秋の短歌
プリンタでさえもオフィスのド真ん中ぐしゃぐしゃ真っ黒吐いて泣くのに
死にたくてたまらない夜「まだ死ねない」ひとり呟く母がいるうち
死ねなくていいの傷口ちょっとだけいつもと違う私になれたら
「延命はしなくていいです」言うたびに私の肺の酸素なくなる
縁もなき土地の施設に父ひとり免罪符として送る絵はがき
反戦歌ほどの価値さえないいのち瓦礫の下に埋もれて死す
ねえ、わたしマチルダ5さい空爆で死んだの。ほら、いい歌でもできた?
ふるさとは夕暮れどきの父の部屋母のデメキン息継ぎをする
名も知らぬばらの香りに立ち止まり愛でる楽しさ神代の秋
深大寺片隅に立つ石仏と同じ目線で手を合わせてみる
神の前打てる柏手涼しげに夜明け前とて目にも響きぬ
春は来ぬ夏は来ぬとぞ人は言ふ秋は去るのみ枯れた向日葵
秋の短歌