魚の交差するまちで

車のエンジンには金魚が泳ぐ
道ゆくすべてのくるまから
金魚の声はもれ聴こえ
にぎやかな鰭を散らすのだ
信号機にひっかかる あぶく
雨雲は畳のへりにこすれゆく
爪にはいりこんだ銀箔のように
宛て所はどこかわからない
スマホ地図は線路と道 からまり
路肩にのりあげられた鯨たち
静岡県浜松市白熊自治区
美しい島一二六の一あたりは
こすれて穴あき病の初期である
エロモナス・サルモニシダの息
しばらく ここから出られない
首からうえは盆栽な児童は
ブルーブラックのインクを飲む
肺に描かれた地図を溶かすため
夢で見た海を目に浮かべるため
ハンバーガー屋はとうに消えた
どの道もどの道も鼓膜へ繋がり
音の波へ檸檬をにじませるなら
どれかエンジンの一台には
きっと アロワナが棲んでいる

魚の交差するまちで

魚の交差するまちで

  • 自由詩
  • 掌編
  • ファンタジー
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-08-29

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