記憶の軛
ひとから忘れられることを喜べ。
(ミラン・クンデラ『緩やかさ』)
記憶の軛がそのひとの足取りを重くするのなら、そんな軛は壊して身軽に、自由になるべきだ。記憶が人間を形づくる?そんなのは詭弁だ、欺瞞だ、嘘っぱちだ。記憶を蓄積しすぎた人間は、その重みに耐えきれず潰される。記憶に生かされたいと願ったはずが、記憶の過剰蓄積によって破綻してしまうのだ。記憶は少なければ少ないほどいい。望むらくは皆無であるほうが。人間は過去に固執せず、雁字搦めにされず、翻弄されずに在るべきだ。きみが破綻の道を辿りそうだというのなら、私に関する記憶など真っ先に放擲してくれて構わない。
記憶の軛