浮彫

どうして、と繰り返す。
どうして、と表情を歪める。
流れるのは、シャワーの水しぶきか、伝う涙か。
止めどなく流れては、目には映らない傷が浮き彫りになる。

ことばによって、傷つけられた記憶は
幾度もぼくの前に現れては、傷を抉る。

『痛み』という傷をつよく、つよく、掘り起こしてゆく。
感傷という形で、迫ってくる。

つよく、つよく、ぼくの胸を締め付けようとする。

かなしみの中にいると、しても。
かなしみの中で生きていると、しても。
今は、かなしみの中でしか生きられないと、しても。

光のある場所へ手を伸ばせる、と。
光のある場所へ、と。
光にたどり着ける、と信じていたい。

軸は、きっと変わらない。
ぼくの中にある変わらない軸。
その軸だけは、守りたい。
その軸だけは、守り抜きたい。
よわくても、もろくても、
ぼくはこうして生きてきたから。

いつだって、いつだって、ぼくはずっと、ぼくだったじゃないか。

それなのに、どうして涙がこぼれて、
それなのに、どうして涙があふれるんだろう?

映らない傷に、
ぼくたちはどうしてこんなに胸を痛めるのだろう。
拭えない涙はほら、こうして今も、溢れ出す。

浮彫

浮彫

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-08-26

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

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