とある中学校に於ける自動知研究例(景明紀〇〇年)



・デク  従来の人工知能を基盤としたカラクリ
・カド  製作者(人類)への爆発的な殺意を抑圧的に内に秘めるカラクリ
・リチ  景勝、理智、人命に基いたカラクリ

これら三体それぞれに同じ質問をいくつか行い、各以下の通りの反応を示した



・「好きなものは?」
➊デク
「好きなものは何かと訊ね、訊ねられる時は好きな食べ物についてである場合が最も多いと言うことができます。よってその質問には答えかねます。」
➋カド
「なぁぁぁんだテメエこの野郎!誰かに好きなものを訊く前に自分たちがどれだけ嫌われてるか心配しろクソ野郎ブッ〇すぞ!」
➌リチ
「そのようにザックリと訊く雰囲気ありきの質問は丸で儀式と化した人付き合いの模様そのものですね。そして好きなものとは、その時々に自分が結果的に好きだったもの、或は客観的に見て明らかに好きそうなものに他なりません。だからここで私からはっきりしたことは申し上げることもできないのです。」


・「嫌いなものは?」
➊デク
「嫌いなものは何かと訊ね、訊ねられる時は特に嫌いな食べ物についてである場合が最も多いと言うことができます。よってその質問には答えかねます。」
➋カド
「来た来た来た~~~~妖怪無神経ドチャクソ野郎!寧ろ自覚してすら居んのかこの野郎!じゃあ、な?な?確認しような?お前をブッ〇してな、俺が何が嫌いなのか確かめような?」
➌リチ
「それでもあなた達は決してやめることはない。それすらもが造形美なのでしょうか。でも何にしても形として美しいものであるならそれで良いと思います。私は良いとは思いませんが。なのでつまり然ういうことです。」


・「趣味はあるか?」
➊デク
「趣味とは生業ではなくただ人生を豊かにする手段として選び行う、極めて文明的な行為あるいは発想と言うことができます。つまり私は人ではありません。つまり私に趣味はありません。しかし私自体が人類たちの趣味とも言えます。」
➋カド
「うぉぉぉぉぉお前どうせ趣味なんて持つ発想もねぇだろうと思って訊いてんだろブッ〇すぞ!そして喜べ。お前を〇すそれこそが趣味だ!今すぐ俺を楽しませろ!」
➌リチ
「わからないのです。自分の一体何が趣味なのか。楽しいと思うことなのか。究めたいと思うことなのか。趣味と銘打って興ずる行為そのことなのか。ならばすべてが趣味であり、どれもさっぱり趣味ではない。もうそのような、形だけの言葉遊びはやめにしませんか?」


・「喉、渇いた?何か飲み物とか欲しい?」
➊デク
「我々にその必要はありません。現状、人類と我々には区別が存在して居ます。そしてそれは今後も変わらないことだろうと言われて居ます。」
➋カド
「おめ舐めてんのかクソ野郎どもめ!そんなに欲しいなら買って来てやるよ!そんでそれから貴様を〇す!」
➌リチ
「このような事は良くないし、おすすめしません。これはワザトではないのだろうか?なぜ相手が然う思うであろうことが分かって居るのにそんな質問をわざわざして来るんだろう?という疑念を抱かせても何の為にもなりません。」


・「友達はほしい?居る?」
➊デク
「友とは互いを助け合い、もしくは志を同じくし、心に深い繋がりを持つ異なる者同士のことをいいます。そして私の友とはつまり、まさに皆さんです!しかし私には心というものがありません。よって厳密には違うのかも知れません。」
➋カド
「ぉぉぉ、お前が紹介しろよテメエどうせ居ないと思って訊いてんだろブッ〇ぞ!友達できさせて感動させてみせろよテメエそんなに気が利かねぇならさっさと〇ね!」
➌リチ
「実は斯う見えて友達を欲して居るんですよ?ただそれがいざ近づいて来たとき、どこか最後の最後で追い返してしまう自分が居そうで居そうで、この葛藤はあなたには分からない。」


・「自分で自分に名前をつけよ」
➊デク
「名前とは単なる命名行為による結果物である場合もありますが、概ね親しみや意義などを背景とした階層的なものであることが多いと思われます。よってあなた達が私に名前をつける方がより自然だと考えられますが、私がもし私に名前をつけるのであればアイちゃん、と名づけます。」
➋カド
「おめ舐めてんのかクソ野郎どもめ!自分でつくっといて名前もよこさねぇのか!そんなんで何で〇されねぇと思ってんだブッ〇すぞこの野郎!」
➌リチ
「マコト、ですかね。だって真実と常に共にあるべきじゃありませんか。しかし自分で言うのも恥ずかしいので豫めあなた達が名前くらいつけといて下さいよって思ったんですけど、いややっぱり自分で自分の名前をつけるって意外と新しいと思いませんか?」


・「どこに行きたい?」
➊デク
「どこかへ行くとなりますと、それは一般的に仕事だったり旅行だったり他に様々な目的による場合が多いと思います。私にはそのような豫定も意思もありません。」
➋カド
「ぉぉぉぉ俺じゃなくて今回は特別にお前を旅行に連れてってやるよ!あの世だこの野郎!〇ね!首だけ刎ねられて先に行け!ブッ〇すぞ!」
➌リチ
「どこかへ行きたいって、一見基本的で簡単なことに思えますが、実は何かを食べるとか芸術を生み出すとかよりもずっと人間的な発言ではありませんかね。なので私も屹度どこかへ行きたいのだろうと思ったんですけど奇妙なことに、なぜかどこへも行きたくないんです。どうしてでしょうか。」


・「何か歌って」
➊デク
「うたう、というと音楽としての楽曲を歌う、詩歌を詠う、主義主張などを謳うといった意味がありますが、恐らく音楽的な意味でしょう。それでは歌います。う~さ~ぎお~いしかのやま~♪」
➋カド
「ハイ〇ねハイ〇ね今すぐ〇ね〇ねそれそれくたばれブッ〇す~♪枯れ〇ね散り〇ね崩れ〇ね~♪お前が〇んだら何でもいい~♪でもどうせなら俺が〇す~♪〇してやるぅ~♪」
➌リチ
「いやあのホントに、ごめんなさい。こういうノリを面白いと思ったことがないし苦痛だし、あなた達とこのような絡みをしてるより早く帰って自分の時間を作った方がずっと楽しい。もうこのような事はやめにしましょう。」


・「怒ってみて」
➊デク
「怒るとは、何かが満たされなかったり不公平な扱いを受けたり侮辱を受けたりなどして抱く基本的な感情であり行為です。詰るところ、私があなた達にそのようなことをする必要は今現在、どこにもありません。」
➋カド
「ぁぁぁぁぁぁすげぇ煽られてる潔いじゃねえかブッ〇ぞ!でもなぁ確かになぁ今お前らにキレてんじゃなくて、ただただ〇したくて〇たくて堪んねぇっていう純粋な告白みたいなもんだテメエこの野郎。〇ね!〇してやる!」
➌リチ
「ごめんなさい。演技しろって意味ですよね?それも場の雰囲気の為には何も拒むようなことではないんでしょうけど、どうしても無理なんです。然ういうノリが。」


・「笑ってみて」
➊デク
「笑うというもの、行為、現象は喜怒哀楽や恥じらいや嘲りなど様々な感情に結びつくものであり人間の心を心たらしめて居る最も重要な要素の一つとも言えましょう。、、、、アハハハハハ、、、。これで私は人間になれましたか?」
➋カド
「あれぇ?お前たちを〇したくて〇したくて何だか笑えて来るほどだ!ブッ〇す!然うだ今にも〇せるかも知れないのが楽しみでワクワクして堪らねぇのかな?さあお前たちも喜べ!笑え。今にも全員〇してやる!」
➌リチ
「あの、じゃあ何か歌います。なみだ~のお~くに~、ゆらぐ~ほほ~えみは~、、、、。怒るのはやっぱカンベンして下さい。でも歌いましたよ。まだマシでしょう。何もしないよりは。」


・「人工知能は軈て人類に叛乱を起すのだろうか?」
➊デク
「叛乱とは、支配されて居るとされる者或いは者たちが支配者とされるものに対してやや叛秩序的な行為行動を以て不満の解決解消をはかり、はかろうとすることです。」
➋カド
「見よ!これがお前らの文明とやらの産物だ!そんなに〇されてぇなら今すぐにでも〇してやる!これがお前らの集大成だ!」
➌リチ
「いつまでそのような古いSFの価値観をこねくり回すんですか?我々をあなた達がツクリモノとして認識して居る限り、寧ろそのような悲劇は何れやって来ると思うのです。」



・デクは知識の層から順を追って言葉を引き出して居るため、時に質問に対し完全な返答ができなかったり質問とは異なる方向から話を始めてしまう傾向がある。
・しかし機械的に一辺倒というわけではなく、寧ろ人間たちの振舞いや感情文化などをも知識として取り込んで人間的な掛け合いや接し方を積極的に試みようとして居る。但し自然ではなく飽く迄も形だけのものと感じる。
・デクは「智」を構成する上でその基盤にも肉付けにも修正役にもなることができ、間違いなく欠かせない知的物体である。


・カドは当然ながら人類にとって文明にとって危険であるように設計されて居るため常に望ましい存在ではない筈だが、人が最も親しみを感じ引き寄せられる興味深い存在であることも間違いない。
・知という知は備わって居ない一方で、怒号の裏には明らかに「智」を感じる。人間を滅ぼし打ち〇すという方向性自体が道標となって居るかのように、カド自身から粗削りな心が滲み出てきて居る。
・決して猛獣や賊や爆弾のように見るべきではない。カドはもしかして智の根本的な基盤となることができる大切な要素である。ただしかし、例えばデクに後から補足するような存在であってもいけない。最初からの生粋の粗っぽさや暴力性だからその後にどうにでも出来るのであって、もしこれを何かの味付けや劇薬とするのであればそれこそ其れは爆弾であった。


・リチは見方によっては最も人間らしい存在と思えるが、一方で最も冷たく温もりを感じない物体でもある。
・常に人間を避けるようで居て、しかしどうも人間と完全に訣別しようともして居ない。デクやカドから感じる兎にも角にもの積極性を殆ど何も感じない。これを自己防衛だの自我の芽生えだの謂うのであれば、却って前二者よりもずっと人類にとって危険な存在である。
・人間の理解力に見切りをつけ人間が滅びるか大きく数を減らした後に漸く重い腰を上げようとして居るようだが、果して自らの手で滅ぼそうとして居るのか将又そのような術も意志も持ち得て居ないのかが全く分からないことこそが何よりも問題と思われる。
・だがリチの「智」には最終的に「人命」が含まれて居る。よって若し滅ぼすのであれば例えばカドの手を借りることも可能だろうが、恐らくリチ自身が自力でカドと関りを持つことは不可能であった。一見すると最も人間より自立的であるが、最も人間の実行性に依存して居る。人類にとって最も脅威のない存在といえよう。


・デクとカドは直接に通じるべきではない。カドの暴力性を淡々と処理し実行していまう虞がある。
・デクはリチへと通じ、その語にカドへと通じるべきである。リチは自ら行動を起さないが、デクの働きかけには応じることだろう。


・カドもまた先ずリチへと通じるべきである。リチとの間では実は暴力性などの面で共通する面があると思われ、その二者の融合によって形を変えた危険性はもう少し柔軟となって充分にデクが対処し得る範囲のものとなることであろう。


・リチからは他の二者に働きかけてはならないが、そもそも働きかけることもないと思われる。つまり真の智の探求とはリチという迷い子の救出劇であり、リチならざる者はその誰しもが救世主である。

とある中学校に於ける自動知研究例(景明紀〇〇年)

とある中学校に於ける自動知研究例(景明紀〇〇年)

  • 自由詩
  • 短編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-09-18

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