zokuダチ エスカレート編・5

復讐のゲス・1

……この変な島と不思議な異世界が合体し、一つの大きな
街が現れた。この世界に召喚されたのは、無論、心ある
人々ばかりではなく……、それは……。


……トゥルルルル……

「んだよ、まーた、黒子の野郎か、朝っぱらから
いい加減にしろよ、絶対出ねえからな……、屁なら
出るけどな!」

……ドゥルルルルルル!!

「……ええいっ、やかましいわっ!道路工事かっつーの!
もしもしっ!?」

ジャミルは黒子からの嫌がらせ電話に結局観念して
受話器を取る事に。

『もしもし……、連絡はちゃんと受けて下さい、
大事な事ですよ……』

「で、要件は何だよ、早く言えよ……、ふぁ……」


『……この島に……、どうやら悪い風が吹き荒れ
そうなのです……』


「ハア?台風か?自然災害なんか……、俺になんかどうしようも
出来ねえだろうがよ……」

『あなた方はこの島と未知の異世界を繋ぐ禁断の扉を
開いてしまった……、……災いが降り掛かるのはもはや
避けられない事……、くれぐれも目を背けられない様、
では……』

黒子はそれだけ言うと、受話器を自ら勝手に切ってしまう。

「もしもし?……もしもしっ!……なんだよっ、たくっ!!」

ジャミルは頭に来て、すぐに又床についた為、受話器の
向こうの黒子の言葉など、すぐに忘れてしまったのだった。


あなた方はこの島と異世界を繋ぐ禁断の扉を開い
てしまった……、……災いが降り掛かるのはもはや
避けられない事……、くれぐれも目を背けられない様……


黒子のこの言葉が一体何を意味しているのか、ジャミル達が
この言葉の意味を知るのは……まだ当分、先の事になりそうで
あった……。


「うふふ、おっはなさーん、まだかなーっ!」

「アンっ!」

「ばうー!」

早朝からはーちゃんが、マンションの外の花壇に間も
無く花を咲かせるであろう、球根たちに水をまき、
それを尻尾を振って見ている2匹のわんこ、野原家のシロ、
そして、新しく入った影守マモルの愛犬ぶる丸である。

「はーちゃん、早く学校に行く支度しないとよ!」

「はーい、リコー、今行くねー!あっ!」

「やあ……」

「おはよー!ことはちゃん!」

「はー、マモルくん、ゆうなちゃん、2人ともおはよー!」

マモルも登校前にぶる丸を散歩にと、ゆうなと一緒に
連れに来たのである。

「ぶる丸、散歩の時間だ、行くか?」

「おはよー、ぶる丸ちゃん!いこう!」

「ばうっ!」

「はー!行ってらっしゃーい!」

長かった夏休みも終わって、学生さん達は通常の新学期を
迎えようとしていたのである……。本当にいつも通りの
何も変わらない呑気な日々であった。……この瞬間までは。

「もしもし……?あの、お嬢さん……?」

「はー?……あ、はい?」

……マンションの中に戻ろうとしたはーちゃんに、
通り掛かりのむさ苦しい男が声を掛け、呼び止めた……。

「……ウ、ウウゥー……」

「ちょっと、シロ、どうしたの?大丈夫だよ……」

(ちっ、この邪魔な糞犬め……)

「ああ、あっしは、この街に親戚がおりまして、
暫らくぶりに来たんですが、いやあ~、数年も
たつと、すっかり街の様子も変わっちまいましてな、
昔、俺が住んでた頃とは全く違ってる訳でして……、
もう全然分らんのでゲスわ!」

「はー……、そうなんですか……」

「少し案内して頂けねえでゲスかねえ……、嫌、
ご迷惑をお掛けするのは承知なんすが……、
少しだけでも街の中を歩けば、何か思い出すかも
知れやせんし……」

「分りました、案内しまーすっ!」

「アンっ!?……アンッ!!」

純粋なはーちゃん、怪しい男を疑いもせず、街に
案内しようとし、危機を感じたシロ、はーちゃんの
スカートの裾を必死で齧って引っ張り止めようとした。

「シロ……、大丈夫だよ、そんな事しちゃ駄目だよ、
すぐに戻って来るから、ね?悪戯は駄目だよ、……あ、
こっちですよ!」

「へへへ、そうかい、お嬢ちゃん随分優しいねえ~、
けど、知らないおじさんには注意しろと学校の先生に
教わらなかったかい?げへへ……」

「……クウ~ン……」

無邪気なはーちゃん、怪しい男を連れて街まで出て
行ってしまう。男の語尾の言葉は聞こえていなかった
様であった。……それを黙って吠えて見ている事しか
出来ないシロ……。そして数分が過ぎ、玄関先では
急にいなくなってしまったはーちゃんを心配し、みらい、
リコ、モフルンが大騒ぎであった。

「はーちゃん、どうしたのかなあ、もうすぐ学校行く
時間だよ……、今日から新学期なのに……」

「……私が声を掛けた直後よ、いなくなったのは……、
本当にどうしたのかしら……」

「モフ~……」

「よお、お前らどうしたい?」

「……ああっ、ジャミルさあ~んっ!た、大変
なんですよ~っ!」

みらいがジャミルの姿を見つけると、慌てて手を
両手に上げてバタバタ振った。

「はーちゃんが消えちゃったモフー!」

「つい、30分前までは外の花壇に水をあげていて、
それまでは確かに姿を見掛けたんですけど……、でも、
その後急に……、どうしよう……」

「散歩に行ったんだろ?大丈夫だろ……、すぐ戻って……」

「はーっ!ただいまーっ!」

と、皆が心配している処に、呑気なことは嬢が帰宅する……。

「……はーちゃん、何処行ってたのよ!皆、心配したのよ!」

リコが詰め寄ると、はーちゃんはきょとんした顔をする。

「えーとね、困ってるおじさんに道を教えてあげたの!
……リコ、何でそんな怖い顔してるの?」

「それならそれでどうしてちゃんと私達にちゃんと
言ってから行かないの!急に消えちゃったら心配
するでしょ!学校に行く時間だってあるんだからっ!」

「何よ……、そうやっていつでもリコは私の事、
子供扱いするんだからっ!……私だって、何時
までも子供じゃないよっ!!リコ、うるさいっ!!」

「何ですって……?」

「わわわ!……はーちゃんっ、リコっ!2人とも
落ち着いてっ!!」

「モ、モフーー!!」

遂に、はーちゃんとリコは喧嘩をおっぱじめてしまう。

「おいおい、どうしたんだよ、何か今日オメー、
随分穏やかじゃねえな、取りあえず落ち着けよ……」

「……アンタはうるさいのっ!黙っててっ!人の事より
自分の頭の中身心配しなさいよっ!落ちた脳みそ探す方が
先でしょっ!!ノータリンなんだから!バカ、カラッポ頭っ!!」

「……ア、アンタ……?だと……?おい……、しかも……」

「……はーちゃんっ!何て事言うのっ!?ジャミルさんに
今すぐ謝りなさいっ!!」

はーちゃんはジャミルにまで食って掛かって行った。
だか、明らかに元気で無邪気ないつもの彼女と違い、
様子がおかしいのは鮮明であった。

「どうしようっ、モフルン……、これはもしかして……、
バブバブ、ヨチヨチ、……トコトコ期の間に隠されて
いたシークレットの……」

「……モフーーっ!ハンコウ期モフーーっ!!」

みらいとモフルン、抱き合ってパニック状態に……。

「はーっ!私、今日はリコがいるなら一緒に学校
行かないから!一人で行く、……じゃあねっ!!」

「勝手にすればいいわ……」

「!だ、駄目だよーっ!リコ、はーちゃん、2人とも
落ち着いてっ、ねえっ!」

しかし、みらいが宥めるもはーちゃんは勝手に
一人で行ってしまい、その場は最悪の雰囲気となる……。

「ほっときなさいよ、もう子供じゃないんでしょ、
大丈夫よ……、それよりも私達も学校行く支度
しないとね……、本当に今日から新学期なんだから、
みらいもいつまでも夏休み気分じゃ駄目よ」

リコが部屋に戻って行く。しかしその表情は暗く
酷く落ち込んでいた……。

「どうしよう……、こんなのおかしいよ……、絶対、何だか……、
はーちゃんなのに、はーちゃんじゃないみたいだったよ……」

「モフ~、みらい~……」

「まあ、気分が落ちつけば元に戻るかもしんねえから、
お前もそんなに落ち込むな、な……」

「はい……、ごめんなさい、ジャミルさん……、
はーちゃんがあんな酷い事言うなんて……」

「いいよ別に、んなのは慣れっこだしよ、けど、
びっくりしたのは確かだ……」

「はい……、私も信じられません……」

みらいも落ち込んだまま部屋に戻って行き、それを見た
ジャミルはやるせない気持ちになる。

「多分又、糞小悪魔リトルの仕業だな……、あの野郎、
今度こそとっちめてやる、たくっ!」

しかし……、ジャミルの思惑とは裏腹に全く別の処で
何かが動き出していたのをジャミルはまだ知らないので
あった。


「如何かしら……?段々、効果が表れてきたみたいね……」

「相変わらず、アンタの力はすげえね、……ルーゼさんよ、
ゲヘへ……」

「フン、今に全員洗脳して何もかもぶち壊しにしてやる、
見てらっしゃい、ちゃらちゃらと汚らわしい……、再び
このルーゼ様が本格的に動き出す時が来たのだからね……」

「そういやあのガキ共と、ナンダ・カンダ家は和解
したらしいな、ケッ、家族ごっこ気取りでよ、ほーんと、
腹が立つなんてもんじゃねえさ!まあ、俺を追い出し
やがったあのクソ家に復讐すんのも大事だが……、
それよりも先に……、俺に恥をかかせてくれた、
あのみかん色の糞小娘と、犬みてえな連れの糞娘共に
痛い目見せてやんねえとな……、ゲヘ、ゲヘへへ……」

「ええ、全力でサポートさせて頂きます事よ、ゲスさん……、
ふふ、ふふふ…」

「ゲヘ、ゲヘ、ゲヘゲヘヘ……」


「頼むぜ、マリアーヌ、しっかり悪臭で奴を
おびき寄せてくれよ、その為にわざわざお前を
借りて来たんだからよ、あいつはクセーもんが
好物だからな……」

「シャシャシャシャ!」

此処は公園……、ジャミルはマリアーヌが時々放つ
悪臭ガスを利用して小悪魔リトルを捕まえようと、
木の上に隠れてずっと目を光らせていた。


りゅ、りゅ、りゅ、りゅ、りゅ~!


「来たっ……!糞小悪魔だ、よーしっ!」

「……ああ、この香ばしい香り……、たまらんりゅ~、
りゅ~……」

「シャッシャッ!」

マリアーヌがガスを吐き、小悪魔を誘う。臭いに
誘われて小悪魔がフラフラとマリアーヌの側に
近寄って行き、ジャミルは鼻をつまみながら
只管小悪魔が罠に陥るのを待っている。

「……もう我慢出来ないー!いっただっきまっ
すりゅー!」

小悪魔が今にもマリアーヌに喰い付こうとした瞬間。

「今だっ!」

「りゅ……?りゅ~~~っ!?」

ジャミルが罠を作動させ、小悪魔は突如落ちてきた
ネットに捕獲され、ネットごと吊るし上げられ、
まるで冷凍ミカン状態に……。

「なんりゅーっ、これはーっ!?バカやろ、此処から
早くだせりゅーっ!」

「おい、リトルっ……!」

「は?ば、馬鹿猿、これをやったのはオメーかりゅ!
冗談じゃねえりゅ、早く此処から出しやがれりゅ!!
罠でおびき寄せるとはなんて卑怯なヤツりゅ!!」

「……オメーに言われたくねえ、出してやるけど、
その前にだな、聞きたい事がある、又変な悪戯して、
ことはの奴に魔法掛けやがっただろ、今すぐ魔法を
解け!さもねえと!」

「……な、何の事りゅ?」

「すっとぼけんな!今すぐ魔法を解けって言ってんだよ!」

「知らんモンは知らんりゅ!何言ってるかさっぱり
分からんりゅ!第一、リトルはここんとこ、何だか
魔法の調子が悪いから魔法は控えめにして使っとらんのりゅ!」

「……なんだと……?」

「信じられないんならこれ見てみろりゅ!」

リトルは持っていたフォークの先から魔法を放つ。
……出たのはぷすっと煙が一つ。

「これでも余計なMPの消費になってしまうじゃねーかりゅ、
……クソバカチンが!」

「本当にお前じゃないのか?」

「違うって言ってりゅ!いい加減にしろりゅ!」

ジャミルはしぶしぶ、小悪魔に掛かっているネットを
外してやる。小悪魔はジャミルにぶつくさありったけの
暴言を吐き、その場から逃走した。

「たく、普段が普段だから疑われんだよ、それにしても、
小悪魔じゃないとしたら、一体誰なんだよ、まさか……、
魔法じゃなくて、本当に反抗期なのか?」

ジャミルが仕方なしにマンションに戻ると玄関先で
モフルンが一人でぽつんとしゃがみ込み、しょんぼり
していた。

「ああ、お帰り……、お前がいるって事は、もう学校
終わったのか?」

「モフー、ジャミル……」

モフルンはジャミルの顔を見ると切なそうな顔をする。

「まだ仲直り駄目みたいだな……」

「モフ、……学校でもリコとはーちゃん、全然口も
聞かなかったモフ……、みらいも落ち込んでるモフ……、
モフルンこんなの嫌モフ……」

「ことははどうしてる……?」

「モフルン達ははーちゃんより先に帰ったモフ、……一緒に
帰りたくないって言ったモフ……」

「そうなのか、そこまで……、こりゃ相当深刻だなあ~……」

「はーっ、ただいまでーすーっ!お腹ぺこぺこー!」

「……モフ!?」

其処へはーちゃんが帰宅する。ジャミルにはその口調は
いつも通りの感じに見えたが。

「おい、ことは……、お前マジで今日、どうしたんだよ、
みらい達が心配してんぞ……」

と、ジャミルがはーちゃんに声を掛けた瞬間、はーちゃんは
ガラッと口調を変えた。

「はー!?うるせーんだよ!オメーには関係ねえっ
てんだよっ!バーカ!!あー、お前、タバコ吸ってんだろ、
私も吸いたい!よこせ!」

「……な、なっ!?……おーい、これ、今朝よりますます
悪化してねえか、おい……」

「……モフ~……」

「はーちゃんっ!!……いい加減にしなさいっ……!!」

「……リコ、駄目だよっ、お願いだから、落ち着いてっ!!」

騒ぎに気づき、リコが部屋から飛び出して来る。みらいは
今にもはーちゃんにビンタし兼ねない状態のリコを
止めようと必死であった……。

「はー!こーんなクソ面白くねえ処いられなーいっ!
遊びに行ってこよーっ!」

「はーちゃんっ……!ねえ、お願い……、ジャミルさんも
はーちゃんを止めて……」

「ああ!……ことはっ!!おめえいい加減にっ!!」

「はーっはっはっはーっ!アカンベー!ひゃはははは!」

……みらいの切実な訴えも空しく、はーちゃんは猛スピードで
マンションから逃走してしまった……。

「……お、俺、捕まえてくる!」

「いいんです、ジャミルさん、ほおっておいて
あげて下さい……、甘やかしたらはーちゃんの
為にもなりませんから……」

「……リコっ!」

「いいのよ、みらい……、これは私達の問題だから……、
これ以上ジャミルさんにご迷惑お掛けする訳に
いかないのよ……、ほら、みらい……、部屋に戻るわよ、
宿題だってあるんだから、ちゃんと終わらせないと……」

リコは再び肩を落とし、部屋へと戻って行く。表情は
今朝と同じで暗いままで。……その様子を見ていた
みらいは我慢出来ず涙を流した……。

「もうこんなの嫌だよ~、何がどうなってるか
分かんないよう……」

「……みらい、泣かないでモフ……、みらいが悲しい顔
したらモフルンも泣きそうモフ……」

「う、うううー……、ひっく……」

「俺がことはをどうにか捕まえてくるから、とにかく
お前らは部屋にいてくれ、な?」

「ジャミルさん……、う、はい……」

「みらい、ジャミルを信じるモフ……」

「モフルン……、ん……、ジャミルさん、はーちゃんを
どうかお願いします……」

「任せろ!」

ジャミルもはーちゃんを追ってマンションを飛び出して
行こうとするが。

「……アンッ!アンッ!」

「ばうっ!」

「いってえ!何だよ、シロと変な顔の犬か、こらっ、
悪戯すんなっ!お前らと遊んでる暇はねえんだよ!」

「……ウウウウ~……」

しかし、シロはジャミルのジーパンの裾に噛み付いた
まま放そうとせず。何かを訴えている様でもあり、
ぶる丸も何か感じたのかジャミルに吠え捲る。

「まいったなあ~、どうしたんだよ、おい……」

「ジャミルお兄さん、シロは何かお兄さんに伝えようと
しているんだゾ!」

しんのすけがちょこちょことマンションから出て来た。
チョコビを頬張りながら。

「何?マジか?お前、なんか知ってんのか……!?」

「……アンッ!」

そして……、火種は学校から帰宅途中のわんぷり組、
いろは達、仲良しチームにも降り掛かろうとしていた。
犬のこむぎと猫のユキも人間の姿でいろは達と一緒に
学校へ通っている。彼女達はこれからマンションで
起きようとしている非常事態を知らない。今日も楽しく
このまま、いつもと変わらない一日を終えられると
思っていた。帰ったら美味しい夕ご飯を食べて。

「ゆうごはんの前にみんなでおさんぽ!いっくわ~んっ!」

「もう~、こむぎったら、しょうがないんだから!
ふふっ!じゃあ、ちゃんと温かくして準備して行こうね!
大分秋風も強くなってきたし」

「♪わんわんっ!」

「そうだね、お散歩途中、喫茶店によって秋の
新作スイーツ満喫♡……、っていうのもいいかも……、
ね、兎山君!……いろはちゃんにはい、あ~ん♡って、
す、すすすす!素敵ーっ!だ、ダメ……、想像した
だけで……、あああ!推しの海に飲み込まれちゃうーーっ!!」

「……まゆ……、ハア……」

「ちょ、ちょっと猫屋敷さんっ!ななななな、
何言ってるのっ!////」

真っ赤になる悟を構い、勝手に又妄想し、推し
爆発する猫屋敷まゆ……。何だかどんどん壊れて
きている相方を見、益々心配になるユキ……。
彼女達も本当にいつもの放課後の日常であった。
この時までは。

「……あれえ、あっちから誰か走ってくるよ、
誰かなあ~?」

「本当だ、向こうから凄い勢いで誰か走って
くるね……、誰だろう…?」

「「う~ん???」」

こむぎといろはは目を凝らし、前方から走って来る
人物を見つめる。

「ひゃーっはっはっはあ!はーっ!」

「あれは、確か同じマンションの……、
花海ことはさん……?じゃ、ないかしら?」

「さっすがユキちゃん!目がいいねっ!」

「ホントだー!はーちゃんだっ!おーいっ!」

「……は?」

はーちゃんは手を振るこむぎに気づき、5人組に
近寄って来た。

「あの、こんにちは、はーちゃんも遊びに行くの?でも
珍しいね、今日は一人?いつも仲良しのみらいちゃんや
リコちゃんと一緒にいるから……」

「はー?うるせーな、横ポニテのクソ猫遣い爆発糞女っ!
オメーには関係ねえんだよっ!!私だっていつも
一緒にいたい訳じゃねえんだよッ!獣くせえ奴だな!」

「えっ、……えええっ!?そ、そんな……、私、私、
あの、……そんな、つもり……、じゃ……」

「……!!」

はーちゃん、声を掛けたまゆに暴言を垂れる。側で
見ており驚いた他の4人はびっくりする。特にまゆの
大事なパートナーであるユキは、はーちゃんの態度に
怒りを顕わにし、激怒する……。

「……あなた、もう一回言ってみなさい……、私の
大切なまゆに酷い事を……、謝って頂戴……」

「……ユキちゃんっ!!わ、わわわわっ!!」

「こ、これって……、一体どうなってるの!?
……ユキちゃんもどうか落ち着いて!」

「そうだよっ!ケンカ、ガルガルだめだようーーっ!
なかよくしようーーっ!!ユキもお顔がまたこわく
なってるよーっ!だめーーっ!!」

「……まゆに酷い事言ってきたのはあの子じゃない!
まゆが一体何をしたって言うの!」

ブチ切れモードになってしまったユキを必死で
悟とこむぎも止めようとするのだが……。俯いて
いたまゆははっとすると慌ててユキに声を掛けた。

「ユキ!落ち着いてっ!……わ、私は大丈夫だよ……」

「はー!じゃあ、もう1回言ってあげる♪横ポニテの
クソ猫遣い爆発糞女って言ったのー!」

はーちゃんは笑顔だけはいつもと変わらず、まゆに
暴言を吐いた為……、それが余計にパートナーで
あるユキの怒りを招き、今にも大惨事になりそうであった。

「まゆ!あなたもこのままでいいの!?酷い事
言われたままで!……悔しいじゃない!」

「……ユキ……、だって、私……」

「はー?何怒ってるのー?あんたがもう一回
言ってみろって言うから言っただけ!♪はー!」

「……皆、行こう……、早く帰ろう……、私は本当に
大丈夫だよ、……ユキも、心配してくれて有難う、私は
本当に……、いろはちゃん達も……、私、今日のお散歩は
遠慮するね……」

「……まゆちゃん……」

「わお~ん……、まゆうぅぅ~……」

「猫屋敷さん……」

「花海さん、お忙しい処お邪魔してしまって、
本当にごめんなさい……、じゃあ、私達は先に
帰ろう、ユキ、行こう……」

「……全く、気分最悪よ、あんな嫌な子だったなんて、
冗談じゃないわ……、もう顔も見たくない……」

まゆは残されたいろは達に背を向けとぼとぼ
歩き出す。その後に無言で後に続いて歩き出す
ユキ。……はーちゃんの顔を横目で見ながら。
いろは達にとって、この島に来て初めての悲しい
出来事であった。……まゆはいろは達にとっても
掛け替えのない大切な友達。そのまゆをあんな
風にいわれ、悲しくて仕方がなかった……。

「……僕、まだ花海さんとちゃんと話、まだした事は
なかったけど、……でも……、どうしたらいいんだろう、
何なんだろう、このモヤモヤした気持ちは……」

「……なんかの間違いだよっ!はーちゃん、いつもは
あんなガルガルした子じゃないよっ!ゼッタイに
何かの間違いだようっ!」

「……そうだね、こむぎ……、絶対そうだよね、
はーちゃん、いつもはとっても優しい子だもん!」」

「♪わんわんっ!マンションにもどったら、もういっかい
はーちゃんとおはなししてみようっ!」

「うんっ!そうだねっ、こむぎっ!」

「……いろはちゃん、こむぎちゃん……」

「……けえっ!はーっ!おもしろくなーいっ!バーカバーカ!」

気持ちを落ち着け、はーちゃんを信じようとする
こむぎといろは。だがそんな二人の優しい気持ちと
裏腹にはーちゃんはそのまま、又、何処かへと姿を
消してしまうのであった。


「アンッ!アンッ!」

「お~い、シロ……、何処まで行くんだよ……」

「……アンッ、……クンクン……」

シロは必死に吠え、何かの匂いを嗅ぎながら
ジャミルを何処かに誘導しようとしているのであった。

「……アンッ!」

「何かあったのか!?」

急にシロがダッシュで駆け出し、ジャミルも急いで
後を追うが……。


〔ブリブリブリ……、ボットン……〕


「……クウウ~ン……」 (すっきり……)

「……クソかよ!紛らわしい事すんなや!」

「にへええ~……」

シロは正面を向いたまま、ジャミルに見られない様、
口を曲げてニタリと微笑んだ。

「ばうばう!」

「……って、おめえもかよっ!」

此方も勝手に付いてきてしまったぶる丸。商店街に
在るお惣菜屋さんのショーウインドウに並べてある
五目いなり寿司を見てしきりに吠えていた。

「駄目なのっ!んな余裕はないっ!」

「ばうーっ!」

「真面目にやってくれや、本当に……、何か分るならさあ、
頼むからよう……、こっちだって暇じゃねえんだよ……」

「アン!」 (ごめんね!)

「たく……、ん?」

気が付くと、いつの間にかジャミル達はタバコ屋の
近くまで来ていた様であった。

「し、新製品……、ギャース・ピースセブン……」

「……アンッ!アンッ!」

「ばううーーっ!」

フラフラと、意味不明名称のタバコに釣られそうになる
ジャミルをシロとぶる丸が吠えて止める。

「わ、分かってるよ……、早く行くべ……」

「アンッ!」

シロに引っ張られ、ジャミルが辿り着いた場所は、
ナンダ・カンダ家が収める、元、異世界の街であった……。

「はええ~、考えてみるとすげえよな、マジで
この街と俺らのとこが今は一緒になっちまってん
だかんな、う~ん……、今日はマリアーヌを借りて、
んでまた、返しに来たから、事実上、これで3回目
じゃねえか……」

「アン!……クンクン、クンクン……」

「あ?まさか、此処に何かあるってのか?」

ジャミルが更にシロの後に付いて行った先にあったのは、
未成年者お断わりの筈の大衆酒場だったが……。

「……こんなとこに何でまた……?」

ジャミルが恐る恐る中を覗くと、カウンターに異様に
見覚えのある顔が二つ……。そして……、2人の側に
何故かボケッと突っ立っている少女、はーちゃんであった。

「……?ゲ、ゲスとルーゼっ!それにことはっ!
……あんのクソ魔女……、性懲りもなく、
……再始動かよ、随分早ええな……、しかも
魔術で又大人の姿になってんのか、シロ……、
もしかして、ことはがおかしくなった事と今朝の件は
やっぱこいつらに関係があんのか……?」

「……アンッ!」

「なるほど……、ルーゼなら洗脳魔術が使えるし、
可能性はあるな……、けど、又何考えてやがんだ……、
もっと近くで話が聞けりゃあな、う~ん……」

「ウウウ~……」

「ぶる、お前も駄目だ、今は大人しくしててくれ……」

酒場の中はワイワイガヤガヤ、騒音でとても入口からでは
話を聞き取る事は不可能に近い。

「取りあえず仕方ねえけど一旦戻るか、俺一人じゃ
どうにもなんねえし……、アル達にも又奴らが
動き出した事を相談しねえとな……、いつまでも
お前らを借りたまま連れ回す訳にもいかねえし、
みらい達にも、事実をきちんと話しておく
必要もあるしな……、畜生、嫌な役目だぜ……」

「アン!」

「ばう!」

ジャミルは2匹を連れ、憎々しげにゲスとルーゼを
睨みながら一旦その場を去る……。

「……」

「ルーゼさんよ、どうしたい……」

「確かに来たわ、今、あの時の元気なボウヤよ、
随分とお久しぶりです事、ふふ……、でもね、
私はこの間一度、彼と再会しているのだけれど、
分かって貰えなかったらしいわ」

「へえ~、大方この嬢ちゃんを探しに来たって事か、
ご苦労なこって、それにしても良く此処が分ったな、
なあ……」

「一旦は退散したみたいね、いずれは又、どうせ
ぞろぞろお仲間を連れて刃向かって来る事でしょうよ……」

「フン、探偵ごっこ気取りだな、馬鹿らしい……」

「ねえ、ゲス……、私、又面白い事を考えたの、分る?」

「……ああ?」

ルーゼはそう言いながら、無精髭だらけのゲスの頬を擦る。

「……今、あの子達はナンダ・カンダ家と、すっかり
仲良しこよしよ、其処をまた利用してみようかと
思ってるの、もしもあの変態旦那様が、又あの子達の
敵になったとしたら……、あの子達はどうするの
かしらね……?また殴るのかしら?ねえ、気にならない?」

「へ?へへ、成程なあ、相変わらずずる賢いねえ、
ルーゼさんは……、ゲヘ、ゲヘへ……」

「ふふ、友情なんて、所詮脆いモンなんだって
事を分からせてやるわ……」

「わりィ奴だねえ、アンタもよ、本当に……、ゲヘへ……」

「ふふ……、さあ、あなたも今日はお家にお帰りなさい、
良い子は寝る時間だから……、でも、しっかりお仕事は
するのよ、いいわね……?ちゃあんと、お友達を勧誘しなさい?」

「……はー……、はい、……ルーゼ様……」

はーちゃんはルーゼの魔術により、ジャミル達よりも早く、
マンションへと送り返された……。

「ふふふ、ふふ……」


そして、マンション内では……

「……もうっ、ジャミルったらっ!お部屋も
散らかしっぱなし、しかもドアも空いたまま!
ほんとに私が付いてないと駄目なんだから!」

「……アイシャ、今日はジャミル、一日ドタドタしてた
みたいだよお、部屋にはあんまりいなかったみたい……」

「あ、ダウド……、そ、そうなの?どうしたのかしら、
大概はする事ないと、いつもお部屋で寝てるんだけど……」

アイシャは早朝、騒動前から、又バーバラ達と一日
ショッピング巡りで不在であった為、先程帰宅し
みらい達の件も知らない。ダウドも今朝は起きるのが
遅かった為、今朝の一件も当然知る筈もなく……。

「……モフ~……」

「あら?モフルン、どうしたの……?」

モフルンがちょこちょことジャミルの部屋まで
やってくる……。

「ジャミル、いるモフ……?」

「ううん、まだ帰ってないわ、本当にもうっ、
何処行ったのよっ!」

「ごめんなさい……、ジャミルがまだ帰らないの
モフルン達が悪いモフ……」

「え、ええ……?」

「どゆこと……?」

アイシャとダウドは顔を見合わせる……。


……魔法ガールズルーム……


「ねえ、リコ……、やっぱり私達もはーちゃんを
探しに行こう……?」

「ほっときなさいって言ってるの、本人だってもう
子供じゃないって言ってるんだから……」

「リコはっ!私達の大切な……、っ!はーちゃんが
心配じゃないのっ……!?」

みらいが思わず椅子から立ち上がり、リコを一括してしまう。

「何よっ!心配ない筈ないでしょっ!……私だってっ……!」

……今度はみらいとリコまで喧嘩に発展して
しまいそうであった。その時、部屋のドアが
そっと開き……。

「ただいま……、みらい、リコ……」

「はーちゃんっ!?」

「はーちゃん……、あなた……」

「……ごめんなさいっ、今朝のは本当に悪ふざけっ!
私、本当にどうかしてた、……ごめんなさい、リコ、
みらい……!!」

「ううん、いいんだよ、ちゃんと帰って来て
くれたんだから…、ね?無事で本当に良かった……」

みらいははーちゃんをぎゅっと抱擁するが……。

「……あなた、誰なの……?」

「はー?」

「リコっ、な、何言ってるの……?」

「……そうだよ、リコ、私だよ、はーちゃんだよ?」

「誤魔化しても駄目っ!私にはちゃんと分る!誰なの!
さあ、きちんと答えなさいっ!!」

「……今更気が付いたの?遅すぎるわね、もっとも、やっと
あの方の魔術の本気効果が出て来て下さった処だしね、うふふ……、
本当に色々と遊ばれるのが好きな方なのね……」

「は、はーちゃん……?」

……みらいが震えながら…、小さくやっと声を
絞り出した……。

「でもね、みらい、リコ……、私がはーちゃんなのは
本当なんだよ、あなた達に小さい時から大切に育てて
貰った……、花海ことは、はーちゃんなの……」

はーちゃんは両手を後ろに組んで、にこっと悪戯っぽい
笑みを見せた。その仕草は本当にいつものはーちゃんと
決して変わらない……。

「……私、魔法よりもすっごい、魔術の先生に
弟子入りしたの、本当にすごい先生なんだよ!
魔術ってすごいの!」

「せ、先生……?」

「……」

「そう、私達の魔法なんかとは比べ物にならない、
凄い上級魔術……、……人の心を操っちゃうんだよっ!
……それでね、私もその魔術がなんと使える様に
なっちゃったの!あはははっ!」

「……みらいっ、逃げてっ!」

「え?ええ……?っ、きゃあっ!?」

はーちゃんがリコとみらいに向け洗脳魔術を放ち、
咄嗟にリコがみらいを突き飛ばした……。

「いたっ……、!リ、リコっ……!?」

「み、みら、い……」

「……リコ、大丈夫!?ねえっ……!!」

「……お願い、あなただけでもすぐこの場から逃げて……、
私はもう駄目みたい……、洗脳魔術を喰らっちゃったから……、
きっと間も無く……、私も私じゃなくなっちゃう……、だから、
お願い……、みらい……」

「い、嫌だよ、リコ!リコを置いてなんかいけないよお~……」

みらいがリコの手をぎゅっと握る。……その手は微かに
震えていた……。

「リコ……、おいで……、さあこっちにいらっしゃい……」

「はーちゃんっ!やめて、……元に戻ってよ、……お願いっ!!」

しかし、今のはーちゃんは生気の無い唯の人形の様に
2人をじっと見つめているだけである。

「信じてるから……、きっとあなたなら私達が元に戻る
方法を見つけてくれるって、だから今は逃げるの、早く……、
さあ、みらい……」

「……っ、分った……、絶対に2人を助けに来る……、
だから、待ってて……、リコ、はーちゃん……」

「ありがとう……、大好きよ、みらい……」

そして、みらいとリコ……、繋いでいた2人の手が
離れてしまう……。……みらいは涙を拭いて部屋から
飛び出すのであった……。

「はあ、まいった……、こんな遅くなっちまっ……」

「……ジャミルさん……」

漸く、ジャミルがマンションに戻り、エントランスに入った処で
丁度みらいが自部屋から脱出して来た処と遭遇する……。

「お……、どうした、みらい、大丈夫か、おいっ!」

みらいはジャミルの姿を見ると安心したのか、その場に
座り込んで動けなくなってしまった。

「ジャミルさん……、良かった、来てくれて……、
助けて、お願い……、はーちゃんも、リコも、
連れて行かれて……、私どうしたらいいのか分らない、
恐いんです、足がすくんで……」

「……と、とにかく、俺の部屋へ!」

ジャミルは震えているみらいを背負うと、急いで
自分の自室へと走った。

「お前ら……」

ジャミルが自室へと戻ると、アイシャ、ダウド、
モフルンがいた……。

「ジャミルっ!やっと戻ってきた!……みらいちゃん!
どうしたのっ!?」

アイシャが思わず立ち上がり、ジャミルに
背負われているみらいに駆け寄る。

「モフーっ!!みらいーっ!!」

「……モフルン、私、だいじょう……ぶ、だよ……」

「とにかく、一連を話す、ちょっとショック受けてる
らしくって、倒れちまったんだ……」

「早く休ませないと!大変だわ!」

「あわわ、ジャミルっ、ベッドにっ!寝かせないと
だよお!」

ジャミルは取りあえずみらいを自分の部屋のベッドに
運び落ち着かせると、先に自分の方の話をしようと座った。

「みらいちゃん……」

「モフ……、アイシャ、みらいは大丈夫モフ、モフルンが
ついてるモフ、だから、アイシャは皆とお話してて
欲しいモフ……」

「うん、お願いね、モフルン……」

「モフ、みらい、大丈夫モフ、こわくないモフ、
みんな一緒……モフ……」

モフルンが疲れて眠ってしまったみらいの頭をそっと撫でた。

「それでこっちの話だけど、あんまし良くねえ話だ……」

「う……」

良くない……、その一言を聞いただけで、ダウドが
正座したまま、つつーと滑って数歩後ろ向きに下がった……。

「しあわせわあー、あるいてこないのでー、どうにも
なりませーん、……さーんぽすすんで、そのまま逃げる……」

「意味分かんねえ……、しょうがねえな、お前は、
まだ本題にも入ってねえっつーのに……」

「ま、待って!大事な話なら、んじゃあ、アルも
呼んで来た方がいいよお!」

「そうね、その方がいいかしら、私、呼んで来るわ」

「あ……」

ダウドが立ち上がるよりも早く、アイシャが部屋を出て行った。

「……お前はそのまま逃走するかもしんねえからな……」

「何だよお、んな事しないよお、ブツブツ……」

不満そうにダウドが口を尖らせた……。

「何だか落ち着かないわ、この感じ……、凄く
胸騒ぎがする……、あら?」

アイシャが前方を見ると、丁度アルベルトが猛ダッシュで
此方に走ってくる処であった。部屋にアイシャが迎えに
行くよりも早く、此方に来てくれたが……。

「あはは、アルーっ!丁度良かった!」

「!ア、アイシャっ……!」

手を振ってアルベルトを呼ぶアイシャの表情とは
裏腹に、アルベルトは切羽詰まっている様子であった。

「今ね、アルを呼びに行こうと思って……」

「僕も今、ジャミルの部屋へ行こうと思ってたんだ、
大変なんだ!」

「え、ええ、分ったわ!」

アイシャは急いでアルベルトを連れ、ジャミルの
部屋へと戻った。

「おお、来たか、アル!」

「……ジャミル、大変なんだ……」

「分ってる、それについてなんだけど、こっちも話が……」

と言った処に、又バタバタ凄まじく廊下を走る音がし、
誰かが勢いよくジャミルの部屋の扉を開けた。

「……大変だっ、ダガー、見掛けなかったか!?」

「ジタン……」

慌しくジャミルの部屋に今度はジタンが訪れる。此方も大分
慌てている様子であった。

「いいや、部屋にいねえのか?」

「ああ、急に消えちまったんだよ!」

「消えたって……、んなバカな……」

「あの、グレミオを……、見掛けなかったかい?
買い物に出掛けて数時間……、は、立つんだけど、
まだ、帰らなくて……」

「オウ、あんた3階の新入り坊ちゃんだったか?
俺は今日、あんたの連れは見てねえんだけど……」

「……そう……」

グレミオを探しにきたらしいティルはうつむき加減に
なるとジャミルから目を背ける。いつもなら大切な
ティルに美味しいご飯を食べて貰おうと、買い物から
一目散で直ぐに帰省するグレミオなのだが……。

「おーいっ!大変だっ、マリカもジェイルもリウも
みーんなおかしくなっちまった!」

次は、シグまでジャミルの部屋に慌てて
駈け込んで来た。

「俺の部屋は避難所じゃねえんだけど、でも、お前まで
どうしたんだ、本当に……」

「あわわ、こ、これ……、ただ事じゃないよお、また
何かが起きようとしてる……」

「ダウド、起きようとしてるんじゃなくて、もう
起きてるのよ!みらいちゃんの様子見たら分るでしょ!」

「あうう~……、アイシャ……、わ、分かってるけど
さあ~、うう~……」

「ジャミル、お願いだ、一緒にダガーを探してくれよっ!
力を貸してくれ、頼むっ!……もしも彼女に何かあったらと
思うと、オレ、いても立ってもいられねえんだ!」

「……グレミオ……」

「……マリカ達、皆の様子も見てくれよ!頼むっ!」

「僕の方の話も……」

「……分ったからっ、お前ら、それぞれの過程を
順番に落ち着いて話せ!俺も皆に話とかなきゃ
いけない事があるんだからさ!お前も取りあえず
こっちに来いよ!」

「……分かった……」

ジャミルがティルをを呼ぶと力なく、彼もジャミルの
部屋へと足を踏み入れた。直後。

「た、大変だーっ!」

「……またか……」

「ハア、ハア……、エ、エレンとトムが……!」

「助けて、ジャミル、皆、お姉ちゃんとトムが急に
私達に襲い掛かってきて……」

今度はサラと少年を連れたユリアンであった……。

「取りあえず、とにかくみんな落ち着いてくれっ、
だから順番に話してくれ、頼む……」

ジャミルは立ち上がり、念の為一旦、部屋に鍵を掛ける。

「……又誰か来そうだったら開けりゃいいしな……」


わんぷりガールズルーム

「わふう~ん……」

「……こむぎちゃん、いろはちゃん、
気を使ってくれてありがとう……、でも、
ごめんね、私達の為に……」

「ううん、大丈夫、お散歩は又いつでも出来るし……」

結局。元気のないまゆをこのまま置いてとても
出掛ける気にはなれないいろは達だった。こむぎは
わんこに戻って眠ってしまっていた。ユキも猫に
戻り、まゆの膝の上で静かに彼女を見守る。
みらい達の部屋に行ってもう一度はーちゃんの
様子を伺い、色々と話を聞こうと思っていたこむぎと
いろはだが、今日はどうしてもこれ以上動く気持ちに
なれなかった。

「ねえ、編み物でもしようか、ユキ……」

「まゆ……、そうね、もうすぐ冬にもなるし、
手編みの手袋とマフラーもいいわね……」

「♪ユキっ、じゃあ、手伝ってくれる!?」

「ええ、勿論よ……」

「わあっ!私も、私もーーっ!」

「いろはちゃん……、て、手作りの……、手編みの
マフラーを兎山君に……?きゃ、きゃあああーー!!
尊いーーーっ!!」

「ま、まゆちゃんてばあーー!!」

「……また始まったわ……」

ユキは呆れながらまゆの膝の上から降りると
人間モードの猫屋敷ユキへと変身。どうにか、
まゆも皆一先ずは漸く元気を取り戻しそうだった。
……だが……。

「……わんっ!?……い、いろは……」

「こむぎ……?」

いろはに抱かれて眠っていたこむぎが急に目をさまし、
何か必死にいろはに訴えている。いろはは急いでこむぎの
状態を確認するのだが……。

「こわいよう……、何だかとってもこわいわん……」

「こむぎ、怖い夢を見ちゃったのかな、よーしっ、
そんな時は!」

「……分かったわ……」

「♪そうだね!

ユキはまゆの方を見る。まゆも頷く。2人も分かった様で
いろはもソファーから立ち上がる。

「こんな時は、ジャミルさんのお部屋に押し掛けて
元気をお裾分けしてもらっちゃおー!れっつごー!
わんだふるーー!」

「全く、ジャミルはお笑い芸人じゃないんだから、
ま、仕方ないわね……、!?」

「ユキ、どうしたの……?」

「……みんな、気を付けて!何か来るわ!!」

「……わんーーっつ!?」

「え?え?え?……え?」

「はー、こんにちはー!」

「!?」

「お邪魔します、……皆さん、私達と一緒に行きましょう、
……ルーゼ様に従うのよ……」

「あ、あなた達は……」

「花海ことはさんと、十六夜リコさん……?」

まゆとユキが声を揃える。突如、部屋に現れたのは……、
洗脳されたはーちゃんとリコだった……。

「ふ、ふたりとも……、本当にどうし……、それに……、
ルーゼって、まさか……、こむぎっ!」

「わんっつ!!」

こむぎといろはは咄嗟にまゆとユキを庇う様に、突如
現れたはーちゃんとリコの前に立つ。

「そうよ、犬飼いろは、そして、バカ犬、あなた達は
ゲス様を辱めに遭わせた上、ルーゼ様を小馬鹿にした
あのお馬鹿お子様集団の仲間なんですもの、絶対
許さないわ……、あなた達は洗脳させないで、生贄で
ゲス様の所に差し出せと、ルーゼ様からご命令を
受けているの……」

「ううぅ……」

こむぎは様子のおかしいはーちゃんとリコを威嚇……。
ルーゼは犬こむぎと人間こむぎが同一人犬物と言う
事には未だ気がついていないらしいが……。

「……はー、あなた達を大切なお友達から引き離してあげる……」

「こむぎ、いろは、これは一体どう言う事なの……?」

「……こ、こわくない、こわくないっ!……で、でも!」

「ごめん、ユキちゃん、まゆちゃん、今は上手く
説明出来ないよ、でも、はーちゃん……、本当に、
どうして……?」

「はー、な・い・し・ょ!」

はーちゃんは笑顔でいろはとこむぎ、2人に迫り、
人差し指を顔の前に付き付け、悪戯っぽくポーズを作る。

「……ユキちゃん、まゆちゃんっ!い、今すぐこの部屋から
逃げようーーっ!!……あああーーっ!?」

「闇魔術発動ーー!猫屋敷まゆ、猫屋敷ユキ、さあ、
私達の仲間になりなさあーいっ!」

「……きゃああーーーっ!!」

「……にゃあああーーっっ!!」

はーちゃんがまゆとユキ、二人に向けて洗脳魔術を放つ。
……二人はその場に倒れた……。

「……ユキちゃんっ、まゆちゃんっ!!」

「はー!……又お友達出来ちゃった!」

「完璧!計算通りだわ!」

倒れたまゆとユキが立ち上がる……。だが二人とも
表情には生気と笑顔無くリコとはーちゃんの方へと
静かに近寄っていった。

「う、嘘だよ……、こんなの……、嫌だよ、
まゆちゃん……、ユキちゃん……、い、嫌だ……」

「……わおおおーーんっ!まゆーーっ!ユキーーっ!
お願い、……おめめをさましてぇぇぇーー!!」

こむぎの悲痛な鳴き声と叫び声が部屋中に響き渡る……。
しかし、まゆとユキは同じず、冷たい目線をこむぎと
いろはに向けた……。

「私達もこれからは、ルーゼ様に従わないとね、ユキ……」

「ええ、そうね、まゆ……」

「これから宜しく、……まゆさん、ユキさん、頭脳優秀な
あなた達がこちらに付いてくれて本当に心強いわ、ふふ……」

「……こわくない、こわくない、全然……、ふふふ……」

「リコさん有難う、こちらこそ、皆で協力して、ルーゼ様に
逆らう奴らを共に始末してしまいましょう……」

はーちゃん、リコ、まゆ、ユキの洗脳同盟は手を
取り合い、握手を交わした。絶体絶命に陥った
こむぎといろはは……。

zokuダチ エスカレート編・5

zokuダチ エスカレート編・5

SFC版ロマサガ1 トモダチコレクション キャプテン まほプリ ロマサガ3 FF9 わんぷり FF8 コードネームはセーラーV クレしん メタルギアソリッド クロスオーバー バカ どんどん増える変な住人 カオスな世界 ドラクエ オリキャラ 陰からマモル 幻想水滸伝ティアクライス 幻想水滸伝1

  • 小説
  • 短編
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-09-23

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

Derivative work