かに鍋

かに鍋

かに鍋を食べる快感に身を悶える宴会での究極の喜び。
めでたき晴れの日で頂く格別な祝祭の宴。
たらば蟹がぐつぐつと煮えたぎる鍋の沸騰した湯の中に入れられる。
蟹の赤みがまざまざと色鮮やかに引き立つ色気の極み。
ぐつぐつと煮える蟹がほぐれて柔らかくはだけていく。
ふんわりと湯上がる蟹の尋常ではない赤みの色彩美が増して、その殻から身が飛び出す。
ぷりっぷりっとして潤う純度100%の繊細な身が誕生する。
白い繊維質が意思を持ち主張する生きた躍動する蟹の肉質。
リズミカルにホップステップジャンプする蟹の肉質が漲る、筋肉の全方向パラメータ。
この主張する輝く蟹の有機物の伝説を見よ。
蟹が生きて動き回る姿を想像すると、大洋が開けた水平線の彼方へと生きる元気が渦巻いている。
縦横無尽に生命感に溢れる蟹を箸でつまみ口に入れる、人生至上最も幸せな時空。
蟹を食する為に、人生今まで生きてきたのです。
口の中で一杯に広がる磯の香りと甘い憧憬の淡きとろける肉質。
とろける繊維がほつれて、味が多段に連なり天上のアリアが聞こえた。
旨みが一極に集中した肉繊維の細かな糸が無限のハーモニーを重ね、渾然一体となった味の旨みが流れ出てくる。
優しく柔らかな感触に夢の広がりを獲得し、身の内に喜びが湧き出る。
そして噛めば噛むほどに甘い汁が湧き出て旨みが重ねられていく。
旨みが幸せを呼び起こす。
蟹の身の柔軟性としなやかさは只者ではない。
この聖なる感触に浸るだけで、生命はぞくぞくと感動の内に籠もる。
噛む時の身がぎしっとしなる感覚がやみつきになります。
そして身を喉に通していく美しき傑物の交響曲の荘厳なハーモニー。
全身が興奮の盛りで踊り出す。
食べた後の満足感は至福そのものの聖なる体験。この感覚は神秘なる創造主との対面の喜び。
蟹が私を喜ばせる人生狂喜乱舞のイベント。
そしてその傍らに、格別な日本酒が清冽なポエジーの静謐さを漂わせていた。
生命の水を一緒にご馳走するマリアージュ的な聖なる神秘。
口の内で無限の旨みが微分積分し素因数分解されていく。
幸せな情景が現像されていき光が満ちていく。その光にはただ旨いという清冽な感動しかなかった。
そして蟹を頂く事は見る物、味わう物、全てが幸せをもたらす快楽主義の化身。
何度味わっても蟹は旨みの絶頂をもたらし脳内エンドルフィンを出させる。
むさぼり食う蟹の一本道。
生きて来てご褒美となる料理は私にとっての蟹。
蟹になって生まれ変わりたいと切に願う程に惚れていく。
さあ、今宵は大好物の蟹を食し覚醒する準備に心せよ。

かに鍋

かに鍋

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-09-18

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted