
なったきゅぴ、……何で?チビ、食べ過ぎちゃったの
かなあ?」

「……も、元々腹が丸いんだから仕方ねえだろ、
あ、あはは……」

「ぎゅっぴ!」

「いてっ!」

チビがジャミルの頭を爪で叩く。……膨らし粉の件は
しっかり黙っていた。

「♪きゅぴきゅぴ~、ホットケーきゅぴ~!」

「はあ……、どうにか誤魔化せた……、お?」

「どうしたの~?」

「……何だか、水路の水が……」

「ぴ?」

ジャミルとチビは地下水路の水を覗き込んだ。……水が泡立ち、
段々と波紋が広がって来る。

「……お、お水の中から、な、何か出てくるよお!」

「チビっ、気を付けろっ!」

ジャミルはチビを庇いながら身構える。……波紋は
どんどん広がって行く……。

「ぎゅぴーっ!おけつが出てくるきゅぴ!」

「……う、わああああーーーっ!?」

何と、今度は水路から……、とぐろウンコがついた
生ケツが出てきたのである。ジャミルは腰を抜かし、
思わずその場に尻もちをつき、動けなくなってしまう。
……上の階への階段を目の前にして……。話は非常識な
ワールドに突入しようとしていた。

「ジャミル、大丈夫ぴ!?」

「だ、大丈夫じゃねえっ!ああああーーっ!?」

「おい、あんたダレ?こんなとこで何してんの?
大丈夫?」

「……ぎゅぴいいーーっ!?」

にゅっと水路から姿を現したアフロの大男……、
ボボボーボ・ボーボボであった。

「んぎゃあああーーーーっ!!」

「何でそんなに脅えてんの?……暑いから、ちょっと水路で
泳いでオナラしてただけじゃないの、よっこらしょ……、
別におかしい事してないよ?普通に誰でもする事でしょ、
……屁はちょっと実も混ざっちゃったけどさ」

「!!……あ、あの波紋はてめえの屁かあああーーーッ!!
……充分おかしいわいーーーッ!!」

「びいいーーーっ!!」

「そうだよ、人間オナラするの当たり前でしょ、
ふう……、今日は良く泳ぎましたねえーーっと、
こきこき」

……又変な相手に遭遇してしまった。今度は何処までも
得体の知れない、測り知れない変態ボーボボ。ボーボボは
水路から上がると、正座して肩をこきこき鳴らし始めた。

「ねえ、お茶ないの?折角だからおもてなししてよ、
オレ、お客様でしょ」

「んなとこにある訳ねえだろがァァァーーーッ!!
……てか、客ってなんだっ!」

「んもう、アンタ、すぐ切れんのネ、ウチの
ビュティみたい、そんなにあんまり切れてばっか
いるとね、痔になるよ、気を付けなさいね、ふんふん」

「ジャミルはもう、 ゛ぢ゛ ……になってるきゅぴ」

「……チビいいーーっ!余計な事言うなーーっ!……は……」

と、此処まで変態の相手をしていて、疲れてきた
ジャミルはある事に気づく。又、ルーゼが適当に
捕まえてきて、洗脳したんだか何だか、そんな
気配が全然感じられないのである。

「よう、あんた……」

「ん?」

「洗脳……、されてる?ねえ……」

ジャミルが訪ねると、ボーボボは眉毛を曲げて
首も曲げ、フクザツそうな……、変な顔をした。

「ん?ん?ん?……そんなモン、途中で切れち
まったよ、パッチ達はまだ解けないみたいだけどな、
どっか行っちゃったから、オレ、アイツら探して
屋敷中ウロウロしてたら、此処に来たんだよ、ルーゼ様、
ルーゼ様とか、言ってさ、オレもなーにしてたんだかね、
と、バカみたい!」

……得体の知れない真の変態には洗脳なんて
ものは無駄なのかも知れない……、と、ジャミルは思った。
しかし、ラグナと違い、この男は洗脳されていた時の
記憶はあるらしい。

「ふ~ん……って、……鼻糞飛ばしながら話すんじゃ
ねいやいっ!」

「鼻糞のサーカスだよ、……ふんっ!」

ボーボボは自分の鼻の穴から隕石の大きさ程の鼻糞を
放出。水路に落とした。

「……ぎゅぴいいいーーーっ!?」

「チビ、これくらいで驚いてたら、この先もこの話
やっていけねえぞ、慣れろ、慣れるしかねえんだ……」

「ぴ~、チビ、このおじちゃん、嫌ぴ~……」

「ドラゴン君、オレはおじちゃんじゃないぞ、……JKと
呼びなさあああーーーいっ!」

ボーボボは、いきなりピンクのレオタードスタイルに
なると、鞭と蝋燭を持ち、ピンヒールを履いて地面を蹴った。

「……えーかげんにせんかあああっ!!しかもJKじゃ
ねえだろがああああーーっ!!」

「ワタシは女子高生よおおおッ!ボーボボ女王様と
お呼びいいいいッ!」

チビは怯え、ますます何が何だか分からなくなり、
変態を目の前に相手にし、ジャミ公は泣きたくなり、
疲れて来ていた……。一体、この状況をいかにして
打破できるのだろうか。

zokuダチ エスカレート編・10

zokuダチ エスカレート編・10

SFC版ロマサガ1 トモダチコレクション キャプテン まほプリ ロマサガ3 FF9 わんぷり FF8 コードネームはセーラーV クレしん メタルギアソリッド クロスオーバー バカ どんどん増える変な住人 カオスな世界 ドラクエ オリキャラ 陰からマモル 幻想水滸伝ティアクライス 幻想水滸伝1 D・B ボボボーボ・ボーボボ

  • 小説
  • 短編
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-10-11

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二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

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