静けさの終わりに
確率は事実の前に終わりを告げる
確率の終わりは事実の始まり
事実の始まりは静けさの終わる時
神よなぜにと問いかけしその先に
新しき事実は非情にも美しき事実を消し去る
大いなるその働きの中に人の姿も含みしは余りにも受け入れ難き
数知れぬ愛の失われしは深い悲しみと共に
静寂は事実の終りに訪れる
虚空を舞ふ何ものかは時の知らせなり
命の鼓動を再び地上に伝えんとする
佇む者の眼に映るは静けさの中の確かなる胎動
新しき時の芽生えを知らす鳥の姿
その羽ばたきは力に溢れ希望を知らせる
たれかその飛びゆく先を知らせん
美しき羽ばたきを
新しき世界を
渚にて
汝に見える海は広く
汝の知る心は深い
永遠なりしものは汝の傍らに立ちて
汝を常に見守っている
呼べば来しごとく
尽きぬ優しさをもって
永遠は眼の前に
星のごとく
汝を照らしている
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少年は母の声を聞いた
打ち寄せる静かな波の音のなかに母の声を聞いた
鴎が一羽、少年の上を飛んで行った
リターントゥフォーエバー
そんな言葉を思いだした
見上げれば鴎が羽ばたいて飛んでゆくのが見えた
何のために生きるのだろうと
初めての疑いをもった
誰も答えてはくれない
遠い浜辺の先に小さな動く影があった
打ち寄せる波に足を濡らしながら歩いている小鳥だった
時々立ち止まっては顔を上げている
そしてまた浜辺をちょこちょこと歩いてゆく
少年はその姿を見ていてなぜか涙が出た
生きる美しさとは何だろう
少年は鳥に向かって急ぎ足で歩いた
鳥は近づいてくる少年の姿に気付いて飛び立った
少し飛んでは浜辺に降りて、またちょこちょこと歩いてゆく
少年は母の声を聞いた
短い母の声を再び聞いた
見上げれば青い空が広がっている
静かな波が打ち寄せる浜辺に少年はいた
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おいっ
予備のバッテリーがあるんだから、もっと強く回したらどうだ
おれは大丈夫だ
ほこりがひどい・・
ああ・・
センターの連中はモニターばっかり見ているから、目が疲れるだろう
おれはこっちの方がいい
新型は人間がやるより丁寧だ、正確だし
おい・・
あれが出てきたらどうする
嫌な事を言うなよ
何回か見てるんだ・・おれ
向こうに新しい飲み屋街ができかかってる
行ったのか?
いや
そのうち評判のいい店に行くつもりだ
ふっ・・
写真は送ったのか?
タブレットはあるようだが
着手前は撮った
作業状況はこれからだ
完成は・・?
何年か先になるだろう
おれはあと何ヶ月かで他へ行く
なんでだ・・?
なんでだろうな
おいっ・・
簡単な事だ
いつまでも同じ上下関係の中にいると、息苦しくなってくる
おれはそういうのが苦手だ
でも・・現場代理人なんだろう
変更すればいい
普通の現場とは違うもんな
ああ・・
・ ・
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静けさの終わりに