祭りの後、後の祭り 第四話
おはようございます。第四話のお届けです。浜に行く三人。あの方たちとは?謎呼ぶ第四話です。
第四話
「祭りの後、後の祭り」
(第四話)
堀川士朗
三人は歩いて浜に出かけた。
海。
荒れている。
強い風が吹いている。
カモメの姿はどこにもなかった。
船はみな高波を避けるために沖合いに出ていた。
「見て!波が雲を削ってる!」
「おー!」
「良いの見れたな。帰ろ、危険だから」
「うん」
「あのさ。セリフの練習でもする?」
「マサ。なんの?ないよ台本。秋公演の大江戸ろぼっと物語の稽古もまだ始まらないし」
「やめようマサ。やめて帰ろう宿に」
「うん」
「ここまで来て演劇の事は忘れなよね」
「うん。劇好きだからな俺」
「ねえ檜葉、待ちぼうけの替え歌歌って」
「待ちぼうけぇ~待ちぼうけぇ~。ある日せっせかエロ男ぉ~」
「ハハハ。ビブラートで歌うの超キモくてうけるんですけど!」
「腹へったな。まだ晩飯まで時間がある。宿に帰る前に昼飯でも食おう。街の定食屋にでも行こうよ」
定食屋。
こじんまりとした店に入った。
店自体は古いがリフォームしたのだろう、新しい印象を受ける。
三人とも、鯵のたたき定食をチョイスした。
なめろうとお新香もついている。
味噌汁には大きな蛤がひとつ入っていた。
弘子が言った。
「おばさん美味しいです」
太った店主のおばさんがニコニコして言った。
「うちのなめろうは特製ダレに漬け込んであるから美味しいでしょ」
「はい」
弘子の肌が白いのをめざといおばさんに、
「まあ。このお嬢さんはとても色が白いんだね。まるであの方たちみたいね」
と言われ急に不機嫌になる弘子。
檜葉が弘子に小声で質問した。
「あの方たちって?」
「……別に」
おばさんは肌の白さを誉めたつもりだったのだが、宝弘子の不興を買い、その後は会話を交わす事もなく食事と会計をそそくさと済ませて店を出た。
檜葉と坂野が、そんな弘子の様子を伺って機嫌を取っていた。
三人は共同体。
夕方からの台風の雨は少しだけ降った。
続く
祭りの後、後の祭り 第四話
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