秋の夜風と線香花火

秋の
つめたくてやさしい夜風にあたりながら
目的も 目的地もなく
風に飛ばされるビニール袋のように 歩く
もう どこにも帰りたくないな
そんな思いを起こさせるのは
気の迷いか 論理的な結論か
秋はやさしい 持て余していたこの体温を
何も言わずに受け止めてくれるから
くだらない話を 黙って聞いてくれるから
人を煩わせることが
人と関わるうえで避けられないのなら
もう人と関わりたくないし
人でありたくもない
こう思ってしまうのは 幼いですか
たまには頭の中をからっぽにして
人間や人間社会のことも忘れて
世俗的なことから解放されて
風に飛ばされる綿毛のようにありたい
生活を軽蔑して
その日暮らしを謳歌したい
線香花火のように
潔く死ねたらなあ

秋の夜風と線香花火

秋の夜風と線香花火

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-10-02

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