『検体A』
比較で貶されれば悔しいのに
比較で褒められれば嬉しいの
『検体A』
知れば知るほど不思議そう
解りやすいと自負してるのに
何がそんなに引っかかるの
貴方は難しく考えすぎよ
いつも優雅なその手を伸ばせば
すぐに答えは捉えられるのに
簡単に暴いてしまうのは詰まらない?
だったらもっと奥まで覗いて
貴方の中でアタシの切り貼りが
どんなに本物に近づいたとしても
即ちアタシ自身ではないってこと
承知しながら尚作業は続く
ピンセットで拡げた胸のヒダが
甘く冷たい声に震えるけど
いつか動かなくなるまで
好きに観察して触ってね
どうして貴方だけにそれが
許可されてるかを考えれば
もうそろそろ本物に近くならない?
アタシの真価なんて二束三文よ
そんなに期待しないで
ガッカリされるのは不服だわ
勝手な憶測でも信じ抜くなら
いつかご褒美をあげてもいい
吹きかけた息の蕩けるような
甘美な感覚の為なら開くから
濡れ光る秘密を教えてもいいの
答え合わせに怯えないでね
「溺れただけとは知りながら」
『検体A』