分身

おれは詩など書いたことがないのかもしれない
ペソア曰く、「原本(オリジナル)などない」……
……オリジナルが存在しないのだとしたら
おれの生み出したものはことごとくが盗作だ
おれは詩人ではなくて剽窃家だったのだ!
おれの中に流れている血は誰の血なんだ?
おれの魂だと思い込んでいたこれは誰の魂だ?
おれという人間はこの世のどこにも存在しない
おれは他人が決めた模様に従って
編み物をしているだけだ
おれは自分で何か決断をくだしたことなどない
それゆえおれはいつだって自分の生に対して
無関心で、他人事で、無頓着だった
おれは生まれ落ちてから生きたことがない
だからおれは自らを死産児と見なしている
中途半端に言葉を覚えてしまった憐れな嬰児だ
おれには心というものがない、第一
そんなものは脳の信号にすぎない
だから誰の中にもそんなものはないのだ
おれはオリジナルではない、ただの量産品
ただの模造品、ただの分身
おれは名前をもたない
おれは呼吸をしない

分身

分身

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-08-28

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