浮彫
どうして、と繰り返す。
どうして、と表情を歪める。
流れるのは、シャワーの水しぶきか、伝う涙か。
止めどなく流れては、目には映らない傷が浮き彫りになる。
ことばによって、傷つけられた記憶は
幾度もぼくの前に現れては、傷を抉る。
『痛み』という傷をつよく、つよく、掘り起こしてゆく。
感傷という形で、迫ってくる。
つよく、つよく、ぼくの胸を締め付けようとする。
かなしみの中にいると、しても。
かなしみの中で生きていると、しても。
今は、かなしみの中でしか生きられないと、しても。
光のある場所へ手を伸ばせる、と。
光のある場所へ、と。
光にたどり着ける、と信じていたい。
軸は、きっと変わらない。
ぼくの中にある変わらない軸。
その軸だけは、守りたい。
その軸だけは、守り抜きたい。
よわくても、もろくても、
ぼくはこうして生きてきたから。
いつだって、いつだって、ぼくはずっと、ぼくだったじゃないか。
それなのに、どうして涙がこぼれて、
それなのに、どうして涙があふれるんだろう?
映らない傷に、
ぼくたちはどうしてこんなに胸を痛めるのだろう。
拭えない涙はほら、こうして今も、溢れ出す。
浮彫