zokuダチ・エスカレート編・4
短編エピ集・2
宇宙人襲来・宇宙人も変
謎の声:A ……この島、……アホの臭いがピンプンする……
謎の声:B あそこの大きい建物から特に臭ってくる様……
謎の声:A ……調べてみる価値、あり……
謎の声:B ……了解……
島の上空から、謎の船に乗り、島をじっと眺めている
奇妙な生物がいた……。
「はあー、暑い……、この処、夜も熱帯夜で全然
寝られやしねえ、畜生~、異常気象もいい加減に
しろっての!大体やね、全人類が一斉にクーラーなんか
使うから地球温暖化の原因になんだよ!反省しろバーカ
バーカ!」
……と、冷房器具を買えない腹癒せに愚痴を垂れ暴れて
みるジャミル。と、其処にアイシャが部屋に入ってくる……。
「おはよう、ジャミルーっ!さあ、今日はちゃんと走ろうねーっ!」
「うわあ……」
嫌々をしながらジャミルがタオルケットを頭に被って隠れた。
「起きなさいよっ!そんなにゴロゴロばっかしてちゃ
駄目だよっ!ほらっ、起きてっ!!起きないとっ、
シフに手伝って貰ってこのまま縄で縛っちゃうわよっ!
転がしちゃうからね!」
「……イテテテテ!何でオメーはそんなに元気が
いいんだよっ、いい加減にしろっ!」
「知らないわよっ、ほら早くっ!」
「ううう~……」
今日も早朝から日が照りつけ、気温はもう30度を
超えている。そんな中でもアイシャは元気にジャミルを
ランニングへと付き合わせ無理矢理公園へと引っ張って
行く。※熱中症の危険性もありますので、くれぐれも
良い子は真似しないで下さい
「……あの変な帽子被ってる奴、アホの香りがかなり強い……」
「アホではない様だが、連れの少女も何となく、変っている、
変だ……」
「調べてみる価値あり……」
「了解……」
そして、早朝ランニングも終り、ジャミルとアイシャは
マンションへ戻る。
「うう~、……あちい、あちいよう~、また暑くなっちまった、
ううう~……」
「うふふ、付き合ってくれて有難う、ジャミル、私これで
8キロぐらい痩せたと思うの!」
「……さいですか……、良かったな……」
「よーし、今日の朝ごはんのデザートはいちごプリンっ!
うふふっ、自分へのご褒美っ!ちゃんと走ったら食べようと
思って我慢してたの!」
「……おーい、それ食ったら走った意味ねえっつんだよ……」
……アイシャはルンルンで先にマンションの中に入って行った。
「あの……」
「ん?」
アイシャを追ってマンションに入ろうとしたジャミルは
誰かに呼び止められた。
「……ここは、あなたのお家ですか……?」
声を掛けられ、ジャミルが振り向くと、後ろに背広を
着用した何となく青白い顔の七三分けの若い男が2人
立っていた。男は2人とも全く同じ顔をしている……。
「……お家って、此処はマンションだけど、俺以外にも
住んでるよ、共同家だから……」
「なんと」
「なんと」
七三分けコンビは声を揃えた……。
「……何か変な奴らだなあ~、あ、もしかして、此処に
新居入居希望の人かい?」
「良く分かりませんが、そう言う事にしておきます……」
「では、お家の中を見せて頂けるのですか?」
「うーん、まあ……、大丈夫だけど……」
「そうですか、では……」
「入ります……」
「あっ、おいっ!」
変な2人組はジャミルを置いて勝手にどんどん
マンションへ入って行く。
「待てよ、ちゃんと部屋の案内するからさ、こっちだぜ……」
「いや、我々は……」
「待て、今はこいつのいう事を聞こう……」
「うむ……」
変な2人組は顔を見合わせ何やら唸り出した。
「何してんだよ、早く来いよ!」
「今、行きます……」
「了解です……」
変な2人組はジャミルの後に付いて階段を上がる。
「まあ、2階、3階近辺はうるせーお子様集団も
入ってるけど我慢してくれや」
「いえ、構いません……」
「そうか、処で、あんたら名前は?」
「……は?」
「は?じゃねえよ、名前聞いとかねえと困るだろ……」
「そ、そうですね……、私はポジオ……」
「私はネガオ……」
名前を聞いてみたものの、両方とも同じ顔の為、
どう区別していいのか、ジャミルは混乱する。
「あのさ、お2人さん、何か判別出来る特徴とかねえ?
ちょーっと、分りにくいんだわ、あんたら双子なのかい?」
「いえ、違います、顔が同じだけです……」
「はあ?そうなのか、まあ別にいいんだけどさ……」
「まあ、しいて言えば、目の色で判断してくだされば、
と……、私、ポジオは目の色がブルーです……」
「私、ネガオは目の色が緑です……」
「そうか、そう言われればそうか、わ、分った……、
さあ、こっちだ……」
実際はあまり良く理解出来ない様な、そんな感情を
抱きながら、ジャミルはポジオとネガオを連れ、
3階へ。
「此処があんたらの部屋だ、えーと、ポジオって
言ったっけか?あんたはそっちの部屋、……ネガオは
向こうの部屋……」
「どうも……」
「ご協力感謝致します……」
「ご協力?言ってる意味分からねえけど……、まあいいや、
これ、あんたらの部屋の鍵だ、管理しといてくれ、んじゃ、
俺は部屋に戻るけど、何かあったら声掛けてくれ、1階の
101号室にいるからよ、じゃあ……」
ジャミルはそれぞれの部屋の鍵を2人に渡すと、自分は
部屋に戻って行った。
「さて、調査開始だが、あの青年は一見アホの様だが……、
意外と頭の回転は良い感じであった……」
「ますます興味深い……、アホだがいざという時は
力を発揮する系統か……」
2人組は会話をしながら取りあえず、部屋から廊下へ
出てみる。と、髪二つ縛りの少女が部屋から出て
来るのを目撃、マリカである。
「まーったくっ、いやんなっちゃうっ!シグも
リウもジェイルまでっ!何かあったらあたしが皆
責任取らなくちゃいけないんだからねっ!
……あーーっ、苛々するっ!!冗談じゃないわよっ!!」
「あの、……此処のお家の方でしょうか……?」
「はあー!?アンタ何っ!!」
「ひ、ひ……」
ポジオがマリカに声を掛けると、マリカは目を血走らせて
ポジオの方を睨んだ。
「あたしは今苛々してんだからっ、話掛けんなっ!
何だってのよっ、もうっ!!」
「……ハア……」
マリカはそのまま噴火しながら階段を降りて行った。
「……あれは、アホではない、地球で言うと、凶悪人に
分類される……」
「地球人の中でも、もっとも危険な種類だ……、恐ろしい……」
と、2人がブツブツ話している処へ、又ドアが開き、
短髪ヘアの少年が出て来た。
「マリカ行ったぞ……」
「や、やばいよ、コレ、マリカ相当キレてるって……」
「俺は知らない、全部シグが悪い……」
「オレの所為にすんなって!みんな共犯じゃねえか!」
更に、銀色短髪少年の後から、帽子の少年、バンダナの
少年がそれぞれの部屋から続いて出て来た。
「……まいったなあ~、流石に、あれは、あれは……、
大丈夫だったかな……」
いつも平然と悪さをする短髪の少年シグが今日は相当
オロオロしている。それ相応の大きい悪戯をやらかした
らしく、共犯者のジェイル、リウと困り果てていた。
「ここは素直に謝りに行った方が無難だよ、ハア……、
行こうよ、シグ、ジェイル……」
「そうした方がいいな、俺は何も悪くない、悪いのは
全部シグだ」
「だからっ!オレばっかの所為にすんなっての!分ったよ、
謝りに行く!リウもジェイルも、ちゃんと謝れよ……」
「分ってるよ……」
「嫌だ」
「……ジェイル~っ、……駄目だって、ホラ行こう、皆でさ、
……うう~……」
リウがジェイルを引っ張り、悪ガキ3人組はポジオと
ネガオには気づかず下の階へと降りて行った。
「……あの猿みたいな短髪小僧は完全なアホだ、調査対象だ、
ネガオ、リストに……」
「了解、帽子の少年は相当変わっている様だ、バンダナの
少年は頭脳はある様だが……、かなり意気地がないな、
こんな処だ、分類してみた……」
ネガオが書いたメモをポジオに見せた。
……変人、ヘタレ人、アホ人……、凶悪人
「と、まあ、此処で見つけた人種は今の処、この4つだ、我々が
今回対象調査としているのはアホ人だ、此処も探せばまだいると
見受けられる、ポジオ、此処を徹底的に調査だ……」
「了解……」
……地球に突如訪れた謎の宇宙人、ポジオとネガオの目的は
何なのか?果たして……。そして、悪ガキトリオが起こした
今回の悪戯とは。
宇宙人の人間観察
でもって、玄関のエントランス付近には、揃って並ぶ
悪ガキトリオ、ホークに頭を下げるマリカの姿が……。
「ほんっと、ごめんなさい!ちゃんと監視してない
あたしが一番悪いんだけど……、ちょっと目を離した
隙に……、ほらっ、アンタ達も謝んなさいよっ!!」
「いや、嬢ちゃんは別に悪くねえよ、それより……、
おい、馬鹿共……、俺のここ……、こんなに
なっちまったら腫れが引けるまで外出られねえだろ、
どうしてくれる!!……それにな、謝って貰った処で、
俺の股間の腫れが引くわけじゃねえしな……」
「……プ、い、いてっ!」
「リウっ!!アンタはっ……!!」
下を向いて、吹きそうになったリウの耳をマリカが
思い切り引っ張る。……事件の始まりは、又わざわざ
マンションの中でボール遊びをしていたトリオが
ホウキで打ったボールが偶々廊下を通ったホークの
股間に直撃したのである。
「おや、先程のガキ共だ、何か揉めている様だ」
「調査してみるか……」
階段から降りて来た宇宙人コンビがこそっと様子を覗う。
「あらら、何又怒られてんだい、アンタ達、!?
ホ、ホークっ、アンタ、その股……」
丁度、外出から帰って来たバーバラがホークの股間を見、
一瞬眼球を大きくする……。
「……バーバラ、これはだな、……その……」
「……素敵じゃないのさあ~、デカくなっちゃってえ~、
あたし逞しい男って増々好きさ……」
「お、おい、バーバラ……」
バーバラ、より逞しくなったらしい……、ホークの
股間に性欲を感じ、ガキ共が呆然と見ている前で
ホークの首っ玉に抱き着いた。
「……はあ、ねえん、一発イカセて、ね……?」
「まいったな、こりゃ、へへ、じゃあ、イクか……?」
「……な、何が逞しいんだ?で、ど、何処に行くんだ!?」
一番状況を理解出来ていないシグが周囲を
キョロキョロと見回した。
「おい、お前らもういいぞ、部屋に戻れ、しっしっ!
邪魔だ!」
「……そう言う事らしい、では、部屋に戻るか……」
「え?ええええ!?何がどうなんだよっ、ちゃんと
説明しろよっ、おーいっ、納得いかねえええっ!!」
ジェイルがシグを引っ張って行き、その後に続いて、
マリカとリウも何も言わず、3階自部屋への階段を
再び登って行った……。
「……短髪子猿小僧、ほぼ、知能なし……」
「……何やら側で揉めていた大男と、……妙に顔の面が
厚い女がいたが……」
「こちらも調べておくか…?」
「いや、我々の今回の調査は典型的なアホ人を調べる事だ、
少なくとも、先程の奴らは違うだろう、無駄は省こう……」
「了解した、では新たな人種の分類リストに登録しておく……」
※ 加齢臭人、厚化粧人……
「さて、次なるアホは……」
「ポジオ、あいつらはどうだろう?部屋の前で又
揉めている様だ」
「了解……」
2人は又こっそり隠れて、喧嘩の様子を覗った。
「お姉ちゃん、いい加減にしてよっ、どうして買い物に
行こうとするだけでそんなについて来たがるのっ、
……私は子供じゃないって何回言ったら……」
「何よ、別にアンタについてく訳じゃないわよ、
あたしだって町に用事があんのよ!」
「ま、まあ……、エレン、此処は抑えて抑えて……」
「……緑バカは黙ってろっ!!」
「おごうおおおっ!?」
「ユリアンっ!お姉ちゃん、いい加減にしてっ!ユリアンが
気絶しちゃったじゃないっ!」
「お、恐ろしい……、此処にも凶悪人がいる様だ……、
しかも、先程の娘と違い、此方の方は最も厄介な
腕力型の様だ……」
「……デ、データを調べたい処ではあるが、我々だけでは
危険すぎる、今回は触らない方がいいな……」
「うむ、連れの奴らの人種はもう少し調べておくか……」
「サラもエレンも落ち着け、サラ、エレンと一緒に歩くのが
嫌なら、エレンが帰るまで部屋で待っていた方がいい……、
な?」
「トム……、分ったわ……」
「ふん、あーあ、あたしも随分妹に嫌われたモンだわね、
……別にいいけどっ、じゃあねっ!」
「お、……お姉ちゃん……、あの……」
エレンは不貞腐れ、サラを置いて外に出て行ってしまう。
「トム、私……、別にお姉ちゃんと喧嘩したい
訳じゃないのに、どうしてこうなっちゃうのかしら……」
「又きちんと後で謝ればいい、喧嘩するのもコミュだからな、
気にする事はないさ、難しいかも知れないが、いつか、サラの
気持ちもエレンにちゃんと伝わるといいな……」
「そうね……、トム……」
「ふむ、あの眼鏡は常識人か、頭脳も優秀の様であまり
面白みがない人種だ」
「凶悪人の少女の妹の様だが、これは引込み人だな……」
「……頭を殴られて倒れていた青年もアホの様だが……」
ポジオとネガオは顔を見合わせた。
「アホも一言では言いきれない色んなタイプがいる、
だから調べがいがあるのだな」
「よし、今からアホも細かく分類しよう、……ポジオ、
こんな処だ、どうだ?」
※ 緑のアホ人 尻に敷かれ型
「素晴らしい、此処は本当に調査しがいがある場所だ……」
「こうなると、最初に会った青年もますます徹底的に
調査したくなるな……」
「うむ、相当の大物の様であったからな、お楽しみは
最後に取っておくか」
どうやら、ジャミルは宇宙人の調査対象として相当
気に入られてしまった様である。ポジオとネガオは
更なるアホを探し回り、マンション中を徘徊する。
「おかしい、今は人があまりいないのか?やけに少ない様だ……」
「……あれから一人、ウロウロ徘徊していたアホを
見つけただけだな……」
※ 尻尾のアホ人 スケベ型
「……夜になればもう少し又人数が増えるかもしれんな……」
「うむ、人間は夜になると拠点に戻るからな…」
ポジオとネガオは日が暮れるまで、自分達も与えられた部屋に戻り、
一旦休む事にした。そして、時刻は午後17時を回った……。
「ポジオ、何やら下の階が騒がしい様だ、声が聴こえる……」
「本当だ、では行ってみるか……」
宇宙人コンビは再び調査対象を求め動き出す。
「……小僧、貴様……、この俺に向かって屁をするとは……、
一体どういうつもりだ……?言ってみよ……」
「おおお!お掃除屋のおじさん!オラ、わざとじゃないよ!
本当だゾ!後ろにおじさんがいたの、オラ気が付かなかったん
だゾ!ほ、本当だゾ!」
……月に一度程度、、何故かマンションに勝手に
掃除に来てくれる掃除屋のブロリーさんである。
だが、本人切れやすい性格の為、掃除屋と言う
よりは、何かある耽美、切れてマンションを
破壊して行く方が多かった……。
「……お、お掃除屋さん!こんな小さな子に怒っちゃ
駄目ですよっ!落ち着いて冷静になって下さいっ!」
「そうだよっ!なんですぐ怒るのっ!おじさんも
ガルガルしちゃダメだよっ!」
「大人げないわね、全く……、あなた、本当に
大人としての自覚が足りないんじゃないの……?」
「ユキっ!……で、でも……、本当に相手はまだ
小さな子ですから……、きゃ、きゃっ!……こわくない、
こわくないっ!」
「……む、む……、貴様ら……、こ、この俺に
説教などと……、よくも……」
しんのすけを庇おうと飛び出して来た、援護隊の
わんぷりガールズ。相手がマジ基地ブロリーで
あろうと、突進していき、恐れず悪いと言う事は
平気で正々堂々と云う。しかし、タチの悪い相手に
屁を噛ましたしんのすけもしんのすけなのだが。
……白目、暴走モードのブロリーであったが、
顔からは冷や汗が……。
「はっ!ブロリー、キサマも相当落ちぶれたモンだな!
小娘共に説教されていやがる!歯歯歯ッーー!」
「ならば、このやり場のない怒りを貴様にぶつけてやろう……、
フンっ!!……ヌオオオオーーーッ!!」
……掃除屋の相方、ベジータ、ブロリーに娘達の代わりに
ブン殴られる。エントランスを突き抜け、何処かへと
飛んで行った……。
「……お、恐ろしい、恐ろし過ぎるではないか……、
これは一体……、ど、どうやら唯の凶悪人では
ないらしいな……」
「あの男から漂う、……得体の知れない恐ろしい
何かが、もやもやと沸いてきている……、これは
是非別調査として調べたいが……」
「しかし、やはり助っ人がいないと……、我々だけでは
余りにも危険過ぎる……」
「うーむ、どうしたものか……」
「……誰かがこの俺の悪口を言っている……、近くか?
何処だ?糞め、……始末してくれる……、ふざけやがって……」
ブロリーは白目モードのまま、隠れている宇宙人に
近寄って行った。……本当に何しに此処へ来てるんだか、
訳分からん男であある……。
「っ!き、気づかれたかっ!?」
「ネガオ、これはまずいな、今日は調査のみで何も
戦闘準備をしてきていない、まさかこんな危険な人種に
遭遇するとは思ってもいなかった……」
「完全に我々のミスだ、残念だが一旦此処は引こう……」
「その方がいいな……」
宇宙人2人組は頷き合い、……そして、その場から
姿を消した……。ブロリーも、掃除と言う掃除は
殆どせずいつの間にか本日も勝手に帰って行った。
余計な人種に手を出そうとした所為で結局、宇宙人
2人組は最強アホターゲットのジャミルを調査する事
なく、宇宙船へ逃げ帰ってしまった。
そして、翌日……
「おかしい、部屋が蛻の殻だ、誰もいねえ……」
2人組の様子を見にジャミルが3階に来たのだが、
あの2人組宇宙人達の陰も形も見当たらず。何処かに
行ってしまったのである。念の為、3階の住人達にも
聞いてみたものの、誰も知らないと言う。もう一度部屋を
確かめたが、やはり今は誰も部屋におらず。……2人がいた
部屋は鍵は掛かっておらず、ドアノブに鍵だけぶら下げてあった。
「……怪奇現象だ……、絶対……」
「ジャミルーっ、いたーっ!」
「うわああっ!……ランニング娘っ!?」
又、早朝ランニングに引っ張り出そうと、わざわざ
3階までアイシャがジャミルを探して、健気に迎えに
来たのである。こうしてジャミルはアイシャに捕獲され、
外へと駆り出されていった。
「えーとっ、今日はねっ、5キロ痩せるのっ、目標っ!」
「……勘弁してくれやああ~……」
ポジオ:結局、今回の調査で分かった事は……、この島では
凶悪人が多い、しかも、女の方が男よりも遥かに強い権力を
持っている……、と、言う事だろうか……
ネガオ:しかし、情けないツラだ、……この暑い中、鼻水を
垂らしている様だ、あのアホの青年……
空の上から只管観察されているのに今のジャミルが気づく
余裕は無かったのである……。
素直になれずに
「漸く、この券を使わせて貰う時が来たか、うん、もうすぐ
夏も終わるし、食欲の秋にも入るしな、丁度いいか!」
ジャミルはいそいそと、タンスの奥に隠していた一枚の
券を取り出す。もはや誰も覚えていないと思いますが、
何を隠そう、福引でジャミルが当てた一等の景品、
ホテル内レストラン、ハワイのバイキング無料招待券であった。
「あいつも喜ぶだろうなあー、何せ、食い意地が
張ってるからなあ~、んふふっ!」
何を隠そう、隠さなくてもそれはお前だ……、ジャミルは
急いでアイシャの部屋へと足取り軽く向かった。しかし、
一方のアイシャはと言うと。
「困ったな~、あれだけ走ってるのに、又太っちゃった……、
ん~、やっぱり色々と誘惑に負けちゃうからよね……、
よし、今度こそっ!」
「アーイシャ、いるかー?」
と、アイシャが決意したのを、早くもジャミルが
ぶち壊しにやってくる。
「ジャミル?いるわよ、……どうぞ……」
「へへ、相変わらず綺麗にしてんねー、俺んとこと違ってさー、
マジで感心するわ!」
「当たり前でしょ、女の子だもん、お部屋はいつも清潔に
しておかないとよ、それより、何か御用?あ、今、お茶
入れるわ」
「いいって、それより、これだ、これ!」
「それって……、確か……」
ジャミルはニヤニヤしながら、バイキング券をアイシャの
前に広げて見せた。
「いやあ~、いつ連れてってやるかと考えてたらさ、
こんなに時間が立っちまったけどもうすぐ秋に入るしさ、
丁度いいと思ってよ、ようやっと誘いに来たんだよ!
んで、9月中には連れてってやろうと思ってんだけど……」
しかし、アイシャはあまり喜んでいる様子は見せず、
ジャミルから顔を背けた。
「どした?」
「……うん、あのね、ジャミル……、私、今回は
遠慮するわ……」
「な、なんですと?折角……」
「だからね、今は気分が乗らなくて……、その、もう少し
待って貰えるなら……、その、……クリスマス頃とか……、
駄目かしら……」
「……何言ってんだよ、券の有効期限、最低11月まで
なんだよ!だから言ってんのに!何で今じゃ駄目なんだよ、
俺とじゃ嫌なのかよ!」
「そんな事言ってないわよ!……嬉しいけど、でも、あのね……」
「あーそうかい、分ったよっ!たくっ、……折角誘ってやろうと
思えばっ!もう誘わねえよっ!!アホッ!!」
……短気なジャミル、又もアイシャの乙女心が分かって
おらず、一人で逆切れ、ブチ切れる。
「……何よっ!人の気も知らないでっ!何て言い方するのよっ、
酷いっ、もう知らないっ!ジャミルのバカバカバカバカっ!!
出て行ってっ!!」
「ああ、言われなくたって出て行くよ!どうもお邪魔
しやしたーっ!」
「……ジャミルの……バカ……!」
ジャミル、蟹股でドスドスアイシャの部屋を後にする。
部屋に残されたアイシャはやり切れず、又一人でぐしぐし
涙を流した。こうして2人は又せんでもいい喧嘩に発展した。
「……で、またアイシャ泣かせたワケ?……バカだねえ~、
ホントに……」
「うるせーな、馬鹿ダウド!オメーに言われたかねえよ!
それにしてもマジで腹立つっ!」
ジャミル、ダウドの部屋に置いてあった煎餅を唯
バリバリと貪り食った。
「そんなに食べないでよ……、オイラのなんだからさ……」
「いいだろ煎餅ぐらい、それよりさ、煎餅なんかより、
もっといいもん食わせてやっから!ホラ、これっ!
連れてってやるよ!」
ダウドはジャミルの顔を見ると、いつも通り、呆れた様な
表情を見せ、静かに口を開いた。
「ジャミル、アイシャが駄目だったからって、代わりに
ウサ晴らしでオイラを誘うんだったらオイラは行かないよ、
アイシャが可哀想じゃないか、アイシャだって、行きたくない
筈ないじゃん、何か理由があるんじゃない?ちゃんと聞きも
しないでさ、何でそんな事も分かってやれないのさ、
バカだねえ~……」
「……う、うるせーな、オメーもバカバカ言うなよっ!いいよ、
今回は俺一人で行くからよっ!」
「空しいねえ~、やけ食いかあ~……、うん……」
そう言いながら、ダウドも横から手を出して煎餅を
ひょいっと摘んだ。
「じゃあ、邪魔したな、俺、部屋に戻るわ……」
バツが悪そうなツラをして、ジャミルがダウドの部屋を出て行く。
「ほんとに、進歩の無いお2人さんだねえ~……」
……一方のアイシャも、赤くなった目を擦り、ジャミルと又
喧嘩してしまった事への後悔と、本当は嬉しかったのに素直に
なれない自分に嫌気がさし、酷く落ち込んでいたのである。
「……アイシャ、いるかい?ちょっと……」
部屋のドアを叩く音がした、バーバラであった。
アイシャは急いで顔を叩くと、いつもと何気ない
表情をしようとハンカチで急いで顔を拭いた。
「待っててね、今開けるわ……」
「……ああ、アイシャ~、どうしたの、この子は……、
そんな顔して、もう~……」
アイシャがドアを開けると、バーバラが慌てて駆け寄り
アイシャをぎゅっと抱擁した。
「ちょっ、バーバラ、私大丈夫だよ、何でもないよ、
本当に……」
「こら、嘘つくんじゃないよ、ダウドから聞いたんだから、
それに隠しても分る!その顔!お姉さんの目は誤魔化せないよ、
さあ、あの馬鹿とまた何があったの、言ってごらん……、ん?
ほら、あたしの顔見て……」
……チクリ魔ダウド、アイシャを心配するあまり、バーバラに
ちょろっとチクったのだった。無論、頑固な意地っ張り
ジャミルの事も勿論、親友として心配しているからである。
「ふえぇ……、バーバラ……、私また……、う、ぐす……」
バーバラの顔を見たアイシャは堪え切れなくなり、
先程のジャミルとのケンカの一件をすべてバーバラに話した。
「そうかい、成程ねえ、……しかし本当にあのアホバカも
大人げない、こりゃもう、本当に一回死なないと治らない
らしいね……、いや、一回ぐらいじゃ治らないか」
「ううん、私が悪いの……、折角ジャミルが誘ってくれたのに……、
でもね、私……」
アイシャはタンスからピンク色の新しいガールズワンピを
洋服ダンスから引っ張り出し、バーバラに見せた。
「?ああ、この間デパートで買ったヤツだね、でもそれが……」
「うん、でもね、このワンピース、きついの……、私、
太ったみたいで……、だから……、このワンピースが
似合うぐらい痩せたかったの、だから……、もう
少しだけ待っていて欲しかったの、でも……」
「アイシャ……、アンタ……」
「女の子だって、大好きな人の前ではカッコつけたいん
だもん、えへ……」
アイシャはそう言いながら顔を赤くして、再び腫れた
目を擦った。
「アイシャ、ほら、それ貸してごらん……」
「あ、うん、はい……」
「……」
アイシャがバーバラにワンピースを渡すと、バーバラは
ワンピースを彼方此方調べ始める。
「ふふん、なるほどねえ~、分った……」
「あの、バーバラ?」
「ふふ、アイシャ、安心しなよ、アンタ、太ったんじゃ
ないよ、……サイズよく見てみな、ほら、どうりで
アンタが着てもきつい訳だよ、これじゃあね……」
「え……?あ、うそ……、これって……」
アイシャが買ったワンピースは小さいアイシャの
サイズより更に小さいサイズだったのである。
「どうだい?キツかったわけが分かったろ?安心しな、
アンタは太ってなんかないよ!」
バーバラはそう言うと、アイシャの頭をぐしぐし撫でた。
「やだ、私ったら、ドジ……、え、えへへ……」
「アイシャ、良かったらコレ暫く貸してごらん、アンタの
サイズに合わせて直してやるからさ」
「バーバラ……、本当?……いいの……?」
「ああ、だからきちんとあの馬鹿と仲直りすんだよ、ま、
ジャミルへの仕置きは、ちゃんと仕置き人に頼んどくからさ!」
「あはは……、うん、バーバラ、本当に色々有難う……」
バーバラは笑ってアイシャに手を振ると、ワンピースを持って
アイシャの部屋を出て行った。
「……良かった、私、そう言えば最近、体重計にも
ちゃんと乗ってなかったかも、ハア、恐がってちゃ
駄目だね、本当……」
そして、ジャミルも……、又ムキになってアイシャを
泣かせた事を激しく後悔していた。
「……いっつも泣かせてばっかだからな……、久しぶりで
アイツの笑顔を見れると思ったのに……、結局、コレの
所為で又泣かせちまったな、何でいっつもこうなっち
まうんだか……、くそっ!」
ジャミルはバイキング券を丸めると床に叩き付け、
そのまま目を伏せた。
「もう、何してるのよ!駄目じゃない、ジャミルったら
もうっ!」
「アイシャ……」
声に振り向くと、いつの間にか部屋の入口にアイシャが
突っ立っていた。
「連れてってくれるんでしょ?ね……」
アイシャはジャミルが不貞腐れてぐちゃにぐちゃに
丸めて叩き付けたバイキング券を拾って皺をちゃんと
伸ばすとジャミルの側に近寄って行く。
「はい、これ……」
「何だよ、今更、たく……」
「えへへ、連れてって、ね!?」
「さーて、どうするかなあ~……、行きたく
ねえんだろ?」
ジャミルは座って胡坐を掻いたままアイシャの方を見ず、
明後日の方向を向いていた。しかしその表情はニヤニヤ
笑っており、今にも吹きだしそうである。
「……さ、さっきはさっきだもん、気が変わったのよう、
ねえ、お願いっ、連れてってよっ!」
「やだ、アホ!」
「何でそんな意地悪言うのっ!もう~っ、ジャミルのバカっ!」
「そうだよ、俺は意地がわりィもん!ケケケ!」
……2人はいつの間にか勝手に仲直りしていた。
じゃれ合う二人の笑い声は隣室のダウドの部屋まで
聞こえるぐらいであった…
「やれやれ、もう~、勝手にして下さいよお~、
たく……、ケっ!」
そして、夕方、嬉しさのあまりジャミルはトイレで……。
「何とかアイシャと仲直りも出来たし、食事もちゃんと
行ける事になったし、あ~、俺は世界一幸せモンだあーっ、
あはははっ、は……」
……ポチャ……
「……あ、ああああああーーーっ!?」
嬉しすぎて、つい、トイレの中にまで持ち歩いて
しまったバイキング券を落として流してしまった……、
のであった……。
「……もうっ!何でトイレの中になんか持ち歩くのようっ、
ジャミルのバカバカバカっ!!」
「いや、つい、嬉しすぎたちゅーか、興奮し過ぎた……、
ちゅーか、若気の至りちゅーか……」
「……っく、もう知らないっ!絶対知らないんだからっ!
ジャミルのバカっ!!」
「あ……、おいっ!アイシャっ、待てよっ、おーいっ!」
ガチャ……
「失礼する……」
泣きながらジャミルの部屋を飛び出していったアイシャと
入れ替わりに、今度はごついブロリーが部屋に乱入してきた。
「げ、げっ……!」
「何が何だか分からんが、さっき仕事の途中、
廊下であの赤毛の女に頼まれた、悪ふざけばかり
しているお前を仕置きしろと……、さあ、早く
頭を出せ……、俺も忙しいんだ……」
「忙しいなら来るなああーーっ!!……の、のーーおおお
おおおおお!!」
こうしてジャミルの運もバイキング券も、すべて便所に
流されて行った……。
美味しい秋にご用心
「……で、全部パアになった訳?」
「うん……」
「……あ、呆れたバカだねえ~、本当に……、
頭もパアだけどね……」
「うん……」
「ジャミル……?」
「うん……、どうせ俺なんかもう……、一緒に便所に
流された方が良かったんだよ……」
ダウドの部屋にジャミルが訪れており、さっきから
ジャミルは正座したまま俯いており、ダウドの顔を
見ようとせず、かなり様子がおかしい様であった。
(こ、これ、相当きてる……、やばいかも……、返事の
返し方も普通じゃないし……)
「バカ、アホ、p~……ジャミル……」
「うん……って、おいっ、ピーって何だ、ピーって!」
「良かった、反抗した……、あのさあ~、まだ別に
食事に連れて行けないワケじゃないじゃん、タダに
拘るから悪いんだよお、こうなったら、アイシャに
お詫びの意味も込めて、ジャミルの自腹でどうにか
するんだよお!それしかないでしょ!」
「腹をくくれと……?」
「そう……、トイレに流されたと思ってさ……」
「切腹でござるか……、痛いのは困るでござる……」
と、其処へ……
「ジャミルいる?あっ、やっぱりここだったのね!駄目でしょ、
お部屋のドア開けっ放しでっ、もう~っ!」
「ア、アイシャ……、あ~……」
アイシャがつかつかとダウドの部屋に入ってくる。
アイシャはそのまま一緒にジャミルの隣に並ぶと
一緒にちょこんと正座して座った。
「……お前……、もう怒ってねえの?」
「ん?どうして?あ、券の事?いいわよ、別に、
無くなった物をいつまでもどうのこうの言ってても
仕方ないでしょ、それよりも券に限らず、大切な物を
無くさない様にジャミルも気を付けなさいよね、
ドジなんだから!うふふ!」
アイシャはいつも通り、からっとした笑顔を
ジャミルに見せた。
「け、健気というか……、しっかりし過ぎだよお、
アイシャ、うう~……」
ダウドがハンカチで顔を拭く。……明るいアイシャを
見ていると、ジャミルは自分がとんでもなく申し訳ない
事をしたと、つくづくアホに思えてくるのであった……。
そして、自室に戻ったジャミルは……。
「よしっ、まともなモン奢ってやれるか分かんねえけど、
どうにかして俺も腹くくんねえとな、確か3000円
ぐらいなら余裕がまだ……」
と、財布の中身を見たジャミルが一瞬で凍りついた……。
「……残金1500円……、そうだ、確かタバコで……、
ほんっと、俺ってバカね、うふふふふ……」
ジャミル、タバコの吸い過ぎで、ほぼ懐が壊滅状態……。
「とにかく……、この残金、全部使ってでも何か
美味いモン食わしてやんねえと、えーと、えーと!
うーんっ!」
取りあえず、考え付く頭で、有名店の苺ケーキを
買えるだけ買ってこようと思い、マンションを
飛び出す、時刻はもう夕方、18時を回っていた。
店が閉まる前にと、只管ダッシュでケーキ屋へ……。
「……ま、間に合ったああ……、ハア……」
店の前には舌を出した変な人形、マスコットのコぺちゃんが
いる。ジャミルにはそれが自分を何だか小馬鹿にした様に
見えて仕方ないのだった。
「……いつか舌噛んで死ぬぞ、たく……」
ブツブツ言いながら、店に入り、ショーケースに
並んだケーキを見、そして絶句……。
「て、定番ので、……500円……、て、マジすか……?」
「はい、マジです」
ジャミルの問いに店員のお姉さんがニコニコして返答する。
「一個500円、しかも税込で540円かあ……」
苺のケーキは本日の在庫分一つだけであり、一つだけなら
今のジャミルの手持ちでも何とか余裕で買えるが。
「んじゃ、それ、えーと、苺の奴、頼みます……」
「はい!」
と、ケーキを箱詰めして貰っている処に親子連れが入って来る。
「あの、苺のケーキはもう売り切れですか?」
「はい、本日の分はこれまでになります……」
母親が店員に聞く。何というお約束のタイミングであろうか。
「どうする?今日はもう、お品切れなんですって……」
「そうなんだ……、なんかがっかり……、今日は私の
お誕生日でお誕生日に此処のいちごのケーキ食べられるの
すっごく楽しみにしてたのになあ……」
「あ、俺いいです、此方さんにやって下さい……」
「え?ハア……、宜しいんですか……?」
横で親子のやり取りを聞いていたジャミルはそのまま
黙って店を後にした。
「……ケーキかあ、苺じゃなくてもどうにかして……」
ジャミルはスーパーに寄って小麦粉を買い、
マンションへと帰宅した。
そして、更に時刻は過ぎて、もう夜の20時を
過ぎていたが、ジャミルはある物を持参し、
再びアイシャの部屋のドアを叩いた。
「アイシャ、俺だよ、入っていいか?」
「あ、ジャミル?どうぞ……、久しぶりに
チビちゃんも来てるわ……」
「ぴい、ジャミルこんばんはー!ちょっと遅く
なっちゃったけど、遊びに来たんだよおー!」
「そうか、チビも来てんのか、んじゃ丁度いいや、
毒見していけよ……」
「ぴ?」
「あの、毒見って……」
「……俺が作ったんだ、ホットケーキって奴だ、俺、
菓子はあまり作った事ねえから味の保証は出来ねえ、
でも、こんな事ぐらいでしか……、お前に謝れねえし……」
ジャミルはそう言いながら、ホットケーキに掛けてある
アルミホイルを外した。
「あー!美味しそう!すっごくいいニオイね、チビちゃん!」
「きゅぴーっ!」
「美味しそう?こんなのがか?焦げ捲くってるし、しかも、
上に掛けてあるのは予算の都合でバターじゃなくて
マーガリンだぞ……」
「いいのよっ、ジャミルが心を込めて作って
くれたんだもん、私、凄く嬉しいよ!本当に
有難うね!」
アイシャはとびきりの笑顔を見せ、ジャミルの手を握った。
「あ、ああ……」
(そうだ、俺、これだ、……この笑顔が見たかったんだ……、
何だ、カッコつけなくたって大丈夫なんだなあ……)
「そうだ、折角だから、ベランダでお星さま見ながら
一緒に食べましょ、あ、でも、こんな夜遅く食べたら
又太っちゃうかな……」
「よし、ちょっと待ってろ!」
「?」
ジャミルは廊下に出て行き、数分後、アルベルトとダウドを
引っ張って来た。4人と1匹は夜にも関わらず、ベランダで
お茶会を始める。
「お前らも毒見しろ、しかもこんな夜遅く、甘いモンで
全員デブ道連れの刑だっ!ひっひっ!」
「たく……、ジャミルはあ~、急に何かと思ったよお~、
でも、見た目悪いけど、美味しいや、ね、アル……」
「うん、意外とね、びっくりした、見た目最悪なのにね……」
「……最悪最悪言うなっつーんだよっ、ま、確かに
そうだけどさ……」
「きゅっぴ、おいしーおいしー!ジャミル、上手ー!」
「うふふ、チビちゃんも喜んでるわ、ね、ジャミル、
又作って、ね?」
「……あ、ああ、へへへ……」
例えこんなモンでも、お前が笑ってくれるなら……、
ジャミルはそう思いながら、アイシャに笑顔を返した。
……そして、初秋の風を浴びながら美味しい幸せを満喫した
4人は翌日の朝、とんでもない事態に見舞われる事に……。
「ま、まいった……、これじゃ、本当に……」
「……ジャミルうう~っ!」
「や、やっぱり来たか……」
ダウドが午前3時に慌ててジャミルの部屋に
飛び込んで来た……。
「どうすんのさ、このお腹ーーっ!これじゃ妊婦さん
じゃないかあーーっ!……責任とってよおおーーっ!!」
「……ア、アホッ!騒ぐなよっ、俺だって……、こうだ、
見ろこれ……」
「あ……」
ジャミルはこそっと……、膨らんでしまった自身の
お腹もダウドに見せた。
「昨日の奴な……、何か小麦粉と間違えてよう……、
あ、あはは……、……種に全部膨らし粉使っち
まったみたいでさ、まいったなあ~……」
「……一体何処をどうやったら小麦粉と膨らし粉
間違えるんだよおおっ!……ほんとにもうっ、バカっ、
アホッ!!まさか……、粉のパッケージ見なかったのっ!?」
「だから、騒ぐなってのっ!……う、……そうかもしんね……、
俺、そそっかしいから……」
「……ジャーミールーううう~!!」
「……何なのよう、これーーっ!いやーーっ!もうホントに
お嫁に行けなあー一いっ!!」
続いて……、怒りMAX状態のアルベルトと半泣き状態の
アイシャもジャミルの部屋に……。うっかりすると、
アイシャはジャミルが手を出してしまった結果の
様にも見え、モロやばかった……。
「落ち着け、落ち着け、取りあえず走りに行くべ……、
それしかねえ……」
……本当にデブ道連れの刑になってしまった
4人は……。無理な厚着をし、膨らんだ腹を
隠しながらどうにか元の体形に戻す為、まだ
薄暗い早朝の公園を只管誰にも見つからない内に
走りまくったと云う……。
zokuダチ・エスカレート編・4