zokuダチ エスカレート編・7
復讐のゲス・3
「それじゃあ、ジャミル、僕らそろそろ出掛けないとだよ、
気持ちを引き締めて行かないとね……、ダウドも…………」
「はいはい、……ンモ~、この話って何でこんな展開に……」
「おい、アル、お前……」
「何?」
「おいおいおい!何でオメー、スリッパを研いでんだよ!
おかしいだろ!?」
「何で?おかしいかい……?」
一見真面目そうで、アルベルトは最近ジャミル以上に
素で時々変な行動をとる事が増えた。ジャミルは
戸惑うが、すぐに冷静になって落ち着きを取り戻そうと
深呼吸した……。
「うおーっ!やっぱ此処って本拠地だったんだな!
燃えて来たぜーっ!!」
そして何故か飛び跳ねて興奮しだす、山猿のシグ……。
「……丸井、大丈夫かな、イガラシも、近藤君も……、
丸井の奴、敵の方にも暴れて迷惑掛けてないと
いいんだけど……、心配だなあ……」
……心配している箇所が微妙におかしい天然谷口……。
(やっぱり、何処かみんなおかしいからね、ズレてんだよ、
此処の人達は……)
「……勿論、お前もな、ダウド……」
「うわっ!?なんだよお!人の心の声読むなよお!!
それよりも、ジャミル……、今回もチビちゃんに
力を貸して貰う?その方が……」
「いや、今回は止めておこう、考えたくねえけど、
洗脳されてる他の奴らと一触即発になる可能性は
多分避けらんねえ、そんな事になったら……、
此処の皆もいつもチビを可愛がってくれてる、
……俺はチビにまで悲しい思いさせたくはねえんだよ……」
「……ジャミル……」
「……うう~」
……悲痛な表情のアイシャとダウドから顔を背け、ジャミルが
静かに声を洩らした。
「分ったよお……」
「……さて、皆、もう本当に準備はいいかい?俺達も、
目指すはナンダ・カンダ家だ、何としてもルーゼとゲスの
アホンダラバカを止めんぞっ!!……みらいの事、頼むな、
まだゆっくり休ませてやっておいてくれな……」
「うん、ジャミル、モフルンも側に付いてるから大丈夫モフ……」
「心のケアは愛の天使、この美奈子におまかせっ!」
「うん、僕もいるよ、こんな喋るだけしか出来ない
猫だけどね……、少しでも癒やしになれれば……」
「が、頑張ってくださいっ、皆さんっ!」
「わんわんっ!こむぎも応援してるからねっ!」
「……僕も信じてます、どうか、無事に帰って来て下さい……」
「……ジャミル、皆……、お姉ちゃんとトムの事、お願い……、
でも本当に無理はしないでね……」
「……フン……」
「……心配ですが、ご武運を……」
マンションに残る、美奈子、いろは、悟、サラ、
少年、谷口。そして、しんのすけを始めとする
お子ちゃま集団。皆で揃って、これからナンダ
カンダ家に向かうジャミル達を激励してくれている。
何が何でも友の為にも頑張るしかないんである。例え、
これが危険な罠だとしても……。
「……ああ~、女の子ってやっぱいいなあ~、オレ、
なんか此処に残りたくなって来た……」
「もうっ、ジタンたらっ!ダガーを助けに行くんでしょっ!!」
「じょ、冗談だよっ、へへ、やっぱアイシャは可愛いなあ~っ!」
鼻の下を伸ばし始めたジタンを今度はアイシャが注意。
それでも、アイシャに注意されたのが嬉しいのか、
ジタンの鼻の下は一層長くなった。
「……ま、待って……」
「みらい……」
「モフっ!みらいっ、ね、寝てなきゃだめモフっ!!」
ベッドで眠っていた筈のみらいがヨロヨロと
起き上がろうとするのをモフルンが慌てて
止めようとするが……。
「お願い、ジャミルさん、皆……、私も連れて
行って下さい……」
「だ、駄目だよ、お前は!身体が弱ってんじゃねえか、
連れて行けるか!」
「……そうよ、みらいちゃん、此処は私達に任せて……」
「みらいちゃん、無茶しちゃ駄目だよ、私達も今回は
マンションに残るんだよ!ね、ジャミルさん達を信じて……、
此処で皆で一緒に待とう!?」
「大切なおともだちが心配なんだね、こむぎも気持ちは
とっても分かるよ、でも、みらいがもしも危険な目に
あったら、はーちゃんや、リコだって、とっても悲しむよ!」
「そう、……例え洗脳されていても、本当の心はきっと……、
……まゆちゃんもユキちゃんも、……きっと苦しんでる……」
「……いろはちゃん……」
しかし、みらいは必死で自分を止めようとする
ジャミルとアイシャ、いろはとこむぎの言葉に
首を振った。
「足手纏いになるのは分かってます、でも、私にも
きっと何か出来る事がある、はーちゃんとリコを
助けたいんです、だって2人とも大切な友達だから……、
それに洗脳されて最初に皆に酷い事をしたのは、
はーちゃんです、私、はーちゃんの友達として、
……育ての親として、責任を持って一緒に罪を
償いたいんです……、そして、絶対に元に戻して
あげたいの……」
「モフ~……」
みらいの真剣な表情と決意の言葉にジャミルは
それ以上何も言えず、そして頷いた。
「分った、俺も全力で護衛をサポートするよ、宜しくな……」
「……ジャミルさん!有難う!!」
「モフー!モフルンもついてるモフ!みらいとモフルンは
いつもいっしょモフ!」
「うん、ありがとう、モフルン……」
(……プリキュアには今はなれないけれど、私、絶対に
自分の手で大切なはーちゃんとリコを取り戻すの、
諦めたくないよ……)
みらいも心に硬く決意を決め、モフルンをぎゅっと
抱きしめた。
「……みらいちゃん、本当に強いね……、分かった、
私、あなたの気持ちと声、受け止めたよ……」
「……いろはちゃん……」
「♪わんわん、こむぎもだよっ、みらいっ!」
いろはとこむぎはみらいをそっと抱擁。みらいも
彼女達の心の温かさを抱き留め、涙を溢す。
「……二人とも、有り難う……、大切な友達を
助けたいのは同じ気持ちだものね……、私、
頑張ってくるからね、二人の分まで……!」
いろはとこむぎに抱擁され、心が傷付き、
塞ぎ込んでいたみらいは漸く前を向いて
再び歩き出す事を決意したのであった……。
大切な友達を救う為に。
「いいなあ、やっぱ女の子って……、オレも……」
「こら、ジタン、中に混ざってきちゃダメだよっ!
おじゃまわんっ!」……うう~っ!」
「……はい、こむぎちゃん、……お、お願いだから、
急に犬に戻ってシッポ囓らないで……、痛いよ……」
「おしおきって楽しいわん♪わん!」
「も、もう~、こむぎってばあ~……」
……段々こむぎがサドになっていきそうで
心配になる相棒のいろは……。
「ハア、後はと、ほっとくと何するか分かんねえ
爆発暴走娘の護衛も……、もしも俺の目がどうしても
届かねえ時は……、どうすっかなあ……」
「何よおーっ!ジャミルのバカっ!!私、子供じゃありません!
護衛なんか大丈夫だもん!いーっだ!」
「……言ったなあ~、そんな台詞は誘拐されなく
なってから言えっつの、ジャジャ馬!」
「また始まった……、本当にあの2人は……、全くもう……」
「アル、あれがなくちゃ、ジャミルとアイシャじゃないよ、
……逆に怖いよお……」
「そ、そうだね……」
「……仲が本当にいいんだね……、二人は……、ふふ、
過保護……、か」
「え?ええ、あはは……」
ぎゃあぎゃあ揉めるジャミルとアイシャの様子を
微笑ましい?目でティルが見つめている。何だか
困ってしまうアルベルトなのだったった……。
「またおねいさん達、怖いおばさんのところに
行くんだね、たくう、忙しい人達だなあ…、でも、
オラもひまも応援してるからね、いい子で待ってるゾ!」
「やいいい~……」
「ぼく、も、……おう、えん、ボオオオーー!」
「しんちゃん達、有難うね、頑張るよ!」
「うん、絶対戻って来るからね、リコとはーちゃんと
皆と一緒にね!」
アイシャとみらいはしんのすけ、ひまわり、ボーちゃんを
そっと側に抱き寄せた。
そして、ジャミル達は、マンションに残った護衛組に
見送られながら、……再びナンダ・カンダ家へと足を踏み出す。
「ハア……」
玄関から外に出るといつもの第一声の溜息が漏れた。
犯人は当然……、彼である。そして、マンションから約、
30分ぐらい距離を歩いた時だった。
「ううう~、ううう~……」
「ダウド……、お前また、嫌だとか抜かすんじゃ
ねえだろうな……」
「ち、違うよお!……今から歩いてナンダカンダ家
まで行くのは流石にきついかな……、と、もう夜も
遅いしさ……、ほら、良い子は寝る時間だし……」
時刻はもう夜の23時を回った処であった。
「……結局愚痴じゃねえか、急がねえと大変な事に
なるんだぞ!ちゃんと分かってんのかよ、オメーはよ!!
ええーーっ!?」
「知りませんよおー!だからオイラは歩いて
行かなくてもいい方法を考えてみようって
言ってるんだよお!急いで歩いても走っても、
今からじゃ間に合わないかもしれないじゃないかあ!!」
「……んな方法あるかっ!」
「ない筈ないよおっ!タクシー拾うとかさあ!」
「おいおい、お前ら穏やかじゃねえなあ~……」
「こんな時に喧嘩してる場合じゃないだろっ!」
「どうしようもねえぞ!やれやれ……」
「……」
「……早くして欲しいんだけど、こうしてる
間にもゆーなが……」
「あの……、みんな、ごめんなさい、ジャミルと
ダウドがお騒がせで……」
アイシャが代表でジタン達、野郎共に謝る。
……普段の自分のジャミルとのケンカは棚に
アゲアゲ。
「ん?何でアイシャが謝るんだよ、いいんだって、ほらほら!」
「でも……」
ジタンがアイシャを宥めるが、馬鹿2人の喧嘩は
ますます止まらなくなっている。
「おめー、いい加減にヘタレ治せよ!」
「……ジャミルの頭のバカも治せよお!」
「……糞ヘタレ!」
「……糞糞糞糞×100バカ!」
「わ、わわわわ~!」
「大変モフ……」
「みらいちゃん、下がって、此処は僕がどうにか……」
「アルベルトさん……」
アルベルト、スリッパを取り出す。……切れていた。其処へ……。
……きゅっぴー!
「きゅっぴ?」
「こ、この鳴き声、まさか……」
「チビちゃんだわ……」
ジャミル、ダウド、アイシャの3人が上空を見上げると……。
チビがレッドドラゴンと共に上空から地面に
降り立ったのである。あまりの突然の出来事に
ジャミル達は唖然とその場に立ち尽くす……。
「チビ、お前……、どうして……」
そして、マンションに残った居残り組は。無事に
ジャミル達が帰省した時の為のお祝いパーティの
準備に取り掛かっていた。少々、気が早い様な
気もするが、これが残った皆の精一杯の心からの
気持ちであった。いろは達、女の子達はパーティ
ルームでドタバタお料理。……野郎はというと。
マンションのなが~い解放廊下を只管掃除していた。
現在、廊下をせっせとホウキで掃いている悟、谷口、
そして、大福も人間モードになり、悟と一緒に
行動している。
「しかし、凄い汚れだな、この廊下……、いつも
掃除屋のおっさんが来てるんじゃねえのか?なあ、悟」
「……う、うん……、でも、たまには奉仕作業も
いいね、僕も身体動かさないとだし……」
「はは、だな……」
「……頑張ろう!暫く練習が出来ない分、こう言うのも
特訓になる、よし、せっせせっせ……」
熱血昭和臭い糞真面目な谷口は、こんな時でも
特訓根性忘れず只管廊下をさっさと掃いていた。
そして、此方はパーティルーム。和気藹々と、
した雰囲気の中、楽しく、美味しいお料理が出来……。
「♪じゃ~ん、みてみて~っ!アルテミス、あたし達、
美少女カルテット達による、特製お料理の数々ーーっ!!」
「♪わんわん、こむぎもこむぎも!いろはと美奈子と
サラと一緒にがんばってつくったんだよーっ!」
「悟君……、よ、喜んでくれるかなあ……、ドキドキ……」
「……うわ……」
アルテミスが冷や汗を掻き掻き、後ずさる……。美奈子特製、
洗剤の入ったらしき、グラタン……。いろはのダークマター
おむすび再び……。こむぎ作、ドッグフード入りハンバーグ……。
サラは無言で只管、以前にトーマスに作り方を教わってマスター
した、ポトフに味付けをしている。
「……いい味、でも、もう少しコンソメ足した方が
コクが出るかしら……」
「……サラちゃあ~~ん、き、君は本当に……、正常な天使だ……、
ううう~……」
「あら、アルテミス、どうしたの?うふふ、もう
お腹すいちゃったのかしら」
「アルテミスーーっ!ほおーら!アンタ用の特製ご飯も
ちゃ~んと作ったのようーっ!こむぎちゃん達と協力してっ!!」
「♪わんわん、わ~んっ!」
「……ぎゃあーーーーー!!」
アイシャの破壊メシに負けないぐらいの料理を相方に
提供する美奈子……。現場はもう、エライ事に
なっておりやす……。少年は野郎枠で唯一奉仕作業に
参加せず、サラの側に居て一緒にクッキー作りを
黙って手伝っていた。
「……絶対、僕には構わないで……、お願いだから……」
「もう~っ!ナ~ンで逃げんのヨッ!……アルテミスの奴っ!」
「あの……、ちょっと、いい……?」
「あら、サラちゃん、ど~したの~?」
サラがおずおずと美奈子に尋ねる。だが、その
表情は異様に不安そうだった……。
「……しんちゃん達が……、い、いなくなってるのよ……」
「……な、なんですってェェーー!?」
「「えええーーーーっ!?」」
一難去って又一難……。ガールズ達が騒動を起こして
いる間に、しんのすけ達がいなくなってしまったのである。
料理処ではなくなり、現場は更に錯乱……。掃除をしていた
悟達も慌ててパーティルームに戻ってくるが……。
しんのすけは、いい子で待っていると、言った途端に
これだった。……又起きてしまった騒動に大きい人達は
頭を抱えるのだった……。
「ごめん、僕達も全然気づけなくて……、完全な
失態だよ……、ど、どうやってお詫びをしたらいいか……」
「ううん、私達だってしんちゃん達がいなくなってたの、
全然分からなかったの、謝らないで、ね……?」
「……いろはちゃん……」
「けど、オレ達が掃除をしていた時は、しんのすけ達が
廊下を歩いている様子はなかったぜ、なあ、タカオ……」
「は、はあ、そうですね……、おかしいなあ……」
大福に言われ、谷口も混乱する……。もしかしたら、
洗脳されている仲間が、ナンダカンダ家からこっそり
戻って来てしんのすけ達を連れ去ったのではないかと
いろはは不安になってくる……。
「キャインっ!キャインっ!」
「ばううーーっ!」
「あれ、あの声……、シロとぶるかなあ?
何か呼んでるみたい、こむぎ、行ってくるね!」
「あ、こむぎっ!」
こむぎは外の犬小屋へ一目散にダッシュ。
……数分後、人間モードになっており、
シロとぶる丸をパーティルームへと急いで
連れて来るのだった。
「い、……いろは、みんな、大変だよーっ!あのね、
あのねっ!……どうしようーーっ!!」
「こむぎ、どうしたの、落ちついて!シロちゃん、
ぶる丸ちゃん、一体何が……」
「あのね、あのね、あのねーーっ!」
いろはがこむぎを落ち着かせた後、シロ達と
話せるこむぎが2匹から聞いた話を伝える。
やはりしんのすけ達は勝手にマンションから
逃走し、マンション先で止まっていた怪しい車に
乗って何処かへ連れて行かれてしまったのだと。
……普段、繋がれている2匹は吠えているだけで、
何も出来ず。ただ、車に乗る前にしんのすけはシロに
こう呟いて行った。……オラ達、このおじさん達に
お世話になって、とうちゃんとかあちゃんに会いに
行ってくる、ちゃんといい子で待ってるんだゾ、と。
「……私……、何だか頭が痛い……」
「……」
「……大変ーーっ!!し、しししし、しんちゃん達がーーっ!!」
「いろはちゃん、ちょっと落ち着きなさいっ!
で、でも……、早くジャミル達に知らせないとっ!
だけど知らせるったってあたし達、外には出られないし、
どうすりゃいいのォォーーっ!アルテミスううーー!!」
「……み、みな……、ぐるじい……、僕の首……
しめないで……」
「……いろはちゃんも美奈子ちゃんも落ち着いて!
で、でも、やっぱりおかしい……、僕達、掃除を
していた時は本当にしんちゃん達の姿をみていない
んだもの……」
「だよな、オレもそれがおかしいと思うんだけどよ……
もしかして、見つからない様に別の入り口から外に?」
「……ねえ、あんた達、あれみたら……?部屋の隅っこ……」
普段余り喋らない少年が頭痛の起きてしまったサラを
気に掛けながらぼそっと口を開く。そして一同、衝撃の
事実を知るのだった。
「「……穴ーーーー!!」」
誰も今まで大して気にも留めず、気が付かなかったらしい、
小さな子供が通れるぐらいの穴が壁に空いていた。
しんのすけ達は恐らく、此処を通って勝手に外に出て
行ってしまったと推測。しかも、その穴は、昨日、
ジャミルとアイシャが此処で食事をしていた際、
口ケンカになった挙句、泣き出したアイシャが
ジャミ公をブン殴った際、ジャミ公がスライディング、
壁に衝突、ぶつかって出来た穴であった……。
「シロとぶるがジャミル達の処に急いで知らせに行って
くれるって言ってるよっ!そうだね、シロ達なら今から
でもまだ追い付くかも知れないよ!」
「ええっ!?……で、でも……」
いろはが心配そうに2匹を見つめる。だが、
シロとぶる丸は力強く、アンッ!ばうー!と
いろはに向かって泣いた。
「大丈夫、心配しないで、ボク達に任せてって
いってるよ、いろは!」
「いろはちゃん、ここはシロとぶる丸に任せた方が
僕もいいと思う、大丈夫だよ!信じよう!」
「……分かった、シロちゃん、ぶる丸ちゃん、お願い、
ジャミルさん達に伝えてね、でも、気を付けて……」
「アンッ!」
「ばうーっ!」
2匹はマンションの外へと一目散に駆けて行く。
その姿を見つめながら、マンション護衛組は
今回の事がどうか無事に終わりを迎える様、只管
祈るしかなかった……。
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