『MV集。』

YouTubeで視聴したミュージックビデオからイマジネーションを想起させられた詩を置いています。

わたし個人のファンアートのようなもので、ご本家のMVの制作意図や人びとのご感想を否定するものではありません。

『idol.』


By LE SSERAFIM Kawaii (Prod. Gen Hoshino)



たったひとりの神さまは知らない。
微笑みの睫毛たちが世界を、焼き菓子のあたたかい匂いと極彩色の甘い言葉で満たすこと。


いつくしむ手遊びしようよ。
手作られたフィクションとともに。
手繰る透明艷やかな爪先とふるえる生身リフレイン。
涙の味がこの星からするとしたならかわいいきらめきに変えてゆける、わたしたち。


闇夜から生まれた綺麗な伝達。
神さまを奪い合うより繋がる象徴。
願い花咲かれ夜空に。
豊かな火種の創造。
神さま泣かないで。
超えてあげる。



『ワンダラーゲーム。』


By ORANGE RANGE ロコローション



規制線張り巡らせたイエローライン。
公然の秘密ぶち破るには道具がいる。
小箱も女もテレビジョンも会議室も。


手足耳朶唇動かす前に、目見開いて脳内コラボレーション。
手に入れたカード組み合わせ次第、化学反応生んで熱視線。


脳ひとつで上手くバカやることだ。
冷暖房完備の一室。AIが微笑む時代に。


拳高げて雄叫びあげたって潤滑油が自己紹介世代には流行らない。
ゆらゆらリズム途切れないようタップ紡ぐだけ。


悟ったふりして通り過ぎようとしたクライアントに、美味い空気吸わせてお互い楽しくいこう。
クレバーにスマートに泳ぐより、こちとら発想のひねりで灼熱と極寒の地上を生きている。


この地獄のロケーション。
良い感じに調子を外して強く歌おう。
ご唱和を。



『High time.』


By 東京事変 能動的三分間



きみの揺らぐ瞳を噛む。
冷えた水槽こころのあぶく構わず掴む。
温かい指ものみこむ暗がりの小部屋。
都市電灯静まる世界の一室。
秒針信じて短時間で撃ちこむ沈黙。
きみのためだという独白は僕の孤独だ。


昨日、上層の真夜中乗りこなした非日常に、下層はまだ朝焼けの夢を見ている。
明日は僕に罰が下る。
それは扉を開けたからではなく何が罪かをわかろうとしなかったからだ。


時が成る。
美しく歪むベースラインが壁震わせるきみの部屋で、今、僕は地獄を紐解く。


知恵の実も蛇も現代においては無力だ。
誰もが恥知らずの身。
きみに捧ぐ銃痕の心臓。
僕に、きみの怒りをくれ。



『リズ。』


By iri 渦



日が昇る、唇染めて生きるために人類にまぎれる。
ちからをかして歌うひと。


地下鉄の喉笛。踏切のまたたき。黒く濡れるアスファルト。拍数急かすアナウンスと大画面広告は安売りの笑顔たち。
肩に誰かの雫。
鞄に当たる顔の見えない苛立ち。
雨空の優しさに誰もが哀しげにうつむいている。


なないろのちいさな雨傘、駆けてゆく。
フラッシュバックする湿った匂い。
映像ノイズは片まぶた閉じて。
腹底響くバスドラム靴音鳴らして。
イヤフォンミュージックは雑踏の雨曝しをヴィジョンに変える。


今度は笑わずに問うてみたい。
天秤の答えや掌の未来なんて待たずに。
ハイヒールもキャットラインももっていない。
けれど、宇宙の海原に連れていきたいやつがいる。
ボロ靴と黒縁眼鏡でコックピットに乗せて渦に落ちたら別世界。

夢から目覚めるように。


『ファルセット。』


By imase BONSAI



たまごのなかそれが世界一周なんて僕は信じなかった。
殻をこつこつシャープペンシルで叩いてひびわれた隙間からワンフレーズ漏れだした。
積み上げる凡才。
誰もが見上げたならしめたものだぜ。


真夏真昼お祭り、友達とノンアルコールで祝杯。
真夜中脳内プライベートルーム。
指先も耳も唇も足裏使ってだって生み出した僕の相棒たち。
届けたい声が多すぎるんだ。


たまごのなかここが世界一周なんて僕は笑えなかった。
人間は飛べないなんていまや昔のはなし。
夢を追いかけた多くの旅人はやっぱりパスポート鞄に忍びこませ空中旅行を楽しんでいる。


マイクを奪われたって僕は声あげたい。
ひとりぼっちじゃないから。
言葉とリズムのパズルどうかはまって神さま。
僕の才ときみの人生まじわらせて世界。

ここまでつみあげた上に立っている。



『そこにふれる。』


By 崎山蒼志 「嘘じゃない」



魂震わせ透るようにあらゆる声を手渡してみせる。
六弦に雨雪が降り落ちたって指先は熱を帯びた。


救うやりかたなんて知らない。
救われたことはない僕は。
それはあなたの怯えるたどたどしい眼差しを、支えない理由にはならない。


湿る森に舞う神聖さとかつて濁流した言葉の乾いた切れ端たち。
陽光が仄かに照らす僕たちを。
手を離したなら追いかけるよ。
見上げたなら泥くさい音色を掻き鳴らす。


あなたは暗緑の褥。
僕は岩石の舞台。


誰かへ捧げる海月の揺らぎのような愛を僕は否定しない。
そのままの言葉は手紙にはならないから、僕はあなたのそばにいた。
笑わないで。
手を握ろう。


『メッセージカード。』


By Mrs. GREEN APPLE PRESENT(English ver.)



教えないからたずねてみせてダーリン。

可愛い目的地までのロードマップは丸めて捨てた。
自由な風に驚かないで。

ハンドル握る赤いマニュキア時代。
みんな口ずさむような夜だからこそ口走らせるアイラビュー。

なにかあげたいけれどこの世にないものねだられたなら、どうしよう。
ケ・セラ・セラ。

ライトアップ信号がわたしを照らすからここは車内ダンスホール。
けっして教えないからたずねてみせてダーリン。

言葉の正体もゴールテープの色彩も。
煙草の煙揺らぎのなか星空指さすくらいゆるして。

驚いたまま喜ばせてみせる。
ついてきて。



『Dancer.』


By 星野源 Star music video.



肉色のシャツ纏って、誰も知らない町をゆらり指先漂わせる。
深い風が指間すり抜け、光の粒踊る踵にあたり星屑に彩られた。


いつか前髪分けたひたいに誰かが体温と祈りをおいていった。
あの頃の幼さを胸に横たわらせ誰ともすれ違わぬ空をいまだ夢見ている。


ビルの谷間にある木陰の未知。
ここが僕の踊り場だ。


細い草茨で編まれた中指の指輪に、細かい血潮流れたまま泣かずに笑おう。
立てたい中指おりこみ水たまりに破顔する。
世界の贈り物。


おそるおそる開けた。
奥底にどんな清水が自然と流れているのだろう。


僕が知らない誰かがくれた夏。
芸術的に爆ぜ割れた鏡だった。
果ての涙、金切り声と僕の遠い歌声のハーモニー。


ライトアップは無しだ。
暗夜の猫の瞳で笑い返してスター。
ただひとり、僕なんだ。



『Room.』



By 宇多田ヒカル Mine or Yours



いつかの、だいじな宝物をなくした。
たいせつな記憶をまだ思い出せない。


お茶とゆるやかに踊るキッチンで言って。
「いっしょにさがそう。」
「あかり灯してあげる。」


壁はあるけれど動かないわけじゃない。
ランドリー、扉の向こうタイムループ。
わたしのからだじつは生きてる。
わたしのからだのなか貴女ちいさく生きている。


わたしの宝物は木漏れ日光るおとしもの。
背もたれぬくもる椅子に腰かける、誰かの穏やかな記憶。
貴女のだいじなもの見つけた。
貴女のたいせつなものずっとまえから知っている。


護るわ。
生まれておいで。
青空の窓放ちて小部屋から吹き抜ける鮮やかな夏風。

『MV集。』

『MV集。』

YouTubeで視聴したミュージックビデオからイマジネーションを想起させられた詩を置いています。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-10-08

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