本当につながるには

相手の怒る顔が見たい
相手の怒りの表情を見てみたい
相手から睨まれてみたい
相手の許容範囲を超えたい
相手のエスやイドに踏み込みたい
相手の憎悪と自分の憎悪を共鳴させたい
相手と深くつながりたい
相手の冷たい感情を観察したい
相手とぶつかりたい
相手の敵になりたい
相手と深く共有したい
相手が大事にしている領域を見てみたい
相手の傷に触れたい
相手を激昂させたい
相手の血を見てみたい




人文好きの反人文志向

こんな甘えた生活をずっと続けていいはずがない
社会が貧しくなっていくのはわかっている
みんなで貧しくなろうというのが国民の総意なのだろう
社会主義化していっているのはわかる
誰も真剣に身銭を切って働こうとはしていない
それが進歩した社会なのかもしれない
それでもそんな理想が実現するとは思えない
稼ぐのは悪いことだという思想が完全に浸透しきっている
私は弱い人間だし文学がわりと好きだったけれど
人文系、芸術系、宗教系の労働蔑視、生産蔑視は苦手だった
自分自身が無理をして働いてきたからそこには賛同できない
思えば人文学は長らく貴族のものだったのだから
労働を蔑視するのは当然と言えば当然だ
文学にも哲学にも労働への軽蔑感情が蔓延している感じはある
みんな唯物論批判は大好きだけれどスマホも大好きだった
誰も近代を背負おうとは思っていない
そんなことはもう無理なのかもしれない
結局科学を根本から疑おうとすると
地動説は頭で受け入れているだけで心身で受け入れられないという
どうしようもない事実と向かい合わないといけないと思う
私は労働が嫌いだ
それなのに働きすぎて身体を壊した
私はどこにも居場所がない
会社には強がっていばり散らして暴論を振りかざす人がいた
SNSには弱さにいすわって正論をならべ上げる人がいた

言葉が過ぎたようです。かっとなるとどうしてもだめですね。私自身今では働いてないだめな人間なのに何を偉そうに言っているのだろう。





詩は逃げ場がない

散文なら巧妙に感情を隠しながら書けるが
詩は隠せないな
普段から隠すことに忙しくしている自分からすると
詩は逃げ場がない
詩を書いていると逃げられない
詩は隠したい感情と融和できるところはある
でもそれは危うさを抱えてもいる
これ以上詩を書くのは危険かもな
でももう少し続けるのもいいかもな
誰にも読まれないところでひっそりと書いていきたい




上の空

ずっと自分に嘘をついてきた
自分の心身を硬直させた状態で
言葉だけ忙しく作り出す技能を磨いていった
どうでもいい比喩と修辞を乱立させる
こんな文章を書きたいのではないと内側から訴える
それでも一度書きだした勢いは止まらない
文章は勝手に生み出されていく
書いている最中に起こっていることは不思議だ
初めに書いた文が次の文を触発していく
そうして何かよくわからないものができあがっている
思考と言葉の関係の神秘性に思いを馳せる
こんなやり方では自分が本当に書きたいことを書けない
上の空で書いてしまうクセを治したいがなかなか難しい
詩を書くことでそのクセを修正できるだろうか
心身に基づいた文章を書けるようになるだろうか




小説

自我が動かないと小説にはならない
自我が揺さぶられないと小説にはならない
書く方も読む方も共に動いて揺さぶられる
そういうものを求めている
動かされ揺さぶられたい
昔の傷の痛みを感じたい
あのとき痛むことができずに放置していた傷がある
そういう傷の存在を知って
痛みを感じるために小説を読んでいる
小説は過去との風通しをよくするためのもの
読んで苦痛と癒しを同時に感じるもの
あのとき流せなかった血を存分に流せる
そういうときに読んでよかったと思える




自分に素直に

自分に素直になることは難しい
自分の過去を受け入れないといけない
惨めな過去を受け入れないといけない
素直になろうとすると虚栄がはたらく
防衛反応としてはたらく
本当に人生がうまくいかなかった
負けてばっかりだった
素直になれなかったからだろうか
それでもこれまでの経験は
ある程度必然だったと思える
自分は負けるべくして負けたのだ
人前で恥をかくこと
地に足のついた敗北経験を持つこと




詩で傷つける

詩で自分を傷つける段階にまで至っていない
こずるい理屈でうまく防衛しながら
言葉をならべていっている
実際の人生を生きようとしていない
思春期のころに防衛が完璧になってしまったから
他人に心をさらしたことがなかった
気取りに虚栄に卑下
何重にもメタ思考を重ねて自己を弄ぶ
だから詩を書くことで少しでも丸腰になりたい
でも根が臆病だから
いつでも慎重に詩を書いている
意識的に技巧的に言葉を配置する
実際の人生があり詩や散文もある
詩にも散文にも生き方が現れざるをえない
私はまちがっていた
深い矛盾を抱えたままやりすごせればよかったけれど
途中で矛盾が顕在化して火を噴いてしまった
詩で少しでも自分をなだめたい




後悔

後悔してもしかたがないと言うけれど
未来を見据えろと言うけれど
私のような人間は後悔して何度も蒸し返すことで
ようやく少し行動を起こせるようになる
だから執拗な後悔は次の行動のための布石なのだ
何度も何度も同じところをほじくり返す
そうしないと次に進めないから
前へ進むために過去を振り返る
未来も過去という写像を通して開かれる
結局すべては過去なのだ
記憶を通してしか世界を見ていない
記憶を断ち切らないといけない
自分と記憶の関係を切り捨てる
しかし記憶なしで思考することができるだろうか
記憶と思考の違いとはなんなのか




詩の効用

自分の思っていることを途切れ途切れに出していく
思考の切れ端をならべていく
どうしても率直にならざるをえない
詩の形式が率直さを要求する
散文でごまかしていた手法が使えない
なぜなのかわからない
短い文章で区切る必要があるからだろうか
自分の弱いところを出したくなる
散文を書くときの構えがなくなっていく
詩をいたずらに美化したくはない
しかし詩の型式だからこそ表現できることもあるのかもしれない
昔のあの遊んでいたころに戻りそうで嫌だな
世界を受容しようとしていたあのころ
当時は今よりリア充だったけれどずっと詩的だったみたいだ




上野

駅について本屋で物色する
その辺の茶店に入って本を少し読んでみる
公園の方に行く
たまには背伸びして美術館に行ってみる
絵画を見てなんとなくわかった気になっておく
国立博物館にも行ってみる
かなり充実しているので時間をつぶせる
科学博物館にも行ってみる
地球の歴史を一気に旅できる
宇宙の彼方と原子の細部にまで到達できる
外に出て新鮮な空気を吸う
人が集まってる出し物を見物したりする
噴水あたりをうろうろ
並木道も歩いていると気分がいい
そろそろ夕方なのでアメ横に行こう
あいつと飲めるのだから少し楽しみだ

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-08-26

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