『夏の名残』

終わる頃に急に惜しくなる
夏はそういう季節だから


『君の名残』


カランコロンと下駄の音
君がチャイムを押すまでの
短いひとりぼっちを楽しめば
夕立ち後の虹に似た笑顔の眩しさ

狐の嫁入りよと淡い唇が動き
僕は目眩を堪えて見つめてしまう
いつか残酷な言葉で傷つけられても
この今を悔いることはない

夜店の誘惑を振り切って
お参りからと告げる後ろ姿
境内を照らす全てがそこへ
この夜だけは君が法律だ

願うことはいつもひとつ
その背中にいつからかある
羽がどうか動きませんように
小さな羽ばたきが僕を絶望させる

ブルーハワイって何味?と
青く染まった舌を出して
無邪気を装う癖にどうして
普段と違う笑顔、違う目線

薄化粧の横顔が何かを
秘めているような気がして
手を伸ばすこともできずに
僕は見つめるばかり

赤い月が僕を嗤うから
これが最後の夜かも知れない
最後まではどうか隣を歩いて
僕を好きな振りでもしてくれないか



「貴方の背中の羽が邪魔だから切り落としたの」

『夏の名残』

『夏の名残』

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-08-29

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