記憶の軛

ひとから忘れられることを喜べ。

(ミラン・クンデラ『緩やかさ』)


記憶の(くびき)がそのひとの足取りを重くするのなら、そんな軛は壊して身軽に、自由になるべきだ。記憶が人間を形づくる?そんなのは詭弁だ、欺瞞だ、嘘っぱちだ。記憶を蓄積しすぎた人間は、その重みに耐えきれず潰される。記憶に生かされたいと願ったはずが、記憶の過剰蓄積によって破綻してしまうのだ。記憶は少なければ少ないほどいい。望むらくは皆無であるほうが。人間は過去に固執せず、雁字搦(がんじがら)めにされず、翻弄されずに在るべきだ。きみが破綻の道を辿りそうだというのなら、私に関する記憶など真っ先に放擲(ほうてき)してくれて構わない。

記憶の軛

記憶の軛

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-09-20

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